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巡れ!半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ! ~天罰を添えて~  作者: あいのの.


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281. わあ!たっといい!(カッコイイ!)

「やはりゆき様!(わたくし)です。ピリカです!」

「あっ、ピイタ、おねしゃーん!」


 宮廷魔導士団のピリカお姉さんが地上から手を振っていた。

 王国騎士団や他の魔導士達は私達を見ても、スンとしている。

 他種族の冒険者達は「空飛んでんぞ!」と滅茶苦茶大騒ぎしていた。



「お久しぶりにございます。息災でいらっしゃいましたか?」

「あい。おねしゃんも」

「時間が惜しいので手短に言うが、この先にパハ・トゥオクスと子株がいる。俺達が討伐してしまうので心配しなくていい」

「やはりパハ・トゥオクスでしたか。この辺りまで臭いが漂ってきていました。討伐方法を考えておりましたが対策が決まらず…皆様で討伐していただけるのですか?」

「ああ。問題ない。跡形は無くなるがな」

「立ち会わせていただくことは…」


 鳳蝶丸に戦うところを見られるのはまずい?と聞いたら、別に気にしないと言う。調査結果を報告しなければいけないだろうから出来れば連れて行ってあげたいと言ったら、それはかまわないと返事をしてくれた。


「立ち会ってもいいが、俺達のすることに邪魔はしないでくれ」

「はい、もちろんです」

「すまないが、私も立ち会わせていただきたい」


 すると騎士の中から1人候補者が現れた。

 彼はミールナイトのスタンピードの時参加していて、今日は来ていないモッカ団長の元に所属する騎士なんだって。


「じゃあ俺も。深淵の森調査団の冒険者ギルド代表、クラスA【雨月】のロフケアだ」


 ロフケアさんは耳がチュンってしていない。

 私が耳を見ていたら、「あ、俺は人族な」と笑った。


「では3人。それ以上は受け付けん。すぐに出発する。3人寄ってくれ」

「こ、こうですか?」


 3人は結界から出ないにして結界4(立体)で四角く囲う。私達には私中心で結界1を張り、ピリカお姉さん達の結界4と私達の結界1を[連結]する。

 お姉さん達の声は鳳蝶丸と私の結界まで届く、にもしておこう。


「でちたよ」

「了解」


 さっと飛び立つ鳳蝶丸。

 結界内の2人は最初吃驚して声を上げていたけれど、すぐに落ち着いて森を眺めていた。


(わたくし)、念願の空を飛んでいるのね!自力じゃないのが悔しいけれど…飛んでいるわ!ああやはり、術式が全く読めない。スキルで飛んでいるのは本当なのね!」


 ピリカお姉さんだけがワクワク顔で興奮していた。

 ミムミムお姉さんと仲良くなりそう。



 皆の元へあっという間に到着した。

 お嬢の願いで調査団代表を連れて来たと報告すると、皆も別に嫌がる様子はない。


「こ、こんな近くに来て大丈夫なのか?って、臭いを全く感じねえな」


 ロフケアさんが後じさりつつ、臭いがないことに気が付いた。

 途端にパハ・トゥオクスからの触手攻撃!調査団の3人は身構える。けれど、触手が結界にビターーーンと打ち付けられるだけだった。


「結界に閉じ込めたのですね?」

「うん」


 ピリカお姉さんは私の結界に気が付いたみたい。


「刺激臭もなくこんな間近で見ることが出来るなど、前代未聞です」


 騎士さんが緊張しながら、どでかいパハ・トゥオクスを見上げていた。


「コレをどうやって討伐する?魔法攻撃は効かねえし、結界に閉じ込めてちゃ切ることも出来ねえ。つうか、結界を解除、もしくは入った途端、俺達は恐らく即死するだろうよ」


 もう刺激臭が充満しすぎて、結界内のモヤッてるんだよねえ。


「討伐の仕方?燃やし尽くすけど?」


 レーヴァが涼しい顔で応えた。


「魔獣は結界に入っているのにか?!燃やし尽くすってなんだ?魔法攻撃は効かねえって」

「それは本当です。この森の魔獣は魔法攻撃がほぼ効きません。唯一効くのは我らエルフの精霊魔法です」


 ロフケアさんと騎士さんが私達を止める。


「2人とも止めなさい。邪魔は絶対にしないと約束したでしょう?」


 それをピリカお姉さんが止めた。

 ありがとう、お姉さん。我が家の皆は、ロフケアさん達が口を出したところで気にせずヤッてしまうと思います。

 でも、精霊魔法ってどんなだろう?ちょっと気になるなあ。


「しぇいえい、魔法、どんなの?」

「己の魔力を放つのが魔法。欠点は魔力が少ない者には大きな術式を組めないこと。精霊魔法は精霊の魔力を借りて放つ魔法。欠点は精霊に力を借りられない者には扱えず、精霊の少ない土地では威力が落ちることです」


 ほうほう。


「人族や他の種族は魔法が主流で、精霊魔法はほぼ使えない。エルフは魔力も高く精霊にも好かれやすいので、どちらにも長けている種族です」


 わあ、両方使えるなんて凄いね!

 私にも出来るかなあ…ドキドキ。


「ハイエルフはエルフよりも魔力が高いですが、精霊魔法を好んで使う傾向があります」


 ハルパ先生、解説ありがとうございます!



「姫さんは精霊魔法を見てみたいのか?」

「うん。でも、たといい、みんにゃ、見たい」


 精霊魔法も見てみたいけれど、格好良い皆の活躍も見たいなあ。


「俺達と精霊の活躍も見てみたいんだね?主さん」

「あいっ」


 精霊魔法って、もしかして召喚魔法みたいな感じ?

 ちょっと見てみたいよね?ワクワク♪


「しょうたん、魔法、みたい?」

「ん?召喚魔法ってなんだ?お嬢」


 精霊を魔法陣で呼び出して戦ってもらう感じ?と手短に説明する。

 私がワクワクしていたら、レーヴァ達が超笑顔になった。


「そう言うのが見たいんですね?主」

「もちろん、姫のお望みのままに」

「いよし、ヤろうぜ!」

「了解!」×5人



 ミスティルが左手を伸ばすと空中に薔薇の文様が現れ、地面からイバヤちゃん達が現れる。

 そして左手人差し指をクイッと上げると、大きいパハ・トゥオクスも空中に浮き上がった。

 途端にイバヤちゃん達が無数の棘を飛ばす。棘はパハ・トゥオクスに刺さり、どういう仕組みか縫い付けられたように空中に固定された。

 イバヤちゃんは役目を終えると私に枝を振りながら消えていった。


 ハルパがパンッと手を叩くと沢山の鉄鉱石が一点に集中し固まって魔法陣の形になり、そこからテイルが飛び出した。

 テイルが結界のてっぺんに駆け上り身を震わすと、沢山の細い針が子トゥオクスと地面に突き刺さる。そしてテイルがカァッと光ると、地面に刺さった針が土に潜って行った。

 無事全部の針が地面に刺さると、テイルが私を見てクルリと回り消えた。


 レーヴァが手元に小さな炎の玉を作る。

 炎玉がどんどん青くなり、周りの空気まで熱くなって来た。

 左手を頭上高く掲げると、炎玉の後ろに炎の魔法陣が出現。


「スザク」

「お任せあれ」


 魔法陣から大きな炎の鳥が現れ、炎玉をパクリと飲み込んだ。

 そして、スザクがそのまま結界に飛び込む。



 ヴオンッ!

 ゴオオオオォォォォォオオ!!



 一瞬で結界内が炎に包まれ何も見えなくなる。


 酸素濃度高すぎたかなあ……と思わなくもないけれど、今更だし良いよね?

 燃え盛る炎の中、元気一杯に飛び回るスザクが垣間見える。なんか楽しそう。

 鑑定してみたら6000℃近いよ。わあ、レニウム沸騰しちゃう☆


 パハ・トゥオクス、あっという間に焼けちゃったね?

 燃え尽くして満足したらしいスザクが、私にウインクしながら空高く飛び去って行った。


「うん。いい具合に仕上がったね。あとはよろしく」

「わかった」



 鳳蝶丸が大きな水玉(みずだま)を頭上に作り、それが広がって水の魔法陣となる。


「エメル」

「はあい(ハート)」


 凄い!魔法陣から現れたのは日本の神話とかに出てくる龍!


 ザアァァァァアア!


 龍型エメルが飛んでいき、結界の周りをグルグル回りだす。

 しばらくすると結界内が冷えてきたのか、炎がだんだん赤くなり、暗い赤になり、やがて鎮火。

 エメルが私に投げキッスのようなポーズをとってから空へと消えていった。


「まっちゅよね」


 結界内は煤で真っ黒け。まだ燻っているのかあちこちから煙が出ている。


 さ、酸素濃度を下げなくちゃ。

 再び引火して燃え上がらないように、慌てて酸素濃度を通常に調整しておく。


「結界はまだ解除しないでくれよ」

「あいあい」

「よし、リッカ!」

「承りました」


 氷華が両手を前に伸ばすと雪の結晶が浮かび、幾重にも重なって魔法陣となる。

 そこからリッカちゃんがいち、にい、さん……アレ?沢山のリッカちゃんが飛び出した!

 そして結界の周りをグルグル走ると、中がピキピキ凍りだす。


 コオオオォォォォオオォ!


 シャボン玉が凍る時みたいで綺麗☆…と言いたいところだけれど、煤で何だかきちゃないよ。

 今度、普通に綺麗な結界でアレをやってもらおっと。


 しばらくするとパキッ!と音を立て、結界内が完全に凍りついた。

 リッカは私に一礼してから空間に消えて行く。


「まあこんなもんか。姫さん解除してくれるか?」

「うぃ」


 リッカが帰ったあと、氷華が凍てつくような温度を解除。

 私も結界を解除した。


 うっ、漂ってくる結界内の空気冷たっ!



「ちあでね」


 仕上げに結界内の臭いと煤を清浄で消去。

 パハ・トゥオクスと子トゥオクスは綺麗さっぱりいなくなり、残ったのは円状に焼け焦げたボコボコの土のみ。土はところどころ固まりボソボソになっていた。


「主殿、これの清浄願います」


 ハルパが手をかざすと、土の中から元の形がわからないほぼ溶けきって真っ黒な何かの塊が浮かび上がる。


「なあに?」

「子株と細かい根をより強く燃やすために、テイルが針を刺しました。これはその残骸です」


 子パハ・トゥオクスの根がすぐ切れるほどとても細く、土から出すと千切れ残ってしまうため、より確実に焼いて根を残さないようテイルの針を刺したんだって。

 約6000℃で焼いたからか針が黒い残骸と化している。

 ありがとう針さん。お役目ご苦労様でした。清浄!



「じゃ、仕上げだね。ピヨコ達」


 ミルニルがドオン!と鎚打つと砂や土が宙に浮き魔法陣となった。そこからエッホエッホとピヨコちゃん達が現れる。

 ん?なあに?ピヨコちゃんが土を指し、しきりに何か訴えている。


「主さん。土の焦げた部分を変えられる?」


 ワイヤレス通信からミルニルの小さな声が聞こえる。

 土を変える?……土を…。あ、再構築で周りと同じ土に変えられるね。


 私が再構築を始めるとサワサワサワサワサワ…と土が生き物のように動き始め、やがて周りにあるものと同じ成分の土が出来上がる。

 それを見てピヨコちゃん達が飛び跳ねて喜び、小さな鎚でポコポコ地面を叩きだす。そしてあっと言う間に平らな地面が出来上がった。

 ピヨコちゃん達が私に元気よく手を振って、空間へと消えていった。



「みんにゃ、たっとよたた!てんじょく、ちゃん、あにあと!」


 皆恰好良かったよ!眷属ちゃん達もありがとう!

 ふう。これで一連の作業は終了かな。




「な、な、な、なんじゃそりゃあああぁぁああ!」


 え!なに?!あ、調査団がいるのすっかり忘れてた。

 ロフケアさんが腰を抜かして驚き、騎士さんは完全に固まって口をあんぐり開けていた。ピリカお姉さんは目をウルウルさせ、何故か祈り始めている。


「忘えてた」

「そう言えばいたな」


 我が家の皆もすっかり忘れていたらしい。


「魔法が効くなんて感動しました。それに先ほど出現した中に上位の精霊が混ざっておりましたよね?素晴らしいです!」


 ピリカお姉さんが背を反り返して感動している。

 腰を悪くしそうで怖いぃっ。元に戻って、お姉さんっ。



 私が見たいと言ったから、わざとド派手な演出にしてくれたレーヴァ達。彼らが行なった魔法は精霊魔法と全く異なるものらしい。

 そういえば、眷属ちゃんは眷属ちゃんであって、全員精霊というわけではない。

 あの中で上位精霊と呼べるのはエメル、リッカ、ピヨコちゃん達。イバヤちゃん、スザク、テイルは精霊とはまた違う存在だもんね。


「本当のことを言うと、精霊魔法と普通の魔法は発動時の見た目に大差はないんですよ。精霊魔法は精霊が協力してくれているので魔力の性質が違うだけです」


 そうなんだ。見た目は普通の魔法変わらないんだね?

 私が召喚魔法みたいなものを期待したから皆頑張ってくれたんだ。

 気を遣わせちゃってごめんね。


「大丈夫ですよ。私達も楽しかったから問題ありません」


 ハルパが私をナデナデしてくれた。


「ちなみに俺の眷属は上位の精霊だけど、俺自身は精霊魔法を普段から使わないぜ」

「精霊魔法というより、補足してもらっている感じ」

「精霊より俺達の方が魔力は上だ。使おうと思えば使えるが、威力が落ちてしまう」


 氷華、ミルニル、鳳蝶丸も独自の魔力を使っていたんだ。

 精霊に頼らずとも、深淵の森の魔獣にだってカッツリ効き目があるんだね。


「みにゃ、楽ちたった。あにあと!」


 鳳蝶丸おんぶの私に無言スリスリするミスティル。

 皆はニコニコ笑っていた。



「つか、何ほっこりしてるんだよ!パハ・トゥオクス相手に見世物みたいな方法で、しかも簡単に倒しやがった。アンタ等何モンだよ」


 あ、ロフケアさん復活。また忘れてた。ごめんね。


「何かわからん魔法を使って、上位の精霊まで登場させて、土地まで完全に復活させて、何なんだ、いったい!」

「君達、商人でしたよね?屋台の食事とお酒美味しかったのでまた食べたいです」


 驚いていたわりに、どさくさに紛れてまた食べたいって言う騎士さん。


「彼らはそういう人達なんですよ、ロフケア殿」

「そういう人達………」

「ええ。見たままを受け入れるしかありません」

「見たままを……」


 ピリカお姉さんの説明が適当すぎて面白い!


「ピイタ、おねしゃん、ももちよい!」


 私がヒャッヒャ笑うと、またミスティルの無言スリスリが発動した。




「まあ、これで森も落ち着くだろう」

「出てしまった魔獣達は弱体化するか森に戻ってくるかするだろうしね」

「じゃあ、帰ろっか」


 うん、帰ろう。

 私達が飛び立ちかける。


「お、お待ちください!連れて行ってください!」


 あ、ピリカお姉さん達を置いて行くところだった。


「すまん、忘れた。元の場所まで連れて行けばいいか?」

「はい。ありがとうございます。また全員でこの場所に来ることになりますが、さすがに3人だけで調査団の待機する場所に戻ることはできません」


 そうだよね?強めの魔獣がまだいるのに、3人だけにしちゃダメだよね?


「どめんにぇ?」

「はい、あの、いいんですよ、ゆき様」


 じゃあまた3人近寄ってね。

 と言うことで、行きと同じ結界と連結で、調査団が待機する場所に送り届けた。


「何か納得できねえ。クラスSじゃねえけど俺自身は強いと自負していたのに、このキラキラ集団の足元にも及ばねえなど納得できねえ」

「しかもご飯とお酒が美味しい」

「ですから、そのまま受け入れてください」


 まだ呟いている2人と突っ込んでいるピリカお姉さん。


「いずれにしても、解決してくださってありがとうございます。我々だけではパハ・トゥオクスを倒せたかわかりませんし、例え倒せていたとしても沢山の犠牲者が出たことでしょう。感謝してもしきれません」

「ハッ!そうでした。心より感謝申し上げます」


 ピリカお姉さんと騎士さんが深々と頭を下げた。


「さっきは俺も強く言ってすまん。悔しい思いがまだ消えねえが、とにかくっ!パハ・トゥオクスを討伐してくれて感謝する」


 ロフケアさんも頭を下げた。


「お嬢が調査団を気にしたので声をかけただけだ。俺達のしたことは気にしなくていい」

「したいようにしただけだしな」


 鳳蝶丸と氷華が気にしなくて良いと言った。


「それではこの辺で。行きましょう、主殿」

「うん。じゃあねぇ」


 私達はすぐに飛行(ひぎょう)で上空に向かう。



「つーか、そーだ!君等何モンだ!空飛ぶとか何でだあ―――――!」


 ロフケアさんの叫びが深淵の森に響く。

 他の魔獣もいるのに、だいじょぶかな?だいじょぶだよね。

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