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カグツチ

ミツルギ「デートって言うから、俺はてっきり……」


ビャッコ「エヘヘ、期待した?」


ミツルギは大いに首を横に振った。


ビャッコに連れてこられたのは、侍衆の詰所、現代でいう警察署みたいなところだった。


ミツルギ『建屋は時代劇の奉行所みたいだなぁ。』


2人の門番に話していたビャッコは小さい扉から出てきた子役人を伴ってミツルギを中へと案内した。中はリフォームしてあるのか、今風の作りで着物にちょんまげの役人が椅子に座ってデスクワークに勤しんでいた。

時折、目つきの鋭い鎧武者の一団とすれ違う。


ビャッコ「探偵やっていくんだから、今後、侍衆のお世話になることも多くなるだろうからね。遅れたけど、あいさつしておかなきゃ。」


子役人「ビャッコ様、今回のオオカミは大丈夫ですか?」


どうやら、アオバの件で侍衆のオオカミに対する受け取り方はだいぶ懐疑的になっているようだった。


ビャッコ「だと思ったからここへ連れてきたんじゃないか。」


子役人「へぇ、そうでござんしたか。」


奉行室の表札のある部屋に通された2人はデスクワークで忙しそうにしている白いスーツ姿のメガネの女性に挨拶した。


ビャッコ「源さん、こちらスサノオ様から追加で派遣されてきたオオカミのー」


ミツルギ「ミツルギです。」


源「源です。うちんとこの助がお世話になっちゅーとかで、えらいごめーわくおかけしてるみたいでぇ。ほんま、すんまへんなぁ。」


ミツルギ『うわぁ、コテコテだわ……』


源は長い髪をかき上げるとミツルギを見た。


源「……へぇ。」


顔相。源はマジマジとミツルギの目鼻立ちを観察した。

美しい源に見つめられ、ミツルギはタジタジだった。


ミツルギ「……あの、先のオオカミのアオバの件でご迷惑をおかけしたみたいで、すみません。」


源「あーそやそや、オオカミの落とし前はオオカミでつけてくださいね。」


源は思い出したかのようにムッとした顔になった。怒った顔も美しい。ミツルギは面食いだった。


ミツルギ「はい……。」『結構、怒ってるよなぁ。』


源のみならず、侍衆のオオカミを見る目線が鋭い。それもそのはず、スサノオ様を裏切ってヤマタノオロチ復活を目論む終末願望のある組織に組みし、ビャッコを除く四獣を封印したとあっては……


ミツルギ「アオバは……ヤマタノオロチ復活は、必ず阻止してみせます!」


源はほほう、というと、机からケースを取り出し、中を開けた。


ミツルギ「?リボルバーですか?」


源「後方で術に専念してる人がいはったら大変やろう思うて、これ渡しときますわ。ミツルギはんやったら手に収まりますやろ?」


ビャッコもリボルバーをあらためた。


ビャッコ「うわぁ、源さん、これ45口径だよ。いいの?」


源「相手は鬼でっしゃろ?茨木とか酒吞とか、大口径じゃないと効きまへんわ。」


源は小鼻でずり落ちてきたメガネをクイッと直した。


源「あんさんが“絶対”ってユーではったら渡してませんよ?“必ず”仕留めなはれや?」




場所は変わって、アマツシティのどこか。

広い部屋でシラヒトとコクミは壁を背にして並んで座り、アオバや茨木からの報告を聞いていた。


シラヒト「その後のスサノオのオオカミは?」


アオバ「やつめ、神出鬼没でこちらが用意してる間に姿を消してしまうので掴めておりません。」


コクミ「また全軍投入すればよかろう?!」


アオバ「鬼どもを遊ばせててもいいのですか?」


ぐうの音も出ないコクミをよそにアオバの後ろでは酒吞が土蜘蛛達と飲んだくれていた。


茨木「……なんか、申し訳ねぇ。」


アオバの隣りにいた体の大きな茨木もバツの悪そうな顔をしていた。

時折、楽しそうな笑いが聞こえてきた。それが癇に障るのかコクミは嫌な顔をしていた。


シラヒト「一旦、オオカミの事は放って置こう。十種の神宝は?」


アオバ「土蜘蛛達に探らせてますが、起動させないことには、反応が掴めません。」


シラヒト「そうか……」


コクミ「八方ふさがりではないか!」


シラヒトは口に手を当てて考えた。


シラヒト「とりあえず、ヤマタノオロチの死体を安置してある天岩戸あまのいわとを開けることに専念しよう。パワーアップはこちらで検討しておく。」


コクミ「先にアレを取りに行くとなると、こちらも被害が出るぞ?シラヒト。」


シラヒト「最初から想定してたことだ。アオバ、スサノオのオオカミをうまく誘導して岩戸をあける神器を護る怨霊どもを退けられそうか?」


アオバ「やってみます。」




ミツルギは侍衆の詰所を後にすると今度はビャッコにデパートに連れて行かれた。


ビャッコ「服の傷みがひどいからね、安いのでいいから買い替えようよ!」


確かに、ミツルギの服は前の戦闘でところどころ焦げていたり、穴が空いてたりとボロボロだった。


ミツルギ「しかしなぁ。」『お金が……』


ミツルギは式神作りにほとんどのあり金を神社に奉納したので金欠だった。


ビャッコ「大丈夫だよ!ここは僕に任せて?!」


ミツルギ『ほんとに大丈夫かなぁ?』


紺のスーツ、黒の革靴、茶色のトレンチコート


ビャッコ「ハンチング帽はそのままでいいのかい?」


ミツルギ「また今度でいいんじゃないか?そんなに汚れてないし。」


会計を待つ間に、ミツルギとビャッコはレジ近くのハンカチやボウシなんかを物色して過ごした。


レジ「お会計、○○万円です!」


ビャッコ「ツケで!」


レジ係りとミツルギは目を丸くしてビャッコを見た。


ミツルギ「おま!」


レジ「お客様!困ります!」


ビャッコ「僕、四獣じゃん!顔パス効かないの?」


そこへ、オーナーが大男を伴ってレジのミツルギ達のところへ駆け寄ってきた。


オーナー「ビャッコ様!困りますよ!」


なんだかんだでミツルギとビャッコは大男に両肩に担がれて外に放り出された。


ビャッコ「なんだよー!ケチー!」


ミツルギ「当たり前だろ!」




トボトボ探偵事務所に帰ったミツルギ達は事務所の入り口でしゃがんで待っていたお玉を見つけた。


お玉「あ、いたいた!ミツルギ様!」


お玉はミツルギ達を待っていたのか、駆け寄ってきた。


ミツルギ「お玉さん。どうかしたんですか?」『様付されるの歯がゆいんだよなぁ……』


ビャッコ「あ、もうできたの?式神。」


お玉「はい。伏神刀を持って玉姫稲荷神社に参りましょう。」


ミツルギ達は事務所に置きっぱなしだった伏神刀を携えて玉姫の神社に向かった。


玉姫稲荷神社の拝殿の中には、長い髪を姫カットにした、十二単の姫。玉のように美しい玉姫が手に収まる四角い箱を持って皆を出迎えた。


ゴクリ。


ミツルギはその美しさに息を呑んだ。


ビャッコ『いつ見ても、惚れ惚れするよねー。ミツルギは面食いだなぁ。』


ビャッコに耳打ちされたミツルギは、図星を突かれ恥ずかしそうにビャッコを睨んだが、ビャッコの方はしてやったりとニヤリと笑って返した。


玉姫「スサノオ様から話は聞きましたよ。式神合成ですか?」


ミツルギは頷いた。


玉姫「我らもこの試みは初めてでして、練習はしましたが、成功率は100%ではありません。なので、今回はただでやらせてもらいます。それでは、ミツルギ様。助さんを伏神刀からだしてください。」


召喚した助は意識はなく、その身体は大きな神棚の前に寝かされ、その隣に玉姫の持っていた箱が置かれた。


玉姫「お玉。」


玉姫とお玉は顔を合わせた。2人はまるで写し鏡のようだった。


ミツルギ『本当、そっくりだな玉姫とお玉さんは。違いは服装と髪色、髪型だけだ。』


お玉「はい。勅令ちょくれい!出でよ!イザナギ泰君たいくん急急如律令きゅうきゅうにょりつりょ!」


お玉が顔の前で刀印を作ると箱からニュルッとフィギュアにそっくりな式神が出てきた。

玉姫は神棚の前に向かって座ると素早く手印を作った。


玉姫「臨兵闘者皆陣烈在前!一心に願い申す!式神合成!急急如律令!」


玉姫の後ろに寝かされていた助とその隣のイザナギの格好の式神、二人の周りがぐるっとが青く光ると、その身体は中間の空間で球体のように混ざり合って、眩い光を放った。

球体は助の顔をした腰に剣をつるし、炎をまとった軽装の武人の格好になった。


お玉「姫様、これは?」


玉姫「このお方は、神代の資料で見たお方、カグツチ様に似ておいでです。」


助 (?)「お館様、助はこれでまた戦えまするぞ!」


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