第110話 冒険者の街コボル
『うっ、避けれない! 』
動きが止まる、その横を通り過ぎた拳が何かを捉えた、
「うぎゃー! 」
突如響く絶叫、そこに一人の男が目を押さえ、のたうっている、唖然とするガーベラをよそにクーマが追い打ちをかける、
ドゴンッ! 岩を砕くような音、
男は絶命した、
両目が潰れ胸が陥没している、その男を光が包む、胸の陥没が戻っていく、
目が開いた、有無を言わせず二度目の追い打ち、今度は胸を貫いた腕が何かを引きずり出す、
『心臓!? 』
それを投げ捨て服を引きちぎる、
腹の辺りに『護符!? 』
護符が光り男を包む、目が開かれる、クーマが護符に手をかけている、その顔が恐怖にゆがむ、
「やめろぉー! 」
男の絶叫を無視して護符をはがす、
「ギャァァァー! 」
悲鳴が辺りに響き静寂に飲まれていく、男が光に包まれることはなかった、
ガーベラは動けなかった、
『何度も死線を掻い潜った、人の死に動じることは無い、でも、動けなかった、目の前にいるのは何、異質なもの』
「大丈夫ですか? 」
声をかけられ我に返る、
「ええ、大丈夫よ、よく気がついたわね」
「はい、鼻が良いもので」
『そんなわけは無い、私の"サーチ"にさえかからなかった、初心者が気づくわけがない』
はっとなり、ガーベラが男を調べる、
「このマント、影のマントか・・・」
男をよく調べる、
「短剣? 何処かで見たような、闇の短剣!? レア物ね、どこで手に入れたのやら、後は・・・何もない」
「どうされたんですか? 」
「えっ、ああ、ごめんなさい、こいつの素性を知りたくて、それと、はい」
短剣を差し出す、
「これは? こいつが持ってた、結構レア物よ、どうぞ」
「良いんですか? 」
「ええ、良いのよ、それにあなたのナイフ」
氷漬けの男たちを見る、ナイフは置いたままだった、
「頂きます」
「その護符、見せてもらっても? 」
「ええ、どうぞ」
護符を貰い、調べてみる、
「"プローブ"・・・やっぱり」
「なにか分かりましたか? 」
「ええ、これは、王室から盗まれた復活の護符、4枚セットで保管されていたものが、ある日消えた、あ、この話は内緒ね、スキャンダルだから、知ったらろくな事にならない」
「じゃ、聞かせないでください」
「ごめん、ついね」
「所で貴方は何故ここに? 」
「あっ、え〜と、初心者冒険者が一人で北に向かったって聞いたから・・・」
「本当は」
『見透かされるような目』
「わかった、ごめん、貴方を囮にして賞金首を追ってきた」
「成る程、で、この四人が賞金首ですか」
「いえ、この下の三人よ、最も顔は分からなかったのだけど、まず、間違いなかったようね」
「では、こいつは? 」
「賞金首は四人だった、と言うことね」
「ボーナスですね」
「ボーナス? 」
「いえ、臨時収入ですね」
「ええ、そうね、と言いたいところだけど、そいつは、あなたの手柄よ、人の手柄を取る気はない、それに貴方には命を救われた」
「救った? 」
「ええ、おとぼけは無し、知っていたでしょ、私は気付かなかった、致命的だわ」
「確かに」
「いつから? 」
「門を出た時から」
「やっぱり、当然私のことも・・・」
「ええ、お腹減ってたんですね」
「ぐっ! 見てたのね」
「はい」
「まぁいいわ、さて、もうすぐ夜も明ける、衛兵を呼びましょうか」
「"メッセージ"・・・これでいいわ、暫くしたら衛兵が来る」
「・・・では、私はこれで」
「ちょっと、どこに行くの? 」
「私は依頼の途中なので」
「そうよ、それ、依頼って何? この先は死の森、初心者がソロで行けるような場所じゃない」
「そうなんですか? 」
「あなた何も知らないの? 」
「まぁ、初心者ですから」
「ちょっと依頼書を見せて」
「どうぞ」
内ポケットから依頼書を出して渡す、
『何この古い紙? 』
広げてみる、
蘇生薬の素材採取
北の沼地に自生する
リサーション草の採取
報酬500g金貨1枚
「はぁ! 北の沼地!? 何でこんな依頼が、誰から受けたの? 」
「いや、ボードに貼っていましたが」
「そんな、こんな依頼ギルドが受け付ける訳がない」
「いや、ちゃんと受け付けに持っていきましたよ」
もう一度依頼書を見る、ちゃんと受付印が押してある、
「ちょっと、カリス、何してんのよ〜」
「受付の方をご存知でしたか」
「受付? ああ、そうか・・・まぁいいか、あのね、カリスはコボルのギルドマスターよ」
「えっ! ギルマスだったんですか、どうりで強いと思った」
「気付いたの? 」
「えっ、はい、強い方だなと」
「そう」
『カリスがボケたのか・・・なわけはないな』
「どこから来たの? 」
「え〜と」
「ごめん、冒険者のことは詮索しない、だった、賞金稼ぎなんてしてるとついね」
「いえ」
「さて、依頼書の話に戻るけど、この依頼書は無効よ」
「えっ! どうして? 」
「これがいつの依頼かは知らないけど、ここに書いてある北の沼地、今は"S"ランク魔獣が住み着いた毒の沼地よ、多分もうリサーション草は無いわ」
「無い? 」
「ええ、リサーション草は清流が無いと育たない、あの毒の沼に清流は無い」
「よくご存知のようですね」
「ええ・・・色々とあってね」
「最近は? 」
「もう何年も行っていない、と言うか行けない」
「そうですか、分かりましたか、ありがとうございます、それでは、またお会いしましょう」
「ええ、って人の話聞いてた」
「はい、もう何年も行っていないと」
「いや、だから行けないのよ」
「禁じられていると? 」
「いえ、そうじゃない、危険だから行けないのよ」
「そうですか、まぁ、なんとかなるでしょう」
「あのねぇ! あんな所"S"ランクのパーティーでも無ければ無理なの! その"S"ランクパーティーだって行けるかどうかなの、それに・・・あそこにはあいつがいる」
「あいつ? 」
「ベノムドードの亜種クイン、あいつは"S"ランクパーティーでも倒せなかった」
「そんなに! なら戦うのはやめましょう」
「そう、戦ってはダメ、って、貴方、人の話聞くき無いでしょう」
「そんな事はありません、いい情報を頂きました、注意します」
「はぁ~、どうしてそんなに行きたいの? 」
「まぁ、行きたいと言うか、お金がないと言うか」
「お金が無い? 」
貴方、カリスから聞かなかったの、冒険者は全て自己責任、
「「必ず生きて帰る」」
「分かってるじゃない」
「はい、分かっています、死ぬ気はないので」
キァァァー、
空を見る、
「来たわね」
「げっ! 」
「げっ、て何、貴方もしかして賞金首なんじゃ」
「とんでもない! 」
「犯罪者じゃないのね? 」
「当然です」
「じゃ、何で、げっ、なの、早く言いなさい、命の恩人に不義理はしないわ」
「実は・・・記憶がありません」
「記憶が無い・・・」
「はい」
「わかった、適当に合わせる」
「よろしく」
水場の前に、大きなワイバーンが2匹降りてくる、その後ろに2匹のワイバーン、1匹は赤いワイバーン、
「カリスが来た? それに、あれは王国のワイバーン・・・」
「それって、ヤバいんじゃ」
「大丈夫よ・・・きっと」
「そこは言い切って欲しいですね」
水場を出て、皆を迎える、
先頭には門にいた衛兵、
ガーベラが手を挙げる、「アラン! 」
アランが手を挙げて応える、
「ガーベラ様、賞金首の捕獲ご苦労さまです、お見事ですね」
「ああ、今回は相棒がいたからね」
「相棒? 確かお一人で出て行かれたかと」
「一緒にいたらバレるでしょ」
「あっ、成る程、で相棒は? 」
「クーマだ」
「えっ、彼は初心者冒険者だったのでは? 」
「ああ、無理を言って頼んだのよ、ねぇ、カリス」
「えっ、何の・・・」
ガーベラが首を傾げ見る、
「ああ、そうだったわね、まだ説明をしていないのよ」
「そうなの」
「ガーベラ殿、初めてお会いします、王国騎士団団長マクスレンと申します」
その後ろに数人の衛兵が控える、皆お揃いの立派な鎧を着ている、
「王国騎士団? しかも団長自ら」
「はい、今件に関わり、少しお話があります、宜しいですか」
カリスがクーマを見る、クーマが頷いて返す、
「いいわ、場所を変えたほうが良い」
「はい、その前に確認をさせて頂いてもよろしいですか」
「いいわ」
「それと、そちらの方は」
そう言って視線をクーマに向ける、
「失礼しました、私はクーマ、冒険者です」
「マクスレン殿、クーマは私の相棒です、問題がありますか」
「成る程、クーマ殿、失礼しました」
「いえ」
「アレン、部下を連れて回収を」
「分かりました」
少しして、アレンと兵が三人と死体を一体回収してくる、
マクスレンが確認する、
かろうじて生きている三人を一瞥して死体を覗き込む、
「やはりか・・・ガーベラ殿、ありがとうございます」
「どういたしまして」




