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分霊

カッシャ


ミツルギ『っ、眩しいな……』


憔悴しょうすいしたミツルギの顔にライトが向けられる。ちょっとしたシグサや、顔色の変化をよりよく観察するためだろう。


取り調べ官「オオカミ、ミツルギセイヤ。キミにはヤマタノオロチ復活を支援してるのではないかという容疑がかけられている。」


ミツルギ「スサノオ様に聞いてくれ。」


ドン!


叩かれた机が揺れる。


ミツルギ『示威行動だ。落ち着け、ミツルギセイヤ。コイツは俺が取り乱すのを待ってるんだ。』


取り調べ官「スサノオ様の名前、権威を出して供述の信ぴょう性を高めようってか?」


ミツルギ「違う。」


取り調べ官「では、聞こう、ミツルギ。予告状の事は誰から聞いた?」


ミツルギ「源さんだ。」


マジックミラーの上のスピーカーから源の声がする。


源『せやな、私が電話したんよ。』


取り調べ官「予告状を見た時どう思った?」


ミツルギ「どうって?何も?」


取り調べ官がマジックミラーの方を見る。


スピーカー『続けろ。』


取り調べ官「犯行の手口は聞いてたか?」


ミツルギ「それこそ知らないことだ!」


取り調べ官「そうなのかな?予告状で来たふりをする。鬼が封印を解く。オオカミが怨霊を倒す。鬼が物を回収する。華麗すぎる連携じゃないか?」


ミツルギ「手がこみすぎてるだろ?!」


取り調べ官「我々をだますための用意周到な計画だった。そうじゃないのか?」


ミツルギ「俺が捕まった時点で計画なんてない!次はどうするんだ?!天岩戸あまのいわとを開けるには鍵が3つ必要なんじゃないのか?」


取り調べ官「?ソレは誰から聞いた?」


ミツルギ「は!」『なんで知ってんだ、俺は?幽世の記憶?』


取り調べ官「オオカミなんてアオバとやらがいくらでも呼び出せるんじゃないのか?」


ミツルギ「知らない!俺は知らない!俺をこの世界に行けと言ったのはスサノオ様だ!アオバのことも後で知ったんだ!」


スピーカー『落ち着かせろ。』


取り調べ官「ふん。」


ミツルギ『くそ、熱くなってた。落ち着け、落ち着け。』




マジックミラーの向こうでは源たちが立ち会って、ミツルギの一首一頭足いっきょしゅいっとうそくを観察していた。


警官A「アオバ、オオカミが関係している件は他にもあります。」


源「四獣封印の件かいな、アレにミツルギは関与してないよって。」


ガチャ


警官B「失礼します。」


警官A「警備についてた鎧武者の供述は取れたのか?」


警官B「はい。」


源はレポートを渡され、周りの警官と読んだ。


源「なんや、すぐ気絶した、て書いてあんで?コレ。」


警官B「その先です。……彼は途中で目が覚め、かなわないと見るや、気絶したふりをして外の警備が突入してくるまでオオカミ達のやり取りを見ていたそうです。ソレによると鬼達とオオカミがやり取りしてたとか。」


その報告に源達は耳を疑った。


警官A「本当か!?」


警官Bは頷いた。


源「オオカミ……」


親指の爪を噛んでいた源がスピーカーのスイッチをオンにした。




源『予告状は知らへんかった。怨霊を退治したんも成り行きやった。ミツルギはんはそういうん?』


ミツルギ「その通りだ。」


警官A「……黒ですかね?」


ミツルギの顔を見て源は唸った。


源「オオカミは信用ならへんなぁ……」


取り調べ官のイヤホンに供述の内容が伝えられる。


取り調べ官「ミツルギセイヤ、鬼と話はしたか?」


ミツルギ「したけども、すぐ消えたぞ!?」


取り調べ官「何を話した?」


ミツルギ「お前らもニギテが何か知りたいか?と聞かれただけだ。」


取り調べ官「本当に?」


ミツルギ「ビャッコを呼んでくれ、アイツなら!」


取り調べ官「伏神刀?ダメだ。アレは凶器だ。持ち込みは認められない。」


ミツルギ「ぐ!」


スサノオやビャッコと連絡を取ろうにも伏神刀は没収されてる。無実の証明はミツルギには難しかった。




ガシャン


留置所人「よお、あんたは何やったんだ?」


壁にもたれていた先住民が新入りに犯罪歴を尋ねた。


ミツルギ「……俺は何もしてない。」


ミツルギは三角座りをして一点を見つめていた。


留置所人「嘘つくなよ?なんもしてないやつが、こんなとこ来るかよ?」


しつこいオッサンにミツルギは吐き捨てるように言った。


ミツルギ「ヤマタノオロチ復活支援容疑だとよ。」


留置所人「そりゃたまげた!兄ちゃん酔狂だ!ヤマタノオロチなんか復活したら、この世の終わりだぜw!?ホントならな!」


先住民は面白半分で聞いたのだろうが、こんなこと誰が信用するんだ?二つ返事で引き受けた自分も悪い。


ミツルギ「明日も取り調べがあるんだ。寝かせてくれよ。」


オッサンに背を向けてミツルギは薄い布団に入った。


留置所人「まぁまぁ、兄ちゃん面白ぇな!アンタの名前は?」


ミツルギ「ミツルギだ。」


留置所人「あー、探偵事務所の?」


横になって寝かけていたミツルギは留置所人の方を向いた。


ミツルギ「あんた詳しいな?」


留置所人「まあ、ソレが仕事みたいなもんなんで。へへへ。」


ミツルギ「?」




次の朝


留置所人は釈放されていった。扉の向こうで警官とのやりとりをしている。多分、持ち物の受け取り、確認だろう。

扉の向こうの会話が聞こえる。


警官「もう食い逃げなんてするなよ?」


釈放されたオッサン「へへへ。」


警官「稼げないなら情報屋なんてやめて、ちゃんとした定職に就きな。オッサン。」


釈放されたオッサン「面目ねぇコッテ。」


頭をペコペコしているのだろう扉の曇りガラスの人影がでたり消えたりしている。


警官「ミツルギセイヤ、来い。」




取り調べ二日目。

ミツルギは取り調べ官の質問に何にも答えないことにした。


バキィ!


取り調べ官「おい、ふざけんなよ!裏で供述は取れてんだぞ?お前は犯人グループの一員ってバレてんだよ?」


スピーカー『やめろ。交代せよ。』


取り調べ官「ちっ!」


ミツルギは殴られたほうの右頬を気にしながら考えた。


ミツルギ『供述が取れた?あの鎧武者か?……デタラメだと証明できれば!?』


取り調べ官と入れ替わりで源と警官Aが入ってきた。


源「いまさら黙秘かいな、オオカミ。」


ミツルギ「鎧武者の供述は嘘だ。源さん!」


それを聞いた源は呆れた。言い逃れと思ったらしい。


源「分が悪いて。白状したらどない?その分、はよ出られるんやさかい。」


ミツルギ『ダメだ、疑いが晴れない。最初からオオカミへの印象が悪すぎるんだ。』


取り調べをする源は女性、感情に語りかければ、ミツルギは食い下がった。


ミツルギ「源さん。アナタは俺を信用してリボルバーを渡してくれた。そうですよね?」


ピクッ


源「そ、そや?あんさんを信用した。そやから、リボルバーも渡した。」


源は自分の判断に揺らぎを持った。ここで押すべきだ!


ミツルギ「もう一度、鎧武者の取り調べをしてください!見間違いかもしれないでしょ?」


源「ほーん。そんな言うんやったら、やってみるけど。何も変わらんと思うで?」


その日の取り調べはそれで終わった。早々に、留置所の汚い部屋に戻されたミツルギは天井のシミを数えて落ち着くことにした。


ミツルギ『留置所の天井は汚えなぁ。お玉さんならきれいにしちまうんだろうか?』




警察署前


警官「おい、あんたら。なんでこんなとこに……」


留置所で薄い布団に座っていたミツルギは今日の取り調べも黙秘で通せるか思案していた。


ザワザワ


ミツルギ『なんだ?外がやけに騒がしいな?』


受付の警官が慌ててミツルギを釈放しに来る。


ミツルギ「どうしたんだ?」


扉の向こうで待ち構えていた二人の美しい顔が同時にコチラを見た。


ミツルギ「玉姫。それに、お玉さー」


ガシッ


大泣きするお玉がミツルギの顔を見るなり抱きついてきた。ミツルギの胸でわんわん泣いて、泣き止む様子はない。


玉姫「お玉はアナタ専用に作った分霊。アナタがいないと彼女は生きてはいけないのです。」


「だから」、と言って、目に光るものを浮かべた玉姫はミツルギの手を取った。


玉姫「お玉を大事にしてあげてください。それと、長生きしないといけませんよ?」


ミツルギは黙ってお玉の髪を撫でた。




ミツルギは伏神刀とリボルバーを受け取り、お玉と手をつないで警察署を出た。

玉姫は残って身元引受けの手続きやら供述の裏取りなどを神計かみばかりすると言う。


お玉「ハンバーグ。温め直さないと。」(スンスン)


ミツルギ「待っててくれてたのか。こりゃ、済まないことをした。ごめんなさい。」


お玉「当然です。私はアナタだけの玉姫なんですから!」


分霊とはそういうものらしい。


伏神刀ビャッコ「ねえねえ?僕らのもあるの?」


お玉「あ、食べちゃいました。」


えぇー!


ビャッコとカグツチはブツブツと抗議している。それをミツルギとお玉は顔を合わせて笑い合った。




ミツルギがお玉と署をでていくのを2階の窓から見ていた源が漏らした。


源「オオカミ捕まえたら一件落着や思うとったけど、当てがハズレてもうたな?」


警官A「どうします?この件まだまだ続きますよ?」


源「しゃーない。残りのマフツ、ニタマのとこに陰陽師配置してもらおか?」


追っている事件が暗礁に乗り上げ、源と警官たちは天井を仰いだ。


警官B「四獣封印に天岩戸を開ける神器集め……」


源「アイツラ本気や、本気でヤマタノオロチ復活させるつもりや。何としても、止めなあかん。」

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