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24.それぞれの夫

※最終話です。

『小さな殿下と私』のセレティーナとユリオプスが出張ってます。

 ブローディアが第二子を身籠ってから、4年後――――。

 ルミナエス城内にある王族専用のプライベートガーデンから、二人の貴婦人の楽しげな声が響き渡る。


「ふふっ! 女の子ばかりを欲しがった理由が、ディアと家族をたくさん増やしたかっただなんて……。ディアの旦那様は、とても家族愛が深い素敵な方なのね!」

「どうなのかしら……。その時は、純粋に夫の心からの言葉だと思ってしまったけれど……。こうも立て続けに懐妊させられてしまうと、ただの節操がないだけの人のようにも思えてきたわ……」

「まぁ! そのような言い方をしてはホースミント卿が、おかわいそうだわ」

「おかわいそうなのは、わたくしの方よ? 結婚生活6年目にして4人も子供を産まされているのだから……」


 そう言ってブローディアは、順調に育っている4人目が宿っている自身の腹部を優しく撫でおろす。すっかり母の顔が板についた親友が、とても幸福そうな表情を浮かべている様子にセレティーナも嬉しくなって、同じように幸福そうな笑みを浮かべた。


「今度は、また女の子かしら?」


 セレティーナの問い掛けにブローディアが、眉間に皺を浮かべ出す。


「ノティス様のあの様子では、その可能性が高いわね……」

「あらあら。やはり男性は息子よりも娘の方が可愛いと思ってしまうのかしら?」

「あなたの可愛らしい旦那様もそうではなくて?」

「ユリス様は……無事に生まれてきてくれたら、王子でも姫でもどちらでも嬉しいと言ってくれているわ。ただ……」


 話を少し勿体ぶらせながら、セレティーナも自分の腹部を優しく撫でる。


「どちらの場合でも、絶対にわたくしに似て欲しいって……」


 その話にブローディアは、呆れるように苦笑した。


「全く……ユリオプス殿下は、どこまであなたの事が大好きなのかしら」

「わたくしは、出来ればユリス様似の男の子が生まれて来て欲しいのだけれど……」

「あら、いいの? もし殿下にそっくりな王子殿下がお生まれになったら、将来的に婚約者の気持ちを試そうとして、婚約破棄騒動を起こすかもしれないわよ?」

「ブローディアは、酷いなぁー。いくら僕の子でもセレ似の子供だったら、そんなバカげた行動など絶対にしないよ?」


 急に背後から話に入って来た低い声にブローディアが慌てて、席を立ちながら振り返る。


「ユリオプス殿下、ご無沙汰をしております。この度は王太子妃セレティーナ様とのお茶の機会を作って頂き、誠に感謝申し上げます」

「そんなにかしこまらないで? そもそも先程、君達がしていた私にとって耳の痛い話を聞いてしまったら、今更かしこまられても複雑な心境にしかなれないよ?」

「あら、殿下のお耳はしっかりとダメージを受けていらしたのですか? 風の噂では、まだ一切反省されていらっしゃらないと伺ったのですけれど?」

「君まで僕を苛めるの? 勘弁してくれ……」

「ですが、『バカげた行動』と思っていらっしゃるのであれば、大分反省なさっているようですわね?」

「ホースミント卿は、毎日このような愉快な会話の切り返しを愛妻から受けているのかな?」

「ええ。ですが、夫はこの三倍は愉快な切り返しをしてまいりますわ」

「君らはある意味、お似合いの夫婦だね……」

「王太子ご夫妻の仲睦まじさと比べたら、わたくし達など霞んでしまいますけれど」


 王太子ユリオプスに対して、不敬にも取られかねない会話をブローディアが出来るのは、幼少期からセレティーナと共にユリオプスと付き合いがあったからだ。

 夫と同じように頭は切れるが6歳も年下のユリオプスは、まだどこかやんちゃな雰囲気が抜けきれない。だが、そんなユリオプスと自分と同じ年齢のセレティーナは、大変上手くやっているようだ。


「そういえば、ブローディアも今、懐妊中なのだよね?」

「ええ。ちょうど三か月目に入ります」

「4人目だっけ?」

「はい、上に娘が二人、その下に息子が一人おりますね」

「ホースミント卿は、随分と愛妻家なのだね」

「どうなのでしょうか。出来ればもう落ち着いて頂きたいのですけれど……」

「そんな事を言いながら再来年辺り君は、またお腹を膨らませていそうだね」

「殿下もセレナに無理をさせないでくださいませ」

「うーん、現時点では難しいなぁ……」


 そう言ってユリオプスは、出されたお茶を口に含む。


「でもブローディアは3人も子供を産んでいるのだから、セレにとっては大先輩だね。こちらは初産だから、色々教えてあげてね?」

「ええ。先程、その事で色々質問を受けましたわ」

「ユリス様、実は先程ディアから、新生児用のとても素敵なおくるみと寝間着をたくさん頂きましたの! 中には他国のデザインの珍しい物もありまして。よろしければ今夜ご一緒に確認致しませんか?」

「うーん……。ならば今日も頑張って早く仕事を片付けないとなぁ……。ところで、新生児用品って、そんなに種類が豊富なのかい?」


 ユリオプスのその質問にブローディアが、微妙な表情を浮かべる。


「ブローディア? 僕、何か変な事を聞いてしまった?」

「いいえ……。その、本来新生児用品は、そこまで世間には出回っていないかと思います」

「そうなのかい? でもセレの話では、かなり豊富なように聞こえたのだけれど……ねぇ、セレ」

「はい! レースがふんだんに使われていたり、とても不思議な肌触りの布で作られていたり、中でもデザインが今まで見た事が無い程のこだわりある作りで……。わたくし、あのような素敵な新生児用品は、初めて拝見いたしましたわ!」

「今まで見た事がない……」


 ユリオプスがそう呟くと、ブローディアがやんわりと控えめに視線を逸らす。


「ねぇ、ブローディア」

「はい……」

「もしかして、そのセレにくれた新生児用品って……全てオーダーメイド?」


 にっこりと良い笑みを浮かべながら、まるで面白い玩具をみつけたような目をしたユリオプスからの質問にブローディアがグッと喉を詰まらせる。

 そのブローディアの反応に自分の予想が的中したと確信したユリオプスは、盛大に吹き出した。


「ふっはっ……、あははははっ……! ホ、ホースミント卿は……愛妻家なだけでなく、大変子煩悩な方のようだね!」

「夫は……ただの親バカですわ……」


 すぐに大きくなってしまう乳幼児の日用品を、わざわざオーダーメイドまでして用意している夫の奇行をユリオプスに暴かれたブローディアは、居たたまれなくなり俯いた。


 そんな会話を楽しんでいる三人だが、今まさに次世代の王太子と王太子妃候補が母体を通じてお見合いのような状態になっている事には、この時はまだ誰も気付いていない。


 そんなブローディアが現在宿している4番目の命は、その後アナベルと名づけられ、後にこの国の王妃となり、歴代きっての良妻賢母としてその名を囁かれる事となる。

これにて『年上の夫と私』は完結となります。

2023年7月~同年11月までは『小さな殿下と私』にてオマケとして投稿してましたが、長さ的に別作品で投稿した方がいいと感じた為、一つの作品として投稿スタイルを変更いたしました。

作者都合でご迷惑お掛けして申し訳ございません……。


この後、もしかしたら王家と外交官一家の子供達のお話を番外編で更新するかもしれません。

その場合は、『年上の夫と私』の方にて更新させて頂きます。

(主人公がブローディアの娘のアナベルになる可能性が高い為)


また『小さな殿下と私』は評価ボタン下にリンクがありますので、ご興味ある方はそちらよりどうぞ!


尚、あとがきもあるので(ほぼ愚痴ですが……)ご興味ある方は下記URLよりどうぞ。

【年上の夫と私】のあとがき

https://ncode.syosetu.com/n0517gu/6/


初めてお手に取ってくださった方はもちろん、再読してくださった方、本当にありがとうございました!

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ご興味ある方はどうぞ。
『小さな殿下と私』
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