270. 金剛鋼鉱石と魔石と結界♪量産は×無理×
「さて、契約も無事終わったし、そろそろ行くか」
「そうだね。姫は大丈夫?」
「あいあい」
鳳蝶丸とレーヴァに言われて立ち上が……ろうとしてベビーチェアのベルトにひっかかり、また座っちゃった。
お姉さん達に可愛いねえと言われつつ、ミスティルに椅子から降ろしてもらう。
ちょと、はずたちたった///(ちょっと恥ずかしかった)
「さて。ここからは乗り物に乗ってもらう」
「乗り物?馬車ですか?馬はどこです?」
「ディリジェンテ君。たぶん私達の想像できないようなことが起こるわ。覚悟したほうがいいと思う」
困惑するディリジェンテさんにエレオノールさんが告げる。
わかっているね、お姉さん!
「ゆきちゃんが用意したもの、楽しみだよ」
「何かな、何かな♪」
「じっくり観察」
ローザ、レーネ、ミムミムお姉さん達はワクワクしていた。
鳳蝶丸がニッと笑みを浮かべ、マジックバッグから☆どおん!☆と出すは桜吹雪号。
「ふあっ!」
「あがっ!」
「ええぇっ!」
驚くディリジェンテさん、フィガロギルマス、エレオノールさん。
「すっご!」
「乗り物ですの?」
「わあ!想像以上がキタ!」
「これはまた凄いね」
「魔力のかたまりっ」
リンダ、エクレール、レーネ、ローザ、ミムミムお姉さん達は躊躇なく近付いて行く。
「凄い、凄い!全然読み取れない。魔力量半端ない」
ミムミムお姉さんなんてかぶりつき状態だよ。
フィガロギルマスは何を言っているのかわからないくらい興奮して、桜吹雪号に走って行って飛びついた。
ディリジェンテさんは眼鏡を上下上下しながら車の周りを回っている。
エレオノールさんは値がつけられないわあっと超笑顔を浮かべていた。
ドッキリ成功?
キャッキャッと笑う私に、ミスティルの無言スリスリが発動したよ。
「んじゃ、乗ってくれ」
氷華がスライドドアを開ける。
「で、でも、この箱の大きさに、この人数では乗り切れないのでは?」
「それは入ればわかるわ。1番をディリジェンテ君に譲るから入ってみて」
「え?」
「いいですね。ぜひディリジェンテ君から」
「怪しいです。なんですか?」
ディリジェンテさんが眉を寄せて、【虹の翼】のお姉さん達を見た。
「安全確認を……」
「安全は保証するよ」
「ええ。危険なことはありませんわ」
ローザ、エクレールお姉さん達までニコニコしながら先を譲る。
「早く乗ってください。出発出来ませんよ」
「は、はいっ」
ミスティルに促され、急いで足を踏み入れるディリジェ……飛び出した!
「な、な、な、なんですかこれはああぁぁぁ!」
飛び出すまでがイベントです♪
「やはりこうなりましたね?テントを見てそう思ったんで……、すごい!」
ニヤニヤしながら足を踏み入れたフィガロギルマスが目を見開く。
「どうなっているん…」
まではっきり聞こえ、「ですかあぁー」の声が遠のいていく。
奥まで行ったのね。
他の皆さんも中に入り、その広さに驚いていた。
「師匠、流石です、師匠」
「わたち、ちあう。皆、ちゅちゅった」
私だけでつくったわけじゃなくて、皆でつくったんだよ。
ハルパとレーヴァでリクライニングシートの使い方と、トイレやシャワー室、休憩室の説明をする。
「こうですね!なるほど素晴らしい!」
リクライニングシートで寝そべったり座ったりしながら興奮するフィガロギルマス。
内装をコンコンと軽く叩きながら材質を確かめるディリジェンテさん。
この椅子1台だけでも金貨が何枚になるんでしょうと計算を始めるエレオノールさん。
混沌である。
「とにかく出発する。適当に座ってシートベルトを装着してくれ」
魔獣出現の時飛び出す必要があるからと前に座りたがるフィガロギルマスを宥め、前方から【虹の翼】、商業ギルド組、我が家の皆が座る。
「良し行くか」
「障害物はないぜ」
本日の運転は鳳蝶丸、助手席は氷華でございます。
私は後方でベビーシートに座っているよ。バスガイドみたいなことがしたかったのに、立っているのは危ないからと珍しく却下されちゃった。
「シートベルトはしたか?」
「っ!…はい」×皆さん
「では出発する」
車のスピーカーを対象として魔力を通すと声が出るよう、ワイヤレス通信と車内のスピーカーを繋げておいたんだ。
フィガロギルマス御一行と【虹の翼】のお姉さん達は、鳳蝶丸の声が近くから聞こえてビクリと驚いていたけれど、拡声器を使ったことあるからかわりと落ち着いていた。
「では、しゅぱーちゅ!」
「了解」
エンジンをかけると車がフワリと浮かび、ゆっくりと走り出す。
「わ…動いた」
「馬もいないのに不思議ですわ」
窓を見ながら不思議そうにしている皆さん。
やがて車はスピードを上げる。近くの景色は飛ぶように、遠くの景色はゆっくりと過ぎ去って行った。
「凄い、凄い!素晴らしいです!」
「揺れもしませんし快適ですね!」
商業ギルド組、特にギルマスが、興奮して外を眺めている。
【虹の翼】のお姉さん達は、馬車もこんなに快適だったらいいのに…と言っていた。
サスペンション無しの馬車は揺れるもんねえ。
構造や機能などは教えてあげてもいいかな。フィガロギルマスの様子を見てそのうちに。
「そろそろ休憩する。車が止まるまで座っていてくれ」
街道少し外れてお昼休憩にする。
車はゆっくりスピードを落とし、エンジンを切るとゆっくり地表に降りた。
車の中で皆さんサンドイッチをつまみながら、車の話で盛り上がる。
「この材質は見たことありませんわ」
「魔力感じる。凄い」
「聞かないほうが良いかもよ?」
「でも聞きたい。未知なる素材!」
エクレール、ミムミム、リンダ、レーネお姉さんは内装が気になるみたい。
「差し支えなければ教えてもらえる?」
ローザお姉さんも興味津々な模様。
このクッション性のあるボディに張った合皮は地球のものを再構築したものだし説明が難しい。「わたなない(わからない)」にしておこう。
外装の鋼板は何かを教えてもいいかな。ミルニルさんお願いします。
「この車は魔石と金剛鋼鉱石で作られているよ」
「!!!魔石と金剛鋼鉱石?!」
商業ギルド組も加わり、フィガロギルマスが喰い付いた。
「金剛鋼鉱石は幻の鉱石と言われていますよね?ほぼ伝説に近い…。魔力を集める鉱石と聞いておりますが間違いないですか?」
「うん。間違いない」
すんごい盛り上がっている皆さん。
「魔石は車体と同じくらいの大きさを使用しております。詳細は言えません」
詳しく説明するのが面倒くさくなったのね?ハルパ。
「わかったと思うけど、特殊な素材を使っているよ」
「量産は無理ですねえ」
「たぶん」
フェリアが発展したら車が普通になるのかな?
うーん。魔法がある世界だからどうだろうね。
「俺達が色々な技を施した乗り物だから、旦那らが作るのはまだ難しいんじゃないか?さて。そろそろ出発するか」
「シートベルトを締めてくれー!」
鳳蝶丸と氷華に促され、座席に座り直す面々。
複製すれば何台でも用意できるけれど結界は私がいないと維持が難しいし、いくら金剛鋼鉱石で囲っていたとしても、でっかいボディの魔石に充填するのは魔法使い何人必要なのか見当もつかないよね。
「ようしゃん、販売、むじゅたちい」
「ですよねえ。金剛鋼鉱石なうえ魔石製ですもんねえ」
量産も販売は難しいなあ。
フィガロギルマスもそこはわかっているみたい。
まあ、とにかく。今は新しい発見の旅を楽しんでくださいね♪
「は、早いっ!」
「歩けば8日ほどかかるのにね」
日が傾く頃。王都近く到着する。
この辺りで車を降り、ここからアンゲリカさんと出会った野営場まで歩くよ。
「今日は野営場に泊まります。明日、王都に用事はありますか?」
ハルパが聞くと、皆さんが首を横に振る。
「では明日、野営場を離れたらまた車に乗って進みます」
「承知しました。行ったことの無い場所にも行けそうですし、珍しいものが見られそうで楽しみです♪」
「遭遇したことのない魔獣と対峙できるといいなと思う。楽しみだよ」
フィガロギルマスもローザお姉さんもブレないねえ。
「それなら悲しいお知らせなんだけど。俺達にはほとんどの魔獣が近付いてこないよ」
「まあ、それじゃつまらないから、途中狩りなんかもするけどな」
レーヴァの発言にガッカリし、氷華の発言に満面の笑みを浮かべるお姉さん達。
根っからの冒険者なんだね。
フィガロギルマスも久しぶりに暴れますかあ!とフンスフンス!している。
皆さん楽しそうで……エレオノールさん達が若干引いているけれど、ナニヨリデス。
そんなこんなで野営地に到着。
前回は戴冠式があったためとても混雑していたけれど、今日はあの日ほどではないね。空いているし、商業ギルド長いるし、何より私達は行商人の体なので、堂々と商人エリアにテントを張るよ。
「テント、だしゅ。ペジュ、打てね」
テントは出すけれどペグは自分で打ってね。
あ、音漏れと侵入者禁止の結界1は張るから安心して♪
ミスティル通訳で皆に話すと、早速ペグを打ち始める皆さん。
我が家の皆も2ルームテントを張った。
「19時頃食事にするからここに集まってくれ」
「わかりました」
最後に結界1を張って設置完了。
夕食までは各自でゆっくりしてねということで、一旦解散になりました。
私達は2ルームテントでのんびりする。
今夜の夕食は何にしようかなあ。
白いご飯は初めてのディリジェンテさん。
ダメだったら前に作った炊き込みご飯を出せばいい?
鶏肉と大根の煮物がどうしても食べたい気分なので、それをメインにしよう。
あとは玉子とトマトの炒めもの。玉ねぎと油揚げのお味噌汁。
そうだ!白菜と塩昆布のシーザードレッシング和えも作ろう…再構築で。
本当はきちんと作りたいけれど、旅の間は再構築でもいいかなって思っている。
時間に余裕がある時は作る(鳳蝶丸達が)けれど。
炊き立てご飯と炊き込みご飯はおひつ(5合)に入れ、オリジナル1個と複製10個ずつ無限収納に常時入っている。空になったおひつは清浄で綺麗にして次に炊いた時に使ったり、別の素材をつくる時の材料にしているよ。
我が家の皆は沢山食べるのでおひつが溜まっちゃって、この間はお家に誰かが遊びに来た時に配るお土産用アンティーク陶器セットを沢山再構築っちゃった!
薔薇柄でピンクの超絶可愛いセットとビンテージブルー&ホワイトのセット♪
………今のところお客さんを呼ぶ予定ないけれど。
【虹の翼】のお姉さん達と、フィガロギルマスとビョークギルマス、シュレおじいちゃんと、【堅き門】の皆は呼ぼうかなって思っているんだ。
ラエドさん達やドゥルーエルさん達も呼びたいなあ。
転移の門戸じゃなくても桜吹雪号に乗ってもらえば呼べるよね?
夢が広がっちゃう♪
とと、今夜のご飯だった。
ご飯以外のおかずはぜんぶ再構築で用意して…。オリジナルは取っておいて複製を出すよ。
うーん…。気が付くと私の無限収納の中身食べ物ばかりだなあ。
私らしくて良いよね?
本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。
とっても嬉しいです♪
誤字報告もありがとうございます。とても助かっております。
これからもどうぞよろしくお願いします。




