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第16話

目が覚めたのは夜明け前、

部屋の中はまだ暗い・・・

ベッドから出て窓際へ・・・

外も暗く、山の稜線がかすかに見える、

森には靄が雲のように漂っている

空が白み始める、

『もうすぐ日が昇る』

扉の外に人の気配が、

『もうすぐノックの音がする・・・』

コンコンコン・・・

「やっぱり、どうぞ」

「お早うございます、ノランが、顔を覗かせる、

もうすぐ、お嬢様が参られます」

「わかりました、おすすめはありますか? 」

「そうですね、ベッドで寝たふり、などいかがですか・・・」

「なるほど、有難うございます」

俺はベッドに戻る・・・

暫くしてノックの音がする、

ここは知らん顔・・・

扉がそっと開く・・・

「クーマさま〜」

「おきてますか〜」

シフォンが、そ~っと入って来る、

「クーマさま〜・・・」

ベッドの横に立ち覗き込む・・・

「クーマ様、寝たふりですね」

片目を開いてシフォンを見る・・・

「いじわる・・・」

シフォンの顔が近づく、唇に柔らかい感触・・・

「えっ! 」

「クーマ様の・・・ばかっ・・・」

「早く起きて下さい、朝食にいきます! 」

シフォンは何事も無かったように、早く、早くと急き立てる、その横顔は少し赤い、

ノランが入口で微笑んでる・・・

シフォンが腕を絡めて俺をひっぱる、


朝食はチキンソテー? 朝から?

後はスープとパン、牛乳?

運んでくれたメイドさんが・・・

「本日の朝食は、香りの低いものを御用いたしました」

「有難うございます」

一礼して一歩下がる、

「クーマ様、念の為に香りの低いものを用意させましたが・・・」

「お気遣い感謝します、では、頂きます、美味い! 美味い! 」

シフォンがニッコリ笑う・・・

「良かった」


食後のコーヒーを飲みほして、部屋に戻り、出発の準備と装備の点検を行う、

一緒に来た、シフォンが、何かと世話をしてくれる、服を着替えて、アーマーを付けようとしていると、

「クーマ様、この装備は先日の物と少し違うような? 」

「ああ、少しだけ改良しました」

「改良ですか? 」

「はい、先日の物は少し音が出るので、音が出ないように改良しました」

「・・・音、ですか? では、先日の模擬戦は・・・」

「ええ、しっかり見つかりました、流石に"S"ランク相手では・・・」

「・・・アクス様は"A"ランクですよ・・・」

「あっ、そうでした・・・」『しまった』

俺は、そのまま上着を着てマントを羽織る、

「さぁ、行きましょうか」

「・・・? 」

「シフォンさん・・・? 」

「あっ、すみません、では行きましょう」


玄関には、アルベルトが馬に乗り、メイドが一人、馬を引いている、

『俺たちを待っていたようだ、もう一人は誰だ? 』

ノランがすっと手綱を受け取る、

『もう一人はノランか』

「クーマ君、私も今日はマルガリータに用がある、お供しても良いかな? 」

「勿論です」

ポニーは既に準備をして、待ってくれていたようだ、

ポニーが駆け寄り・・・シフォンの横を通り過ぎ、俺に抱きつく

『おっも〜』

がっしりと受け止め撫でてやる、

横でシフォンの腕が空を切る、行き先を失った指をくわえている・・・

俺はポニーと顔を見合わせる、

ポニーは俺から離れ、シフォンに抱きつく? 

一瞬シフォンが満面の笑みを浮かべ・・・

つぶれた? 

「ワァーこら! ポニー退け! シフォンが潰れる! 」

グァッ! 

ポニーが慌てて後退る、

シフォンを助け上げると、ゼーッ、ゼーッ、と息をしているが、なぜか楽しそうだ、

そして俺に抱きつき息を整える、

ポニーが心配そうに覗き込んでくる、

「大丈夫よポニー、嬉しかったわ、でも、もう少し優しくしてね」

クァー、

分かっているのか、一声鳴いて顔を舐める、

「ふぅ~、さぁ、クーマ様行きましょう! 」

ポニーは伏せてグァウ! と一声鳴く

ポニーは飛ばす気満々だ、

シフォンがポニーに話しかける、

「ポニー、今日はゆっくり走ってちょうだい、いいわね」

グゥァッ・・・不満そうだ

「ポニー、今度また飛ばそうな・・・」

頭を撫でてやる、

「クーマ様、その時は私も・・・」

「当然ですよ、なっ、ポニー・・・」

グァウ!

「はいっ、必ずご一緒します! クーマ様、行きましょう」

ポニーに颯爽と飛び乗り、俺に手を伸ばす、その手をしっかり握りポニーに乗る、

「ポニー、お願い」

グァッ!ゆっくり歩き始める、


詰所に着くと、アクスが出迎えてくれた、

「お嬢様、クーマ殿、お早うございます」

「お早うございます」

どちらともなく、あいさつを交わす

「クーマ殿、今日は装備を変えられたのですか・・・」にやりと笑っている、

「いえ、少し改良しました」

「改良ですか・・・」

『やっぱりばれてるよな』

「そうです、改良です」

「音がしないのは良いことです」

『でしょうね』

「お早う」マルガリータも、来てくれたようだ

「お早うございます」

「お姉様、お早うございます」

挨拶を返す

「今から出発だな」

「はい」

「今日は少し魔獣が多い、小物なので心配ないとは思うが」

「クーマ様・・・」

シフォンが心配そうに俺を見る、

するとポニーが門に向かい吠える、

グウァオォオォーーン!

今までに無い、腹に響く鳴き声、

衛兵達が一斉にこちらを向く、腰を抜かしている者もいる、

『そりゃそうだろう、この圧は凄い』

『流石のマルガリータ、アクス、シフォンも驚いている』

俺はそっと、ポニーに近付き、「コラッ! 」と頭をこつく、

グワァッと鳴いてこちらを見て、キョトンとしている、

「ありがとな」と言い頭を撫でてやる、

クァックァッと鳴いて頭を押し付けてくる、

その頭を押えて静かに話す、

「周りを見てみろ」

俺越しに後ろを見て気付いたようだ、俺の顔を見て、クゥオーと鳴く、

「分かったな、今度使い方を教えてやる、だから俺が帰るまで、しっかりシフォンを守れ、いいな」

グァッ!

「いい返事だ、任せたぞ」

グァー! と鳴いてシフォンの横に寄り添う、

俺は三人の所に戻り、シフォンに声をかける、

「どうやら露払いをしてくれた様です」

「露払い? 」

シフォンがマルガリータとアクスを見る、

・・・アクスが答える、「魔獣の気配が減っていきます・・・」

「クーマ殿、今のは・・・? 」

「威嚇ですね」

「威嚇? 」

「はい、おかげで助かりました、暫くは魔獣も寄り付かないでしょう」

「では、シフォンさん行ってきます」

「・・・クーマ様・・・早く帰ってください・・・行ってらっしゃい」

「マルガリータ様、アクス様行ってきます」

「ああ、気をつけてな」

「お気をつけて」

「では」

門兵が門を開ける、俺はゆっくり歩きだし門の外へ、後ろで門が閉じていく、

閉じていく門の間から、シフォンが心配そうな笑顔で、

「クーマ様お気をつけて・・・」

俺は振り向かず軽く手を挙げる、


俺は防壁沿いの道を、湖に向かう、ポニーのおかげで魔獣はいない、

まるでハイキングに行くような快適さだ、

木漏れ日の中、森を抜けてくる風が心地よい、湖への分岐点・・・立て札が見えた

『ここからは油断禁物だな』

『ポニーの威嚇も、流石にここ迄は効果が無いようだ、魔獣の気配がする、一昨日のリザラだったか、あれは美味かった、同種の気配はするがかなり小さい、今は大型の気配はない』

突然、藪の中から中型の魔獣が飛びかかる、咄嗟に地面に叩きつける、

見ると、既に絶命しているが、赤く光沢のある大きめの鱗が美しい、取り敢えず袋に収納する、

『いい昼飯になる』

水車の音が聞こえる、森が切れ、背の高い草が生い茂る、

『前回ある程度、草を薙いでいたので歩きやすい、取り敢えず取水小屋へ、魔獣の気配はあまり感じない、だが・・・何か嫌な感じがする、前回は調子に乗って油断した、気を締めて早めに終わらそう』

俺は念の為、周りの気配をもう一度念入りに探る・・・

『大きな問題はない・・・しかし、今日は岬を避け、近場の採取で片付けよう、小屋から少し行った所に、上級薬草の密集地があった、蘇生薬とはいかないが、これはこれで高級品だ』


小屋を出て辺りの気配を探る、

『やはり、気配はあまり感じない・・・

だが、嫌な感じも変わらない・・・急ごう! 』俺はすぐに目的地に移動する、

目を付けていた素材を採取し、すぐに袋へ収納、周りへの警戒は怠らない、暫く作業を続けていると、予定より早く集まった、

『これぐらい集まれば良いだろう・・・量的には前回の倍近い』

『またジェルダさんが泣くな』

『時間は昼を過ぎたあたりか?、嫌な感じは変わらない、一度小屋へ戻ろう』

小屋へ戻り、来るときに捕まえた魔獣を捌く、

『いい素材が捕れた、ついでに飯を食ってしまうか』

火をおこし、捌いた肉を焼く、調味料は小屋にあった物を使う、

焼けた肉を食べながら何となく外を見る、

『今日は帰るとしよう・・・嫌な感じが拭えない・・・』

さっさと荷物を片付け帰り支度を行う、

もう一度窓から空を見る、まだ十分日は高い、


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