第2話
「どうやって倒した? 」
「あのー、戦わずに逃げるという、発想はないですか」
「逃げる? 逃げたのか? 」
「改めて言われると恥ずかしいですが」
「幾度か道中魔獣を発見しましたが、逃げて隠れてやり過ごしました」
「簡単に出来ることでは、ないはずだが? 」
「それについては、確かに私は"F"ランクですが
逃げ足については、"A"ランクの評価をいただいています、自慢はできませんが(自嘲)」
「それとこの影のマントのおかげですね」
「影のマント? 」
「はい」
「聞いたことはある、高価なアイテムのはずだが? 」
「らしいですね」
「本来冒険者の装備や過去については、詮索しないのがルールだが・・・悪いが低ランク冒険者が
手に入れれるとは考えにくい、良ければ入手したいきさつを教えてもらえるか」
「構いませんよ、大した話ではありませんが」
「私はコボルの街で、冒険者登録をしたのですが、初めての依頼の際に賞金首に襲われまして、
たまたま近くにいた"S"ランク冒険者に助けられました、その際賞金首の持っていた装備の一部を頂けた、それだけです」
「そんな高価なアイテムをあっさりくれるとは、かなり太っ腹な冒険者だな」
「いえ、スタイルのいい女性冒険者でしたよ、その方はかなり高位の魔法士の方で、その程度のアイテムは必要ないと言われていました」
「魔法士か、なるほど運が良かったな」
「はい、おかげでなんとか生き残っています」
「すまなかった」
「いえ気にしていません」
「わかったいいだろう歓迎しよう」
「有難うございます」
「とは言ったものの、君はここで何をするつもりだ? 」
「はい、主に薬草などの素材集めの予定ですが」
「確かに防壁周辺には、貴重な薬草素材はあるが、危険な魔獣も多い、君のランクではかなり危険な依頼だと思うが」
「いえ依頼ではないんです」
「依頼じゃない? 」
「はい、コボルの街の依頼は魔獣討伐が主流で、
いくら逃げ足が速くても私では討伐自体、なかなかキツくて・・・」
「ですので多少リスクがあっても素材集めのほうが安全なんです、ですがコボル周辺では採取、そのものがほとんど出来ない、そこで色々調べた結果、こちらでの採取を考えました、貴重な素材であれば依頼でなくとも買い取っていただけますので」
「なるほど確かに君は冒険者だな、わかったいいだろう、領内での採取を許可する」
「有難うございます」
「ところで何日滞在する? 」
「はい2日ほど」
「2日!? そんな短時間では大して成果は期待できんぞ」
「そうなんですが・・・」
「お嬢様にお聞きしたところ、街には宿屋も食堂も無いとのこと、長期に滞在は難しいのが現状です」
「ここに来るのに何日かかった? 」
「3日ですね」
「3日か速いな」
「3日程度ならほぼ無休で移動できます」
「で、素材を持ってコボルに戻り素材を買い取ってもらうと? 」
「はい、その予定ですが」
「薬草素材は新鮮さとちゃんとした下処理が重要だ、そのへんはどう考えている? 」
「新鮮さは多少犠牲になりますが、下処理には自信があります」
「なるほど、わかった採集した素材は全てこちらで加工してやろう」
「本当ですかありがたい」
領主はなにか考えている
「そうだな正式な依頼として出そう、ただしこちらの出す条件でよければだがな(ニヤリと笑う)」
「お聞きしましょう」
「依頼内容は素材の採取だ、ただし薬草をメインにしてほしい」
「何か理由が? 」
「うむ、この街の衛兵は皆それなりには強い、しかし人数が少ない、少数精鋭といえば聞こえはいいが、単に、なり手がいないだけだ、理由は街を見たならわかるはずだ」
(確かに人が少なく覇気もなかった)
「だが一度、魔獣が出れば壁があっても、戦闘がないわけではない、当然怪我をしないわけでもない、常に危険と隣り合わせで街を守っている、一人も無駄には出来ない以上、早期治療回復は必至
だから回復用のポーションは、ある程度はストックしておきたい」
「だが実際採集できるものはいない、街のものでは採集どころではない、被害のほうが大きくなる、衛兵でも取っては来れるが、扱いが雑でな、かと言って冒険者がいる訳でもない、
さっきまではな」
「わかりました」
「よし、加工料は完成品の3割だ」
「3割ですか? (素材を納品するより加工した物のほうが高くは引き取ってもらえるが3割はでかいな)」
「期間はそうだな3週間、それと依頼遂行中の
宿と食事は提供しようもちろん無料だ」
「よろしいのですか? (3週間は予定外だが宿と食事があるならありだな)」
「宿と食事は魅力ですね」
「だろ」
「わかりましたその依頼、ぜひ引き受けさせてください」
「依頼書は用意しておく、明日にでも確認してから、始めてくれ」
「ノラン、しばらくクーマ君が滞在する、部屋と食事を頼む、後、部屋に案内してやってくれ」
「お父様、私が案内します」
「そうか、ではシフォンに任そう」
「ちょっと待ってください、宿泊と食事はこちらでですか? 」
「不満か? 」
「いえ願ってもないことですが・・・」
「構わん、街にはもう宿も食堂もない、酒場はあるがな、酒場でも干し肉ぐらいは食えるが(ニヤリと笑う)」
「確かに、有難うございます」
「シフォン」
「はい」
「後は任せる、それとクーマ君」
「はい」
「娘には気に入られたようだな、メイド達にも嫌われないようにな」
「はい、お世話になります」
「ではクーマ様こちらへ(ニッコリ笑う)」
「少し、お屋敷を案内しておきますね」
「お世話になります」
シフォンはメイドに
いくつか指示をしたあと
俺の手をとり歩き出す
どうやら建物の外に出るようだが
建物を出て中庭の少し奥、壁の近くに
少し大きめの小屋がある
「まずはこちらから」
「こちらは? 」
「解体場と作業場です、クーマ様が持ち帰られた素材はこちらにお持ちください」
「あ、なるほどわかりました(綺麗に掃除されている、道具の手入れもいい)」
「次はあちらです」と言って屋敷の端のほうを指差しまた手を取って歩き始める
「こちらは倉庫になります」扉を開けてくれる、
中にはアイテムや武具などが綺麗に並べてある
「ここは部外者には、見せないほうがよろしいのでは? 」
「大丈夫です、貴重な物は大してありませんし、むしろクーマ様に必要なものはないですか? 」
「いえ、大丈夫です、身の丈に合わぬものは使いこなせません」
「謙虚なんですか、それとも遠慮? 」
「いえ事実です」
「そうですか(少し残念そうな顔)」
「あっ」
「何かありましたか(ちょっと元気)」
「実は、荷物を運ぶカバンか袋があればありがたいのですが」
「それでしたら」
倉庫の奥から一枚の袋を持ってきた
「こちらは役に立ちますか? 」
綺麗に手入れはされているが、かなり年季の入った革袋、
「これは? 」
「アイテム袋ですが、この部屋ぐらいのものなら収納可能ですし、中にある間は時間経過が緩やかになるので、食糧などの保管にも役立ちます」
「いやいや、かなり高価なものと思いますが」
「大丈夫ですよ、ここにはたくさんありますから
、ほら」
見せてくれた棚には袋が積み重ねてあった、
「これ全部ですか? 」
「はい、ですのでご自由にお持ちください」
「それでは、ありがたくお借りします」
「いえ、これはクーマ様に差し上げます」
「いえ、かなり高価なものでしょう頂くわけにはいきません」
「もう一度こちらをご覧ください」
「はい」
「これだけあっても使うものがいません、置いておいても手入れの手間が増えるだけなんです、ですので、遠慮なくお受け取りください」
「わかりました、大事に使わせて頂きます」