第113話 冒険者の街コボル
沼の真ん中あたり、ガーベラが空を見上げて浮いている、幸せだった昔を思い出す、
「あの頃は仲間がいて、精霊達がいた、出来るなら、また会いたい」
『声がした? 呼んでる? クーマ? 違う、滝から? 嫌な感じはしない、むしろ懐かしい』
近付いてみる、特に何もない、
「気の所為? 」
滝が揺らめく、滝から姿が浮かび上がる、
「ウンディーネ・・・」
「お久しぶりね、ガーベラ」
「覚えていてくれたの? 」
「当たり前よ、あなた達が何度もここを護ろうとしてくれた事も、ちゃんと見てた、でも私達には、何も出来なかったけど」
「気にしないで、私達がここを取り戻したかっただけ」
「そう、でも、ありがとう」
「精霊の貴方に、お礼を言われるなんて、何だか不思議な気分だわ」
「そう、貴方はそれだけの事をしてくれたのよ」
「えっ、私、何もしてない・・・やったのはクーマよ・・・」
「クーマ? 」
「ええ、私の相棒、パートナーよ」
少し照れる、
「そう、あの方はクーマと言うのね」
「貴方にお願いがあるのだけど」
「何、私に出来る事なら協力するわ」
「難しい事ではないわ、少し貴方の身体を貸して欲しいの」
「私の身体・・・何をするの? 」
「交尾」
「えっ! 交尾って、SEXの事? 」
「そうね、人族ではそう言うのだったわね」
「な、何で? 」
「貴方が連れてきた方は、強い力を持っている、その力を分けてもらいたいの」
「魔力が必要ってこと? 」
「んー、ちょっと違う、あの"力"が必要なの」
「あの方って、クーマのことよね? 」
「そう、あのクーマの、力を分けてほしいの」
「で、何で交・・・SEXなの? 」
「あの"力"は無理、魔力なら分けてもらえたんだけど」
「じゃぁ、私の魔力を分けてあげるわ、これでも"S"ランクよ、魔力量も他の魔法士より多いわ」
「貴方では無理よ、かかる負担が大きすぎる」
「どういう事? 」
「そうね・・・貴方が何人いればこの沼を浄化できる? 」
はっ、となる、
『私の魔力では無理・・・それよりもどうやったの? なんで気づかなかったの、彼は魔法士ではない、いや、魔力で浄化は無理、神力で無ければ、しかも相当高位の術が必要、それをクーマは祈りもしなかった・・・』
『クインを殺ったあの力は何? 短剣でクインを切裂く、そんなの限りなく不可能に近い、それに私の魔法、あんな威力は出ない、クーマは何? 』
「わかってくれた? クーマは、貴方方の言葉では・・・規格外、だったかしら」
「でも、待って、何で交・・・SEXが必要なの? 」
『何なのよ! 』
顔が赤くなるのがわかる、
「そうね、クーマの力は異質なの、魔力でも神力でも無い力・・・いえ、混ざり合った力、普通の方法では吸収出来無いの、だから一度体内に取り込んでから吸収する為よ」
「一度取り込んでから? 」
「ええ、そのままだとダメージを受けてしまう」
「精霊の貴方が? 」
「ええ、見た目ほど、回復していないのよ、今のままでも何百年かすれば力は戻るでしょうけど、今回のような事もあるので、出来れば早く回復したいの」
「その方法がSEX? 」
「厳密には違うけど、そのほうがわかりやすいと思って・・・あなた達は仲が良さそうだったから、大丈夫かな、と、思ったんだけど」
「仲が良さそう? 何で? まだ、会ったばかりなんだけど」
「そうなの? だってエルフの貴方が、好意もない相手に肌を晒すなんて、ありえないのでは? 」
「えっ、そう言えば、私どうしたんだろ? 」
「あら、気づいてなかったのね、そうね、あなた達エルフは長寿故に、あまり交尾はしなかったわね」
「だから、交尾はやめて・・・」
「ごめんなさい、無理を言ったわね、では、クーマを私に紹介してちょうだい、他の方法を考えてみるわ」
「他の方法って? 」
「他の方法よ、お願い」
「わ、わかった・・・取り敢えず紹介するわ」
「ありがとう、ガーベラ」
「じゃあ、取り敢えずクーマの所に戻りましょう」
「わかった、ガーベラ行くわよ・・・」
「えっ、水がガーベラを包む、気が付けば沼の中を進んでいる、息ができ・・・る、苦しくない」
沼の中をゆったりと進む、でも速い、
岸辺に座るクーマが見える、次の瞬間、ウンディーネと共にクーマの前に立っていた、
「お、おかえり・・・? 」
「ただいま・・・? 」
クーマがガーベラを見て、呆けている、ガーベラは気がついた、素っ裸だった、
「キャ〜・・・、クーマあっち向いて! 」
慌ててクーマが目をそらす、
ガーベラが慌てて服を着ている、
服を着たガーベラが戻って来た、
先の一件が、無かったように同行者を紹介する、
「クーマ、彼女は、ウンディーネこの沼の精霊よ」
「はじめましてクーマ」
「はじめまして精霊ウンディーネ? 」
「ああ、呼びにくければ、お好きな名前をつけて下さい、ウンディーネは固有名詞ではないので」
「そうなの? 」
「ええ」
にっこり笑う、
クーマが真顔になる、
「いいのか? 」
「はい、貴方様の思うがままに」
「わかった・・・」
ガーベラが横で困惑している、
『何の話をしているの? 今、クーマの事を様って言った? 固有名詞? ウンディーネじゃないの? 名前をつける? 』
その前でクーマが名を告げる、
「お前の名はディーネ、構わないか? 」
「ありがとございます、この魂に刻みます」
そういった瞬間、ウンディーネの姿が揺らぎ始める、そして眩く光る、
ガーベラは一瞬、目を瞑る・・・、
目を開けた時、目の前にはクーマに対し跪くウンディーネがいた、
「ご主人様、ディーネの名、有り難く頂戴い致しました、この身尽きるまで忠誠を・・・」
「待て」
ディーネの言葉を遮る、
驚きの表情でクーマの顔を見る
「お前にはやるべき事がある、この場所を俺は気に入った、護るべき者が必要だ、頼んだぞ」
「ありがたき御言葉、この場所を必ず護ります」
その時、風が集まり小さな渦巻きが現れる、その横に蔦が巻き上がる、ガーベラが身構える、
ディーネが声を掛ける、
「古い知り合いよ、貴方にとっても」
「えっ、シルフ? ドライアード? 」
渦巻きは透ける女性の姿、蔦は木目のある女性、二人? はクーマの前に跪く、
「突然の来訪、申し訳ありません、旧友の目覚めを知り参りましたが、旧友がこの地を護る命を受けたことを知りました」
「もし、お許し頂けるのなら、我らにもその命、お手伝いさせて頂きたく思います」
「ディーネを助けると? 」
「はい」
「ディーネはどうだ? 」
「ご主人様の、お許しが頂けるのならば、ぜひ」
「わかった、では、お前たちにも名を与えよう」
「ご主人様、それは・・・」
「不満か? 」
「いえ、ご温情、感謝いたします」
「我らにも名を・・・」
「嫌か? 俺はいまいちセンスに欠けるが」
「滅相もございません、この魂が尽きるまで、ご主人様の命を護ります」
「では、シルフ、フィードを与える」
「有難うございます、魂に刻みます」
その瞬間、風が渦巻き四散する、そこには跪くフィードがいる、
「ドライアード、アードを与える」
「有難うございます、魂に刻みます」
その瞬間、ドライアードの身体に葉が生い茂る、葉が舞い落ちた、そこには跪くアードがいる、
改めて、三名がクーマの前に跪き頭を垂れる、
「我らの主人に永劫の誓いを」
「任せたぞ」
「「「はい」」」
『私は、何を見ているの? 精霊が人族に頭を下げた? いえ、誓を立てた? 違う、クーマを主人と言った? 何? 頭が混乱する、夢? 夢を見ている』
その時ディーネ達が声を掛ける、
「ガーベラ、ちょっと、ガーベラ」
「な、何、ウンディーネ? 」
「違います、今はディーネです」
「久しぶりねガーベラ」
「シルフ? 」
「それも間違い、フィードです」
「ガーベラも立派になったものね、いつも私におしっこをかけてたのに」
「ちょっと! いつの話よ! て、ドライアード? 」
「私はアード」
「こんな小さな時だったかしら」
と、手で腰のあたりを示す、
「やめて〜! わかったから、もう言わないで! 」
「ガーベラ、貴方には感謝しているわ、
我らにこのご主人様を連れて来てくれて、おかげで、この地を護る事が出来るわ」
「どう、昔のようにここに住む? 」
「いいの? 」
「貴方にその気があればだけど」
「それは、願ってもない事、でも・・・また、繰り返してしまうかも・・・」
「何を? 」
「私は逃げた・・・自分の住む場所も護れなかった・・・」
「でも、取り返したじゃない」
「えっ」
「ご主人様をここに連れてきたのは貴方よ」
「ねっ、ご主人様」
「確かに、ガーベラさんのおかげで依頼も達成出来そうですし」
「お前達も感謝しろよ」
「「「もちろんです」」」
「ちょっと、やめてよ」
顔が赤くなる、
「ご主人様、依頼とは? 」
「蘇生薬の素材集めだ、確かリサーション草だったかな」
「では、殆ど採取できなかったのでは、あれは清い水でしか育たないので」
「ディーネが眠っていたので、清い水は極一部だったかと」
「まぁ、ちょっと少ないな」
「では、こちらに明日までご滞在頂けませんか」
「明日? 」




