アオバ
探偵事務所のオフィス
机に立てかけた伏神刀からビャッコの鼻歌が聞こえてくる。
ミツルギ「なぁ、ビャッコ。伏神刀の中は快適なのか?」
伏神刀「もちろん、家具は揃ってるし、服もイメージすればでてくるよ!なんでもできちゃう感じかな?」
ふーん
事務所の中は雑多に物が置かれているせいか、閑散としていると言うか、さみしいところだった。
ミツルギ『部屋の片付けでもしようかな?』
顎を撫でながらミツルギは思案した。けど、一人でやるには相当時間と労力が掛かりそうだ。
ミツルギ『ビャッコを呼び出して一緒に片付けるかぁ……』
その時、事務所の玄関がノックされた。
ミツルギ「どーぞ?」
伏神刀「何?お客様?」
お玉「お邪魔します。私、玉姫稲荷の分霊でお玉と申します。ミツルギ様のお手伝いをせよと命を受け、伺ったのですが?ここであってますよね?」
十二単の姫の姿の綺麗なストレートのロングヘアの玉姫と打って変わって、お玉は明るい髪色をしたボブカットで和服の町娘と行った姿だった。
高嶺の花だった玉姫を親しみやすくした感じだろうか?分霊だからか、顔が姫とそっくりだ。ミツルギはその美しさに息を飲んだ。
ミツルギ「ミツルギは俺だ。調度いいところに来てくれた。ビャッコ。」
伏神刀を少しサヤから出す。刀からぶーたれたビャッコがでて来た。
ビャッコ「えー?!おめかしの途中だったのにー!」
お玉「まぁ!話には聞いておりましたが、伏神刀、初めてみました!ビャッコ様はその中においでなのですね!?」
ミツルギ「みんなで、事務所の片付けをしよう!ビャッコにお玉さん手伝ってくれ!」
ビャッコ「片付けかぁ、いいね!模様替えしちゃおう!」
お玉「早速、お仕事です!お任せあれです!」
3人はまず、いらなさそうなのを段ボール箱に詰めて、部屋をきれいに掃除した後、ついでと模様替えを始めた。
ビャッコはしきりに部屋の風水にこだわった。
ビャッコ「主にミツルギが住むことになるんだ。ミツルギの年齢、北の方角は……っと。」(カキカキ)
お玉「あ!それはそうと、私、四方に散らばった十種の神宝を集めてくるようにとも言われてたんでした!」
部屋の真ん中のテーブルでビャッコが紙に色々と書き出していたが、え?っと顔を上げて、近くで見ていたお玉の方を向いた。つられて、ビャッコの紙を眺めていたミツルギもお玉に注目する。
ミツルギ「何か、心当たりでも?」
お玉「それがとんと、行方が分からず……」
お玉が首を横に降って肩をすくめた。
ビャッコ「んー、それなら僕の屋敷に行こうか?あそこ霊穴の上に建てたものだし。」
玉が霊力を保つには霊穴をつかうはず。ビャッコはそう推察した。
ミツルギ「なるほど、当たってみよう。奴らについても何か情報があるかもしれない。」
一同は部屋の模様替えが終わったら、とりあえずで、ビャッコの屋敷に行くことにした。
茨木「……てなわけなんだ。酒吞。コイツラは悪くねぇんだ、許してやってくれよ。」
暗がりの部屋で土蜘蛛数名を連れた茨木は酒吞に頭を下げた。まだ日は高いと言うのに、ひょうたんの酒をかっくらっていた鬼女が言う。
酒吞「だそうや?聞いてたかいな?シラヒト、コクミの旦那方。」
酒吞は独特な方言で奥に座る2人の人間たちに聞いた。
シラヒトと呼ばれた右側の男が喋りだす。
シラヒト「ふむ、そうか。十種の神宝に逃げられたか、ヤマタノオロチのパワーアップに使えると思ったんだがな……失敗続きだぞ、酒吞。」
酒吞「えらい、すまんこっちゃ。おまんら、頭ぐらい下げぇや。」
冷や汗をかきつつ茨木以下、土蜘蛛達も深くその二人に頭を下げた。
コクミ「しかし、ビャッコが刀から?」
シラヒト「アオバ、お前の持ってる刀に似てるな。何か心当たりはないか?」
壁にもたれていた学徒姿の男が前に出てきた。
アオバ「我が調魔剣と同じものかと。」
シラヒト「だろうな。」
コクミ「スサノオの奴め、アオバがコチラについたから次を派遣してきたのか?!」
アオバ「なにはともあれ、そやつもオオカミ。土蜘蛛では歯が立たんでしょう。」
シラヒトはしばし口に手をやって黙って考えこんだ。
シラヒト「土蜘蛛を放って奴らを見つけろ。見つけ次第、アオバ、酒吞、茨木の今ある最大戦力を持って叩き潰してやれ。」
コクミ「ヤマタノオロチの復活を邪魔立てするやつは容赦するな!」
酒吞「なんや、総掛かりかいな、一捻りとちゃうか?」
シラヒト「不満か?」
酒吞「ええと思うで?ほな、ちょっと遊んでこよか?」
酒吞は茨木に向き直ると不敵に笑った。
ミツルギ「ここか、ビャッコの屋敷ってのは……」
広い屋敷は半壊していた。四獣封印のため、土蜘蛛らによる襲撃を受けたからだろう。とても人が住める状況ではなかった。
伏神刀「もう人は住んでないけどね?」
ミツルギとお玉は崩れた屋敷の入口から中に入る。
侍「その声は、お館様?」
ミツルギ達が声の方を向くと屋敷の庭で片目を包帯をした鎧武者が立っていた。
お玉「お知り合いですか?」
ミツルギは伏神刀を少し抜いて、ビャッコを外に召喚した。
侍「おぉ、そこにおわしましたか!」
ビャッコ「助。君、生きてたのか。」
助「すると、そのお方がスサノオ様の追加で派遣された、オオカミですな?ソレガシ源一派の助と申す。」
ミツルギ「ミツルギだ。君もオオカミのようだね?」『追加?源?一派?』
助「オオカミまで至ってはござりませぬ。ソレガシなぞ小者。」
酒吞「おやおや、ここで何してはるん?」
助「なにやつ!?」
ミツルギ達が声の方を振り向くと黒い空間からゾロゾロと鬼達が出てきた。その中に学徒姿の男も酒吞達の傍らにあった。ミツルギ達はお玉を護るように刀を抜いて構えた。
アオバ「ほぉ、ミツルギ、お前か、派遣されたのは?」
誰だ?俺を知っている?ミツルギはまだ幽世の記憶が完全にアンロックされていなかった。
茨木「酒吞、こんなに大勢連れてきたら、コッチが身動きとれんぜ?」
酒吞「シラヒト、コクミの指示や。アンタは黙っときいや。」
小女の酒吞が茨木をヒト睨みすると、大男の茨木が肩を竦め萎縮している。
アオバ「ヤマタノオロチ復活、邪魔者はここで排除する。」
ミツルギ「ここは俺たちが引き受ける!」
ビャッコ「助!お玉さんを連れて逃げるんだ!」
助「承知!」
助はお玉を連れて屋敷の奥へと駆けていった。
茨木「あ、待ちやがれ!?」
酒吞「なんや?あの娘が気になるんかいな?ここはいいから、土蜘蛛衆連れてきぃや?」
茨木「おう!」
茨木は土蜘蛛達を連れて裏へと回った。
逃げたお玉達を心配するミツルギの頭に直接、ビャッコは語りだした。
ビャッコ『屋敷の裏は狭い、あんな大勢行っても取り囲めやしない。助だけでも暫くは持ちこたえるさ。』
ミツルギ『えらく、あの侍を信用してるな?』
ビャッコ『そりゃね?長年ここの警備主任やってたから。』
アオバ「話は終わったか?俺にはお前らの会話は筒抜けだ、ミツルギ。」
驚愕を顔に浮かべるミツルギとビャッコをよそに、アオバは持っていた刀を抜いた。
すると、あたりに凄まじく禍々しい妖気が漂う。
アオバ「出てこい。ハタレども。」
刀から大蛇、白面金毛九尾、雷神が出てきた。屋敷の入り口、狭い空間にその巨大がひしめきあっている。
ミツルギ「!」『俺の刀と一緒?!』
アオバ「ニシキオロチ、イソラミチ、ナルカミ。ひねりつぶせ!」
大蛇は濃い霧を発生させ、白面金毛九尾が叢雲を発生させた。
昼だと言うのに、辺りは真っ暗闇になり、上空に舞い上がった雷神の稲光が轟音を轟かせて光る。
酒吞「なんやおもんない、そんなん出したら、一瞬でケリついてまうがな。」
酒吞はその場に腰を下ろすと、ハタレ達を見つつ酒を飲み始めた。
アオバ「行くぞ!ミツルギ!」