67. ジャジャーン!古い?放っておいて
全員集まったので、帆布シート上に椅子と簡易テーブルを並べ、朝食を食べながら本日のミーティング。
ちなみに朝食メニューは昨日とほぼ同じで、ふわとろスクランブルエッグとソーセージです。
「じゃあ、ほんじちゅ、せちゅめい、しゅゆね」
「はい」×スタッフの皆さん
今日の流れを鳳蝶丸にお願いする。
まず商品一覧と注文票を1人1枚渡して読んでもらい、木箱にお酒の種類と値段が書いてあること、値段ごとにリボンの色が違うことなどを説明する。
もし文字の読み書きが出来ないお客様がいたら、空の伝票を持って来てもらい受付けで皆さんが記入してあげて欲しい。念の為、受付にも空の伝票を置く、と説明した。
「はい、よろしいでしょうか?」
エレオノールさんが挙手する。
「どうじょ」
「この枚数では足りないと思われます。もっと増やしていただきたいのですが」
「もっと?」
「はい。他国の兵士や騎士、町の警護に携わった者達や冒険者達、その他関係者などかなりの人数になります。可能であればこの倍増やしていただき、足りない場合は更に増やしていただくかもしれません。可能でしょうか?」
「あい、だいじょぶ」
面倒なので、19人分☓50組を作って渡し、余ったら受付の時に使うようお願いした。
「前情報ですが、この広場入り口の警備を強化し、スタンピードに関わっていない者は購入出来ないようにしたいと言うことです。実は町に戻ってきた商人達がこの話を嗅ぎつけまして、購入許可を取ろうと問い合わせが殺到しております。ただ、今回は転売防止が必要だろうとフィガロギルド長とビョーク冒険者ギルド長がおっしゃっているのですが、ゆき様のご都合はいかがでしょうか?」
おお、そこまで考えてくれているんだね。
飲みたい人に楽しんでほしいし、ライアン団長やモッカ団長を除いて大量購入されたくない。だから入り口の警備強化はとてもありがたい。
その旨を伝えるとエレオノールさんがお任せくださいとニッコリ笑みを浮かべた。
ひと通りの説明が終わる。
エレオノールさんから警備に関する件と、商品一覧、注文書の配布を先に報告したいので少し時間が欲しいと言われたので了承した。
待ち時間は皆でお茶にする。お茶請けは有名なあの東北の月とあられ煎餅(包装紙、袋無し)。
緑茶や紅茶などを出して飲みながらエレオノールさんを待った。
しばらくすると、エレオノールさんともう1人男性が来て、商品一覧と注文書は商業・冒険者両ギルド職員が配布するので一旦全部渡して欲しいと言われ、皆に配った分を全て渡す。
もう1人の男性が受け取るとすぐに調査隊のテントへ戻って行った。
「いいの?」
「はい。両ギルド長からの指示なので大丈夫です。それと警備の件、了承をいただきありがとうございましたとの事です」
「あい、こちらこそ」
まあ、ヘタなトラブルになるよりここのギルド職員さんに任せた方が良いかな。
「こえ、しゅきなの、飲んで」
「ありがとうございます。頂戴します」
テーブルに置いてある飲み物を指すと、エレオノールさんが立ち上がり冷たい緑茶をコップに入れた。
私が氷入れる?と聞くとお願いしますと言う事なので、氷入れに入った透明で美味しい氷を無限収納から出す。
エレオノールさんはありがとうございますとグラスに氷を入れた。
「……、ふぅ。この緑茶と言うのは美味しいですね?」
「だな。俺も気に入ってる。口の中がサッパリするんだよ」
「この氷も、暑い日に冷たい飲み物なんて至福以外にありません」
エレオノールさんとマッカダンさんが残りの冷たい緑茶を飲み干した。
「私、ゆき様のお手伝いをしてからずっと贅沢している気がするんです」
「うん、気のせいじゃないからね。あたしらも贅沢に感じてるよ」
「えっ!【虹の翼】の皆さんもですか?」
「勿論。私達の知らない物ばかり。そして高級で便利な物ばかり」
「いや、俺も。色々なこと経験してるけどさ、ゆきちゃんに会ってから初めてばかりだよ」
ハイジさんの発言にリンダお姉さんとミムミムお姉さんが笑いながら答え、マッカダンさんも頷いていた。
そうでしょう、そうでしょう。だって、異世界の品だもんね。
ウル様に私の知識を広めて欲しいって言われているので、ヒントとして色々出すよ。
途中面倒くさくなってもういいやって出しちゃうのは…………置いておいて、オーバーテクノロジーだったり地球の文字が書いてある物以外は作っちゃうよ。
あ、でも桜吹雪の文字だけは別。私のお店を騙った偽物が出ないようにしたいからね。
「私も驚いてばかりです。まず、商品一覧や注文書の紙質!あれほど滑らかで薄い上等な紙を見たことありません。そして転写出来ることに感動しました。それと同じ文字や線を何枚も作成する技術が素晴らしいです。他にも言いたいこと、聞きたいことが沢山ありますが、ギルド長から詮索しないようにと言われております」
そ、それ私に言っちゃって良いの?エレオノールさん。
でもギルマス達が止めてくれていたんだね。ありがとうです。
「俺達の正体は秘密と言うほどではないが、広められると面倒くさいんでな」
「この間も言った通り、知られて厄介事が起こるとのんびりしていられないので」
「だかや、ひみちゅ」
ニコッと笑って幼児の秘密を発動。
「わかっています。わかっているんです」
エレオノールさんが悶えていた。
「アンタの気持ちわかるよ?でもさ、楽しくて美味しくてワクワクするからアタシはそれで良いって思ってる」
「そうだね。私はもう何が出ても何が起きてもゆきちゃんだからって事にしてる」
「ご飯も美味いし、テントも快適だし、それで良いじゃないか」
「興味は私もある。でも無理に聞くのダメ」
「新しい知識を得る機会と捉えるのはいかがですか?」
【虹の翼】のお姉さん達がエレオノールさんを慰めて(?)いた。
「失礼しました。食事もテントの利用も本当に贅沢をさせていただきありがたく感謝しております」
とりあえずエレオノールさんは落ち着いてくれたみたい。そろそろ話を進めていいかな?
「ちゅじゅき、はなしゅ。こえ、渡しゅ」
ジャジャーン!(古い?)
ショルダーバッグー!
「こえ、ちゅかって」
……………………。
わー!
騒ぎになった。
「こんな美しい革製品、初めて見ましたわ!」
「あ、鳳蝶丸さんとミスティルさんの鞄に似ている」
「もしやマジック………」
「マジック、バッチュ、ちあう。ふちゅうの、バッチュ」
レーネお姉さんとローザお姉さんが色めき立ったけれど、残念!普通のショルダーバッグだよ。
エクレールお姉さんはレザーカービングをうっとり眺めている。
「いや勿論、普通のバッグでも素晴らしいよ!」
ローザお姉さんが慌てて訂正した。
「ここ、空の、注文ちょ、入えゆ。あと、こえ」
次にコインケースを出す。そしてパカッと蓋を開けた。
「ここ、硬貨、入えゆ。十エン、百エン、しぇんエン、1万エン」
「種類ごとに分けられるのですね!」
「かじょえ、やしゅい」
皆さんショルダーバッグやコインケースを繁々と眺めている。
「バッチュ、プエジェント、しゅゆ」
「えっ!」☓19名
そう。
プレゼントする為、敢えてロゴは入れなかったんだ。普段使いも出来るかと思って。
「こ、このような素晴らしい品をくださるのですか?」
「買い取りじゃなく?」
「お金、いなない。しゃくやふぶち、ちねん、あげゆ。たのちい、思い出、ちてほちい」
すると、鳳蝶丸が破顔して私の頭を撫でる。
「お嬢は皆に楽しんで欲しい、良い思い出になれば良いと言っている。鞄は今回の記念に渡したいそうだ」
鳳蝶丸がチラリと私を見たので頷いた。
そして、四角と、角に丸みのある鞄をテーブルに出す。
「しゅち、どうじょ」
「好きな方をどうぞ、との事ですよ」
今度はミスティルに頭なでなでされた。
「なんて、なんて素晴らしい鞄なんだ!」
「嬉しいです!」
商業ギルド職員さん達が喜んでくれた。
「サクラフブキで働いた記念になるよ。こんな美しい鞄をありがとう」
「家宝にいたしますわ」
ローザお姉さんも受け取ってくれた。エクレールお姉さんは瞳をウルウルさせている。
「鞄が無くたって、私はこちらでお手伝いが出来て幸せだって思います」
「でも、鞄も嬉しいです」
「ありがとうございます!」
クララさん、ハイジさん、ピーターさんも嬉しそうに笑っていた。
「俺もいいの?ライアン団長に怒られそう」
「怒っちゃ、やめって、ちゅたえて?」
「ありがとう、嬉しいよ」
マッカダンさんにももらって欲しいからね。
皆、笑顔でそれぞれの好みのものを手に取っていた。そしてレザーカービング部分を眺めたり、ポケットを確認したりしている。
喜んでもらえて私も凄く嬉しいな。
コインケースも全員に渡す。これは集金の時一旦返して欲しいと伝えた。
「おちゅい、入えゆ」
AやCは必要無いけれど、Bの手持ちが無くなった時用に、お釣り硬貨を一応所持してもらう。
ただ列の整理役は現金を持っていると危険かもしれないと言うことなので、17人分のコインケースを用意した。
私は今持っている硬貨を提供し、皆で17個のコインケースに入れてもらった。
「皆しゃん、やくわに、ちめて」
「皆に役割を決めて欲しいそうです」
「そうだね。まずはABCに別れよう」
ローザお姉さんの言葉をきっかけにそれぞれの得意分野で分かれてもらった。
商業ギルド職員3人とミムミムお姉さん、ハイジさん、エレオノールさんがAグループ。
商業ギルド職員5人とエクレールお姉さんがBグループ。
その他はCグループ。
そしてAとBでペアを決めてもらう。うん、こんなもんかな。