第120話 冒険者の街コボル
ギルド前
扉を開けるとカリスがなぜか受け付けにいる、
ガーベラを見つけカウンターから出てくる、
「ガーベラ様、お早うございます、ギルマスがお待ちです」
「えっ、何?」
カリスが目で合図する、
「えっ、ええ、おはよう」
「こちらへどうぞ」
「ええ」
カリスに案内されガーベラがついて行く、
部屋に入るとゴーグがデスクに座っている、
「ケリー、お茶を」ゴーグが声を掛ける、
「はい」奥から声が返ってくる、
「座ってくれ」
勧められソファに座る、
暫くしてテーブルにお茶が並べられる、
「お待たせしました、ではごゆっくり」
そう言うと部屋から出て行く、
扉が閉まったのを確認して、カリスが結界を張る、
「お待たせ」カリスが声を掛ける、
「ふぅ~、何なのこれは?」
「用心よ」
「用心?」
「そう、表向きはゴーグをギルマスにしてあるの・・・で、うまくいったの?」
「当然よ」
「ゴーグ、あれを頂戴」
「はい」
デスクの引き出しから、数枚の魔法紙を持ってくる、
「どうぞ」
「ありがとう」
「はい」カリスが魔法紙を差し出す、
「これは?」
「見て」
ガーベラが見ると魔法紙が光りガーベラの名前が浮き上がる、
「これは?」
「あの屋敷と土地の権利書よ」
「準備が良いわね」
「ええ、貴方なら問題なかったでしょ」
「まあね、カリス、知ってたでしょ、あの屋敷の事」
「ええ、貴方が調べたとおりよ」
「違うわよ」
「えっ、あのバカが自分が虐げ死なせた怨霊たちに殺された、自業自得よ」
「そうね、自業自得なのは間違い無い、ただ怨霊に殺されたんじゃない・・・」
「・・・詳細はわからない、でも殺していたのはあのバカよ、何で死んだかはわからない、実際怨霊に呪い殺されたのかも知れない・・・でも殺しをしていたのはあのバカよ」
「どういう事?」
「怨霊の親玉はあのバカよ、そして自分が殺した霊を束縛して、来たものを捕まえさせあのバカが殺した、そして殺した相手の負の感情を食らって力をつけていた」
「嘘! じゃあ、あいつは死んで怨霊になっていた・・・」
「そう、まあ奈落の底で永遠に苦しめばいいわ」
「そうだったのね・・・ごめん」
「何を言ってるの、おかげで皆、旅立ったわ」
「そう、ありがとう」
「それよりこれ、準備が良すぎない?」
「アハハハ、土地の所有者に泣きつかれてね、ギルドで買取ったのよ」
「やっぱり」
「でもこれで住むところができたでしょ、今度招待してね」
「その前にしっかり改修してよね」
「わかっているわ、業者には当たりをつけてあるわ」
「ふっ、宜しく」
「ええ」
「さぁ、私は宿に戻るわ、夜更かしはお肌に悪いから」
「何か食べる? 奢るわよ」
「いい、また今度よろしく」
「ええ、借りておくわ」
ガーベラが部屋を出て行く、
「流石ガーベラですね」ゴーグが話しかける、
「ええ、ちょっと悪いことをしたわね」
「大丈夫でしょうガーベラなら」
「そうね」
翌日、宿の部屋
「ふわぁ〜、朝か・・・よく寝た」
ベッドから起き上がり自分を見る、服を着たままだ、
そう言えば昨日、宿に戻ってからの記憶がない、『あの程度で疲れるなんて』
服を脱ぎ捨て、洗面で顔を洗う、
ぐぅ~、『お腹が減った』
そう言えば一昨日の昼以降何も食べてなかった、
「ふぅ~、何処か店空いてるかな?」
服を着替えて、部屋を出る、受付の前を通ると、
「お早うございます」
受付の女性が声をかけてくれる、
「おはよう」
軽く返事をして宿を出る、何となく屋敷の方を見る、気が付けば屋敷の前に居た、
『何で来たんだろう?』
門から中を覗くと数人の人が集まって何か話をしている、
『カリスの言っていた業者の人?』
門をとおり集まっている人の方へ、
「おはよう、どうしたの?」
「あっ、お早うございます、ギルドからの依頼で来た者なのですが」
女性が応えてくれる、
「ガーベラ様ですか?」
「ええ、そうよ、どうしたの?」
「あの、それが・・・」
『何かあった? また出たとか?』
「おーい、見てもらったほうが早い」
「えっ、そうですね、こちらへ」
「ええ」『出たわけではない?』
開けられた扉をはいる、
『えっ、もう終わってる?』
屋敷の中は、新築の様に片付けられている、壁も階段も磨き上げられ光っている、絨毯は敷き変えたようにふかふかだ、天井も灯りもクモの巣一つ無い、窓は曇りも無くカーテンが新調されている、
ガーベラがぎこちなく振り向く、
「早いわね・・・」
「とんでもない、私たちが来た時にはもうこの状態でした」
「へっ、どういう事?」
「だから、俺たちが来た時にはもう改修は終わっていたんですよ」
「終わっていた? カリス・・・ギルドから聞いたのはいつ?」
「昨日です、急ぎで頼むと言われたんで、ほかの仕事を置いて真っ先にやってきたんですが、やることが無い・・・」
「ほかの部屋は?」
「全部終わってます」
「全部?」
「はい、全部」
「わかった、ごめんね無理言って」
「それは構いませんが報酬を貰ってしまってるので・・・でも、これじゃ貰えない」
「いいわ、もう貰ったんでしょ、貰っておきなさい」
「いやしかし」
「構わない、ギルドには私から言っておくから、文句は言わせない、そのかわりと言ってはなんだけど、一つクローゼットを作って欲しいの、いい」
「勿論任せてください、報酬に見合うのを用意します」
「そんなに大きいのはいらないわ、これぐらいでいいから」
と両手を広げてみせる、
「分かりました出来たらお持ちします」
「宜しく」
「それでは失礼します」
「ええ、ありがとう」
皆を見送り屋敷のドアを閉める、
『さっきから気配がする、左の奥の部屋、何かがいる』
廊下を気配を消してそっと近づく、
『いい匂い、食堂? 気配はある、人じゃない』
そっと覗く、キッチンには、火が入り鍋から湯気が立っている、テーブルには料理が並ぶ、
『誰が?』
その目の前をカップとポットがふわふわと飛んでいく、思わず前に出てしまう、
「あっ!」
「お早うございます、ガーベラ様」
メイド服の女性が頭を下げる、
「お早うございますご主人様」
執事服の男性が声をかけてくる、
『悪意は感じない』
「おはよう、誰かしら?」
『何処かで見たような』
「先日はお助け頂き有難う御座いました」
「皆で話し合った結果ガーベラ様の元でお役に立てればと、皆を見送り私達が残りました」
「先日? あっ、思い出した、あのバカに捕まっていた怨霊!」
「はい・・・しかし怨霊はちょっと」
「あ、ごめん」
「いえ、これからよろしくお願いいたします」
「あっ、こちらこそ? てっ!ちょっと待って! あなた達を縛る者はもういないのよ、なぜ?」
「はい、先に行った者もおりましたが、多くの者が残っておりまして、せめて何かご恩返しをと・・・ガーベラ様がここに住まわれると聞き、皆で手入れいたしました」
「その内一人一人と旅立ち、皆を見送ったあと、私共も共に旅立つつもりだったのですが・・・」
「ですが?」
「旅立てませんでした」
「どうして?」
「さぁ、それはわかりませんが、何かまだ未練があるのでしょう」
「ちょっと、他人事みたいに」
「ですので、私共が旅立つ日まで、ガーベラ様のお世話をさせて頂きたいと思います」
「「「「「お願いします」」」」」
五人が頭を下げる、
「わかった・・・まぁ良いでしょう、この広い屋敷に一人じゃね、但し、旅立ちの時には一声かけてね、突然だと寂しいからね」
「はい、勿論」
「所で、さっきからいい匂いがするのだけど、食べても良い」
「はい、どうぞ、お召し上がりください」
「ありがと、頂くわ」
「で、今に至る」
「成る程、ではそれからずっと?」
「ええ、だから慣れて」
「分かりました、皆さんよろしく」
五人がすっと姿を現す、
「クーマ様、こちらこそよろしくお願い致します」
「ああ、紹介しておくわ」
「彼は執事のロン、メイドのラン、リン、ルン、レン、よ」
皆がそれぞれ挨拶をしてくれる、
「名前はガーベラさんが?」
「ええ」
『ラ行だな、ガーベラの名付けセンスは俺といい勝負だな』
ガーベラの屋敷、食堂
「ふぅ~、美味しいですね」
お茶を飲み一息つく、クッキーを一つ口に放り込む、優しい甘さが広がる、
「これも美味しい」
「有難うございます」
「ガーベラ様、食事は?」
「まだよ」ぐぅ~、
ガーベラのお腹が鳴る、
クーマが覗き込む、
「ぐっ」顔が赤くなる、
「もうっ! クーマの意地悪!」
「アハハハ」
メイド達もクスクスと笑っている、
「あなた達まで!」
「直ぐにご用意致します、何かご希望は?」
「クーマは?」
「肉ですかね」
「そうね肉よね」
「分かりました、少しお待ちを」
すっと姿が消え奥から調理の音が聞こえてくる、
「クーマ、彼女たちは良い子だから心配しないで」
「大丈夫ですよ、少し驚いただけです・・・それよりも、良いんですか私がお邪魔しても」
「良いのよ、ずっと居ても・・・」
声が小さくなるる、
クーマは気づかなかったようだ、
「ふぅ~」
「どうしました」
「いいえ、何も」
「クーマはこの街、初めてなのよね」
「はい、と言うか覚えていないので」
「そうだったわね、何も覚えてない?」
「そうですね、精霊達の話を聞く限り、かなりの食いしん坊だったようですね、何しろ料理のレシピしか見えなかったらしいですから」
「そうね」
「もしかしたら料理人だったのかも」
「クーマ、それはないと思う」
「ですね」




