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第116話 冒険者の街コボル

「クーマ、ガーベラ、ちょっと良い」

「はい」

「どうしたの? 」

カリスが水辺に向かって歩き出す、

二人で後を追う、

カリスが沼を見つめる、

満天の星が沼に映る、まるで星空が地上に落ちたように、

「クーマ、ギルドマスターとして聞きたいことがある、いいかしら」

「はい」

「君は何だ? 」

『当然の質問か』

「カリス! 」

「ガーベラさん、構いません」

「クーマ・・・」

「そうですね、まず、私には記憶がありません」

「記憶が無い? 」

「はい、今ある記憶は、街の路地で目覚め此処までにあった事、それと、私の知らない記憶があります、ただ、これについては私ではわかりません、ですので、クーマという名前も本名かどうかわかりません」

「どういう事? 」

「私は何故かコボルの路地裏に居た、通りを覗くと明らかに自分と違う出で立ちの人々、自分を調べてみたが身分を証明するものは何もなかった」

「少し混乱しましたが、取り敢えず自分を証明するものが必要だと思い、通りに見えた冒険者ギルドに飛び込んだ、その後はご存知のとおりです」

「それを信じるとして、あなたの力は何なの? 」

それもよくわかりません、ただ、出来る・・・と思うだけで」

「出来る? 」

「はい、例えば」

手の平に真っ赤な炎が現れる、それが青に変わる、

「そんな事って・・・それは魔法なの? 」

『魔力、神力、どちらでもない力、それは、この世界では有り得ない事、確かに両方の魔力を使える者はいる、でも、どちらの力も兼ね備えるなんて、不可能に近い、それに私の魔力感知は反応していない、では、魔法じゃない? 』

「ちょっと待って、理解出来ない、分かるのは強大な力・・・」

「だから言ったでしょ、慣れるしか無いって」

「慣れるって、そういう問題」

「そうよ、私はそうした、クーマは私を助け、ここを取り戻してくれた、それだけで十分」

『私も知りたいことは山ほどある、でも、多分理解できない』

「ガーベラ、貴方はそれでいいの? 」

「私はクーマを信じる、この命を掛けてもいいわ」

「ガーベラさん、命はそう簡単に賭けてはいけませんよ」

「良いのよ、これは・・・良いの、これで」

「無茶はしないで下さい」

「わかっているわ」

「そう、貴方が言うなら私も認めましょう」

「クーマ様、これからもよろしくお願いします」

すっと手を差し出す、

カリスの顔が受付嬢の顔になった、

「はい、宜しくお願いします」

その手を握り返す、

「みんな食事が出来たわよ」

フィードがテーブルに食器を用意している、

「は〜い、お待たせ〜」

ディーネとアードが食事を運んで来る、

「さぁ、食べましょう」

テーブルに並んだ食事はどこか懐かしさを感じる、

「ディーネ、食事は誰が? 」

「私が作りました、何かおかしかったですか」

「いや、何故か懐かしくて」

「ああ、それは名をいただいた際にご主人様の記憶? の一部を頂きました」

「成る程、他にどんな記憶が? 」

「そうですね、食事のレシピが多かったかと」

『俺はよほど食いしん坊だったらしい』

「いけませんでしたか? 」

「いや、嬉しいよ、有難う」

「では、どうぞお召し上がりください」

「いただきます」

クーマが食事を口に運ぶ、

「美味い! いい味付けだ」

「よかった、初めての物ばかりなので、喜んで頂けてよかった」

「これはさっきのボアか? 」

「はい、香辛料と塩で味付けをして、焼きました」

「ちょうどいい塩加減だよ」

「はい、有難うございます」

「ご主人様、こちらもどうぞ」

「これは、ジャガイモサラダ? 」

「はい、ジャガイモは分かりませんが、よく似た物がありましたので、それを使ってみました」

「これも美味い」

「ご主人様、こちらも」

トロッとした白いスープ、

「これは、ポタージュだな」

「はい、ご主人様の記憶ではそういう料理だったかと」

「美味い」

気が付くとガーベラとカリスも無言で食べている・・・

パンを片手に次々と口に運ぶ、

『美味しいみたいだ』

二人は無言でパクパク食べている、

クーマが精霊たちと顔を見合せる、

自然と微笑みが浮かぶ、


「はぁ~、こんなに食べたのは久し振り」

「本当に、こんなに美味しい食事は初めてかも」

「本当ね、王宮の料理よりも美味しいわ」

「それは言い過ぎじゃない? 」

「貴方は行ったことがないからよ、作法ばかりで食べた気がしないのよ」

「それは、わかる気がする」

「アハハハ」

食後のコーヒーを飲みながら、雑談に花を咲かす、

「こんなに楽しい食事も久し振りよ」

「本当ね、あなたと食べるのも」

「そうね、良いわね」

「ええ、クーマ達には感謝しかないわ」

ディーネ、フィード、アード、それにクーマ、二人が四人を見る、

「有難う、故郷を取り戻してくれて、それと美味しい食事も」

「それは私達も同じよ、ガーベラ、ご主人様を連れてきてくれて有難う」

「やめてよね、私はクーマに付いてきただけよ」

皆がクーマを見る、

「ちょっと勘弁して下さい、私は手を貸しただけですよ」

「そうね、そういう事にしておきましょう・・・」

「さて、休みましょうか」

「そうですね」

「ディーネ、どこで寝ればいい? 」

「はい、用意してあります、アード」

「は~い」

「皆を案内して」

そう言うと、暗闇に光の小路が浮かぶ、

その先には、木でできた小屋、

アードに案内されついて行くと、思ったよりも大きい、

「すごい」

思わずガーベラとカリスが呟く、

「どうぞ」

小屋に見えたのは立派なツリーハウス、

階段を上がり中に入ると、見た目以上に広い、

リビングがあり、奥にいくつか部屋がある、アードが部屋に案内してくれる、

「ご主人様とガーベラはこちらへ、カリスはこっちを使って」

『俺とガーベラ? 』

部屋を見ると立派なベッドルーム、

「ちょっと待て」

「はい? 」

「どうしたの? 」

ガーベラが覗き込む、

「うっ! ちょ、ちょっと待って! 」

アードが首を傾げる、カリスも覗き込む、

「えっ! ガーベラ、貴方、クーマと・・・」

「ちょっと! カリスやめてそんなんじゃ無いから! 」

ディーネがあとを継ぐ、

「間違った? 」

「ディーネ! だから違うって! 」

「そうだったのね、残念」

「ディーネ! 」

「アハハハ」

クーマがカリスの部屋を見る、こちらは一人用、

「アード有難う、でも俺はこっちを使うよ」

「はい、分かりました」

「ガーベラさん二人でどうぞ、では、先に休みます」

そう言ってクーマが部屋にはいる、

精霊が集まって話をしている、

「ディーネ、間違ってた? 」

「そうね、いい仲だと思ったんだけど」

「照れてるだけじゃない? 」

「ちょっと! 聞こえてるわよ! 」

「アハハハ、ガーベラ、カリス、ゆっくり休んで、お休みなさい」

「えっ、あ、ありがとう、お休みなさい」


ガーベラとカリス

二人がベッドに座っている、窓からは星空が見える、

ベッドは柔らかい苔と草が敷き詰められフカフカでいい香りがする、大きな葉っぱが掛け布団のかわり、

「これも、懐かしいわね」

カリスが葉っぱを撫でながら呟く、

「そうね、今日は色んな意味でお腹がいっぱいだわ」

「そうね、まだ今日なんだ」

「もう日は変わったかも」

「細かいことはいいの」

「そうね・・・貴方が慣れろって言った意味が少し分かった」

「でしょ、そうでないと心が持たないわ」

「確かに、話を聞いただけで滅茶苦茶疲れた」

「私なんか目の前で見たのよ」

目に涙が浮かぶ、

「やっと取り戻した・・・」

「ええ、おめでとうガーベラ」

「うん、カリス、ありがとう」

「それで、これからどうするの、クーマとここで暮らす」

「なっ、何を! 」

「隠さないの、長い付き合いなんだから、エルフにも恋愛感情はあったのね」

「れっ、恋愛・・・」

ガーベラが真っ赤になって固まった、

「重症ね」

『私が恋愛、クーマのことが好き? 』

耳まで真っ赤になる、

「ガーベラ」

「私、クーマの事が好き? 好き? 」

首まで真っ赤になる、

「はぁ~、先に寝るわよ」

「クーマの事が好き・・・?」

そのままベッドに倒れ込む、

「ちょっとガーベラ」

「好き、好き、クーマの事が好き」

呪文の様に繰り返す、

「これは重症ね、おやすみ、いい夢を」


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