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騎士団なのにやる気ゼロ!?最年少副総隊長は、今日も未完の物語を封印する  作者: 苺姫 木苺
第1章 東京編

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26/30

切り裂きジャックを討ち取った後……。(改稿8/26)




ジャック・ザ・リッパーを倒したことを知らせなければいけないので、先ずは佐々木君のスマホに連絡することにした。だが、交換した服のポケットに入れっぱなしだったのを思い出す。

「最悪……生徒達が避難している教室をしらみつぶしに探すか」

(ぬし)、我が眠っている間に女子(おなご)になったのか?」

白龍がふざけた事を言ったので、軽く刀をはたいた。

「なっていない。そういえば、お前何でずっと眠っていたんだ?」

「力の使い過ぎで、休息をして居ったのだ」

「ふーん。じゃあ、また眠るのか?」

毎度眠られると本当に困る。せっかく強力でも、肝心な時に使えないんじゃ意味がない。


「いや、今回は大丈夫だ。前回よりも(ぬし)が……いや、何でもない」

一瞬胸の奥がざわついた。何か言いかけて飲み込まれた言葉……自分の力の正体に関わるものかもしれない。けれど今は問い詰める余裕はなかった。

「そうか」と返事をして前を向く。白龍が何か言いかけたが、あまり気にすることではないだろう。

だしっぱなしになっていた白龍の分身体を戻す。前回みたいに身体が重く感じる事は無い。だが、精神的疲労はある。



この学校を知らないので、白龍に人の気配が固まっている所を探してもらう。

(ぬし)は刀使いが荒いぞ!!」と白龍が身体である刀をブルブルと震わせ、僕に文句を言ってくる。

「はいはい。そんなことはいいから早く探せ」

白龍の文句をスルーし、無理矢理探させる。今この瞬間も生徒達はジャック・ザ・リッパーが襲ってくるのではと恐怖しているだろうから。それに、倉田も心配だ。

「はぁ……そのまま真っ直ぐ進んで突き当りだ」

「分かった」

白龍に言われた通りに走って真っ直ぐ進んでいると、教室プレートに視聴覚室と書かれている。

ここが三海君が言っていた場所かと思い、開けようとドアに手を掛け横に引こうとした。だが、鍵が掛かっているのか開けることは出来なかった。

なので、僕は大声で「安心してください!僕は物語(ライブラリー)騎士団(ガーディアン)副総隊長の如月です!皆さんを助けに来ました!」と言った。

すると鍵が開く音がした後、直ぐに「ガラッ」とドアが開かれた。

「如月副総隊長!無事でよかった……あの!」と安堵した三海君が現れた。三海君はここを選び、他の生徒達を護っていたのかもしれないな。視聴覚室の中をざっと見ると、不安そうに怯えている生徒が三十人くらいいる。

三十の視線が一斉にこちらに向けられる。恐怖と期待が入り混じった眼差しに、背負っている立場の重さが改めて突き刺さった。

怪我をしている子がいるからか、廊下と同じく微かに血の匂いがする。


遠目で見た限りでは、何人か怪我をしているが命の危険はないな。ある一人を除いて……。

「分かっている。倉田のことですよね?佐々木君は?」

「え?雪菜は他の所です」

三海君は僕の質問の意図が分からないようで、キョトンとした。

「そうですか……三海君のスマホをお借りしても?」

「え?はい」と不思議そうにしながらも三海君はポケットからスマホを取り出し僕に手渡してくれた。

「ロック番号は?」

「0075です」

0075を打ち込み、スマホを開き電話のアプリマークをタップする。

騎士(ガーディアン)が掛けられる緊急用の電話番号を入力し物語(ライブラリー)騎士団(ガーディアン)に電話を掛ける。この番号は、多摩支部の件もあり騎士(ガーディアン)なら誰でも緊急連絡をできるよう整備された。

直ぐに「プルル」と鳴り、物語(ライブラリー)騎士団(ガーディアン)に繋がる。

「もしもし、僕は副総隊長の如月です。……ええ、はい。……一級です。……医療部隊隊長の木田さんに繋いでください。……はい。……如月です。今から言う高校に至急来て下さい。……返船高校です。では、つき次第校内に入って来て下さい。待っています」

話終え通話を切り、スマホを三海君に返した。

「あの、倉田は……」と、心配そうに三海君が僕に聞いてくる。

「木田隊長が、こちらに来てくれるので大丈夫です。木田隊長なら治せます。あの人、治療用の物語武器を驚異的な95という適合率を持ってますから」

三海君は木田隊長がこちらに治療に来てくれると聞いてホッとしている様子。

「そうですか」

「さて、皆さん。もう悪い奴はいないので安心してください。あ、三海君佐々木君にもう大丈夫という事とここに来るよう連絡をお願いします」

「はい」

三海君はスマホで佐々木君に連絡をしてくれた。直ぐに佐々木君が走って来てくれ、服を元に戻すことに。


「制服、本当に助かりました。すごく役に立ちましたよ」

僕は元の服装に戻れてホッとする……これ以上他の人に女装を見られるなんて嫌だからな。

「いえ!!私の制服が役に立って良かったです!」

佐々木君の目を見て「玄関で治療部隊の木田隊長が来るの待っていてください。来たら重症の倉田の所に案内して下さい」と指示をした。佐々木君は「はっ!」と敬礼をし、廊下を全速力で走っていく。

「直ぐに救急隊も来ると思いますので、皆さんはこちらで待っていてください」

僕は柔らかい声で視聴覚室にいる生徒達に声を掛けた。

「三海君もここで待機。僕は一階に行っていきます。何かあれば連絡ください」

「はっ!」と三海君が敬礼をした。



微かな血の匂いがする廊下を歩きながら、周りを見る。ジャック・ザ・リッパーは大勢の生徒をナイフで斬りつけたのだろう。床や壁に無数の血痕が乾き始めている。

鉄臭い匂いがまだ漂い、乾ききらぬ血がべったりと黒光りしていた。蛍光灯に照らされるたび、不気味な赤黒さが浮かび上がる。

今回の事はニュースになるだろうな……これで、また僕の仕事が増えると思うとため息しか出てこない。

仕事が増えるのが嫌すぎて「副総隊長辞めたいな」とボソッと呟いた。本気でそう思っているわけじゃない。ただ、重責に押し潰されそうな気持ちが口をついて出ただけだ。

階段を上がって来ていた馬場君と遭遇する。

「あの、如月副総隊長。今のって……」と馬場君が遠慮しながら聞いてきた。

「ああ、聞かれちゃいましたか」

「あの、はい」

何故か馬場君が少し動揺している。

僕は「辞めませんよ」と馬場君にニッコリ笑い言う。

「何だ……良かったです!俺、如月副総隊長の補佐官になりたいので」

その真っ直ぐな言葉に、思わず胸が熱くなる。こんなにも自分を信じたいと願う人間がいる――その事実が、どんな報告書よりも心を支えてくれる。

こんなストレートに僕の補佐官になりたいと言われたのは、初めてだったので照れるな。僕の心が暖かくなった気がした。

「あれ?如月副総隊長?顔赤いですが……」

即座に「見間違いです」と言い、僕は顔を横に向く。これは決して照れ隠しではない!

白龍が「(ぬし)、照れておるな?」と喋ると、馬場君がギョッと刀を見る。

「刀が喋った」

「小僧、喋る刀を初めて見たようだな」

「え、あ、はい」

白龍が僕以外と嬉々として喋っているのを見ると、こいつはお喋り好きの刀というのが分かった。

「我は意志を持つ刀なのだ!!」

「え!?すごいですね!!」

馬場君が白龍を褒めちぎっているせいで、白龍が調子に乗り始め「人型にもなれるぞ!」とべらべら話し始める。

「へー!!俺そんなすごい刀初めて見ました!」

「だろ!だろ!」

そろそろ白龍がうざったくなってきた所なので話を切ろうとしたら、階段の下から駆け足の2人の足音が聴こえてくる。


「如月副総隊長に蓮!?」

階段を駆け登って来たのは、汗をダラダラとかいている佐々木君と木田隊長だ。佐々木君が階段上に僕と馬場君がいるとは思わなかったのか目を大きく見開きびっくりしている。

「如月副総隊長、患者は?」と木田隊長が倉田の事を聞いてきたので、「右に曲がって突き当たりの視聴覚室です」と言った。

「分かりました!」

木田隊長は返事をするなり佐々木君を置いてけぼりにし走っていく。置いてかれまいと佐々木君は頑張って、木田隊長の背中を追いかけて行った。



「さて、木田隊長も来たので僕は本部に戻ります」

「あ、はい!」

「ここが落ち着き次第家に帰りなさい」と馬場君に指示を残し、僕は高校をあとにした。



夕方とはいえまだ少し強い地面の照り返しを我慢し、僕は汗をかきながら本部に戻って来た。

街路樹の影が長く伸び、車の排気と熱気が混ざり合って肌にまとわりつく。人々の喧騒は日常を取り戻しているのに、自分の心だけは戦場の延長に置き去りにされたままだった。


本当ならもう自宅に戻れるはずったのに……。

木田が本部の入口で立って待っていた。

「如月副総隊長、お待ちしてました」

「……はぁ。さっさと報告書を仕上げて帰りましょう」

肩を落としながら、早歩きで廊下を歩く。


副総隊長室に着き中に入った。

作業をし机に近づくと、机の上には1枚の紙が置いてあった。

紙にはこう記されている「3日後から大阪に出張しろBy獅子神」と。

獅子神総隊長の指示は、いつも唐突で容赦がない。だがその裏には必ず狙いがある。大阪支部に潜む“裏切り者”を自分に暴かせようとしているのかもしれない。


「……はい?」

獅子神総隊長の伝言が書かれた紙を強く握り締め、ここにいない筋肉達磨に殺意が湧く。獅子神総隊長は、人使いが荒すぎろ。



裏切り者も分かっていないのに、3日後からは大阪か……。いや、もしかしたら、獅子神総隊長は大阪にも裏切り者がいると考え僕に出張と指示したのかもしれない。

正体の掴めない裏切り者か……。






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