大阪支部vs本部!!
昨日のこともあり寝れる時間まで寝ていようと思った。だが、僕は「プルルルル」という電話の着信音で起こされた。
「……はい、もしもし。……で?大阪支部の問題わかってて放置した理由は?……知らなかったって、噓ですよね。僕は何度も言っていますが、面倒ごとを全部僕に回すの止めてくれません?……要件も他に無いようなので切りますね」と獅子神総隊長との通話を終わらせた。
通話を切ると、室内に静寂が戻る。時計の針は、まだ朝の五時を指していた。
「最悪……あと一時間は寝れたのに」
額を押さえながら、僕はゆっくりとベッドから身を起こした。
水を飲むためベッドから下りると、冷たい床の感触に眠気が一瞬で覚める。
「……軽く、走るか」
Tシャツに黒のジャージを着込み、部屋を出る。
廊下にはまだ誰の気配もなく、照明の淡い光が足元をぼんやりと照らしている。
エレベーターの鏡に映る自分の顔を見て、ため息が漏れた。目の下の隈がひどい。
「如月副総隊長。おはようございます」
振り向くと、三海君がそこに立っていた。まだ寝癖が残る髪を手ぐしで整えながら、穏やかに微笑んでいる。
「ずいぶん早いですね」
「なんか、目が覚めちゃって。副総隊長は……ランニングですか?」
「はい。軽くね。……一緒に行きますか?」
「はい!」
外は街灯がまだ点いたままで、アスファルトが夜露を反射している。
風はひんやりと頬を撫で、呼吸をするたびに肺が冷たい空気で満たされる。
走り出すと、靴音だけが規則的に響いた。
「ランニングに最適な気温ですね」
三海君の声が静かな朝を切り裂く。
「そうですね。今日は……迷惑をかけるかもしれません」
「気にしないでください。戦うのは好きですから」
普段は無口な彼が、珍しく笑った。
その笑顔に、僕は小さく頷いた。
子どもの成長は一瞬一瞬が見逃せないな……。
「三十分程走りましょうか」
「はい」
まだ薄暗いこともあり街灯が道を照らしている。早朝という事もあり街はまだ人気も少なく静かで、街が眠っているみたいだ。
二人で並んで走っていると、通りの角に一人の男性が立っていた。
僕らを見つけると、彼は駆け寄ってきて深々と頭を下げた。
「昨日は、その、ありがとうございました!」
男性は僕に深々と頭を下げ僕にお礼を言ってきたが、訳が分からず僕はポカンとした顔をした。
「えっと、……何のことでしょうか?」
「あ、そうですよね。俺、昨日貴方に助けられた者です」
僕は「……助けた?」とポツリと呟き、昨日のことを思い返してみたが誰も助けていない。
「監禁されていたのを開放してくれたじゃないですか!」
「ああ!昨日は助けたわけじゃないですよ。騎士として過ちを正しただけなので」
僕は渋い顔をして男性から視線を外し地面を見る。
「大阪支部の騎士は誰も俺達を助けてくれる人はいませんでした。それどころか、人間扱いもしてくれませんでした。その中で、如月さんだけが助けてくれたんですから!」
「でも……」
「そりゃあ、始めは如月さんも副総隊長で騎士だから怖いと思っていたんです。でも、俺達の未完作品のせいでスタンピードが発生しているのに……昨日の如月さんからはどんな物語も心から愛して作者を大切だと思ってくれていると分かった時、怖さなんか消えていました」
目の前の男性は僕の両手を握り僕なんかのことを励ましてくれる。僕の目から一粒涙がぽろりとこぼれた。
「僕なんかに……」
「如月さん、騎士は命の危険のある仕事だと思いますが、これからも頑張って下さい!応援しています!君もね!」
男性は深く一礼し、朝霧の中へと歩き去った。
僕はその背中を見つめたまま、小さく息を吸い込む。
騎士を嫌っている人もいる。でも、応援して下さる方もいるのをすっかり忘れていたな。そうだ……始めは妹と弟を探す為に騎士になったけど、人を護りたいと芽生えていた。でも、いつの間にか人を護りたいというのを忘れていた……大事なことだったのに。
「……さて、ホテルに戻りましょうか」
三海君にバレないよう袖で涙を拭き、三海君の顔を見る。
「はい」
三海君とホテルに戻り各自の部屋に戻ると、木田が泣いているエンを抱っこし部屋の前でげっそりとした顔で僕を睨みつけてきた。
「如月副総隊長!!酷いっすよ~!夜もエンを俺に預けて……起きたらギャン泣きで泣き止まないし……。で?エンを俺に無理矢理預けた如月副総隊長はどこ行っていたんですかー??」
「……ランニング」と木田から視線を外し、明るくなってきた窓の外を見て僕はポツリと呟く。
「へえ?保護者が子ども放っておいてですかー。如月副総隊長は俺を雑に扱い過ぎだと思うっす!もうちょい丁寧に「分かった分かった!悪かった!エンはちゃんと面倒見ます」……絶対分かってない」
木田がずっとぐちぐち言っているのを無視し、エンを木田から受け取る。
僕が抱いた瞬間、泣き声が嘘のように止む。
その小さな体が、僕の胸の鼓動に合わせて落ち着いていく。
「……じゃあ、エンのことは頼みましたよ?俺はちょっと出掛けてくるっすから。朝食までには戻ってくるっすから」
「はいはい」
エンを抱っこしながら部屋に入った。
木田は朝早くになんの用事なんだろうか?僕達が泊っているホテルも街の外れのほうだから、こんな時間から店をやっている所も少ないのに。
エンをあやしていると朝食の時間になったので部屋を出ると、馬場君に三海君が部屋から出てきて、その後すぐに佐々木君が「ふぅあ」とあくびをしながら出てきた。
三人に「おはようございます」と挨拶をすると、三人共眠そうに「おはようございます」と返してくる。
「あれ?木田さん出て来ないですね?」と佐々木君が木田が部屋にいると思ってか話した。
「木田は恐らく、先にご飯食べるとこに行っているんだと思いますよ」
「そうなんですね!!」
五人でご飯を食べるとこに行くと、木田が席に座って待っていた。
木田が三人向かって「おはよ~」とニッコリと笑って挨拶をしている。
「で?あんな朝早くにどこ行っていたんです?」
流石にあんな早くに出かけるとなると怪しい。もしかして、こいつ……いや、そんなことはないか。
「同期に合っていたんすよ」
「……そうですか」
朝食はビュッフェだったので、各々好きなように取り食べた。三人は色々なご飯を見て、「あれ!美味しそう!!」や「あ、うどんある」とか「アレンはうどん好きだな。あ、目玉焼きもある」と楽しそうにしていて僕も少し嬉しくなった。
朝食も食べ終えたので、隊服に着替え大阪支部へ。
隊服を着てホテルの外に出ると、街はすでに活気づいていたがすれ違う人々の視線は冷たい。コソコソと僕達を見て何か話しているが、騎士のことだろうな……。
「名ばかりの守護者」とでも言いたげな、刺すような眼差しだ。
支部に入るなり大阪支部の騎士が僕達を一瞬見て気づかないふりをして、僕にドンッとわざとぶつかって来た。エンを抱っこしている僕にだ……。
「すんまへん。小さくて見えんかったわ」
「昨日も今日もこんな態度なのが、逆に凄いな」と僕はどすのきいた声で大阪支部の奴らに言って挑発をした。エルを木田に渡し、大阪支部の奴らを見る。
「名ばかりの本部なんか大阪支部に来ないでくれますか~?」
女性の隊員が僕達をおちょくってくるので、こいつらにどんな処罰をするか考えていると思わむ人物が僕達に声を掛けて来た。
「如月副総隊長。大阪支部に本部の強さっていうのをうちらに教えてくださいよ」と、いつもと様子の違った真顔の美波が僕に突っかかってくる。昨日もおかしかったが美波は何で可笑しくなってしまったんだろう。
……昨日、あの異様な正義感を見せていた美波が、今日もやはり様子がおかしい。
「相田、何で突っかかってくるんだ?僕に突っかかってくる前に、あの女性隊員を注意しろよ!」
「弱さがバレるのが怖いんですか?それなら、仕方ないですね~」
美波の真意が分からないが流石にイラッとしたので、「その挑発乗ってやるよ!本部の強さっていうのを!!」と久しぶりに大声を出した。
「ええ!是非とも見せて下さい」
こうなることを考え昨日行動したが、まさか美波に挑発されるとは思わなかったから少しショックだった。まあ、こうなったからいいのだが。
美波は大阪支部の隊員から予備隊員三名と隊員十一名を選んで、「如月副総隊長は、騎士最強と言われているのでいいですよね?」と言ってくる。
「へえ?どうぞ」
僕は腕を組み十四名をざっと見て鼻で笑った。そうすると、十四名は顔をしかめたり顔を赤くさせて苛立ち始めたみたいだ。こんな簡単な挑発に乗ってくれるなんて、大阪支部は脳筋が多いな。
「大阪支部の予備隊員対本部の予備隊員、木田対そっちの隊員一名、僕対隊員十名でいいな?」
「はい。如月副総隊長がそれでいいなら」
こうして、大阪支部対本部の対決が決まった。
「子どもを連れている本部の奴らに、うちらが負けるわけあらへん」
「あいつら弱そうやしな〜」
「スタンピードも防げない奴らやし」
大阪支部の隊員達は僕達を嘲笑し、自分達が勝つのが当たり前のことだと思っているようだ。
こんな舐め腐っている大阪支部にはきつーいお仕置きが必要だな。
僕達は大阪支部で一番広い訓練場へ。




