ゲンブ
レイキ「喋れるし、歩けるようになったが。ワシに戦闘は無理じゃろうな。すまんの?」
ミツルギ「いえ、今はゆっくり休んで下さい。」
伏神刀「レイキ!僕が助けたんだからなー!感謝してよね!」
レイキ「わかっとる、すまんかったの。」
伏神刀「……」
探偵事務所の奥の部屋に寝かされていたレイキはその後少しづつ回復をしていった。しかし、ここは霊穴では無いせいか、完全回復とまでは行かなかった。
ガチャ
カグツチ「助、ただいま戻りました!」
ミツルギ「よし、リビングで話そう。」
レイキを奥の部屋に残してミツルギ達は事務所の応接室兼リビングに戻った。
カグツチは中央のテーブル席に腰掛け、お玉はキッチンに消え、ミツルギは自分の机に伏神刀を立てかけて席に着いた。
伏神刀「爺さん、まだまだ本調子じゃないみたい。」
ミツルギ「そうなのか?」
伏神刀「前はもっと僕ら喧嘩腰だったんだ。仲良く喧嘩しな。ってやつ?」
ミツルギ『それはいいことなのだろうか?』
お玉が出してくれた昆布茶をすすりつつカグツチも話に参加した。
カグツチ「奉行所への報告と神社への奉納、無事に済ませてきましたぞ。」
お玉「コレでミツルギさんも大手を振るって奉行所や警察署の大門をくぐまれますね!」
その報告にミツルギは満足げに頷いた。そして、伏神刀にククヤンについて質問を投げかけた。
ミツルギ「ビャッコ。その後のククヤンはどうしてる?」
伏神刀「あー、それなんだけど。傷は癒えたんだけど、元気がないんだ。ダメージは残るのかなぁ?」
それを聞いたミツルギとカグツチは顔を合わせた。
カグツチ「ソレガシの時のように、式神合成ですかね?」
ミツルギ「うーん、そうだな。お玉さん。」
自分の茶をすすってていたお玉は、急に話を振られて虚を突かれた。
お玉「はい?あぁ、式神合成ですね?料金決まりましたよ。はい。」
懐を弄ってお玉が式神に関する料金表をミツルギに提示する。
そのふくよかな胸元にミツルギは鼻の下を伸ばすのだった。
ミツルギ「……丸が思ったより多いなぁ、式神合成。」
お玉「料金交渉は致しませんよ?」(にこー)
ミツルギ『ううむ、また頑張るしか無い。』
探偵事務所に舞い込んできた仕事の依頼は小さい額でもみんなで手分けしてこなしていった。
南の大きな池で落とし物の探索をしていたカグツチはそこで玉を拾ってきたと言って、それをお玉に手渡した。
お玉「うーん、これは十種の神宝ではありませんねぇ。」(モグモグ)
ビャッコ「でも、あの池、霊穴だから、今度、探してみるのもアリだね!」(パリパリ)
お玉と一緒にリビングのテーブルでせんべいを食べていたビャッコが言う。
ミツルギ「式神合成の金額も貯まったし、手分けしてやろう。ビャッコとカグツチで池の方で十種の神宝探し、俺とお玉さんはレイキとククヤン連れて式神合成だ。」
ビャッコ「オッケー!助、がんばろう!」
カグツチ「お館様と一緒ですね!きっと我らなら見つけられるでしょう!」
お玉「私は玉姫様と式神合成に、ですね!」
ミツルギ「お玉さん頼むよ。」
お玉「はい!」
玉姫稲荷神社
お面姿の巫女さんを数名従えた玉姫がミツルギたちを出迎えた。
何故、顔を隠しているのだろう?ミツルギには分からなかったがお玉には察しが付いた。
お玉『あ、増えてる私……』
玉姫「式神合成のサポート役は他の分霊を作りましたから、お玉は良いですよ?手伝わなくても。」
お玉「え?あ、そうなんですか……」
ミツルギ「それでは玉姫様。伏神刀とレイキ殿をおまかせしても?」
玉姫「はい。コチラでお預かりしましょう。」
お面の巫女さんに伏神刀と御老体を任せ、手持ち無沙汰になったミツルギとお玉は稲荷神社の境内の片隅で時間を過ごすこととなった。
お玉「私のお役目、一つなくなっちゃいました。」
気丈に振る舞っているお玉だったが、どこか寂しそうにしている。そう、ミツルギは感じた。
ミツルギ「そんな、気を落とさなくてもいいですよ。お玉さんには大変助かってるんですから。」
お玉「私はその為に分離した分け御霊なので……」(しょんぼり)
ミツルギ「お、俺は、そんなお玉さんが好きです。」
お玉「え?ソレって。」
ミツルギ「美しい玉姫の分霊だからじゃなくて、そばで支えてくれてる人だから好きになったんです。」『言った俺!よくやった!』
あー、でも断られたらどうする?
そんなの知るか!行け!ミツルギ!
ミツルギ「俺とその、つ、付き合ってください!」
二人っきりになれるのは今しかないと踏んだミツルギは意を決して、ずっと胸中にあった思いを吐露した。
お玉は目を丸くして顔は真っ赤になっている。
しばしの沈黙がミツルギには永遠に続くのでは?と思えた。
お玉「コレほど、生を受けた事に喜びを見出したことがありましょうか?!」
感極まったのか、お玉はポロポロと泣き出した。
ミツルギ「では!」
お玉「はい!喜んで!」
ギュッ
2人は手を取り合ったかと思うと、きつく抱き合った。
そこへ、式神合成を終えた玉姫と細長い白いヘビをその身体にとりつかせているレイキがやってきた。
玉姫「良かったですね?お玉。」
レイキ(?)「ほほ、いやいや、いいのが見れたわい!」
お玉「はい、玉姫様。」
玉姫「ミツルギ様、お玉を末永く、よろしくお願いしますね?」
ミツルギ「もちろんです!」『ん?まあ、結婚を前提に、だから良いのか。』
若者たちのやりとりに目を細めていたレイキはふと思い立ってミツルギに提案した。
レイキ(?)「そうじゃ、ミツルギよ。これからわしのことはゲンブと呼んでくれい。」
ミツルギ「分かりました。ゲンブ。」
ゲンブ「ウンウン、では、ビャッコの奴らのところへ行くかの?」
ミツルギ「これからですか?」
ゲンブ「そうそう、あ奴らだけでは、心もとないでな!カッカッカ!」
南の池につくとビャッコとカグツチは池の中にふくらはぎまでつかって十種の神宝探しをしていた。
ビャッコ「あ!ミツルギ!」
カグツチ「レイキ殿も、元気になられたようで、何よりです!」
ゲンブ「お主らぁ!何をちんたらやっておるんじゃ!?」
ビャッコ「あー、爺さん、元気になりすぎたかぁ……」
ゲンブ「ここは、パワーアップしたワシに任せよ!ククヤン!」
ゲンブに巻き付いていた白いヘビがかま首を持ち上げると池の水は空中に集まり球体を形成した。
ビャッコ「うわー!すごいね、レイキ!君、五行属性の木が担当だったろう?」
ゲンブ「カッカッカ!パワーアップしたと言ったじゃろ!セイリュウ程ではないにしても、これくらい朝飯前よ!」
スッカリ水が引いた池の底にキラリと光るものがあった。それを見たお玉が指差す。
お玉「あ!アソコ!何かありますよ!」
土蜘蛛衆「それは、俺たちのもんだー!」
突然、物陰から小鬼たちが躍り出てきた。それぞれの手には色々な武器を持っており統一感はない。
土蜘蛛A「野郎ども、かかれー!」
号令と共に、数十の土蜘蛛達が一斉に駆け出した。
その中にあって、横にいた土蜘蛛一人が「けどよー」と続けた。
土蜘蛛B「兄貴たちに知らせなくていいのか?俺たちだけで動いていいのかよ?」
土蜘蛛A「俺たち、いつまでたっても冷や飯食らいじゃねーか!?ここらで株上げにゃなんねーぜ!」
土蜘蛛B「それもそうだ!」
オラァー!
土蜘蛛達がミツルギ達に迫る。
ゲンブ「ここはワシに任せい!五行術!棘地獄!」
……ッボコォ!
土蜘蛛達の足元の土が盛り上がり鋭利な木が生えてきて串刺しにしていく。
ギェェェェ!
身を貫かれた鬼達の絶叫が上る。
ビャッコ「じいさんは陰湿だなぁ!ちゃんと首ハネようよ!五行術!鉱蛇刃!」
ビャッコの周りに無数に生えたワイヤーが土蜘蛛達の首をはね飛ばす。
ピュン!ピュン!
土蜘蛛A「うわぁ!四獣、2体で、ここまでつえーとは!」
土蜘蛛B「もうほとんどやられちまった!どうすんだよ?!」
生き残った土蜘蛛達にゲンブとカグツチが迫る。
土蜘蛛衆「ひぇ~!兄貴ー!」
茨木「バカヤロー!何やってんだ!」
土蜘蛛衆の背後の空間から茨木が躍り出て、風遁の術で砂を巻き上げた。
ゲンブ「カッカッカ!逃がすか!五行術!水龍弾!」
高圧ジェット水流がそれまで土蜘蛛がいた地面に深々と穴を穿った。
ビャッコ「あーぁ、逃げられた!」
ゲンブ「まぁ良い。あらかた全滅させた。」
子鬼達の死屍累々を横目に、お玉は池の底に向かうと、そこにあった玉を取り出し、確かめた。
お玉「間違いありません十種の神宝のイクタマですコレ!」
ビャッコ「よーし!あと残ってる十種の神宝の玉はマカル返しの玉だけだね!?」
マカル返し。
死者を生き返らせる玉。これだけは敵の手に渡ってはならない。なんとしても先に見つけなければ。




