新天地!再会と新しい出会い
「疲れた……」
疲れた表情をしながら、ソースのいい匂いのする目の前の街を見る。そう、僕は今大阪に来ている。
「如月副総隊長、たこ焼き食べたい」と三海君がたこ焼きの屋台のを人差し指で示す。
「あ、私も食べたいです!蓮もだよね?」
「あの、食べたいです」
大阪に来ているのは僕だけではない。馬場君、三海君、佐々木君に僕を入れた四人で出張に来ている。当初は僕だけの予定だったのだが、三人の今後の為に僕の出張に同行した方がいいという事になった。
「そうですね。お昼ですし、たこ焼きでも買いましょうか」
馬場君達は、ぱあと笑顔になり嬉しそうだ。僕は三人にお金を渡し、日陰になっているベンチに座った。
夏ということもあり日差しが暑く、日陰でもやはり暑く汗がじわりじわりと身体中から湧き出てくる。
三人は仲良くたこ焼きを「この、さっぱりポン酢たこ焼きは?」、「いや、大阪は本場なんだからオーソドックスにしよう」とあーだこーだと言いながら楽しそうに選んでいる。でも、たこ焼きの屋台の人の三人を見る表情が気になる。緊張、忌避、恐れが見て取れるのは何でだ?あの三人は気づいていないみたいだが、大阪に着いてから周りの人達もあのたこ焼きの屋台の店員と同じ感じで見てくる。
「如月副総隊長!買ってきました!」
佐々木君が両手に出来立てのたこ焼きを持って僕に近寄って来た。たこ焼きのソースのいい匂いがして、僕のお腹が「ぐぅ」と鳴った。
「チーズ、明太マヨ、ソース、おろしポン酢どれがいいですか?」
結局四種類のたこ焼きを買ったらしく、馬場君が僕にどの味が食べたいか聞いてくる。
三人の顔を見て「僕は残ったのでいいですよ。君たちが先に選びなさい」と軽く笑って言った。
「俺、チーズ」
「私、明太マヨー!!」
馬場君が「如月副総隊長、ソースとおろしポン酢どっちがいいですか?」と聞いてくれる。この子は本当に他人に気遣いと優しさを振りまける子だなと思う。まだ高校生なんだから、自分を優先に考えてもいいのに。
「……では、おろしポン酢のほうを頂けますか?」
「はい!」
馬場君は笑顔で右手に持っていた、おろしポン酢が掛かっているたこ焼きを手渡してくれた。
全員で「いただきます」と言い、熱々のたこ焼きを食べ始める。僕の食べているおろしポン酢が掛かっているたこ焼きは、さっぱりしていて夏にピッタリの味がする。
「チーズ、美味い」
三海君はチーズを伸ばしながら、「ハフ、ハフ」と熱そうだが美味しそうにたこ焼きを食べている。
「ねえ、蓮?私の明太マヨとソース一個交換しよ?」
「……いいよ」
二人は、お互いの器に自分のたこ焼きを入れた。
「さて、三人とも食べながら聞いて下さい」
「「「はい」」」
三人は食べながらでいいと言っているのに、たこ焼きを食べる手を止めた。
「大阪支部は日本の物語騎士団の中で、二番目に大きい支部です。一番大きいのは、勿論浅草にある本部です」
三人は僕の話を温かいたこ焼きを持ったまま真剣に聞いてくれる。話を早く終わらせ食べさせてあげたいので、僕は続けて話す。
「三人とも分かっているように、僕は海外も含め騎士の二番目に偉い人です。……その僕の小隊に予備隊員でながら配属された君たちは、良い意味でも悪い意味でも注目をされます」
「悪い意味でも、ですか?」と馬場君が遠慮がちに聞いてきた。
「はい。僕は……敵が多いんですよ。騎士は実力を重視する組織とされていますが、悲しいことにそれは違います」
佐々木君はとても首を傾げながら不思議そうに「え?でも如月副総隊長は正隊員になったばかりで、副総隊長に任命されましたよね?」と聞いてくる。
「獅子神総隊長は実力で選んだ事でしょうが、他の人は違います。これはあまり知られていない事ですが、僕の家は昔華族だったんですよ」
馬場君と佐々木君は口を大きく開け驚いている。三海君は僕の言っている意味が分からないのかポカンとしている。
「蓮、雪菜。華族って何?」
「中学の歴史で習っただろ」と馬場君が呆れながら三海君に説明した。
「だから、如月副総隊長のお家あんなに大きかったんですね!」
佐々木君はキラキラとした目で見てくる。真剣な話をしているからか、街の人達の会話がやけに耳に入ってくるくる。
「まあ、それもあり僕は副総隊長を任命されました。でも、僕は如月の……養子、なので。それをよく思わない元華族や国の上層部が僕を嫌っているんですよ。なので、僕を嫌っている人達が君たちに嫌がらせをするかもしれないので、気を付けて下さい」
僕は三人に責められるかもしれないのと思い、視線を地面に向けた。気温は35℃と暑いのに、この場は冷え切っている感じがする。「ミーン!ミーン!」と鳴くセミの鳴き声が普段よりも大きく聴こえる。
「それって、如月副総隊長なんにも悪くないじゃないですか!!」
「そうですよ」
馬場君が「如月副総隊長、俺達を見てください!」と静かに言うので、僕は馬場君達を見る。三人は僕を力強く見て、ニッコリと笑ってきた。
「アレンも雪菜も俺も如月副総隊長が副総隊長でなければ、今ここにはいません。俺達は貴方に助けられたから、こうやって笑っているんです!!俺は、如月副総隊長に二回も助けて貰いました!だから、今度は如月副総隊長を助けます!」
……二回?もしかして、馬場君が昔助けて貰ったという隊員は僕……だったのか?僕は、昔馬場君に合っていたなんて、覚えていない。馬場君を助けたあの頃は……。
「私達が凄い予備隊員になります!そうすれば私達の師匠である如月副総隊長が、すごいってことになりますよね?」
少し前まで泣きそうに何もできないと悔しそうに我慢していたあの佐々木君が、ここまで強い瞳をする子に成長しているとは知らなかったな。
「俺達、まだ子どもだけど……如月副総隊長を手助けすることはできます」
三海君までこうやって、他人に関心を寄せ優しくできるように成長するとは……。僕は、良い部下を持って幸せだな……涙が出てきそうだ。
「三人ともありがとうございます。いつの間にか、こんなに成長しているとは思いませんでしたよ。さて、話もここまでにしましょうか。せっかくのたこ焼きが、冷えちゃいますからね」
残っているたこ焼きを一瞬みて、再度馬場君達を見てにこりと笑う。この子達の為に、僕の出来る限りの支援をして三人を強くする。
たこ焼きも食べ終わり、観光をしながら大阪支部へ行くことに。
三人は楽しそうにウィンドウショッピングを楽しんでいる。
「あ!あれ可愛い!」、「喉乾いた」、「あの靴いいな」と3人は「あはは!」と笑い大阪を楽しんでいる。理由は不明だが、やはり僕達は街の人たちに避けられている。
「主も色々大変なのだな」と外では喋らないようにと言って聞かせていた白龍が小声で話しかけてきた。
僕は笑顔でウィンドウショッピングを楽しんでいる三人を見ながら「人間色々あるんだよ」と白龍に言う
「……そうか」
白龍は約束を守るようにまた喋らなくなった。
ウィンドウショッピングをそこそこに切り上げ、大阪支部に着いた。
大阪支部は本部と違いどこかぴりついた空気だ。
「遅かったっすね!待っていたんすよー?!」と大阪支部の入口で半泣きをした木田が、この間の誘拐犯のアジトで保護した子どもを抱っこしながら待っていた。子どもは泣いていたのか目を赤くしながら僕を発見し「ぱぱ!ぱぱ!」と両手を広げ喜んでいる。
ぱぱ呼びをされた僕を四人が驚いた顔をし、子どもと僕交互に見ている。
僕は周りの反応は無視し「……木田。お前はまだしも、何でその子までここにいるんですか?」と聞く。
「最初は、検査をする為に治療部隊と研究部隊が面倒見ていたんです。検査には何も以上無く普通の人間と分かったので、養護施設に送られたっす。……でも、その施設で逃げる、暴れる、泣くということで面倒見れないということで、物語騎士団で何故か面倒見ることになったっす」
「それは、分かった。僕は何でその子が、大阪支部にいるのかを聞いている」
馬場君達はハラハラと事の成り行きを黙って見守っている。そして、僕は……嫌な予感がする。心がざわつく……。この予感が外れる事を願うばかりだが、最悪なことにはずれはしないだろうな。
「……それで、あの……最初に見つけた如月副総隊長に、任せようって……その、如月副総隊長抜きの、……総会議で決まりました」と木田は顔を青くしながら、気まずそうに言ってきた。
「チッ!どうせ、言い出したのはあの筋肉達磨の獅子神総隊長だろ?」
僕は木田を思い切り睨みながら、わかってはいるが念の為首謀者を聞く。
「えっと、……あの……そう、です」
「……総会議で決まったのなら、仕方ないですが従いましょう」
木田に抱っこされている子どもはずっと「ぱぱ!」と言いながらキャッキャッとしている。
「それで?本部で待っていないでなんでここに連れて来たんですか?」
「子どもは保護者の近くにいるのが……その……一番いいから、と獅子神総隊長が……」
僕は大阪にいる為、反論を諦め「……はぁ。分かりました。とりあえず、中に入りましょう。その子は木田が抱っこしているように」と投げやりに言った。
「……はいっす」
ドアを開け中に入ると突然、「弦ちゃん!!」と呼ばれ長髪の隊員が思いきり僕に抱き着いてきた。そのせいで、僕は少しよろけてしまう。
「美波、久しぶり」
僕に抱き着いて来たのは、相田美波26歳でさらと同じく僕の同期だ。身長は175㎝だ。
「弦ちゃん、私の連絡全っ然!返してくれないから夜毎日泣いているんだからね!」
「はいはい。取り合ず、こいつらに自己紹介しろ」
美波は僕をずっと見ながら「ちゃんと私の話聞いてよ……。ふぅ、私は相田美波よ。弦ちゃんとは同期よ」と言いながら、長い黒髪を右手でファサっと薙ぎ払った。
「ちなみに、美波は男性でここ大阪副支部長の第三補佐官です」
四人は、美波を見て有り得ないとばかりに驚いている。
まあ、女性に見えて、男性だとは流石に驚くよな……。




