表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

十種の神宝 地返しの玉

ビャッコ「五行術!金剛結界!」


その場で素早く印を組んだビャッコ。術が発動しミツルギ、ビャッコの体は結界で覆われた。


ミツルギ「これは!」


体に光る膜が付着する。


ビャッコ「術の行使中は、僕は動けない!ミツルギ!頼んだよ!」


ミツルギ「分かった!」


ミツルギがビャッコに顔を向けた隙を突いて、アオバがミツルギに斬りかかる。


ガキィン!


ミツルギ「くっ!」


グググ……


鍔迫り合いの力量はアオバが上だった。抵抗するもミツルギは押し込まれ、たまらず上半身がのけぞる。


ミツルギ『うう!』


冷や汗をかくミツルギに、小声でアオバが囁いた。


アオバ『お前がものになるか、試させてもらうぞ!』


ミツルギ「な、なに!?」


ズバッ!


ミツルギ「ぐわ!」


切られたミツルギはその場に倒れた。しかし金剛結界のおかげで何ともなかった。


アオバ「ここまで硬いとは!?」


ビャッコ「五行術!鉱蛇刃こうだじん!」


ビャッコの足元の地面から生えてきた高速でしなるワイヤーがアオバに襲いかかった。


ビシッ!バシン!


アオバは飛んでかわすも、ワイヤーによって地面は裂けた。


アオバ「強い!奴も四獣ということか。」


酒吞「可愛い顔しはって、見かけによらず、やなぁ。」


アオバ「それなら、これはどうだ!ナルカミ!」


ナルカミと呼ばれた雲に乗って天に浮かぶ雷神が自身の周りの小太鼓を鳴らす。すると、雷鳴を轟かせた無数の雷がミツルギ達に落ちた。


ミツルギ「ぐわ!」


雷は金剛結界で防がれて、致命傷にはならなかったが、

感電して、ところどころ焦げて煙が上がる。


ビャッコ「く!五行術!金針磁鉱キンシジコウ!」


地面から生えていたワイヤーが避雷針の代わりになり、以降、雷を防いだ。


ナルカミ「やるなぁ。」


アオバ「む!?磁力か?!」


敵対者の鉄器にだけ磁力が及ぶ術。

アオバの持っていた刀もビャッコのワイヤーに引き寄せられた。強く握るも、この状態では刀は振るえない。


酒吞「あら?おやまぁ。」


酒吞の持っていた鉄製のお猪口もワイヤーに吸い寄せられた飛んでいった。


酒吞「それ、高かったのに!」


ビャッコ「ハッハッハ!残念だったね!」


アオバ「やれ!ニシキオロチ!」


アオバの声に大蛇がその巨体で前に躍り出ると、体を器用にしならせて屋敷や塀の壁を叩き壊した。


ドカァ!


瓦や柱、大きな壁材の破片がミツルギ達を襲う。


ドゴ!


ミツルギ「う!」(ボキッ)


勢いよくミツルギの体の側面に当たった壁材が肋骨と肺臓を傷つけた。

ビャッコへの攻撃は周りのワイヤーが盾になって防いでいた。


ビャッコ「うわ!屋敷が!まだ、リフォームで何とかなると思ってたのに!コレじゃ、建て替えだよ!」


ミツルギ『俺の心配して……』


口の端に血をにじませたミツルギはニシキオロチに突貫した。


ミツルギ『このままじゃ、ジリ貧だ!』


ズバッ!


大蛇を斬りつけるも、その硬い鱗に防がれ、傷は浅い。この程度かと、ニシキオロチは涼しい顔をしていた。


ビャッコ「僕だって!鉱蛇刃!」


ワイヤーが大蛇を切り刻む。たまらず、ニシキオロチは体をのけぞらせて後ろに下がった。


ビャッコ「どうだ!」


ミツルギ「!」


ニシキオロチは素早く脱皮すると、体についていた刀傷も無数のワイヤーによる切り傷も元通りになっていた。


ミツルギ「なんてやつだ!」


ビャッコ「ずるいぞ!」


酒吞「あっはっは!ずるいは、ないわぁ!アンタも十分チートやん!?」


死闘を肴にひょうたんの酒をかっくらって顔が赤くなってきた酒吞がビャッコの言葉に笑い転げた。


アオバ「これで最後だ!イソラミチ!」


白面金毛九尾が空に舞い上がり、その体躯の周りにいくつもの青い玉が青い炎をまとわせて出現する。

白面金毛九尾が着地すると同時にミツルギ達の見ている景色が変わった。


ビャッコ「?!花畑?!」


ミツルギ「これは!?」


アオバ「ミツルギ!お前にコレが敗れるかな?!」


一面、花畑に立つアオバが笑いながらどんどん増えていった。




その頃、屋敷裏では助は塀の切れ目があることを知っていたので、そこまでお玉を連れて走った。

しかし、あと一歩のところで茨木、土蜘蛛達に阻まれ、助がお玉を守りつつ鬼たち相手に死闘を繰り広げていた。


土蜘蛛A「死にさらせぇ!」


手斧片手に飛びかかる土蜘蛛を助が太刀筋を見切ってかわし、


ザシュッ!


土蜘蛛A「ぎゃへぇ!?」


持っていた刀で切り捨てた。


助「っつ!」


時折、助は包帯で巻かれた方の左目を気にしていた。


お玉「助殿のお怪我は?」


助「なんのこれしき!お玉様はソレガシがお守りいたすゆえ、安心なされよ!」


ビャッコの言った通り、屋敷裏は狭く、土蜘蛛達は助と一対一の戦いを強いられていた。


茨木「ちくしょう!場所が悪いぜ!」


一対多数であれば既に勝敗はついていようものなのに、ミツルギ達を見つけたタイミング、戦力を投入したシチュエーションが悪いと茨木は悔しがった。


土蜘蛛B「つえーな、コイツ!」


土蜘蛛C「もう、何人もやられてますぜ!?おカシラぁ?!」


茨木「どいてろ、テメーら!」


大きな刀を担いだ茨木が土蜘蛛達を押しのけて前に出た。


助「!今度の相手はおヌシか!」


幾戦も交えていた助の刀は既にボロボロだった。


茨木「オラァ!」


茨木の巨体からは考えられない速さの斬撃。助は驚いて刀で防ごうとしたが、それがうかつだった。


ズバァ!


助「ぐお!」


お玉「あぁ!?」


茨木の幅のある大きな刀に助の刀は耐えられず、折られ体ごと切られた。致命傷。助は、その体に深い傷を負った。


助「お、館様……」


ドサッ


茨木「へ!ザマァ見ろってんだ!」


助「……玉様、おにげくだ、」(どか!)


茨木「まだ生きてんのか、邪魔なんだよ!」


茨木は倒れ、虫の息の助を蹴り飛ばして端に寄せた。

お玉は鬼たちを見て血の気が引いた。後退りするも、外に逃げるには鬼たちの後ろに見える塀の切れ目、そこに向かわねばならない。


茨木「女は剥いて刺身で食べるのが一番だ。」


土蜘蛛B「上玉だ、食う前に楽しみましょうぜ!オカシラ!」


ソレはいいアイデアだと茨木は舌なめずりをした。


お玉「ひぇぇ……」


お玉は踵を返してその場を逃げ出した。


お玉「ミツルギ様!」


土蜘蛛C「あ!待ちやがれ!」


茨木「バカな女だぜ。逃げられるもんかよ。」


茨木は胸一杯に息を吸い込むと、術で突風を吐き出した。


ブワッ!


お玉「あ!」


軽いお玉の体はやすやすと吹き飛ばされ、屋敷の塀の曲がり角に激突した。


お玉 (ゴホッゴホッ)


土蜘蛛B「オカシラ!距離が!」


茨木「あ!しまった!」


お玉と鬼たちの距離は随分と離れた。しかし、お玉もその口の端から血がにじんで、なかなか、立てないでいた。


キラッ


お玉「!あれは?!」


半壊し今にも崩れそうな屋敷の軒下に何かが光って見えた。揺らめく光。陽の光の反射ではなく、それ自体が光を放っている。


お玉『間違いない!十種の神宝の光!』


玉姫の分霊のお玉にも十種とくさ神宝かんだからの特徴は知識として備わっていた。十種の神宝に一縷いちるの望みをかけ、お玉は軒下へと入っていった。


茨木「逃がすな!」


土蜘蛛達がお玉を追いかけ走ったが、今にも崩れそうな軒下に入るのを躊躇した。


茨木「何やってんだ!」


土蜘蛛B「けど、どうせ、アイツ出てくるでしょ?」


その時、軒下から微かにお玉の呪文が聞こえてきた。


お玉「ひふみ よいむなや こともちろらね

しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか

うおえ にさりへて のますあせゑほれけ。」


軒下が眩く発光したかと思ったら茨木達の体は宙に浮かび始めた。


茨木「うわ!なんだ?!」


土蜘蛛B「ひ、オカシラ!」


土蜘蛛C「空に!空に!落ちる!?」


うわぁぁぁ!鬼たちは天へと落下していった。


お玉「これは、地返しの玉!?」『こんな、力があったなんて!』


遠くで茨木達の悲鳴が聞こえ、酒吞の酔いが覚めた。


酒吞「アオバはん。」


アオバ「ふむ、地返しの玉だ。早く助けてやらんと、星になる。」


膝をつき、肩で息をしていた満身創痍のミツルギとビャッコを見下ろしアオバはクルリとその場を離れた。


ミツルギ『た、たすかった?のか?』


アオバ「ふん!幻術は突破できなかったかミツルギよ!」


ビャッコ「くっそ!言ってくれるなぁ。」(ハァハァ)


酒吞と共にアオバが暗黒空間に入るとハタレ達は消えた。そして、天に落下していた茨木達は天に開いた暗黒空間に吸い込まれていった。


アオバ「今度あった時が貴様の最後だ!」


立ち上がったミツルギの耳に、どこからともなくアオバの声が聞こえてきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ