第109話 冒険者の街コボル
『まぁ、今は考えても仕方ない』
見つけた埋もれた服を引っ張り出す、
『やはり女性だったか、この服は魔法士』
ポトッ、と何かが落ちた、革の袋が二つ、中を見る、一つには黒い乾燥した何かの実、一つ、つまんで匂いを嗅ぐ、
『胡椒か』
もう一つは白いザラザラした粉、匂いは無い、舐めてみる、
「塩だな、貰っておくよ」
もう一度服を見る、捨てることが躊躇われた、その途端服が炎に包まれる、真っ赤な炎が一瞬で服を灰に変える、
『何でこんな力が? 』
自問するが、また当たり前と言う答えしか浮かばない、
『取り敢えず水場と寝床を探そう』
岩の間を探していると、濡れた岩を見つける、
『此の上か』
岩を登るとそこに水場と死体、
『またか』
食い荒らされ無惨な姿を晒す、
『安らかに眠れ』
そう願った瞬間、また青白い炎が辺りを包む、それを追うように赤い炎が跡形もなく焼き尽くす、
カラン、
金属音に目をやると、錆びたナイフが落ちている、手に取ってみる、錆びてはいるが磨けば使えそうだ、ベルトに差す、しゃがんで水場の水をすくってみる、匂いは無い、口に含んでみる、嫌な味はしない、安全だと感じる、何故かは説明できない、多分浄化のせいだろう、
気が付けば、辺りが少し赤みを帯びている、
『夕暮れ、急ごう』
周りを見る、岩に囲まれた少し広い窪み、焚火の跡が見える、
『丁度いい』
岩場を慎重に降りていると、いきなり腕に痛みが走る、
大きなネズミが腕に噛みついている、反対の手で首根っこを掴み、そのまま絞め殺す、どうやら囲まれているらしい、
飛び掛ってきた数匹を殴り飛ばす、
気配を感じ振り向いたそこに、一際大きなネズミが飛び掛かる、首を掴み力を入れる、
【助けて下さい、もう襲いません】
手から力が抜ける、ドサッと落ちたネズミがこちらを見上げる、伏せて頭を下げる、
「行け」
そう言うと一声鳴き、仲間と共に一斉に姿を消す、
『今のは何だったんだ? 』
倒したネズミは5匹、晩飯には十分な数だ、焚き火の跡に集めていた木を組んで手を翳す焚き火に火がついた、
「便利だな」
拾ってきた平らな石を焚き火のうえに置き、もう一つの平らな石に、ネズミの血を垂らし拾ってきたナイフを研ぐ、
ガリガリと音が鳴り錆びが落ちていく、ザリザリと音が変わり少しづつ金属の色が戻る、
シャリンシャリンと軽い音に変わる、
刃先を確かめる、これで良いだろう、焚き火の炎が刃に映る、
捕まえたネズミをナイフで解体して、肉に塩と胡椒を振って焼いた石の上に、
ジュゥゥ〜、いい音と共に、いい匂いが立ち上る、
木を削って串を作る、切った小さめの肉を串に差し塩、胡椒をして焚き火の周りに立てて少し待つ、
石の上の肉がいい具合に焼けた、それを取って口に運ぶ、
「美味いな」
思ってたより美味い、石の上の肉が無くなった頃、串の肉が焼けた、一本取って口に運ぶ
『これも良いな』
ふと空を見上げると、星が瞬き始めた、
さっきの奴らは少し離れた場所に潜んでいる、
『あれで気配を消したつもりか? 』
一人が三人に合流した、
『やはり仲間か』
もう一人、かなりの実力者だな、さっきからすぐ上にいる、気配は無い、でもいる、他の四人と違い殺意は感じない、
「さぁ、寝るか」
少し上の窪みに身体を押し込む、
さっきの実力者が目の前にいる、実力者は女、
『魔法士だな』
気づかないふりで、そのまま目を閉じる、
ぐぅ~、
首を傾げる、
「何か聞こえたような、魔獣か? 」
ガーベラ
水場の少し手前で、三人に追いついた、
少し違和感を感じる、
水場を見ると、夕闇の中に煙が見える、
『寝込みを襲うつもりね・・・待ち伏せるか』
そのまま静かに水場へ移動する、煙を目印に、クーマを探す、岩場の間から明かりが漏れる、
『あそこね』
岩場の上には肉の焼けるいい匂いが、
『呑気なやつ』
『ゴキュッ、美味しそうね』
肉の焼ける香ばしい香りが食欲をそそる、
『そう言えば、今日は食事をしていなかった』
肉に気を取られているとクーマの姿が消えた、
えっ、何処?
突如目の前に現れる、思わず声が出そうになったのを噛み殺す、
クーマはそのまま窪みに体を押し込み目を閉じる、
『ふぅ~危なかった』
ぐぅ~、
腹が鳴った、
『不味い、バレたか? 』
クーマが首を傾げる、
「何か聞こえたような、魔獣か? 」
ガーベラがそっとその場を離れる、
先程までクーマのいた場所、
置いているナイフを見る、
『よく手入れしてある? 横に血塗れの石? 研いだの? 器用ね』
それよりも、さっきから鼻をくすぐる肉の匂い、
『1本位なら・・・』
1本手に取る、良い焼け具合、口に運ぶ、
『美味しい! 』
思わず声が出そうになるのを噛み殺し、次を口に運ぶ、
『美味しい、いったい何の肉? 』
周りを見る、ストーンラットの頭が5つ、
『うっ』
思わず食べている肉を見る、
『意外と美味しんだ、って、ちょっと待って、確かに一匹だけを見れば"F"ランクでも倒せるけれど、こいつらは群れで襲ってくる、魔法が無ければかなり苦戦するはず、それに他の気配が無い、どういう事? 』
クーマの寝床を見上げる、
『何者? 』
その時三人組の気配が近づく、
『来たわね』
ガーベラがそっと移動する、
『一体何をしに来たのか』
そっと目を空け女魔法士を見る、
焚き火のそばに降りた彼女は、ナイフを手に取る、少し見た後でそっともとに戻す、
じっと焚き火を見る、いや違う、肉を見てる、
そっと手を伸ばす、一本取って口に運ぶ、驚いているのがよくわかる、
パクパクと食べ進み、物足りなそうに他の肉を見る、手を伸ばした、二本目もすぐに食べ終わり、三本目に手を伸ばす、その手が止まる、迷いを振り切るように三本目にかぶりつく、
『お腹減ってたんだ、まぁ良いか』
そのまま、また目を閉じる、
『お客さんだな、夜のお客は遠慮したいんだが』
女魔法師も気づいたようだ音もなく移動する、
『よりによってなぜそこに移動する、そこにはもう一人客がいるぞ』
そう思いながらも声には出さない、
水場の外から三人が近づく、二人と一人ここをよく知っているのだろう別れて近付いてくる、一人が飛び込んで来る、手にはショートソード、周りを見て、
「どこへ行った!? 」
残りの二人も顔を出す、
「でかい声を出すな、見つかるだろ! 」
『いや、お前もデカいけどな』
「お前達、静かにしろ、奴はどこへ行った」
「わからねえ確かに居たはずだが」
最後に来た男が焚き火を見る、
「さっきまで居たはずだ、探せ」
『こいつら、バカだな』
「おい、うるさいぞ、睡眠の邪魔だ」
「誰だ! どこに居る! 」
「ああぁ~あ」
欠伸をしながらクーマが答える、
「ここだよ」
男達が見上げる、
「てめぇそんなとこに隠れやがってぇ! 降りてきやがれ! 」
『いや、隠れてはいないが、それに降りてこいと言われて降りる奴もいないだろ』
「やだね」
「てめぇ、ぶっ殺してやるから降りてこい! 」
一人の男がクーマに向かって剣を叩きつける、しかし窪みの中にいるクーマには当たるはずもなく剣が傷つくだけ、
『やはりバカだな』
「降りてきやがれぇ! 」
「わかった、わかった降りるから少し待て」
男がニヤリと笑う、
『降りてきたところをぶった切ってやる』
男が構える、突然焚き火から炎が立ち上がる、三人が飛び上がりそちらを見る、「クソっ、脅かしやがって」
見返した窪みにクーマがいない、
「どこへ行った、また逃げやがったな! 」
「いや、ここにいるぞ」
三人がまた飛び上がる、まるでコメディーを見ているようだ、
「てめぇ、覚悟しろ」
男が剣を振り下ろす、そこにクーマはいない、キョロキョロする男の後ろでほかの男が剣を振る、それを避けもう一人の前に、
男の手には短剣が握られている、
『多少はましか』
短剣をついてきた手を掴み後ろへ流す、転げる男を尻目にほかの男がまた襲いかかる、暫くし追いかけっこが続いたが三人の息が上がり始めた、
クーマは呆れるだけで息も乱れていない、
『そろそろ見てないで手を貸してくれないか』
「へっ! 」
『飯食ったろ』
『念話! 』
『そうね、美味しかったわ、合図したらそこから離れて』
『わかった』
そう言った途端クーマの姿が揺らぐ、三人の男の動きが止まる、
「今! 」
クーマがその場から飛び上がる、
「"マス・オブ・ウォーター"、"フリーズ"」
空間に水の塊が現れ弾ける、その瞬間に凍りつく、三人の男は動けなくなった、「お見事」
いつの間にかクーマが横にいる、
「そちらこそ、初心者とは思えないわね」
「どうも」
そう言ったクーマがいきなり殴りかかる、




