287. チラッ☆ キャッキャッ♪
※ヒュヴァー商会の集合時間を翌々日の朝に変更しました※
「では商会へ参りましょう、ゆき殿」
「あいあいっ」
翌朝早くフィガロギルマスがお迎えに来た。
ヒュヴァー商会というところが、パーティー会場を貸してくれることになったらしい。
「借りるのは[星と湖]パーティー会場。とても綺麗な広場なんですよ」
[星と湖]?可愛い名前の広場だね。楽しみ♪
「ちになた。しょうじょう、じゆど、いたなくて、いい?」
その前に、ちょっと気になっていたので聞いてみる。
今更だけれど、商業ギルドに行って何かの許可をもらわなくていいの?
「そうですね…。まず公共の広場などで屋台を出店する場合は、その町の商業ギルドに許可証をもらわなければなりません」
顧客と直接売買する場合、商業ギルド加入者に限りその町の商業ギルドの許可を得なくても良い。
街の広場や朝市等で、屋台、露天を出す場合は商業ギルドの許可が必要となる。小さな村や町などでは、村長、町長などの許可を得ること。
個人所有の土地で屋台・露天等を出店する場合、土地所有者が承諾していれば商業ギルドへの報告義務は発生しない。ただし、なにかハプニングが起きた時は自己責任となる。
今回はヒュヴァー商会所有の土地を借りるため、ギルド加入者且つ優秀商の私達は、商業ギルドの許可をもらう必要はないとのこと。
よしよし。それでは話を進めるぞ!
ということで、ヒュヴァー商会に到着ました。
「突然の訪問、失礼します。私はミールナイト商業ギルド長、フィガロと申します。商会長様はいらっしゃいますか?」
「これはこれは、フィガロ様。はい、少々お待ちくださいませ」
フロアマネージャーらしき人に声をかけるフィガロギルマス。
そして直ぐに応接室へと通された。
しばらくして、背が高くシュッとしたエルフさんがやって来た。
髪は短めで、切れ長の目、モノクル知的系エルフさん。地球にいた頃の私だったらドキドキしちゃったかも!
「お久しぶりにございます。フィガロギルド長」
「お久しぶりです。今回は急なお願いをして申し訳ありません」
「いえいえ。丁度良く空いておりましたので、お気になさらず」
フィガロギルマスが敬語で話をしている。
ゼッテンシュート家の子息というより、商業ギルド長として挨拶をしているんだね。
「ところで、こちらの方々は?」
「こちらは今回屋台を出しますサクラフブキの皆さんです」
「サクラフブキ?…フィガロギルド長がお認めになった優秀商の皆様ですよね」
ヒュヴァー商会長さんが目を見開いている。そしてコホンと咳払いし、ニコリと笑った。
「お初にお目にかかります。ヒュヴァー商会代表、ヴィーサス・ヒュヴァーと申します。伝説のサクラフブキさんにお会いできて光栄です」
「シャクヤ、フブチ、ゆち、でしゅ」
伝説のって…彼は我が家の皆を知っているのだろうか?と思ったら、見たこともない美味しい食べ物や不思議なランタン、足元が暖かいテーブル等を販売または所有する凄腕の行商人。近隣の商人達がそう噂しているんですよ、とフィガロギルマスが教えてくれた。
そうなんだ?
じゃあ、鳳蝶丸達は伝説の[伝説の武器]だね?フフッ。
私がこっそり笑っている間、鳳蝶丸が私達の簡単な紹介をする。そしてお互いの挨拶のあと早速本題に入った。
「たいじょう、たちてちゅえゆ、あにあと、ごじゃいましゅ。場所代、シャクヤ、フブチ、はやう」
「会場を貸してくれてありがとう。場所代は桜吹雪で払う、とのことだ」
「い、いえ、しかし…」
ヴィーサスさんがチラリとフィガロギルマスを見る。
「急遽そのようになりました。ゼッテンシュート家のことは問題ありませんので、サクラフブキの皆さんと交渉してください」
フィガロギルマスの言葉に少しホッとした顔のヴィーサスさんが、それではと私達に体を向けた。
「では、話を進めましょう。お支払いはサクラフブキの皆様、と言うことでよろしいですか?」
「あいっ。しょの前、はなち、あゆ、いいでしゅ?」
「場所代金の前に、話があるんだがいいか?」
「はい。もちろんです」
「こえ」
はいっ、どーーーん!
アスケヴェスト王国のダンジョン『水晶の洞窟』三十九階層宝箱から回収した、超ゴージャスなエメラルドの首飾り&イヤリングセットゥゥー!
無限収納…マジックバッグに見せかけたモコモコ白うさぎちゃんバッグから、大きめなエメラルドが散りばめられ、更にカラーレスダイヤモンドもふんだんにあしらわれた、キラッキラ☆な豪華セットを出す。
「ヒナヨ、ジユマシュ、こえ、いちゅや?」
「お嬢はこれはいくらだ?と聞いている」
「なんてもの持っているんですか!はあ、流石ゆき殿ですね」
フィガロギルマスは驚きはしたものの、食いついては来なかった。
対照的に、ヴィーサスさんはギラギ…キラキラした瞳で宝飾セットを凝視している。
「そうですね。こちらですと低く見積もって三千万エンでしょうか?」
「しょうなにょ。あにあと」
もうちょっと驚いてくれるかと思ったのに、何だか悔しい。
とと、今はそれどころじゃないか。
「こえ、一千万、売ゆ。たいじょう、だいちん、たったい、てちゅだう、どう?」
「これを一千万エンで売る。差額を会場費にしてほしい。それから屋台の手伝いをプラスしてくれ、とのことだ」
「いっ一千…………」
「そんなに大盤振る舞いして良いのですか?」
「うん、いいよ」
フィガロギルマスが肩をすくめて苦笑する。
ヴィーサスさんが凄い勢いで顔を上げた。
「こんな素晴らしいものを一千万?オークションにかければもっと金額が釣り上がると思いますよ?フィガロギルド長はなぜ止めもしないんです?いえ、驚きもしていませんが、大丈夫ですか?」
「フフッ。だって、ゆき殿ですから」
フィガロギルマス余裕の笑み。うう……何か悔しい。
ハッ!希少品じゃないからなの?だから驚かないの?
よーし!
ファンシービビッドレッドダイヤモンド、かまーん!
チラッ☆
「!!!」
ギンッ!
ファンシービビッドレッドダイヤモンドに、フィガロギルマスのギラギラ視線ビームが集中する。
「あいっ、ナイナイ♪」
はい、仕舞っちゃおうねえ。
マジックバッグに見せかけたモコモコ白うさぎちゃんバッグにレッドダイヤモンドを仕舞いポンポンと叩くと、フィガロギルマスがシオシオになった。
キャッキャッ♪
ゆき殿お〜ぉ。
面白くてつい声を上げて笑ってしまう。
フィガロギルマスとじゃれ合っていると、ヴィーサスさんがなるほど…と何故か納得し頷いた。
「サクラフブキの皆さん、特にゆき殿は全てを凌駕する想定外・規格外、と言うことですね?」
「その通りです。ですからエメラルドの宝飾品など驚くようなことではありません。何はともあれ鑑定してみたらいかがですか?」
「そうですね。では、遠慮なく」
ヴィーサスさんがモノクルを外し、エメラルドセットをじっと見て頷く。
そして精密単眼ルーペの様な物を装着し、宝石一つ一つをじっくりと見た。
「素晴らしい…。これほど美しく、細かい傷すら皆無の宝飾品は滅多に手に入りません。これはどちらで?」
「アスケビィのダンジョン産だ」
ほう。あの危険で有名なダンジョンの…。と感心するヴィーサスさん。
深層で採れたのでは?と言われたので三十九階だと告げると、大層驚いていた。
「え?そこまでの深層に、ご自身で行かれたのですか?」
「ああ。俺達はダンジョン許可証ももっているのでな」
「彼等は相当強いのですよ。私が足元にも及ばないくらいに」
「っ!」
ヴィーサスさんが驚愕している。
フィガロギルマスの強さを知っているんだね。
「フィガロギルド長もお強いんですか?」
いや、知らなかったあ!
「あ、知りませんでしたか?私はB級の魔獣一頭であれば単独で討伐出来るくらいの腕なんですよ。そんな私でも水晶の洞窟の深層はいけませんけれどね」
「…行ってみたいと思っていたのですが、それほど強いギルド長が無理ならば私は無理なんでしょうね」
大店の商会であれば、素敵な宝飾品に興味があるよねえ。
出来れば自分で採取したいよねえ。
「で、話は戻るが、この宝飾品で俺達の手伝いをするか、普通に現金で会場費のみを受け取るか、どうす…」
「エメラルドにいたします。我がヒュヴァー商会が全力で協力いたします。盛り上げましょう。ゆき殿のたったい」
「あいっ。たったい!」
食い気味に全面協力を約束してくれたヴィーサスさん。
よしよしっ。商会なので計算のできる人だらけだし、人員確保はバッチリ!
フィガロギルマスも頷きながら、満面の笑みを浮かべていた。
時間が無いから早速打ち合わせをしよう。
開催は明々後日から3日間。会場は[星と湖]会場。
あとで案内してくれると言われたけれど、場所だけ教えてもらえれば勝手に見ると辞退する。
「今は貸し出ししておりますので中には入れません。本日18時以降から貸出するまでの期間は空きますので自由に見学をしてください。門番に伝えておきます」
「あちた、設置、いい?」
明日から色々と設置しても良いですか?
「かまいません。我らはいつ頃集合すれば良いですか?」
「うーんとね…」
実はこんなことを考えているの。
必要な物は私達が全て用意するから、ヒュヴァー商会の皆さんは明後日の朝から来てね。それから宣伝する時にお客様に伝えて欲しいことがあるの。もし伝わらなかった時の対策もするけれど。一応明日早朝に配るものを用意して持ってくるからよろしくお願いします。
それから…………。
細かな打ち合わせは夕方まで続いた。
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