木田からみた如月副総隊長 ー前編ー (改稿7/3)
如月副総隊長ってどんな人か、直属の補佐としてちゃんと知っておく必要があるだろ?……という建前で、今日は一日観察してみることにした。
だって、直属の補佐として全く知らないってのもまずいだろ?
如月副総隊長がこの役職に就任したのは三日前。そして、俺が同じく副総隊長補佐になったのも三日前。
如月副総隊長の今日一日の予定はこんな感じ。
10時出勤、11時から12時総会議、13時昼食、14時から15時訓練、16時から18時街を見回り、19時帰宅という一日。
如月副総隊長がコーヒー片手に副総隊長室に入って来た。
「あ、如月副総隊長おはようございます!」
「おはようございます。木田補佐官、朝から元気ですね」
目を半分だけ開けたまま、眠そうにコーヒーをすすりながら言った。どうやら如月副総隊長は朝が弱い様子だ。
「俺朝は強いんですよ。あ、私です!すみません」
「別にそこまで丁寧にしなくていいですよ。これから永く一緒にいるのに堅苦しいのは嫌なので」
おや??そこまで礼儀厳しくはないのか?
「今日は11時から総会議があるっす」
「……では、それまで総会議で使用する資料でも見直しますかね」
かなり砕けた口調でも許さるのなら、あの噂は何だったんだ?
如月副総隊長にはある噂がある……舐めた口を言ったやつを半殺しにするとか、実は人間じゃないとかの噂だ。だが、人間じゃないという噂はきっと試した武器やパートナーの適合率が全て90%を超えていたからだと思う。普通の人は50超えればいい所で、70超えればすげえって感じだ。
適合率とは武器やパートナーの相性度のことで、高ければ高いほど武器やパートナーの性能が発揮される。
どうして如月副総隊長の適合率の件を知っているかって?赴任前日に”如月取扱説明書”というものを総隊長から渡されたからだ。その取扱説明書には、一ページ目にでかでかとこう書いてあった。
絶対にチビや背が低い、は禁句と書かれていた。
どうやら如月副総隊長は背が低いのを凄ぇ気にしてるみたいだな。
他のページには副総隊長には全力で拒否したとか書かれていた。出世欲が無い珍しいタイプだ……。
「そういや、如月副総隊長って歳幾つっすか?あ、ちなみに俺は25っす!」
「今年20歳です」
は?!20歳?!?!俺より年下だろうなと思っていたけど、まさか5個も下とは……。
「み、見えないっすねー」
「……お前も僕を中学生と思っているのか?」
「ち、違うっすよー!!」
如月取扱説明書に絶対怒らすなと書かれていたからまずい!!
「冗談ですよ」
「う、うわぁ……びびった……」
如月副総隊長も冗談とか言う人なのか……言わない堅物人間なのかと思っていたけど案外普通の人なのか?
11時総会議開始。
集まったのは、赤、黒、緑、青、黄、紫の各隊の隊長陣。そして、清掃部隊、研究部隊、治療部隊の隊長陣といった感じだ。
余談だが黄隊も元はジョーンヌという言い方だったが、今の黄隊の隊長がこっぱずかしいのと言いずらいということでイエローに変更された。
ちなみに黒隊はどの隊よりも強いと言った最強の隊で、如月副総隊長も前はそこにいた。
俺がいたのは赤隊だ。
総隊長がいない中、会議はどんどん進んで行く。
「副総隊長、隊全体での訓練を取り入れては?」
「却下。まず、隊全てでの訓練できる場所がない。次の理由として命令系統がごちゃごちゃになり危険……。次」
「ですがっ!」
「……紫隊長が全ての責任を取れるんですか?責任を取る事になるのは総隊長なんですよ?」
会議中の如月副総隊長はめっちゃくちゃかっけー!質問されたことはすらっと返すし、自分より年上の隊長たちにも臆せずズバズバ意見を言うなんて……いくら部下と言っても普通はむずいだろう。
後ろで見ていて、普通に尊敬した。あれは、カッコいい。
12時議長の総隊長がいない中総会議は終了。
会議が終わると、如月副総隊長はふうと息を吐いた。
「はぁあー……疲れた。あの筋肉達磨がいないから僕がこんなに仕事をする羽目に……」と可愛らしい顔を歪めながら如月副総隊長は呟いていた。
如月副総隊長は真剣な顔をしてても、どこか子猫みたいな雰囲気がある顔立ちだ。……これは、年上の女性が放っておくわけがない。
「如月副総隊長って彼女いるっすか?」
「いない。そんなことより昼食に行きますよ」
20歳なら普通遊び放題だろー。可愛い感じを生かして遊べばいいのに、勿体ない!!
じゃあ、伏せられて置かれている写真立ては……でも、何であんなに大事そうに伏せてるんだ?ただの彼女の写真ではなく、家族写真にしては気になる隠し方だ。