表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/81

第23話

「お早うございます」

「クーマ殿、おはよう、今日は遅めだな」

「はい、ちょっと寝坊してしまって」頭を掻く、

「クーマ殿、お早うございます、昨晩は何かありましたか? 」

「いいえ、よく眠りすぎました」

「今日は急ぐのか? 」

「いえ、そこまでは・・・」

「では、付き合わないか、コーヒーを用意しよう? 」

「シフォン構わないかな? 」

「はい、クーマ様が宜しければ」

そう言ってこちらを見る、

「有難うございます」

「では、こちらへ」

アクスが先に立ち案内してくれる、

いつもの詰所の奥の部屋、

マルガリータを前にシフォンと並んで座る、少し待つとアクスがコーヒーを持って入ってくる、

シフォンが席を立ちカップを並べる、

「お嬢様すみません」アクスが礼を言う、

「いえ、構いません、お気になさらず」

「シフォンはクーマ殿の前では気が利くな」

「お姉様! 」

「冗談だよ、ハハハ」

「もうっ、お姉様ってば・・・」顔が赤い、

「予定では、今日も南だな」

「はい、回復薬の素材が、まだかなりあります、取り敢えずこれを採取してしまおうかと思います」

「そうか、昨日の量もそうだが、そんなに取って今後は大丈夫か? 」

「そうですね、幾つかに場所を分けて採取していますので、同程度であれば直ぐに回復するかと思います」

「そうか、先のことも考えてくれているのだな」

「勿論です、取れば良いと言うものでは有りませんから」

「そうだな、此方も早く衛兵を育てないとな」

「育てる? 」

「ああ、アクスとも話したのだが・・・」

アクスを見る、

「私から説明を・・・今回、クーマ殿が採取の際に持ち帰った情報と、現在の戦力をもとに、採取部隊を作ろうかと思います」

「採取部隊ですか? 」

「ええ、狩猟の際の護衛部隊はあるのですが、それとは別に、現在、衛兵に少数連携の、訓練を行なっています、まぁ、冒険者で言う所のパーティー戦ですね」

「パーティー戦ですか・・・」

「ええ、クーマ殿はパーティーを組まれないのですか? 」

「私が入ると足手まといになりますよ」

「足手まといですか? 」

「まぁ、パーティーは別として今度、衛兵の訓練に付き合ってくれないかな? 」

マルガリータが俺に言う、

「私がですか? 」

「ああ、そうだ」

「クーマ殿とアクスの模擬戦は衛兵に刺激を与えている、是非、お願いする」

頭を下げる、アクスも、頭を下げている、

シフォンは、当然という顔で、コーヒーを飲んでいる、

「そのお話お預かりしても」

シフォンが不安げにこちらを見る、

俺は少し笑いかける、


「では、出発します」

「そうか、わかった気を付けてな」

「有難うございます」

「シフォンさん、今日も早く帰ります、晩飯楽しみにしています」

「わかりました、お待ちしています」

今のシフォンはいつもの笑顔だ

詰所を出るとポニーが待っていた、

「ポニー待っててくれたのか? 」

グアウ、クァッ! クァッ! と鳴く、

「そうだな、約束したな、よし、行こう」

ポニーを連れ門に向かう、シフォンは横に、マルガリータとアクスは後ろをついてくる、

「クーマ殿何を? 」

アクスが聞いてくる、

「ちょっとポニーと約束をしてまして」

「ポニーと約束? 」

「なっ、ポニー」

ガウーと鳴く、

俺はポニーと門の前に立つ、

「シフォンさん、少し下がってて下さい、アグネスさん逃げたほうがいいですよ」

慌てて逃げる・・・

「じゃ、ポニーやるか」

グアウー! ポニーの魔力が膨らむ、

「まさか! 威嚇、またやるつもりか? 」

アクスがマルガリータを見る、

マルガリータも気づいた、

シフォンは動じない、ずっとこちらを見ている

ポニーの膨らんだ魔力が広がっていく

皆が気付いたようだ

ポニーはずっと唸っている地鳴りのような唸り声が空気を揺らす、

『この前どころじゃない、これは、皆を避難させなければ、でも身体が動かない、何故・・・』

マルガリータ様を見る、目を見開き笑っている、『マルガリータ様・・・』

ポニーの魔力が濃くなる、目が離せない・・・

ポニーは魔力を上げる限界が近い、

魔力を放出しようとするポニーに優しく声を掛ける・・・

『まだだ』

ポニーに心のなかで話しかける、

『よく見ろ、そうだよく見て集中しろ、見えたか? 』

グアウ、グァ〜〜

『では、周りの自分の魔力を感じろ、それを一気に吸込み増幅して、放て! 』

ポニーの広がった魔力が一気にポニーに集まる

グッゴァァァァァーーーーー長い咆哮と共に前に放出する・・・門が揺れ少し開く、その先から魔獣の叫び声が聞こえ遠ざかっていく、

『私は何を見ている、今の魔力は? ポニーの魔力? そんな・・・』

足に力を込める、油断すると座り込んでしまう、

『しっかりしなさい! 自分に言い聞かす』

マルガリータもアクスも驚愕の顔で動けない・・・


『流石ポニー、小屋の辺りまで届いたな』

「まさか一発で出来るとは」

ポニーが振り向き頭を擦り付けてくる、

褒めてと言わんばかりに・・・

俺はポニーの頭を抱きしめて首元を掻いてやる、喉を鳴らして、喜んでいる、

シフォンが近付いてくる、足が少し震えている、

「ポニー、わかっているな? 」

グアウ、一声鳴いてシフォンのよこに並び、支える、

シフォンはしっかりポニーに抱きつく、

「ポニー・・・貴方は凄いのね」

クアッ

ポニーはシフォンを支えて近付いてくる、

「クーマ様・・・」

「シフォンさん行ってきます」

「はい、お気をつけて」

マルガリータとアクスが動き出す、

「クーマ殿! 」☓2

「行ってきます! 」

そう言って門を出ていく、


防壁沿いのこの道も、もう慣れたな、

ポニーのおかげで魔獣の気配はない、

いつもの分かれ道を曲がった所で、

『また嫌な感じがする・・・』

『魔獣は確かにいない・・・』

『水車の音が聞こえる、小屋は近い・・・』

「結界は問題ない・・・」

『嫌な感じが離れない・・・』

遠くから見ているような、すぐ後ろにいるような、巧妙に気配を隠している、そんな感じだ、

小屋に入り一息つく、地図を広げ、持ってきた携行食(干し肉だけど)をかじる、

集中して気配を探る・・・

近くに魔獣の気配はやはり無い・・・

力を少し上げる、

やはり何もかからない・・・

でも、嫌な感じは岬の方からする・・・

やはり岬は避けよう、地図を見て考える、

採取量は落ちるが、小屋から見て岬の逆に行くとしよう、

予定は決まった、道具を確認して小屋を出る、

『昼前に終わらせて引き上げよう・・・』

少し小道を戻り、目的地を目指す、

注意深く、しばらく移動すると、目的地が見えた、これだけあればいいだろう、今日はジェルダが泣かなくて済みそうだ、

手早く採取を始める、魔獣の気配はない、

しばらく作業を行なって、予定の範囲を採取できた、

よし一度小屋へ寄って帰るとしよう、

きた道を戻り小道へ・・・駄目だ・・・

小屋へ戻るのはやめだ、俺は小道を分岐に向かって走る、分岐まで戻りあたりを確認する、魔獣はいない気配もない、今日はこのまま帰ろう、


今日は昨日より早い帰還になるが・・・

なんて言い訳しよう・・・

まぁ、いいか、朝の件もあるので早く帰ってきたことにしよう、考えながら歩いていると・・・

何処からか、シフォンの声がする・・・空耳か? 

「クーマ様ぁ〜! 」

やっぱり聞こえる、空から・・・防壁を見上げる、シフォンが防壁から身を乗り出している、後ろで衛兵が必死に押さえている、俺はシフォンに向かって手を振る、

「クーマ様! すぐに参ります! 」

姿が見えなくなった、衛兵も手を振ってくれている、俺は手を挙げて応える、

門が見えてきた、既に門は開かれシフォンの姿が見える、走り出そうとするシフォンを何人かの衛兵が押さえている、

困ったお嬢様だ、あっ、衛兵を振り切った、

俺は少し早足になり飛び込んできたシフォンを抱きしめる。

「クーマ様! お帰りなさい! 」

「はい、帰りました」


門の前にアクスが見える、

「お帰りなさい、クーマ殿、昨日に引き続き速いですね、

「はい、今日は採取場所を変えたので、あまり採取出来なかったんです」

「場所を変えた? どちらに? 」

「小屋の西側ですね、思ったほどの量は無かった」

「そうですか、それは残念でしたね、で、どれくらい取れたんです? 」

「昨日の7割位ですかね」

「昨日の7割ですか・・・ハハハ・・・」

「少なかったですかね? 」

「いえ、クーマ殿の話を聞いていると、感覚が少し狂います」

「それは・・・」

「十分多いということです! ね、アクス様」

「そうですね、お嬢様の言うとおりですよ、あそこで、それだけで採取できる者はそういません」

「ハハハ、ポニーのおかげですね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ