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騎士団なのにやる気ゼロ!?最年少副総隊長は、今日も未完の物語を封印する  作者: 苺姫 木苺
第1章 東京編

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舐めてる奴は遠慮なくぶっ潰す(改稿8/22)



未完の封印を終え、クロとシロが待つ所に古びた本を抱えて戻るとそこには信じられない光景が広がっていた。


「……は?」


クロとシロの首には、明らかに騎士の証である紋章のペンダントが光っているにも関わらず、10人の騎士達が剣を構えて僕のパートナーに睨みを利かせている。

胸の奥がカッと熱を持つ。クロとシロに刃を向けられるくらいなら、自分が斬られた方がましだ――そんな怒りが喉までせり上がる。


僕のパートナー達と騎士(ガーディアン)が何故睨み合って緊迫した空気が漂っているんだ?


物語を封印し体力が減りイラつきを抑えながら、クロとシロを見る。

「クロとシロ落ち着きなさい」

二匹に落ち着くよう柔らかく声をかけながら、僕は敵意むき出しの騎士(ガーディアン)達に視線を向けた。

「で?何故貴方達騎士(ガーディアン)が僕のパートナーに武器を向けているんですか?簡潔に述べよ」

若干苛立っているのを隠し聞いてみたが、驚きの反応が返ってきた。

隊員の1人がふてぶてしい顔で鼻で「ふっ」と笑って返して来たのだ。


「ガキが俺達騎士(ガーディアン)にそんな口の利き方で許されると思っているのか?俺達は弱ぇお前らをわざわざ、護ってやっているんだぞ!!」

耳の奥で「カチリ」と何かが切れる音がした気がした。頭では抑えろと分かっているのに、心臓は早鐘を打ち続ける。


この騎士(ガーディアン)達は本物の騎士(ガーディアン)か?副総隊長である僕にこんな態度普通は取れないだろ。騎士(ガーディアン)は規律がしっかりしていて、上官に楯突いたら罰則があるのにこいつら分かっていないのか?


僕は静かに一歩、前に出る。……怒りを抑え込みながら。

「階級と名を答えろ。それと、何故現着が遅れた」

声は静かだったが、僕の中では既に臨界点を超えていた。だからこそ、あえて抑えた。氷のように冷たい言葉で、確実に潰すために


「は?ガキのお前には関係無いだろ!黙れよ」

この男の隊員は余程のバカなのか?それとも自殺志願者なのか?

……ああ、なるほど……。こいつらは規則を理解していないバカなのか。


「答える気が無いのは分かった」

騎士(ガーディアン)の規則では、階級と名を問われたら民間人やたとえそれが新入り相手でも必ず答える義務がある。ましてや、副総隊長である僕が問うたなら尚更だ。

物語の登場人物が化けている可能性があるから、しっかり自分の身分を言う必要がある。

「これだけは言っておく、本日の15時に副総隊長室に全員必ず出頭するように」

そう言い残し、怪我や倒れた建物に取り残されている人達の救助を優先することにした。

こんな奴らを相手にしているより、怪我人を助けるのが先だ。


あいつらが命令に従わず僕の部屋に来なくても、顔はしっかり覚えたので問題は無し。


それから約10分後、消防と救急、それに自衛隊まで到着して、本格的な救助活動が始まった。

サイレンの残響と共に赤色灯が瓦礫に反射し、現場全体が慌ただしい熱気に包まれた。人々の叫びと怒号、金属のぶつかる音が混じり合い、戦場と大差ない喧噪だった。



でも、可笑しい……。


僕は救助で忙しく封印完了の報告は騎士(ガーディアン)団本部にはしていない……なのに、救助が開始されるのは誰かが勝手に封印完了報告を本部にしたっていう事。

誰が報告を上げたのか……必ず突き止める必要がある。あの場にいた者しか、知るはずがないのだから。


「舐めたことしてくれるな」と知らず知らずのうちに低い声を出していた。

僕の手柄を横取りするとは、あの隊員達も怖いもの知らずみたいだな。

僕は消防の方達に救助を任せて、騎士(ガーディアン)団本部に戻ることにした。



本部に戻り副総隊長室のソファーに座り、あの連中が来るのを待っていた……。部屋の中は僕の息遣いと、壁に掛けてある時計の「カチッカチッ」という音しか聞こえない静けさだ。

時計の針が一つ進むたびに、胸の奥に積もる苛立ちが膨れ上がる。静けさは安らぎではなく、じわじわと神経を削る拷問だった。


時計を見れば既に15時30分を回っている。


「ふーん…… 副総隊長の命令を無視する。……本部所属だからと天狗になっているわけか」

立ち上がってドアを開けようとしたら、部屋のドアがノックされる。あいつらがようやく来たのかと思ったが、ドアを「ガチャッ」と開け現れたのは、呼んでもいない木田だった。

「あれ?如月副総隊長??何でそんなにキレてんすか??」

「お前は呼んでない」

眉を寄せ木田をギロリと睨んだ。睨まれた木田は飄々としているのがさらに僕をイラっとさせる。

「めちゃくちゃキレてるっすね~。敬語消えてるっすよ~」

木田のことは無視し騎士(ガーディアン)の隊服に着替え、クロを呼びあいつらのいる所に案内させた。

廊下の蛍光灯はいつもより冷たく、床に反射した自分の影が長く伸びる。

怒りの沸点はとうに越え、廊下の空気のように僕の心も氷のように冷えきっていく。


そして、訓練場。


上官の出頭命令を無視したあいつらは、なんと訓練場で何事もなかったかのようにペチャクチャ喋ってサボっていた。しかも周囲にはあの10名以外も訓練場で吞気にサボっている……休日に緊急出動した僕を差し置いて、ダラダラしていると?怒りが僕の頭の中全体を埋めつくしていく。


規律も緊張感もない。ただ惰性で動いているような空気が、訓練場全体を支配していた。


さすがに……許容範囲を越えている。

こんな隊員が僕の部下なんて、恥ずかしくて国民に顔向けができない。

外の空気が、窓の隙間から染み込んだように、重く芯に忍び込んできた。


「こいつら、……木田、レベル5の封印物語を適当に一冊持って来い」

木田を一瞬見て、再びダラけ切っている隊員を睨む。

「えぇ?!如月副総隊長??何するつもりっすか?!」

「上官命令だ」と木田には有無を言わせず、レベル5の封印物語を取りに行かせた。

封印物語とはそのままの意味で封印された物語だ。レベル5とは10段階中の真ん中の危険度だ。通常、訓練に使うのはレベル4まで。だが今回は、レベル5で反省させる。舐め腐っているあいつらには、丁度いいお仕置きだろう。



数分後木田が額に少し汗をかき、レベル5の封印物語を持って戻ってきた。


「お前……アレ、なの持って来たな」

僕は木田が持ってきた、封印された未完の物語を見てうげっというような表情をした。

「そうっすか?キモいっすけど滅多に怪我や死ぬことはないと思ったんで、これにしたんすよ~」

笑みを浮かべている木田から本を受け取り、「ベリッ」と封印札を剥がした。因みに、訓練場だけにシロに結界を張らせたので周りには被害はでない……これから、訓練場はすごいことにはなるが。



封印札を剥がしたからモンスター達と異臭が本から溢れ出てきた……僕と木田は訓練場がよく見える建物の二階に移動し、舐め腐っているあいつらを見ている。


「うわあーー!!巨大なナメクジだー!!」

「くっせぇ!!」

「キモいキモい!」

そう、訓練所に異臭と共に現れたモンスターは巨大なナメクジだ。

床に粘液が広がり、靴底が「ヌチャッ」と嫌な音を立てる。生臭さは訓練場の隅々まで広がり、吐き気が込み上げるほどだった。

ここは訓練場から少し離れているのに、生臭い匂いが少し漂ってくる。木田が持って来たのは、”ナメクジ王国”という何とも形容し難い未完の物語だ。


ナメクジ王国の筆者は何をもって執筆していたのだろう?読んだことがあるが、ナメクジが大好きということしか伝わって来なくて読むのが大変だった。


訓練場が見える建物の二階から、鼻を押さえ慌てふためいている隊員達の様子を冷たい目で見下ろす。

ナメクジの粘液は徐々に服や武器、肌も溶かしてしまうから、動きが遅くても侮れない。

隊員達が刀で巨大ナメクジを攻撃しているのを見て、僕はどんどん顔から表情が消えていく。

ヌメヌメのナメクジに刀での攻撃が通らないのは、普通分かるだろ。


「うわー、あいつら大変そー」と木田が頭の上で腕を組み、ニヤニヤとしている。

「持って来たのはお前なのに、すごい他人事だな」

木田に一瞬目線を向け、再びバカな隊員達に視線を戻す。

「そりゃそうっすよ~。だって俺はしっかり訓練してるんすから〜」と銀髪に染めている髪をいじりながら、木田はあいつらをチラッと見て嘲笑している。


ふざけた奴だな……。


「何でお前みたいなのがモテるんだろうな」

「180㎝の高身長でイケメン。それに如月副総隊長の補佐っすよ? モテないわけがないっす」

その自信はどっから来るんだろうな……。


そうこうしているうちに訓練所では、巨大ナメクジも数を増やし異臭もすごいことになっている。

隊員達も巨大ナメクジに囲まれ、刀をむやみに振り回し体力だけが減っていっている。


「……で、如月副総隊長はなんで総隊長にならなかったんすか?打診あったって聞いたっす」

面倒だから、というのは半分本音、半分は言い訳だ。

本当は――背負わされる未来から、ずっと逃げ場を探しているだけなのかもしれない。

「唐突だな……。目立ちたくないのと面倒。副総隊長だって断ったはずなのに、勝手にさせられたし」

そう、僕は副総隊長になんかはなりたくは無かった!!組織のナンバー2ということで礼儀も必要だから、敬語でしゃべるようにとか気を付けなければならない……これも面倒だ。上司が礼儀もへったくれもない奴だから、僕がこんな役回りに……あのクソ筋肉め……いずれ、思い知らせてやる。


訓練場は阿鼻叫喚となっていて、現状良くはならないと判断した。

本部所属の隊員がこんなダラけきっていて大丈夫なはずがない。


「……仕方ない。これ以上は見てるこっちが恥ずかしい。副総隊長のメンツで、助け舟を出してやる」

命の危険のある任務をこなす隊員がこれでは、人や財産を守れるはずがない。こんな隊員がいるのが腹が立つ……僕は、副総隊長として隊員達を甘やかしすぎていたのかもしれないな。



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