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四凶(しきょう)

その日、ミツルギ探偵事務所は昼過ぎまで、電話も訪問客もなかったので、ビャッコとカグツチは伏神刀から出てテーブルでお玉とコーヒー片手に談笑していた。


カグツチ「そう言えば、お館様。他の四獣は解放しに行かないので?」


ブラックコーヒーに角砂糖を2つ入れ、それをスプーンで溶かしながらカグツチは言う。その問に、口の周りをカフェオレの泡だらけにしたビャッコが答えた。


ビャッコ「あんまり行きたくないんだよね。僕、男の娘だろ?いっつも、ハミ子だったんだぁ。」(チラッ)


ミツルギ「……」(ブンブン)


自分の事務机で3人の話を聞いていたミツルギは何かの妄想をかき消すように横に激しく首を振った。


お玉「まぁ、可愛いじゃないですか、ビャッコ様は?!ハミ子はあんまりですよ!」


そういいながら、お玉はミルクたっぷりな甘めのコーヒーに舌鼓を打っている。


ビャッコ「そう?そうだよね?!ミツルギも僕の事かわいいって思う?」


お玉『あ。そういう……』(察し)


ミツルギ「お、おう。」


ビャッコ「〜!エへ!ぅえへへへ!」


それを聞いたビャッコは顔を真っ赤にして喜んでいる。お玉は無表情、ミツルギは青ざめ、カグツチは苦笑していた。


コンコン


ミツルギ「どーぞ?」


ガチャ


源「なんや、えらい楽しそうな探偵事務所やないの。」


ビャッコ「あ。」


ミツルギ「これは源さん。」


カグツチ「お久しゅうございます。お奉行。」


カグツチになった助を改めて見た源は、その立派な姿に目を細めた。


源「助はだいぶ変わらはったなぁ。」


カグツチ「今は、火の神をやらせてもらっています!」


ミツルギ「源さん、何か事件ですか?」


お玉は玉のような美しさだ、それに対して、源の美しさは刃のようだとミツルギは心の中で評価した。


源「まぁ、そんなとこやわ。うちから仕事の依頼ですよって。」


源はツカツカとミツルギのいる事務机まで歩いていって紙を渡した。


ミツルギ「四獣レイキ解放計画。ですか?」


源「そや?四獣解放しはったら、ミツルギはんの疑いも晴れるやろ。」


カグツチ「なるほど、いいアイデアです。」


ミツルギ「分かりました引き受けましょう。」


それにビャッコは一人、抗議した。


ビャッコ「えー、あの爺さん助けるの?ヤダー。」


お玉「どうしてですか?」


ビャッコ「あの爺さん、保守的で頑固だから僕みたいなのが嫌いなんだよ〜。」


ミツルギ「まぁ、そう言うなよ。ビャッコが助けたとなれば、考え方を改めるかもしれない。」


ビャッコ「そうかなー?」


お玉「源様、その、うちの人は、この前みたいに拘束されませんよね?」


ミツルギ&ビャッコ『うちの人?』


源「せーへんやろ?四獣封印したアオバ、解放したミツルギ。悪いのはオオカミ全体やのーて、アオバだけになるさかい。」


お玉「それを聞いて安心しました。」


ミツルギ「この依頼、受けます。必ず解放してみせます。」


源「期限とか設けへんけど、できるだけ、はよしぃや」(ニコー)




源が乗った蒸気自動車が出発する。それをミツルギ達は事務所の窓から見送った。


ガシャコ、ガシャコ、ガシャガシャガシャ……


お玉「戻られましたね〜。」


カグツチ「して、計画書にはなんと書いてあるのです?」


皆はミツルギの持っていた紙を見た。


ビャッコ「四凶しきょう?あの山海経さんかいけいの?」


お玉「妖怪さんです。」


カグツチ「封印してる奴等の名前ですか?」


ミツルギ「なんか、ソイツらの特徴も書いてあるな。」


一同「………………」


ビャッコ「うわー、マジもんの四凶だ、コレ。」


お玉「丸薬で傷を癒す渾沌こんとん、風を操る窮奇きゅうき、物理で暴れまわる檮杌とうこつ、炎で何でも飲み込む饕餮とうてつ、ですって!」


カグツチ「一筋縄では行きますまいて。」


難しい顔をして四凶の特徴を読んでいたミツルギが唸った。


ミツルギ「うーん、長期戦になりそうだ。もう一人、式神が欲しいな。」


お玉「あ!我らの出番ですね!」


それを聞いたお玉はポンと手を叩いた。式神作りは玉姫稲荷神社で行うからだ。ビャッコも腕を組んで続ける。


ビャッコ「その前にガチャポン回さないと!」


カグツチ「銭も稼がんとなりません、ミツルギ殿。」


ミツルギ「また、節約生活だ。お玉さん、やってくれるかい?」


お玉「そのためのお玉です!」


ミツルギ探偵事務所の会計や日々の生活の切り盛りはお玉が取り仕切っていて、ミツルギはそれに頼り切っていた。


お玉「エッヘン!」(ドヤァ)


男所帯で大雑把なミツルギ、ビャッコ、カグツチでは金銭のことや食事の事になるとお玉に敵うものは居なかった。




ガチャポン(ガラ、ガラ)


ミツルギ(パカッ)『なんだコレ?ククルヤンカシュ?蛇じゃん?』


ミツルギは探偵事務所に帰ると、フィギュアをお玉に手渡した。


お玉「おー、青い蛇さんですね?かわいい!」


ミツルギ「ククルヤンカシュだって、式神作れそう?」


お玉「玉姫様に、できぬことはありませんよ。」


何か閃いたお玉はミツルギに提案した。


お玉「あ、先に作って、後で金銭を要求することもできると思いますよ?」


ビャッコ「やった!いいの?!」


お玉「私を派遣してる時点で、ミツルギ様を信用されてますから。」


お玉の言葉にミツルギはまた“様”を付けられたと、小恥ずかしくなり、鼻の頭をかいた。


ミツルギ「お玉さん、その"様“付けするのやめてくれるかな?なんだかんだ仰々しくって……」


お玉「あ!そうですか?ごめんなさい。」


恥ずかしくなったのかお玉とミツルギはお互い顔を赤くした。


ミツルギ「いや、あやまんなくていいんだ。けど、そんなに、かしこまらなくていいかな?お玉さんはうちになくてはならない存在だからね?」


その言葉に感動したのかお玉は目を輝かせた。


お玉「わ、分かりました!私、今まで以上にミツルギさんのお役に立ってみせます!」


カグツチ『二人の距離が縮まりましたね?お館様。』(ヒソヒソ)


ビャッコ『僕も、負けないぞ!』




アマツシティ某所


シラヒト「これがニギテかぁ。」


アオバから渡された天岩戸を開くお札を片手にシラヒトは言った。


コクミ「我らも箱の中身を見るのは、初めてだ。」


アオバ「お二方はアマテル神の岩戸開きの時には、おりませんでしたな?」


玉座に座る二人の前に立つアオバは確認した。


シラヒト「ヤマタノオロチと共に退治されたからな。」


コクミ「まぁ、やられたと見せかけて潜伏しとったんだが。」


シラヒト「今度は酒ごときで遅れは取らん。」


アオバ「……」


酒吞達はその会話を離れたところで酒をのみつつ聞いていた。


茨木『アイツラ、ヤマタノオロチの死体がこの世界にあると知って、来やがったのか……』


シラヒト達に聞こえない音量の茨木の小声に酒吞は反応した。


酒吞『なんや?アンタ。この計画に思うとこがあるんかいな?お?』


酒吞は茨木の胸ぐらをつかんで顔を合わせながらヒョウタンから酒を飲んでいる。


土蜘蛛衆『『ひぇー、おこってるぞ、あれ!』』


酒吞は茨木を押し倒して馬乗りになった。そして、ヒョウタンの酒を茨木の顔に掛けながら続けた。


酒吞『茨木も見たいやろ?この世の終わりを?アタシはめっちゃ興味あるわぁ。』


茨木「うぶぶっ、俺は!そんなの望んでっ!ない!」


その大きな声にシラヒト達も反応した。


シラヒト「?」


コクミ「おいそこ、何しとるんだ!?」


酒吞「臆病風ひいたやつに、酒飲ませてんのや?こうしたら、はよ治るよってに。」


茨木『俺は、酒吞が喜ぶならと……』


察したアオバが提案する。


アオバ「嫌なら降りてもいいんだぞ?茨木。」


茨木「そ!?そんなつもりじゃっ!」


酒吞「そやで?その代わり、三途の川、渡らんとあかんけどな?三途の川って、どんなとこやろな?」


茨木「……俺は、最後まで付き合うさ!」


シラヒト「鬼はそうでなくてはな?」


コクミ「頼りにしとるぞ?」


酒吞「まかせときなはれ。地獄見せたるわ。」




帰りの車の中で源は神妙な顔をしていた。


源「四獣は全部、解放する。」


警官「その次はマフツですか?」


源「マフツ、ニタマ。まぁ、どちらでもええねんけど、ウチらでちゃんと一つは保管しとかなあかんわ。」


運転手「怨霊任せじゃ、不測の事態に対処できませんもんね?」


警官「おい!巡査!ちゃんと、前を見ろ!」


運転手「す、すみません!」


車は源を奉行所前で降ろすと、警察署に向かった。


源「期待してんで、ミツルギはん。」



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