第20話
「わぁー! お嬢様! 駄目です! 」
と、お嬢様の腕をつかむ、
「ノラン離しなさい、クーマ様が待ってる! 」
「わかっています! 」
「じゃあ、何で!? 」
「その格好では駄目です! クーマ様が驚きます! 」
「どうして! 」
「よく見て下さい! 」
「何を」と、言って自分を見る・・・
一瞬で真っ赤になって、座り込む、
「きゃー、どうして裸なのー! 」
「ご自分で脱ぎました、下着まで・・・」
もう一度自分の姿を見て、
「キャ〜・・・」
と、言って丸くなる、
「直ぐにお洋服を用意します」
「アイ! 」
「はい! 」
「急いで用意して! 」
「わかりました」
部屋を飛び出していく、
『クーマ様が待ってる・・・クーマ様・・・』
その時自分の脱いだ服が目に入る・・・
『すぐに行きます』
いきなりお嬢様が走り出す、
『そのまま行くつもり? 』
いや、ソファに向かっていく、お嬢様はソファに掛けてあった先ほど脱いだ服を着る、そして走り出す、
「ノランお迎えに行ってきます! 」
私の前を走り抜ける、
「お嬢様! その服は透けてますよ! ・・・」聞こえてない、服を取ってきたアイが扉の前で戸惑っている、
「ノラン様、あの、お洋服を・・・」
「ありがとう、もういいみたい」
「ですね、でも、あれは・・・」
アイが指差す方向には、下着が1セット落ちている・・・
私は思わず頭を抱える
『あのうっかりエロ娘! 』
でも・・・あの方のあんな姿は初めて見た・・・笑いがこみ上げる・・・
でも、今はアイがいる・・・
『今は駄目・・・今は・・・駄目絶えれない、無理・・・! 』
「アイッ! 」
「はいっ! 」
「今、からぁ、ウフゥ、言うぅ、事を」
「なんですか? ノラン様? 」
「アハハァ、はぁ」
「ノラン様・・・? 」
「今から、見たことは、はぁ、すっ全て、忘れなさいぃ、いいですね! 」
「はい! 」
「もう限界!アハハッアハッアハッ苦しい
駄目っくっ苦しいぃぃ〜・・・」
暫く、笑い転げた、
アイは唖然と立ち尽くす・・・
その頃のシフォン、
『クーマ様帰ってきた、急がないと、早く』
屋敷を走り抜けエントランスへ、
「ポニー! 」
グァゥーー厩舎の方からポニーが走ってくる、
私を見つけて加速、目の前で急ブレーキをかける、砂煙が舞い上がる・・・
「クーマ様をお迎えに行きます! 」
グアッと一声鳴く、
ポニーの背中に鞍がない、
『どうして? 私が鞍を外させた、しまった!
早くクーマ様のもとに行きたい』
私は、ポニーに飛び乗る、
「ポニー行ける? 」
グアァーガウガウ、
「お願いクーマ様のもとへ・・・」
グアァーウ!
ポニーが走りだす? 『えっ、いつもより遅い、私を気遣っている、鞍がないから? 』
『もどかしい、早く行きたい、早く・・・』
ポニーに通じたのか、少しづつ加速している、
背中の毛がわさわさと動き出し、私の腕をつかむように絡みつく、私はポニーの背中にしがみつく、
「ポニー飛ばして! 」
グアァウー! 一声鳴く、
一気に加速する、クーマ様のときほどではないが、
私一人では多分最高速度だろう、
絡みつく毛が、しっかり私を掴んでいる・・・
すぐに街の入り口が見える、
ポニーが少し減速する、
そのまま街を走り抜け門が見える、アグネスが驚きの表情で固まっている、ポニーがブレーキをかけた、砂が舞い上がりアグネスに降りかかる、止まった・・・
アグネスは目を見開いたまま動かない、
ポニーはアグネスの顔をペロッと舐めて、空に向かって匂いを嗅ぐ・・・
直ぐにまた走りだす、詰所の前で立ち止まり、また匂いを嗅ぐ、
グアグアァと鳴いた、
「ここにクーマ様が居るのね」
グァッ!
ポニーから飛び降り詰所の中に、
近くに居た衛兵を捕まえ、クーマ様の居場所を聞く、
「先ほど奥の部屋・・・に」
最後まで聞かずに奥の部屋を開ける、
『クーマ様、居た・・・』
表現の出来ない感情で、胸がいっぱいになる、気がついたら飛びこんでいた、
時は戻り・・・
我慢できなかったようだ、突然ノランが笑い出す
「クーマ様っ、ヒッ! ヒッ! クーマっ様
そっ! アハハッ! くっ苦しい、ちょっと待って、ヒッヒー! 」
「ノ、ノラン! 笑いすぎです! 」
シフォンの顔は耳まで真っ赤だ、
「シフォンさん何があったんですか? 」
シフォンは俺の顔を見て目をそらす、
そして小さな声で、
「クーマ様・・・その話は忘れて下さい・・・」
「えっ、しかし・・・」
「お願いです・・・私は大丈夫ですから」
「わかりました、でも、私でお役に立てるのであれば・・・」
ばっ、と俺を見て直ぐに下を向く、
「大丈夫です・・・大丈夫ですから・・・」
声が消え入りそうだ・・・
「わ、わかりました」
『聞かないほうが良いみたいだ』
「もう一つお聞きしたいことがあります」
「なっ、なんですか? 」
「今日は何故ポニーに鞍を付けてなかったのですか? 」
「そ、それは〜、その〜、なんというか・・・」
何故か歯切れが悪い・・・
「私がお答えします」
「ノラン、ちょっと、待って・・・」
「だめです、クーマ様聞いてください」
「今日はクーマ様をお見送りした後、直ぐにお屋敷に戻ってこられました、今日の夕食の指示を出し、こちらの部屋へ・・・」
「へっ、この部屋ですか? 」
「はい、申し訳ありません、不在中に勝手にお部屋に入ってしまい・・・」
「いえ、私は別に気にはしません」
「有難うございます」
「ごめんなさい・・・」
「構いませんよ」
「ノラン良かったわね」
「何を、他人事のように、お嬢様のことですよ」
「ごめんなさい」
「でも、何故この部屋に? 」
「はい」
「ノ、ノランもうそれぐらいで・・・」
「駄目です」
と、そっぽを向く、
「こちらの部屋でコーヒーを飲むと、駄々をこねられました」
「駄々って・・・」
「違いますか!? 」
「違いません・・・」
「その後コーヒーを飲み暫く寛いでいますと、寝てしまわれて・・・」
「それは、あの、つい、何故かほっとして・・・ウトウトしてしまって・・・と、いうことがありました」
「ねっ、ノラン、ねっ! 」
「ねっ、じゃ、ありません」
「その後が大変で・・・」
「ちょっと! ノラン、もういいから〜」
「駄目です! 」
「起こそうとしたら、寝ぼけていきなり服を脱ぎ始めて、慌ててお止めして、服を着せようとしたら、下着まで脱いで、クーマ様のベッドで幸せそうに寝てました」
「ノラン〜」
シフォンは顔を両手で隠して下を向いてしまった、耳まで真っ赤だ、
「でも、クーマ様聞いてください、ノランだって一緒に寝てたんですよ! 」
シフォンが反撃する、
「お、お嬢様! 」
「だって寝てたじゃない! 」
「そっ、それは寝てましたけど・・・」
「わかりました・・・」
ノランがニヤッと笑う、
「ちょっと、ノラン、駄目よ」
「駄目、何がですか? 」
「だから駄目・・・」
シフォンの目が泳ぐ、
「クーマ様、その後暫くして、門から連絡が、クーマ様がお戻りになったと」
「お嬢様はそれはお慌てになって・・・」
「あ〜、あ〜、あ〜! 」
シフォンが抵抗している、
「スッポンポン! のまま部屋を飛び出そうとしました」
『反撃及び抵抗は無駄だったようだ』
「へっ! スッポンポン・・・」
思わずシフォンの顔を見る、
「クーマ様見ないで・・・」
「その後慌てて服だけ着て飛び出していかれました・・・下着をはき忘れて・・・」
「いや〜〜! 」シフォンが崩れ落ちた、
「フンッ! 」(ノランがドヤ顔)
「では、鞍は・・・」
「お嬢様が戻られた際に、他のメイドに「一度外してあげて」と、申されたそうです」
「なるほど・・・」
シフォンは下を向いて耳まで真っ赤だ、
「シフォンさん有難うございます、心配してくださったのですね」
「クーマ様・・・」
こっちを向き俺を見つめる、また目を閉じる・・・
「お、じょ、う、さ、ま! 」
シフォンがぴくっとなって、照れ笑いでごまかす、
三人はお互いに顔を見合わせ笑った・・・
暫く笑った後、
二人は息を整えている、その目には涙がたまっている、
「ノラン、こんなに楽しいのは久しぶりね」
「そうですね、クーマ様が来てからは、毎日が楽しそうで、ずっと笑っておられますね」
「ノラン、あなたもね」
「えっ、あ、はい・・・」少し顔が赤い
ノックの音がする、
「どうぞ」
部屋の扉が開きメイドさんが顔を出す、
ちょっと驚いた顔、
「皆様ご一緒で良かったです、夕食のご準備が整いました、食堂へどうぞ」
三人は揃って食堂へ向かう、




