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巡れ!半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ! ~天罰を添えて~  作者: あいのの.


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272. て・ん・ば・つ(変化形)

「はあ、静かになりましたね」


 エレオノールさんが紅茶を一口飲んで、ホッと一息ついた。

 エレオノールさんとディリジェンテさんがフィガロギルマスを待つと言うことだったので食事はせず、紅茶を飲みながら休息する。



「本当は私達がもっと動かなければいけないのに、ゆきちゃん達に動いてもらって申し訳ない」


 ローザお姉さん達は少し元気がなかった。


「だいじょぶ。わたち、たち。おなじ、じょえい、ちてゆ」

「俺達も君等と同じ護衛のようなものなので心配しないで、と姫が言っているよ」

「ありがとう。言い訳になるのは嫌なんだけどさ…」


 ローザお姉さんが、護衛について教えてくれた。



 まず、相手が強硬手段、または暴力をふるえば即対応する。

 それと、護衛対象者が罵倒されればそれなりの対処をとる。


 でも、今回のように護衛対象者以外に向けた発言の場合、力で押さえつけることは難しいとのこと。

 もちろん暴力をふるったり、我々のテントを破壊するなどの行為をした場合は別だけれど。


「冒険者は荒くれ者が多い。我慢できずやり返してしまう者もいる」


 でもそうなると、冒険者個人のいざこざで護衛中に私闘を行ったとみなされるのだという。それを依頼主が冒険者ギルドに報告した場合下手するとクラスが下がるし、貴族からの依頼が激減するとのこと。


「執拗に絡んできたり、連れて行こうとしたりして、任務に支障が出る場合は別だけどね」


 今のは任務に支障がでない程度だったので、強硬手段に出なかったんだって。


「手を掴むとかしたら対処できた。あの男の場合は依頼を引き受けない私達への嫌がらせで、対処しないギリギリの線で嫌味を言ったんだろうと思う」


 最初はその場所をどけっ!だけだったんだろうけどね、とローザお姉さんが笑う。


 そうかなあ。

 半分は本気だったと思うよ。視線がキモおじじだったもん。


 それにしても、お姉さん達は今までもそんな目に沢山遭っているんだろうな。

 何しろ美女パーティだもんねえ。

 自分で対処出来るだろうから余計なことはしないけれど、本当に困った時は私に言ってね?




「いやあ!凄かった!凄かったです!素晴らしい!!!」


 暫くしてフィガロギルマスが大興奮で帰ってきた。


「あの速さで空を飛ぶことになるとは思いませんでした!王都の門を潜らず商業ギルドへ行った時は冷や汗ものでしたが、3階のベルトルトギルド長室から入ることになるとは!彼の驚いた顔、フフフッとにかく最高でした!」

「えっ!空を飛ぶ?どういうことですか?そして門で手続きしなかったんですか?!」


 ディリジェンテさんが驚愕している。


「そうなんです。今回はハルパ殿が一緒であったため不問とされました。と言うか、ベルトルトギルド長とは会わなかったことにしましたから大丈夫です。マルエデュカート商会の件はしっかりと報告しましたけどね」


 他にも色々とウワサのある商会で苦情が出ているし、それなりに動いてそれなりの処置はするとのことだった。


「ぬるいですが、致し方ありません」


 ハルパは少し不満顔。

 でも商業ギルドには商業ギルドのやり方があるだろうし、あとは任せておこう。ね?


「やちゅ、あった、ちたや、わたち、やんよ」


 おじじの行動が悪化したら、私がヤんよ。イヒヒ……。


「ゆきちゃん、悪くて良い顔してるねえ」


 リンダお姉さんや皆もフフフと含み笑いをしていた。

 これだけ凄い人達が揃っているんだから、ただでは済まないよねえ。

 おじじは覚悟した方がエエですよ。




 さて、遅くなったけれどご飯の時間です!


 献立は、鶏肉と大根の煮物、玉子とトマトの炒めもの、白菜と塩昆布のシーザードレッシング和え、玉ねぎと油揚げのお味噌汁だよ!


「いい匂い」


 商業ギルド組もお姉さん達も嬉しそうにフォークを握る。


「しよい、ごあん、嫌、たちとみ、ごあん、あゆ」

「白いご飯が嫌だったら、炊き込みご飯もあるとのことです」

「俺達、炊き込みご飯も食べていいか?」

「あいあいっ」


 通訳はミスティル。

 鳳蝶丸達が炊き込みご飯も食べたいとのことだったので両方出した。

 勢いよくお茶碗にご飯をよそう我が家の皆。


「おかわりは自分でよそって」


 ミルニルがよそい方を皆に伝え、今後は自分で好きなだけ食べてと説明する。



 ではでは。

 皆てんこ盛りのお茶碗でいただきまーす!


「これはラディッシュですか?味がしみてとても美味しいです。この香りは……なんでしょう?」

「たちゅお、ぶち。だち」

「鰹節からとったお出汁がしみています」

「鰹?海水魚の鰹ですか?でも、入っているのは鶏肉ですよね?」


 ディリジェンテさんが大根を味わいながら不思議そうに首をかしげる。


「んーと、ひみちゅ」


 面倒だから秘密と言うことにしておこうっと。


「レシピを安易にお聞きしてしまい、失礼しました」

「だいじょぶ。いいよう」


 本当は目の前で作っても良いけれど、お腹すいたしご飯食べたいんだもん。

 あっ!そうだ!


 鳳蝶丸に頼んで白いご飯をよそってもらう。

 鰹節をたっぷりかけて、擂った生わさびをのせる。


「かちゅおぶち」

「これが鰹節だ」

「えっ!木屑ですよね?」

「ちあうよ。たちゅお、とちゅしゅ、とうてい、ほちて、たたちゅ、なゆ、てじゅゆ」


 自分でも何言ってるか、ちょっとわかりません。


「木屑ではない。特殊な工程を経てから干すとできる鰹節だ。硬くなった塊を削るとこうなるらしい」

「はあ……」


 まあまあ、とにかく食べてみてよ。わさびは辛いから塊で食べないでね?

 鰹節とご飯にお醤油をたらっとかけて、さあどうぞ。


「よし。まずは俺が食べてみるか」


 ディリジェンテさんが躊躇していると、鳳蝶丸が箸をとった。

 私もいいですか?とフィガロギルマスも立候補したので、鳳蝶丸にもう1つ作ってもらう。


「ンムッ」

「うん、美味い」


 2人はゆっくりとわさびご飯を味わっている。


「これは本当に木屑ではありません。噛めば噛むほど感じる旨味。ソースから感じる深み。ワサービの辛味と鼻から抜ける香り。三位一体となって上等な食事となっています。大変美味しいです」

「これは、あれだ。海鮮丼を食べた時のワサビと醤油の美味さに似ているな。鰹節が入ったことで、更に香りが良いし、これだけでもメシがすすむ」


 鳳蝶丸とフィガロギルマスがおかわりをする頃に、皆がわさびご飯を食べ始め、癖になる、美味しい!と喜んでいた。


 私は鶏肉と大根に夢中です。

 おいちっ☆


 おかず全てとご飯、炊き込みご飯も綺麗に無くなりました。おひつが何個も空っぽになってびっくりしたよ。

 皆美味しかったと喜んでいた。何だか嬉しいな。



 さて。全員でお片付けしたら解散しよう。


「明日の朝も早い。ゆっくり休んでくれ」

「わかりました」

「夜番しなくて良いのがちょっと不思議な感じ」


 お姉さん達は護衛なのに夜番無しがムズムズするんだって。

 結界に誰も入ってこられないから大丈夫だよ♪


 では皆さん、おやすみなさい。






「おはよ、ごじゃい、ましゅ」

「おはようございます」


 お姉さん達は結局夜番をしたらしい。

 感覚が鈍ってしまいそうなのと、いつものクセでムズムズするからと言うことらしい。


「焚き火台?と薪を使わせてもらったんだけれどいいかい?」

「もちよん、いいよ!」


 今後も夜番は続けるらしい。眠たくなったら車で休んでね!



 軽く朝ご飯を食べてから王都まで歩き、商業ギルドに寄る。

 今回はちゃんと門から入ったよ。


「これはこれは、御使……ゆき様。お久しぶりにございます。戴冠式は屋台にご協力くださりありがとうございました」

「とんにちはあ。おししゃしぶい、でしゅ。ちのう、あにあと、ごじゃい、まちた」


 こんにちは、お久しぶりです。昨日はありがとうございました。


「いえいえ。商業ギルドの会員がご迷惑をおかけしたようで申しわけございませんでした」



 昨夜遅く、「ミールナイトのギルド長は来たか?」とおじじ達がやって来たらしい。

 会っていないことになっているので、王都のギルド長が知らないと答えると、「ミールナイトギルド長が余計なことをした。なにか抗議をされるかもしれないが事実無根である。我らは何もしていない」と怒鳴り散らしたらしい。


「怒鳴っている時点で何かやらかしたのではないですか?」

「い、いや、本当に何もしていないのだ。言いがかりをつけられて困っている」

「わかりました。公正を期すため、ミールナイトギルド長にも話を聞いてみます」

「そっ!そこまでしなくていい。それより何か話があっても我らの話を信じればいいのだ」

「とにかく、商業ギルドは本日の運営を終えた時間です。お帰りを」

「いや!我らの言うことを信じると約束してくれ!」

「帰りなさい」


 有無を言わせず帰したとのこと。


「こえ、みて」


 結界4(平面)を空中に張り、プロジェクター魔法を使ってレーヴァが撮影した映像を再生する。


「とんなとと、言った。ゆち、おとってゆ」

「こんなこと言ったから姫が怒ってるよ」


 そんなに怒ってないけれど言ってみる。


「動く絵が残せるとは!その御業、恐れ入りました。もちろん侯爵様には御使(みつか)い様にアレが迷惑をおかけしたとお伝えする予定です。そして閣下の名を使い伯爵位であるローザリア様にも不快な思いをさせたと…」


 ニヤリと笑うベルトルトギルド長。


「では、私からも苦情を入れておこう」

「承知いたしました」


 ローザお姉さんからベルトルトギルド長へ羊皮紙が渡される。

 昨夜用意したらしい。


「これは私から。この度の報告書です」


 ビッシリ書かれた羊皮紙数枚をにこやかに渡すフィガロギルマス。


「こちらは我らから。昨日彼に勧められたので書きました」


 やはりビッシリ書かれた羊皮紙を取り出すハルパ。


「確かにお受けしました。重ね重ね、当ギルド会員がご迷惑をおかけして申しわけございませんでした。こちらの苦情状は商業ギルド総本部と各支部、そして名をあげられた閣下に文書通信を送ります」


 結構な大ごとになったな。

 私が少し不安な気持ちでいると、ベルトルトギルド長がにこやかに笑う。


「テコ入れに丁度良かった。ゆき様のおかげです」


 他のお金に物を言わせて悪さを行っている商会にも、色々と考える良い機会が出来ましたと喜んでもらえた。



 でも、ちょっと気になることがあるんだ。

 あのおじじが滅びようがなんだろうが、正直どうでも良い。だって身から出た錆…自業自得だから。

 でもそこで働いていた悪くない人達が職を失ってしまうのが心配。


「もちろん、希望した職員には仕事の斡旋を考えております」

「良い、ちとに」

「ナンタラ商会の、悪事に手を染めていなかった者だけに、と言っています」

「そこが難しいところです」


 犯罪の有無は鑑定ボードでわかるけれど、マルエデュカートに便乗していた者まではわかりません……。



 ですよねえ。

 うん。出来るかどうかわからないけど、思いついたことがあるからやってみるね!



 指定した[対象]が指定した[罪]を犯している場合、『〇・×』判定で他者に知られてしまう。

 この天罰は魔石板に付与できる。


 名付けて【天罰!お前の悪事は全てガッツリお見通しだ!】



 どういうことかと言うとですね…。

 まずは無限収納の中で、魔石を10×10cmの板にしてフル充電しておきます。

 天罰の対象者は[マルエデュカート商会の従業員]、罪を[被害者が出るような悪事に加担した者]とします。

 用意した魔石板に天罰を付与します。

 仕事を斡旋して欲しいと希望する[マルエデュカート商会の従業員]に魔石板を向けます。

 すると[罪]を犯していない場合は〇、犯している場合は×が浮かび上がり、他者に罪が暴かれてしまうという天罰です。


 最初は人の指定もなく、更に全ての罪を対象って考えたんだ。しかも〇×じゃなくて、犯した罪の内容が文字として浮かび上がるにしようと思ったの。

 でも、それだと反省したり、すでに罪を償った人の過去まで暴かれてしまうし、人に知られたくないちょっとした嘘まで知られてしまう。

 何よりそれを脅しの材料にされちゃうかも、と思いに至って止めました。



 ではでは、先程作った魔石板を取り出して…。行きまっす!



 【天罰!お前の悪事は全てガッツリお見通しだ!!】を魔石に付与っ。



 ゴロゴロ…ピカッ!

 ドーン!



「わああっ!こえも、たみない、おちたっ!」


 付与する板に雷落ちちゃったよ!

 私の手にはピリッともこなかったよ。

 でも王都の皆!驚かせてゴメン!


 それから………問い合わせが殺到しちゃったらごめんね?

 ベルトルトギルド長。


「こえ、たしゅ」


 ポッカーンとしているベルトルトギルド長に魔石板を差し出す。


「これを貸すって。これはなんだい?姫」

「あのにぇ」


 レーヴァに内容を説明する。


「それで天罰の(いかずち)が下ったんだね」


 クスクス笑うレーヴァ達。


「え?え?今のは何ですか?」


 レーヴァがフィガロギルマスに内容を伝える。

 もちろんベルトルトギルド長にも聞こえていたはずだけれど、ポカーンとしたまままだ動かない。


「すっごい面白いですね!私にかざしてみてくださいっ!」


 レーヴァがフィガロギルマスに板を向ける。


「なにも表示されないよ?」

「おじじ、しょうたい、ちあう」

「ああ、そうか。ギルド長はナンタラ商会関係者じゃないからね」

「えっ! 商会限定なんですか?」

「あいあい」


 犯罪歴がなくてもわかる、ちょっと性能の良い鑑定ボードと思ってほしい。


「そんな良いものマルエデュカート商会限定なんて勿体ないです。ぜひ全対象に!」

「全、たいしょ、ちない。王都、たしゅだて。たえちて、もやう」

「王都のギルドに貸すだけだ。お嬢はそれ以上を考えていない」


 そうですかあ、残念。とフィガロギルマスがすぐに引く。

 彼は珍しい物事に喰い付く熱量は半端ないけれど、私が本気で断るとすぐに引いてくれるから好感が持てるんだ。

 まあいいかな…なんて、ちょっと迷っているとグイグイ来るけれど。


 復活したベルトルトギルド長に渡すと、有り難くお借りします、と恭しく受け取った。

 うん。ぜひ活用して、商会の罪のない従業員を救ってね!




「では、先に進みましょうか」

「うん、そうだね」


 ハルパとミルニルに促されて立ち上がる面々。


「よよちく、おねだい、しましゅ」

「はい、おまかせを」


 外まで見送ってくれたベルトルトギルド長に手を振る。

 (いかずち)で騒ぎになっちゃったらごめんね!

 問い合わせが…特にシュレおじいちゃん関係から連絡がいっちゃったらごめんね!


「どめんにぇえええ」



 私達が見えなくなってから慌ててギルド長室へと踵を返すベルトルトギルド長。額には大汗をかいていた。

 彼が執務室に戻った直後から問い合わせが殺到したのは言うまでもない。


 どめんにゃああぁぁぁ!

本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。

とっても嬉しいです♪

誤字報告もありがとうございます。とても助かっております。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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