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新・枯れて候ふ  作者: ボスガス爆発
6/9

敢えて主とならず客となる

★敢えて主とならず客となる(あえてしゅとならずきゃくとなる)


《自分が中心にならずに受身でいるほうが無難だということ》



(ことわざ辞典ONLINE.より)

 花金(ハナキン)(花の金曜日――文句ある?)、深夜のブラウン管(令和は液晶画面)が、バカ笑いのみ虚しく木霊(こだま)するバラエティ番組に切り替わった途端、イラッとして音量めっちゃ下げた。


「……腹減ったな」


 TV音声は殆ど聞こえなくなり。

 床に寝そべる若が代わりに呟いた。


 ひと昔前ならカップ麺、てとこだが。

 中年に差し掛かった若の胃腸は、果たして耐え()るのか。


『ク●クパッドでケンサク!』

「えー……作んのめんどい。なんかサラッとしたヤツが……」


 仕様がないな。


 私はちょいと羽ばたき、マイ・コレクションから「アレ」を咥えて戻ると、若の眉間に突き刺した。


「死ぐっ! お? おー、噂の『マジやばたにえん』!」

『…………』

「あ、あれ?」


 涙の止め方忘れたの?

 これは「お茶漬けの素」だよ。永●園謹製……あ?!


「ウ●コ、なんで持ってんの? お前これ食えないだろ?」


 その通り。塩分がなー。医者が五月蝿くてよー。

「毎朝血圧測れ」ってめんどいよー。


 この茶漬け、中にカードが入ってるだろ。そっちがメインだ。

 ほら、コレ。


「へー、今はこんなん付いてくるのか。浮世絵カード……『東海道48(フォーティーエイト)』だっけ?」

ゴジュウサンツギ(五拾三次)!』


 ご当地アイドルみたく言うなよ。


「茶漬け、食っていいの?」

『ドンナルンマ!』※1

「『遠慮すんな』って? (かたじけな)し! よっしゃ、ちょっと食堂(した)で冷や飯漁ってくるよ」


☆☆


 丼に控え目な飯を盛って、若が戻って来た。


「さ。遠慮は無用だ。俺のために作ってくれ、ウ●コ!」

『ウ●コヲツクレト?!』


 言うなり若が寝転んだ。



 ナニしよん? 茶漬けを進呈したの(ワレ)ぞ?

 それぶっかけて湯を注ぐだけだろが。

 インコに出来るかっちゅう話だよ。



『アカンタレ!』※2

「あかんたれ?」

『ヘンジモセズニ ワンタンメン!』※3

「意味分からん」



 仕方ない。

 私も真似して横になった。

 右に左にゴロゴロして、時折受け身をとってみる。

 柔道? ハハハ。



 若は仰向けで、じっとカードを眺めている。

 早よ湯を注げや。



 ああ、敬愛する広重様。

 何年費やすか知らんけど――このカードをコンプリート出来たなら、もういつ死んでも憂いはないでござるよ。

 例えその所為で、家中()がお茶漬けのパックで埋め尽くされたとしても……。



 ふと。

 カードをひっくり返して凝視していた若が、パッケージを指差して言った。


「ここの応募マーク三枚集めて送ると、『カードフルセット』プレゼント! だと」

『………………?』

「毎月千名様に! 抽選だけど、すぐ当たりそうじゃん?」


 え――オレもう死ぬ?

※1 ジャンルイジ・ドンナルンマ。イタリアの人。

  仏のプロサッカー『リーグ・アン』の『パリ・サンジェルマン』ちゅうチームに所属する選手。ポジションは「キーパー」。


※2 『あかんたれ』(1976年)。東海テレビ制作の昼ドラ。


※3 同主題歌(鶴岡雅義と東京ロマンチカ)の歌詞より。

  こういう切り取り方すると意味不明ですが。割りと辛気くさい歌詞とも言えます。

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