第107話 冒険者の街コボル
「わかりました、ではシーフでお願いします」
「畏まりました、これで手続きは終了です」
「有難うございます、あっ、もう一つお聞きしていいですか」
「はい、どうぞ」
「実はこの町の相場がよくわからなくて」
「相場? 」
「はい、宿代とか飯屋とか」
「ああ、あまり世間とは変わらないかと」
「いや、実は以前ぼったくられまして」
「なるほど、わかりました、宿屋は大体大銀貨1枚少し出せば朝晩付きで泊まれます、食堂でしたら大銅貨5枚あれば定食が食べれます」
「なるほど、有難うございます、注意します」
「では、受付でお渡し致しますので、お声掛けするまで少しお待ち下さい」
「よろしくお願いします」
カリスが席を立って事務所へ戻っていく、後ろ姿を見送りながらもう一度気配を探る、マスター以外の気配はなくなった、あのマスター只者じゃ無いだろうな」
「クーマ様、クーマ様! 」
声が段々大きくなる?
『あっ俺だ』「はい! 」
思わず元気に返事してしまった、慌ててカウンターに向かう、受付嬢が笑っている、カリスも笑いをこらえている、
「す、すいません」
限界が来たようだ下を向いて肩を震わせている、
「ひっ、ひっ、ひっ」と苦しそうだ
他の受付嬢が駆け寄って背中を擦っているが自分たちも笑っている?
『暫く待とう』
数秒後、目に涙を浮かべ真っ赤な顔をしたカリスが、
「すみませんでした」
と謝ってきたが目がまだ笑っている、
俺はギルドカードを受け取り、お礼を言ってカウンターを離れた、その足で掲示板を見に行く、
掲示板には枠があり、ランク毎に依頼書が貼ってある、
"F"ランクの枠を見る、
薬草素材の採取1kg、報酬は5大銅貨、
素材集め、
ホーンラビットの角1本、1大銅貨、
スカイラットの飛膜1対、1大銅貨、
ストーンラットの爪10本、1大銅貨から、
等複数が重なって張ってある、
『宿代にもならん』
「んっ」
重なった下の方に色の変わったいかにも古そうな依頼書がある、手に取ってみる、
蘇生薬の素材採取
北の沼地に自生する
リサーション草の採取
報酬500g 金貨1枚
「ありがたい」『古そうなのが気になるが』
それを持って壁にかかっている地図を見る、
北の沼地までは約1日、早朝に出て、現地1泊で帰ってくれば2日だが、
『一度早く街を離れたい』
今から出れば何処かで1泊しなければ、
地図を見て考える、途中に水場がある周辺は岩場、
『ここなら一晩は過ごせるか? 』
無謀だが考える時間が惜しい、
依頼書を持って受付カウンターに、カリスを探したがいないようだ、
仕方なく空いているカウンターに依頼書を差し出す、
さっき笑ってい受付嬢の一人だ、
「いらっしゃいませ」
まだ少し笑ってる、
「初依頼ですね」
「はい、よろしくお願いします」
「確認しますね」
『あれ、こんな古い依頼あったかしら』
「間違えましたか? 」
「いえ、古い紙だなと思って」
「下の方に貼られてましたよ、もしかして、もう終わってるとか? 」
「確認しますね、あっ、受付の記録がありますね、まだ完了はしていませんし取り下げもないですね、これならば大丈夫です、結構報酬もいいですね、確認しました承認致します」
ハンコをポンと押してくれる、
「これで、この依頼はクーマ様が、正式に受注されたことになります」
「有難うございます」
「クーマ様、決して無理はなさらないように」
「わかりました」
俺はギルドを後にした、
朝と違い通りには人も多く、すれ違う人もこちらをチラ見する
『やはり、この格好は目立つようだ、さっさと町を出てしまおう』
ギルド前から南北に向かう道を北に向かって早足で進む、町の出入り口付近には、衛兵の詰所が配置されている、街への出入りはしっかりチェックされている、
『出来れば関わりたくはないが、無理だろうな』
そう思った矢先、衛兵と目が合う、
『逃げるわけにもいかないか』
そう思いながら同じ歩調で歩く、俺は先ほど貰ったばかりのギルドカードを確認する、
衛兵が近づいてくる
「初めて見る顔だな」
衛兵が声を掛ける
「はい、先ほど冒険者登録したばかりで」
「初心者冒険者か、カードを見せてもらえるか」
「はい、こちらです」
衛兵は俺からカードを受取、内容を確認している、
「いいだろう、依頼書は持っているか? 」
「こちらです」
俺は依頼書を差し出す、
「北の沼地? 」
『初心者が行く場所ではないが』
「一人か? 」
「はい」
「依頼内容は分かっているか? 」
「はい、素材採取です」
「行程は? 」
「今から出発、途中の水場で野営、明日は朝から移動、午前中に採取、夜に帰還の予定です」
もう一度ギルドカードを見る、
『シーフ』
「北の沼地はかなり危険だと聞いている、一人で大丈夫なのか? 」
「はい、逃げ足だけは"A"ランク並みだと言われています」
『なるほど、危険な沼地での滞在時間を最小限にするわけか』
「わかった、くれぐれも無理はしないように無事の帰還を期待する」
「有難うございます、それでは行ってきます」
少し時を遡る、
ここは、とある魔法士の屋敷、屋敷の主はガーベラ、
『どうしたんだろう、今日は朝から、何かソワソワする、胸騒ぎ? 何かが起こる? なんだろう? 』
「"アイズ"」
魔法を使って町に目を飛ばす、目を閉じ幾つもの映る景色を見ている、
『町には特に何も無い・・・』
一瞬、通り過ぎた映像に違和感を覚える、その映像に集中する、ゆっくり通りを戻る、
『先ほどの路地は確かこの辺り・・・』
「いた! 」
『見たこともない服装』
いろんな大陸を旅してきた、どの記憶にも、あのような服装はない、
ガーベラの、口元が緩み、笑みが浮かぶ
時が動く、そんな予感がする、
ガーベラは直ぐに出かける準備を始める、クローゼットを開け服を選ぶ、
何故か昔の装備が目に入る、
まだ冒険者で旅をしていた時の装備、
『いやいや』
ため息をついて首を振る、
いつもの暗めのマントに手を伸ばす、手が止まる・・・目が昔の装備から離れない、
『ちょっと着てみるだけなら? 』
手にとって見てみる、手入れはちゃんとしていた、
服を脱ぎ着てみる、何故か心が落ち着く、体の内からワクワクが止まらない
『鏡に映った姿は誰? 』
目がキラキラして生気に溢れている、
何時ぶりだろうこんな私を見るのは、
ふっと我に返る、よく見れば露出が多い、どちらかといえばエロい・・・
「流石にこれは駄目ね」
『当時はこれで旅をしていたのか・・・』
顔が赤くなるのがわかる、その時、映像に動きがあった、路地から出てどこかへ向かっている、
「ギルド? 」
『直ぐにいかないと』
何故か心が急かす、鏡に映る自分を見る・・・着替る時間が惜しい、マントを羽織りフードをかぶる、そして一言
「"リロケート"」と呟く、
そこにもうガーベラの姿はなかった、
路地裏
空間が少し揺らぐ、そこにガーベラの姿が現れる、
『先ほどあいつがいたのはここね・・・魔力の痕跡はない』しばらく調べてみる、
「特に何もないか、確かギルドに向かってたわね」
通りを横切りギルドに向かう、
『ここに来るのも久しぶりね』
扉を開き周りを見る、
『いた! 』
テーブルに座る男を見つける、暫くすると事務所から一人の受付嬢がやって来て男の向かいに座る、
『カリス? まだ、ギルドにいたのね』
『あいつ、冒険者登録をしている? あの服装、やっぱり見たことがない、貴族? いやそれにしては派手さがない、どこかの執事? それも違う、何者? 」
「"ボイスカル"」
唱えると周りの音が消え二人の会話が大きくなる、
(登録はどうされますか?
登録をお願いします、
わかりました書類をお持ちします、しばらくお待ち下さい、
お願いします)
『やはり登録に来たのか? 』
しばらく様子を見ていたが特におかしなところはない、服装以外は・・・気にしすぎだったのか、
ふと見たテーブルから気になる言葉が聞こえた、
(いいカモだな)(ああ)
アケオス大陸
通貨
銅 貨= 10円
大銅貨= 100円
銀 貨= 1.000円
大銀貨= 10.000円
金 貨= 100.000円
大金貨=1.000.000円
宿屋
1泊
ギルド併設素泊り=無料
朝飯=大銅貨1枚
一般宿素泊り=銀貨4枚〜
朝飯=銀貨1枚〜
晩飯=銀貨2枚〜
風呂=銀貨1枚〜
高級宿素泊り=金貨2枚〜
朝晩飯付き
風呂付き
ギルド併設食堂=定食大銅貨=3枚
一般食堂=定食大銅貨=5枚〜




