第17話
小屋を出て辺りの気配を探る、
さっき食べた魔獣が数匹少し離れた場所にいる、
他に気配はない・・・
足に力を込め一気に駆け抜ける、
魔獣は3匹・・・
一匹目、二匹目を短剣を振り抜き倒し、
三匹目を蹴り上げる、落ちてきた魔獣を地面に叩きつける、
終了・・・
直ぐに袋に入れ、そのまま駆け出す、
分岐点の手前で速度を落とし、
気配を探って歩き始める、
魔獣はいない、俺はのんびりと門に向かう、
アグネスの姿が見える、
向こうも気がついたようだ、衛兵に合図を送っている、
直ぐに門が開き始め、数人の衛兵が出てきて、こちらに手を振っている、
俺も手を振り返す、
迎えてくれた衛兵と、挨拶を交わしながら、門の中へ、
「今日は早かったですね」
アグネスに声をかけられ、
「はい、ポニーのお陰で、道中ほとんど魔獣に出会いませんでした、お陰で、採取も順調に早く集まったので、無理せずに戻りました」
「ポニーですか・・・」
嫌なことを思い出したのだろう・・・
『アグネス悪かった』
お互い顔を見合わせ笑う・・・
手すきの衛兵達も集まって来て、労いの言葉をかけてくれる、
奥からアクスが近付いてくる、顔が笑っている
「今日は騒ぎは無しですか? 」
「毎回あれでは体が持ちませんハハハッ」
「そうですね、今、屋敷に使いを出しています暫く詰所で、休んでください」
「お気遣い有難うございます、しかしアクス様、私はただの冒険者です、待遇が良すぎでは? 」
アクスは周りを確認してから、
小声で話しかける、
「ただの冒険者は"S"ランクをおもちゃに出来ませんよ」
『やはりばれてたか』
「おもちゃだなんてとんでもない、それにアクス様は"A"ランクでは? 」
アクスは俺の顔を覗き込んで、
「知っていましたよね! ね! 」
「はい・・・」
「フフフ、構いませんよ、気にはしていません、ただ、いつか本気の貴方を見て見たい、と、そう思いますが」
「わかりました、いつか必ず」
「良かった、これで訓練に励みがでます」
「ところで何人気付きました? 」
「まだ、マルガリータ様と私だけです、他の者は気づいていませんし、公表する気もありません、」
「有難うございます、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、さて、こちらでお寛ぎください、コーヒーで、いいですか? 」
「はい、有難うございます、」
俺は椅子に腰掛け、一息つく、暫くしてアクスがコーヒーを持ってきた、一緒にマルガリータも入って来る、
「クーマ殿おかえり」
「ただいま戻りました」
「怪我はなさそうだな」
「はい、お陰様で」
アクスがコーヒーをすすめる、
「どうぞ」
「頂きます」
「マルガリータ様も」
「すまんな、アクスお前も座れ」
「では、失礼します」
「今回は早い帰還だが、何かあったか」
「いえ、採取がうまくいったので、早めに戻りました」
「内容は? 」
「今回は蘇生薬のある岬を避けて、上級回復薬の素材を採取しました」
「そうか、で、量は? 」
「約、前回の2倍」
「そうか、またジェルダが泣くな・・・」
俺は前回の、ジェルダの泣きべそを思い出し笑った、
マルガリータもアクスも笑っている、前回の件を聞いていたようだ、
廊下に足音が聞こえる、
いきなり扉が開き、俺の姿を見つけたシフォンが飛びついてくる、
「クーマ様、おかえりなさい! 」
「ただいま」
「シフォン、はしたないぞ」
「えっ! お姉様? アクス様? 」
顔を赤くして、そっと離れる、
「エヘヘ・・・」
子供のような、笑顔が可愛い、
「クーマ様、お怪我は? 」
「ありません」
「収穫は? 」
「回復薬ですが、前回の倍ほど」
「倍! ですか? 」
「はい」
「またジェルダが泣きますね」
「ハハハッ」
皆笑っている、
「お嬢様、コーヒー、飲まれますか」
「アクス様、頂きます」
「クーマ様、おかわりでいいですか? 」
「有難うございます」
暫くの歓談のあと、
「ああ、そうだ・・・これを」
と言って、袋から魔獣素材を取り出す、
「これは、ルビーレプタイルですね、どのあたりにいましたか」
「分岐を過ぎたあたりですか、数匹いましたが、珍しいのですか? 」
「そうですね、以前はかなりいましたが、ここ最近は、あまり見かけませんね、結構貴重品なんですよ」
「何かの素材ですか? 」
「そうですね、どちらかと言えば、装飾品ですかね、女性に人気があります、魔力保持能力が高く、護身用装備にも使われます」
「そうですか、もっと探せばよかったな」
「あまり無茶はしないでください、けして弱い魔獣ではありません」
「えーと、ランクは? 」
「"A"です! 」
「次からは逃げます」
「ハハハ、それが良いでしょう」
詰所を出ると、出入口を小山? が塞いでいる、
衛兵が押すが全く動じない、
シフォンが駆け寄り、衛兵に謝っている、
謝られた、衛兵が逆に困っている、
シフォンの声が、聞こえたのか、小山が動く、
のっそりと振り向く?
『やはりポニーか』
シフォンにスリスリしながら、頭を撫でて貰って目を細める、
俺も近づいて頭を撫でてやる、
グァグァッ、と鳴いて抱きつく、
それをなだめて広い場所へ、よく見ると鞍がない、
「ポニー鞍は? 」
ポニーは振り向き、シフォンに向かってフンフンと首を振る、
それに気づいたシフォンは、罰が悪そうに、
「急いでいたので・・・」
その時、強い風が、シフォンのスカートを翻す、
慌ててスカートを押さえる、
シフォンの顔が真っ赤だ、
「クーマ様、見ましたね! 」
「いや、見えなかった、かな? 」
「本当は・・・」
「見ました・・・」
お互いに、顔が真っ赤だ・・・
そう言えば胸も透けている・・・
視線に気づいたシフォンが、胸を隠す、
「クーマ様の、エッチ・・・」
「な、何で、あの、えー、着けてないんですか? 」
「その、急いでいたので・・・」
下を向いて、声が小さくなる、
ポニーがシフォンを押す、
「きゃっ! 」
思わず俺に抱きついた、シフォンの顔が目の前に、見つめ合う二人・・・
「コホン! 」
マルガリータが声を掛ける
「シフォン! いちゃつくのは、屋敷に戻ってからにしなさい、兵が困っている」
目が笑っている、周りの兵も、皆笑っている
シフォンは、真っ赤になりながら、
「お姉様! もうっ! クーマ様! 帰ります! 」
「はい、帰りましょう」
ポニーの前に立つ・・・
「シフォンさん、どうやって来たんです? 」
シフォンはもじもじしながら、
「しがみついて来ました・・・」
ポニーが、クゥォーと鳴く、
俺はポニーに跨り、シフォンに手を伸ばす、
その手を掴んだシフォンを引き上げ軽く抱き寄せ、しっかり膝を締める
「ポニーゆっくりな」
グァー、一声鳴くと、のっそりと立ち上る、
「では、マルガリータ様、アクス様」
ゆっくりと歩き始める
ポニーはゆっくり歩いている、
鞍は無いが、ポニーの背中は毛がフサフサで快適だ、
シフォンはいつものように、俺の腕を抱きしめ、目を閉じている、
特に何も話さない、でも、シフォンの気持ちが伝わってくる、
本当に俺を、気遣ってくれているようだ、
シフォンだけじゃない、ここに住む人たちは皆いい人だと思う・・・
『大事にしなければ、罰が当たるな・・・』
ポニーが一声鳴く、
屋敷が見えてきた、いつもより時間をかけて帰ってきた、ノランたちが駆け寄って来る、
ノランがシフォンを見てる、
「今日は起きていますね・・・」
返事がない、
「シフォンさん・・・」
振り向いた顔が赤い、息も荒い、
「大丈夫ですか? 」
直ぐにシフォンを、ポニーから下ろそうとすると、
「クーマ様、大丈夫です、先に降りてください」
少し苦しそうだ、
「本当に? 」
「ノラン・・・お願い」
ノランは何かに気がついたようだ、
「クーマ様先に作業場へどうぞ」
「マーリー! クーマ様をお願いします」
「わかりました、クーマ様どうぞ、こちらへ、ご一緒します」
「ノランさん・・・シフォンさんは? 」
「クーマ様大丈夫です、お嬢様はお任せください」
少し心配ではあるが・・・
「わかりました、よろしくお願いします」
俺はマーリーと一緒に作業場に向かう、




