高校で事件発生?!(改稿8/25)
事後処理を終え、帰宅出来たのは夜22時だった。
外は月が出て、街を街灯が明るく照らしている。
家に着き玄関を開けると、「あ、如月副総隊長!お帰りなさい」と佐々木君が僕を出迎えてくれた。
「ただいま帰りました。どうしたんですか?」
「あの、相談したいことあって……なるべく人がいない所がいいです」
佐々木君の表情はどこか暗く見える。いつも明るい佐々木君が暗い表情をしているのは珍しい。
「……なるほど。では、僕の部屋で聞きましょう。木田も同席させますね」と告げた途端、佐々木君はオロオロと落ち着きを失い、口を開きかけては閉じる動作を繰り返した。何か様子が変だ。
「あ、あの…2人だけがいいんです」
佐々木君が俯きがちにチラっと僕を見てくる。
「……分かりました。本来こんな時間に男女で同室は好ましくありませんが、今回は特例としましょう」
木田に聞かれたくない話しでもあるのだろうか?でも、木田に聞かれたくない話ってなんだ?
僕と佐々木君は足音を立てないよう階段を上り、二階にある僕の自室に入った。
「そこの椅子にどうぞ。で、相談とは何ですか?」
「あ、はい。木田さんが……」と佐々木君は話しずらそうにしている。
「木田がどうしたんです?」
僕は佐々木君が喋りやすいように声を柔らかくした。
「様子が可笑しいんです。……如月副総隊長が行方不明の時に、度々帰りが遅くなったりしてたんです。それに、隠れて誰かと電話してたりとか……」
「木田は僕の補佐官なので、仕事が忙しく帰宅が遅くなっただけだと思いますよ。電話はきっと彼女とか私的の会話を聞かれたくなくて隠れてたんですよ」
「あの、…でも……そ、うですよね。考えすぎでした」と佐々木君はさっきと比べ表情が少し明るくなった。
木田に限って裏切ることはない。短い付き合いだが、資料整理を徹夜でこなしたり、現場では一歩先を読んで動いたり。不真面目そうに見えて、僕よりよほど真面目で努力家だ。
翌朝、早めに起き一階にある木田の部屋に音を立てずに静かに向かった。早朝だから、高校生のあの子たちを起こしてしまったら可哀想だからな。
「木田?起きていますか?」と部屋の前から木田に声を掛けた。
「え?如月副総隊長??」
「入りますね」と襖を開け部屋の中に入り、木田をジッと見つめる。
まさか、とは思うが胸の奥で何かがかすかにざわめいた。
「あの、如月副総隊長?」
木田は僕が来た理由が分からないからか、キョトンと、不思議そうに僕を見てくる。
木田の部屋からは庭が見えて、庭には鳩が池の水を飲んでいる。
「お前彼女か誰か知らないけど、隠れて電話するなら佐々木君達に見られないところでしろ。お前がコソコソして怪しいとか相談されたんだぞ」
「え?!まじっすか?!」
「この家にいるんなら、そういう女関係は持ち込まないかちゃんと隠せ」と言い残して、自分の部屋に戻る。木田の驚きぶりから怪しい所は無かったから、木田の挙動不審は佐々木君の気にし過ぎみたいだな。
今日は久しぶりに全員揃っての朝食で、居間が賑やかで現在ゴタゴタしているがこの平和な日常がいいな。
「如月副総隊長、今日って用事ありますか?」と馬場君がお箸をテーブルに置き聞いてきた。
「いつも通りの書類仕事だけど、どうしました?」
「僕達の担任が下宿先の人とお話したいから今日来れるか聞いてくれと昨日聞かれて……」
「三人とも転校したばかりだから、担任の先生も心配しているんですね。……午後三時に行きますと伝えて下さい」
三海君は顔をしかめ「やばい」と呟いた。何がやばいのだろうか?
「アレン、あれだろ~。どーせ、授業サボっているのバレるとか思っているんだろ?」と木田が箸を三海君に指しケラケラと笑っている。真面目そうに見える三海君もサボったりするのか。
「木田さん、よくわかりましたね!アレンって興味ない授業すぐサボるんですよ~。私も蓮もちゃんと受けろって言っているんですけど、これがこれっぽっちも聞かないんです!!」
「うるさい」
「はあ?!うるさいってなによ!!」と佐々木君がキレ始め三海君と喧嘩をし始めた。馬場君はいつものことだからなのかスルーしている。
「はいはい。喧嘩しない。ご飯も食べ終わったので、僕は仕事を早めに終われるようにもう行きますね」
仲裁も軽くし、食べ終わったお茶碗や食器を重ね持ち僕はすっと立ち上がった。
「え?!如月副総隊長!俺まだっす~」
「いつも通りの出勤時間で大丈夫ですよ」と木田を安心させ家を出た。
外は今日も暑く、アスファルトからは熱気が出ているように感じる。肌に当たる風も生暖かく、涼しさは微塵も感じられない。
本部へと着くと夜勤明けの者達が私服に着替え帰るみたいだ。
「あ、ゆずちゃんおはよー」と目の下に隈が出来たさらが弱弱しい声で挨拶してきた。
「……お前、書類仕事を徹夜でしたのか?」
「終わらなくってー」
「その書類仕事壊滅なのどうにかしろ。で?期限が昨日までの書類作成はできたのか?」
僕は呆れながらさらに聞くと「なんとかー」と、渡された書類を片手で持つ。副総隊長室に行く前に、、白龍を調べて貰うため置いてきた研究室に向かう。
さらは今日が非番の日なので、このまま帰宅するんだろう。
副総隊長室でさらに渡された書類を見ていると、紙に完結した物語から登場人物が出てきた可能性ありと書かれている。
今まで未完の物語からしかモンスターも登場人物も出て来なかったのに、完結した物語からも出てくるとなると対処が追いつかない。これは、かなりの大事だ。
「……裏切り者の件に、完結している物語から登場人物が出てきたかもしれない件。何でこんな同時多発なんだよ」
頭を抱えながら色々考え、さらが作成した誤字脱字だらけの書類を眉間に皺を寄せながら処理していく。
なんとか14時までに処理し終え、馬場君達の通っている高校へ行くため急いで準備をする。
「ぐぅ」とお腹から音が鳴った……。食堂でご飯を食べている余裕は無い……。
「高校行く道のりで、買い食いでもするかー」
コンビニ行く途中で見知らぬ男性のお巡りさんから話しかけられた。そのお巡りさんの顔には、汗が滲んでいる。この暑い中汗をかかない人はいないから、当たり前だ。
「如月副総隊長!お疲れ様です!」
目の前のお巡りさんは、暑さに負けず元気に僕に挨拶をしてくる。
「お疲れ様です。えっと、どうかされたんですか?」と僕は不思議に思い理由を聞く。
「はい!最近この辺りで切り裂き事件が多発されていますのでお気を付けてとお伝えしたくて」
「そうなんですね。情報を教えてくれてありがとうございます」
切り裂き事件か……最近は物騒なんだな。
男性のお巡りさんに挨拶をしその場を離れた。
コンビニでおにぎりを買って外で食べ、馬場君達の通っている高校に行くとちょうどいい時間だ。
学校に着くと、校門前に馬場君と佐々木君が僕を待っていた。
「如月副総隊長!来てくれてありがとうございます。隊服じゃないんですね」と馬場君が聞いてくる。
「はい。もう勤務は終わっていますから」
私服に着替えてはいるが、白龍は持ってきてはいる。先日誘拐されたばかりだ、自衛の備えは欠かせない。
「そうなんですね」
「私達の担任の先生の所に案内しますね」と佐々木君が学校を見て、先導をしてくれる。
学校の中に入ると懐かしく思う……サボったり保健室に運び込まれたり……。
この廊下は走らないという張り紙も、だいたい学校にしか貼られていないから久しぶりに見る。心が懐かしい気持ちでいっぱいになる。
「如月副総隊長?どうかしましたか?」
「馬場君、何でもないですよ」
三人で廊下を歩いていると、前方に男の子が佐々木君と馬場君の邪魔をするかのように腕を組み仁王立ちしている。
「おい、佐々木に馬場!後ろのそいつが騎士団の副総隊長か?」と僕を指さし睨みつけてくる。子どもだからといって、知らない人からそいつ呼ばわりや指を指されるのはいい気分がしない。
「倉田、俺達の副総隊長に無礼を働くな」
即座に馬場君が倉田という学生に怒ってくれる。
「そうよ!」
「はあ?!マジでこいつが副総隊長なのかよ。これなら、俺でも副総隊長に簡単になれちまうなあ!!」
身長が高く、肩幅も広い。その立ち方や薄く笑う口元には、自分の強さを疑わない傲慢さが滲んでいた。
「君、騎士になりたいのかな?」
「なりたいんじゃなくてなるんだよ!!」
「そう。じゃあ、試験通るといいね」
物語騎士団の試験は筆記と体力測定と性格判断で入団できるか出来ないか判断される。だが、今のこの学生の性格では通るのは少し難しい。
「俺が通らないわけがないだろ!!」と、倉田という学生が僕の胸ぐらを掴んできた。短気が一番性格判断で落とされる。……さすがに、我慢の限界になってくる。
「ちょっと!倉田!」
「倉田!如月副総隊長を離せ!」
佐々木君と馬場君が怒りをあらわにし、二人は僕から倉田という学生を力ずくで離してくれる。
「年下に護って貰わなきゃならない副総隊長ってだっせぇな」
倉田という学生は僕を挑発的な目で見てくるが、そんな安い挑発に乗るわけがない。
この目の前の少年は単純な力が正義で強いとでも思っているのだろうか?僕を侮辱し何がしたいのかよく分からない。
「君は一般人だから、手を出さないんだよ」
「はあ?!」
「静かに!!」と倉田に黙るよう僕は少し声を強め、視線を僕達が通ってきた下駄箱の方に向ける。
学生たちの笑い声が交じる和やかな空気の中、耳の奥をかすめるような微かな音がした。
「如月副総隊長?」と馬場君が不思議そうに首をかしげる。下駄箱はこの職員室からかなり離れているせいか、彼や佐々木君には届いていないようだ。
もう一度耳を澄ませた瞬間、「おい!なんだよ!!」と倉田という学生が大声を出し邪魔をしてくる。
「黙れ!お前の声で聞こえない!」
賑やかな声の隙間を縫うように、確かに人の悲鳴が響いてきた。




