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式神合成

ビャッコ「あーあ!この街の起こりから代々、続いてた屋敷だったのに!」


そこら中に瓦礫が散乱し、入り口付近は全壊。もう一度、ここに住むとなると建て直しは必須だろう。

ビャッコは足を投げ出して、その場に座って天を仰いでいだ。


ビャッコ「あーそっか!僕は伏神刀の中に住めばいいし、屋敷は解体して、土地だけ貸して、賃料でも取ろうかな!」


ミツルギ『前向きすぎだろ?コイツめ。』


ミツルギは呆れて、ため息をついた。伏神刀を鞘に戻すとビャッコの身体もかき消えた。ミツルギはところどころ焦げた帽子で、服についた砂をはたき落としていた。


お玉「み、ミツルギ様!」


そこへクモの巣だらけのボロボロに汚れたお玉が戻ってきた。


ミツルギ「お玉さん!無事だったか!」


ミツルギはお玉の両肩に手を置いて無事を喜んだ。


お玉「私のことはいいですから!早く、助殿を!」


伏神刀ビャッコ「アイツがどうかしたの?」


お玉「時間がありません!とにかく早く!」


屋敷裏に急ぎ戻った2人は助の状態に言葉を失った。身体には深い切り傷、大量の血が池のようになっていた。既に助の意識はなく、息もしてるのかどうか分からないような状態だった。


ミツルギ「この状態でどうしろと……」『動かすのは、かえって危険だ。』


お玉「私を庇ってこうなられたのです!なんとか助けられないでしょうか?!」


そこでビャッコが閃いた。


伏神刀ビャッコ「あ!伏神刀ふくじんとう!この中に入れたら?!」


そうか!


ミツルギは伏神刀を抜刀すると剣先を助に掲げた。


ミツルギ「伏神刀よ!助と契約だ!」


スルリ!


助の体は剣の中に吸い込まれるように消えた。


伏神刀ビャッコ「いけた!助はこっちで受け取ったよ!すごい!傷がどんどん塞がっていく!」


ビャッコが伏神刀の中の助の様子を説明してくれた。どうやら、何とかなったらしい。


お玉「あぁ、よかった!」


お玉は感動して、その場で泣き崩れた。


伏神刀ビャッコ「けど、助の奴、目を覚まさないよ?!」


ミツルギ「とりあえず、事務所に戻ろう。」


ミツルギはお玉の手を取って探偵事務所へ戻った。道中、お玉の服がボロボロだったので、玉姫稲荷神社にお玉を預けに行った。


ミツルギ「これから、どうしようか?」


事務所の席に座ってミツルギは思案した。


伏神刀ビャッコ「助が目を覚ます何かいい方法はないかな?」


その時、机に立てかけていた伏神刀が光り出す。


ミツルギ「なんだこの反応は?!」


ミツルギの体は伏神刀に吸い込まれていった。




ビャッコ「起きて!?ミツルギ!」


次に、ミツルギが目を覚ましたのはビャッコの住まう伏神刀の中だった。見渡す限り、白い空間が広がっているがビャッコの周りにはちゃぶ台、衣装箪笥、テレビが集められていた。ちゃぶ台には食器や湯飲み、急須が置かれていた。


ミツルギ『コタツまで……』


その奥には鎧を脱いだ助が白い着物姿で布団に寝かされていた。確かに呼びかけても目を覚ます気配はない。


ミツルギ「でも、俺も伏神刀に?」『どうやって帰るんだ?事務所は?』


スサノオ「俺が呼んだんだ。」


そう聞こえると、頭上からスサノオが舞い降りてきた。


ミツルギ「スサノオ様?」


ビャッコ「スサノオ様だ!?」


スサノオ「まぁ、座れ、お前ら。」


3人はちゃぶ台に座った。スサノオは慣れた手つきで2人と自分用にちゃぶ台の上にあった湯飲みに急須の茶を入れた。


ミツルギ「いただきます。」


ビャッコ「すいません、来客にこんな事させて……」


スサノオが一息つくと2人に伏神刀とそれにまつわる話をしだした。


ミツルギ「式神……」


ビャッコ「……合体?」


スサノオ「式神合成だ。」


ミツルギ「2人の式神を合成して新しい式神を作る。までは、分かりましたが、今はビャッコと助しかおりません。」


ビャッコ「助と合体?!うーん……」


ビャッコはものすごく複雑な顔をして腕を組んで黙り込んだ。


スサノオ「なんだ、嫌なのか?ビャッコ。」


ビャッコ「僕は僕でいたいんだよなぁ。それに……」


スサノオ「……男同士で合成は嫌か?」


ミツルギ『男同士?!』


ビャッコ「そういう、わけじゃないけど。」(チラチラ)


ミツルギには驚愕の事実だった。ビャッコの事は女性だと思っていた。ビャッコは顔を赤くしてミツルギをチラチラ見ていた。


ミツルギ『おぉう……』


スサノオ「まぁ、それ用の式神を追加で用意するか。そしたら。」


ミツルギ「?どうするんです?」


あぐらをかいていたスサノオはよいしょと立ち上がった。そして、二人を見下ろしてこう言った。


スサノオ「ガチャポンだ。」


ミツルギ&ビャッコ「「ガチャポン?!」」




伏神刀から外に出たミツルギは神妙な顔つきで事務所の外のおもちゃ屋に向かった。スサノオの言葉を思い出す。


スサノオ「式神はイメージの具現だ。名前と姿があれば作れる。ガチャポンのフィギュアは式神の姿にピッタリだ。」


ミツルギ『とは言われたが、これで本当に?』


ミツルギはお金を入れてガチャポンを回した。出てきたのは色分けがちゃんとされた精巧なフィギュアだった。


ミツルギ「……イザナギかぁ。」


天の沼矛を持った髭を生やした男性フィギュア。

皇御祖すめみおや本人なんて見たことがなかったが、これは似てるのだろうか?


それを持って事務所へ帰ると、ちょうど入り口で服を着替えたお玉と合流した。今度は動きやすいロングスカートの洋服に変わっていた。


お玉「変ですか?洋服はあまり着たことがないので……」


ミツルギ「いいや?!す、すごくお似合いです!」


恥ずかしそうに笑いかけるお玉が眩しくて、ミツルギは正面向かってお玉を見れなかった。


ミツルギ「とりあえず、上がってください。」


こころなしかミツルギの声はうわずっていた。


お玉「はい。」




伏神刀ビャッコ「あっ帰ってきた!おかえり!お玉さんもいるんだね!」


ミツルギ「?ビャッコ、伏神刀から外の景色が見れるのか?」


ミツルギはお玉を事務所の真ん中のソファに座らせると自分の席に腰を下ろした。


伏神刀ビャッコ「中のテレビ、アレで外が見れるんだよ。」


へぇ。


お玉「ミツルギ様?その後、助殿は?」


ミツルギは現在の状況をお玉に説明した。お玉にお茶を出してないと気付いたミツルギはバタバタと慌てて用意した。


お玉「なるほど、式神作りですか……」


伏神刀ビャッコ「あ、どうやるんだろう?肝心なこと聞き忘れてたね?」


ミツルギもハッとした。式神なんてどうやって作るんだろうか?ミツルギは式神作りについて、お玉に相談した。


お玉「それなら、玉姫様の神社で神降ろしの儀を行って式神を作りましょう!」


ミツルギ「そんな事もできるのかい?お玉さんとこは!?」


お玉「神ですから!神のことなら我らにおまかせあれですよ!ただ……」


お玉は少し視線お落として考え込んだ。


伏神刀ビャッコ「男性禁制とか?」


お玉「それもありますが、私一人では、金額とか、そのぉ……」


伏神刀ビャッコ「あ、そりゃただじゃないかー。式神作りなんて秘術だろうしね?」


お玉「はい……皇御祖すめみおや様から伝わる秘術中の秘術な儀式でして……」


ミツルギ「お金かぁ。探偵事務所として本格稼働しないとだなぁ。」




数週間後。

ミツルギは事務所に舞い込んできた仕事の依頼をたくさんこなしてお金を稼いだ。


ミツルギ「足りない分はスサノオ様のツケで!」(おい)


小銭がいっぱい詰まった巾着袋と札束を受け取ったお玉は笑いながら答えた。


お玉「大丈夫ですよ多分。それでは、このフィギュアはもらっていきますね。」


お玉はフィギュアをテーブルから拾い上げると事務所を後にした。


ミツルギ『式神作り、どんだけの日数がかかるんだろうか?後で聞きに行くか。』


伏神刀ビャッコ「よし!一段落だ!それじゃぁ、ミツルギ。僕を外に出してよ!」


ミツルギ「?いいけど、どうするんだ?」


伏神刀を鞘から少し出すと、ビャッコは伏神刀から外に出てきた。ビャッコは久しぶりの外の空気を吸って伸びをしている。


ミツルギ『あれ?呼び出さずとも出てきたな?システムが変わったのか?』


ビャッコ「さぁ、デートに行こう!」


ミツルギ「えぇ?!」


ミツルギはビャッコに引きずられる様に外に連れ出された。

二人の姿は昼の繁華街に消えていった。


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