第103話
「はい、理由は誰もたどり着けないからです、先ほどの話ですが、もし突然我々が現れて交易を持ちかけようものなら」
「怪しまれる」
「そうです、事実クーマが来るまで誰も来ていません、その理由は、周りの魔獣が強力すぎる事、行ってもあるかどうかわからない街、それと冒険者の質の低下ですね」
「クーマ、実際コボルの冒険者はどうなんだ」
「そうですね、私も長くいた訳ではないので、難しいですが、知り合いの魔法士はここでも十分通用するレベルです、しかしそれ以外は技術、経験共にかなり低いかと」
「先の戦闘にも何人か冒険者らしき者もいましたが・・・」
「確かにいたな」
「あの程度です」
「宜しいですか」
「アクス、何かいい案があったか」
「いいかどうかは分かりませんが、まず、コボルのギルドに手紙を送る、それを、この街の冒険者が届ける、今まで連絡が取れなかったのは、協力な魔獣達に阻まれ森を抜けれなかったから、今回大規模な魔獣暴走があり、それを撃退した事で魔獣が減り、やっと連絡が取れた、と、言う事にすればどうでしょう」
「う〜ん、かなり無理はあるが、言い訳としてはそれしか無いか」
「そうですね」
「それでも、百年近く交流が無い、慎重に運ばないと、折角取り戻した平和が無駄になる」
「そうですね、そこはよく考えましょう」
「グルナッシュ、人族の意見をまとめて下さい」
「分かりました」
「クーマ様、ハクジャさん達ともお話を」
「分かりました」
「アルベル、皆の意見をまとめて、7日後にもう一度集まりましょう、この件はそれで良いですか」
「はい」
屋敷のお披露目
屋敷の前には多くの人が集まる、
今日はクーマの提案で屋敷前での青空バーベキュー、
「出来ましたね」
「ええ、出来ましたね」
「出来たんですね」
立派な屋敷を前にシフォン、ノラン、マルガが呟く、
「さぁ、ご主人様行きましょう」
「はい」
エントランスからホールに入る、
以前より格段に広くなったホール、
見上げると三階までの吹き抜けになっている、
「はぁ~、わかっていたけど実物は凄いわね」
「ええ、本当に」
「私たちの部屋は3階なんですよね」
「ええ、自信作です、細かい所は今後になりますが」
「見ても? 」
「勿論見て下さい、ご案内します」
皆で3階へ、
「先ずは、どちらの部屋から観られますか」
「私は最後でいいわ」
「では、私から」
「分かりました、では、マルガさんから、こちらの部屋になります」
グルナッシュが扉を開ける、
「おお〜、広いな」
「基本は大体このサイズになります、寝室は奥に、風呂もトイレもこちらに」
「風呂もあるのか? 」
「はい」
「水はどうやって? 」
「実は、外からは分かりにくいですが、屋上があります」
「屋上? 」
「はい、あとでご案内いたします、そこに貯水タンクというものを設置しています、そこに地下から汲み上げた水を貯めてそこから供給しています、排水に関しては地下の浄水槽で浄化して、再利用しています、主に農園で使われます」
「あ、飲水とは別になっていますのでご心配なく」
「凄いですね・・・もしかしてご主人様のお知恵ですか? 」
「よくおわかりで」
「納得しました」
「ハハハ、よかった私も説明しきれませんから」
「そうですね、今更ですね」
「はい」
「ほかの部屋も良いですか」
「はい、では、次はノランさんで良いですか? 」
「グルナッシュさん」
「はい」
「基本は同じなんですね」
「そうです」
「私には立派すぎるかも知れませんが」
「ノラン、いいじゃない」
「シフォン・・・ありがとう」
「では、あちらはシフォンの部屋ですか? 」
「はい」
「グルナッシュさん、王の部屋が私たちと同じというのはちょっと」
「良いのよ、ノラン、私は気にしない」
「ですが・・・」
「気にしないで」
「皆さん、それについてはこちらを」
突き当りの立派な扉を開ける、一際大きな部屋中の正面に立派な机が置かれ机と扉の間には大きなテーブルが置かれている、
「ここは? 」
「王の執務室になります、会議などにも使えるようにしてあります、それと、この部屋は女王様の私室と繋がっています、廊下を通らず出入りできます」
「成る程、それは便利ですね」
「さぁ、ではグルナッシュさん、ご主人様の部屋を見せて下さい」
「えっ、私の部屋ですか? 」
「はい」
「いえ、私は空部屋をお借りできれば」
「駄目です、ご主人様がこの街に居られる限り、ここをご利用下さい」
開かれた扉の中は落ち着いた雰囲気に統一されていた、家具のひとつひとつ、どれをとっても丁寧に仕上げられている、
「これは・・・」思わず言葉を無くす
「グルナッシュ、この部屋やり過ぎじゃないか」
「いや、これは奥方様達からの注文があったからな」
三人を見る、三人が目をそらす、
床は毛足の深い絨毯が敷かれ非常に気持ちがいい、壁は二重構造になっているようで音が響かない、
「シフォンこれは贅沢なのでは? 」
「だって床は冷たいんです」
「はい、痛いですし」
「なんの話ですか!? 」
「大丈夫です、直ぐに洗えるようにしておきましたから」
「いや、だからなんの話ですか」
「マルガはお汁が多いから」
「ちょっと、シフォンやめて」
マルガの顔が真っ赤になる、
「シフォンだって香りがきついでしょ」
「なっ、マルガ! いいんです、いい香りなんですから」
シフォンも真っ赤だ、
『確かにいい香りだ、媚薬だし』
「シフォンもマルガもやめて下さい、はしたないですよ」
ノランがなだめる、
「何よ、ノランだけ良い子ぶって」
「そうです、部屋の防音にこだわったのはノランじゃないですか」
「ちょっ! マルガ」
「そうよ一番大きな声だし」
「シフォンまで! 」
三人揃って顔が真っ赤だ、
「三人共、グルナッシュが困ってますよ」
「あっ! 」
三人揃って首まで真っ赤になった、
「おほん、宜しければ、先ほどお話した屋上をお見せしましょう」
「お、お願いします」
「こちらです」
廊下を移動して、屋敷の中央付近、扉を開けた所に階段がある、
「こちらです」
グルナッシュに先導され階段を上がる、
優しい風が頬を撫でる、シフォンが髪を押さえ目を細める、
「これは・・・」
「如何ですか」
外から見た屋根は、見た目だけで内側には屋根が無い、
「グルナッシュ、屋根は? 」
しゃがんで足元を叩く、
「これが本当の屋根なんですよ」
「この床が? 」
「そうです、多少暴れても大丈夫ですよ、凄く丈夫ですから、あっ、本気ではやらないでください、普通に飛び跳ねるぐらいなら問題ありませんが、皆さんが本気になると多少不安です」
「分かりました、空が見える、良いですね・・・」
「でも、景色が見れないのは残念ですね」
「ハハハ、お任せください、クーマいいかな」
「ええ、三人とも少し目を閉じてください」
「目を? 」
「ええ、いいと言うまで待ってて下さい」
グルナッシュとクーマが屋根に見える部分に移動する、二人がレバーを回す、すると、屋根が上に開く様に上がっていく、風が吹き抜ける、
「どうぞ」
三人がそっと目を開ける、目の前に街が見える、その先に防壁、その先には森と湖が見える、
「なっ、これは・・・」
三人が無言で景色に見入る、
「ご主人様、こんな景色が見れるなんて」
「喜んでいただけてよかった、なっ、グルナッシュ」
「ああ、工夫した甲斐があった」
「嬉しいです、こんな仕掛けがあるなんて」
庭にいた、ジェルダが気が付いた、
皆が一斉に見上げている、
三人が手を振る、
ジェルダが何かを叫んで駆け出す、その後を追って、皆も走り出す、暫くして階段のほうが騒がしくなる、
「女王様達だけずるい! 」
駆け込んできたのはジェルダ、その後に近衛達、屋上を見て皆がはしゃいでいる、
皆がシフォン達を囲み、それぞれに祝いの言葉をかける、
クーマは少し離れ、それを優しい目で見ている、
いつの間にか隣に来たミーニャが、そっと寄り添う、
「クーマ様、皆のあんな楽しそうな顔は久し振りです、ありがとうございます」
「いいえ、皆の力で手に入れた平和ですよ」
皆の間を穏やかな時間が流れる、




