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254. 酒場と魔改造。そして立冬祭

「ありゃ、どうしたんだ?嬢ちゃん」

「目的のものが無くて、ウチでフルオーダーすることになったのよ」

「おう、仕事か!任せてくれ!」


 職人さん達が自分の腕をパパン!と叩く。


「あいっ、おねだい、しましゅ」

「おーう!」


 と言うわけで、カライカライさんに欲しい家具のデザイン画と設計図を見てもらう。ちなみにデザイン画はハルパとレーヴァ。設計図は鳳蝶丸が用意したものだよ。


「それほど凝ってねえから難しくは無いだろう。それにしても面白い形だな」

「これはカウンターで、内側の棚に色々収納できる仕様だ」

「カウンター?店でも出すのか?」

「いや、趣味だな」

「趣味?」


 そうなの。

 鳳蝶丸達皆からのリクエストで、趣向を変えた酒場3種類を作ることになったんだ。

 BAR・キルシュブリューテはお洒落な都会のお店風。

 それからちょっと高級な和風居酒屋。こちらは私が再構築・再構成で作る。

 最後にもうひとつ。今回家具をフルオーダーするのは、南国リゾート風バーカウンターです!


 皆本当にお酒が好きだよねえ。



 アミューズメントルームとBAR・キルシュブリューテの間に廊下を作った。

 そして一番手前がキルシュブリューテ、真ん中が和風居酒屋、一番奥に南国リゾートの扉を設置。それぞれの部屋は空間操作で思いっきり広げました。


 なんかもうロココ調のお城の中とは思えない造りになっちゃったよ。

 私達らしい……から良いよね?ね?



 そう言えば、話が脱線しちゃうけれど。

 3階の神様のためのお部屋はウル様による魔改造が進みつつあるの。

 この間覗いたら、扉の向こうがギリシャ神殿の中みたいになっていたよ。

 さらに建物から出ると、向こうが見えないほどの草原。


 そう草原……。


 3階が完全にガッツリ神域になっちゃってるう!

 ウル様の気配に満ち満ちた神域ですよう。


 ……本当に大丈夫?私の家。



『神殿の中に御神子(みかんこ)宅を参照にして』

『同じ酒場を作るから』

『お酒と食べ物を』

『時々納品しておくれ☆』


 いつもお屋敷にいないのでおもてなし出来ませんよ?と返信したら、お酒の神様御一行が神殿酒場をノリノリで管理してくれることになったんだって。


 私はウル様から連絡が入った時、共有に納品すれば良いとのこと。

 自分のお家に神域と神々の酒場が出来るなんて想像もしていなかったよ。


 シュレおじいちゃん一行が泣き崩れるね!



 ……とと、話が盛大に逸れちゃった。

 そんなわけで、現在色んな部屋を作成中。

 揃えられる範囲でフェリアの家具等を調達することになったので、南国リゾート風バーカウンターはカライカライ工房にフルオーダーをお願いすることにしたんだ。


 おおよその見積額の半額を前金として支払い、残りは納品時支払う契約をする。


「よよちく、おねだい、しましゅ」

「おう。任せてくれ」


 お祭りが終わってしばらくしたらまた顔を出すね。

 今日はこれにて。またね!






 おはようございます。

 まだ外は真っ暗。早朝でございます。

 気配完全遮断と飛行(ひぎょう)で冒険者ギルド・中央支部にやって来ました。


 ギルドに入ると職員さんが数名。リインさんがいたので声をかける。


「おはようございます。今日から2日間よろしくお願いします」

「おはよ、ごじゃいましゅ。とちやも、よよちく、おねだい、しましゅ」


 おはようございます。

 こちらこそ、よろしくお願いします。



「支度に来たんだが、演習場に入っていいか?」

「はい。問題ありません。どうぞ」


 私達はまだ真っ暗な演習場へ向かう。

 そして許可をもらった場所に、屋台用の小屋2軒を少し離して建てた。

 小屋に結界を張って、関係者以外立ち入り禁止と出入りのたびに清浄を付与しておいた。


「門の出入り口に近い方が焼き鳥で、奥側がたこ焼きで良いか」

「うんっ」


 鳳蝶丸達は焼き鳥とたこ焼きの焼き台やその他器具、消耗品などの用意を始めた。


 私はミルニル抱っこでまずは一般客側の準備。

 今回は2店舗あるので列が混ざらないよう行列整理用ポールを立て、ポールの転倒防止に地中まで結界を張る。

 あとはトイレテント(男・女)4張り、ゴミ箱数個、食器返却箱数個を置き、それらも地中まで結界を張った。


 屋台小屋を含む、演習場のほとんどを結界4(立体)で四角く張る。

 転売目的の者は入れない。物理・魔法攻撃完全防御。犯罪を目的とする者・物、勧誘目的の者、私達にとって敵と見做される者は侵入禁止とした。


 焼き鳥とたこ焼きのアドバルーンに浮遊をかけ、結界から出ないにする。

 たこ焼きの方にはもう1つ、中が激熱注意!のアドバルーンも浮かべておく。


 夜には結界内にランタンを浮かべるよ。



 屋台小屋の裏側は貴族ゾーン。

 本当は分けなくてもいいけれど、貴族以外の人々が緊張したり遠慮したり、食べにくかったりしてはいけないからね。


「主殿。屋台小屋の準備が完了したので手伝います」

「次は何をします?」


 ハルパとミスティルが来てくれた。


 私は一旦抱っこから下ろしてもらい待機。

 ミルニルも加わって、貴族ゾーンに大きな帆布シートを敷いてもらった。

 そしてちょっぴりゴージャスなこたつテーブルと椅子を設置する

 去年より問い合わせが多かったらしいので、座席は多めにした。


 それから執事さんや従者さん達、メイドさん達の控える場所も設ける。

 そこには簡易テーブルと椅子を並べた。

 給仕はおまかせします!



 あとはトイレテント(男・女)を数張り設置。

 貴族用と従者さん達用は離して置いた。


 念のため、貴族ゾーンを結界4(立体)で四角く囲み、防塵・防砂、清浄を付与。

 その他に物理・魔法攻撃完全防御、毒物排除も付け加えた。


 うん、こんなもんかな?



 屋台小屋の横にはお着替えブース【虹の翼】用、【堅き門】(男・女)用を設置。

 全部転倒防止と全攻撃完全防御、関係者以外立ち入り禁止の結界を張ってある。


 これでひと段落かな。

 あとは皆を待つよ!



 空が少し明るくなってきたころ【虹の翼】のお姉さん達。その後直ぐに【堅き門】の皆さんが集まった。


「おはよ、ごじゃいましゅ」

「おはようございます!」

「ちょうたや、ふちゅた、よよちく、おねだい、しましゅ」

「よろしくお願いします!」


 では、全員揃ったのでまずは一般客用のテーブルや椅子を用意してもらおう。


「この帆布シートをあの辺りに敷いてください」

「わかった」


 【堅き門】の皆さんが指定された場所にシートを広げる。

 帆布シート上にシンプルなデザインのこたつテーブルを置くと、適度な距離を空けつつ設置してくれた。


 その一つ一つに結界を張り、テーブルは結界から外に出ないにしておく。

 足は入れられるけれど、テーブルを持ち去ることは出来ない仕様です。


 椅子はねえ。結界で囲う分けにはいかないからそのままかな。

 そもそも盗もうとする人は結界に入れないしね。



 うん。こんなもん?

 あとは足りないものがあったら出すって感じにするね。



 さて。小屋の裏側にこたつテーブルを出して朝食にしよう。


「うげっ!すんげー綺羅びやか!」

「貴族仕様になってるな」


 ニイナさんとアンゲリカさんが貴族ゾーンを見て肩をすくめる。


「君達の休憩はあちらのテントを利用してください」

「わかった」


 このテーブルは貴族から見えるから落ち着かないもんね。


「では朝食にします。皆さん着席してください」


 ハルパが案内すると、すぐに動き出したのは【虹の翼】のお姉さん達。


「あったかーい」

「やっぱり凄いテーブルだよね」


 【虹の翼】のお姉さん達が躊躇なく座ったのを見て、【堅き門】の皆さんも恐る恐る座る。


「おおっ!」

「なんだコレ、温い!」


 皆さん物凄く驚いていた。



 全員揃ったので、バーガーセットと飲み物を出す。

 好きなものを取ってもらい、食べながら軽く説明をすることにした。


「裏は基本的に姫さんと俺達が担当する。君らは一般客を頼むな」

「列の整理、警護班やトイレテント案内班、売り子班は君達で決めてきましたか?」

「ああ、大丈夫だ。担当は決めてある」

「私達は基本売り子で、何かあれば警護にまわるよ」


 よろしくお願いします。


「交代などは皆に任せる。何かあれば俺達に確認してくれ」

「はいっ」


 焼き鳥やたこ焼きの調理練習のあと、販売シミュレーションもしてある。

 それに何があっても鳳蝶丸達と私が対処するからね!




 8時半ころ開門。

 屋台は10時から開店だけれど、私達はコンテスト参加者ではないので早めに開店することになっている。と言っても、9時半からのはずなのに……早くない?


 あ、ビョークギルマス!

 前に見た、冒険者ギルドの偉い人たちが来訪者のお迎え準備をしている。

 そうだった。貴族の皆さんが来るんだったね。


 まず到着したのはアルシャイン辺境伯御一行。


「おはようございます、ゆき様。ご健勝でいらっしゃいましたか?」

「あい。おししゃし、ぶい、でしゅ」

「お久しぶりです、だって」


 市長さんは辺境伯の後ろでニコニコと笑っていた。


「今回も沢山の方がいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします」

「あい。どうじょ」



 門外に一般のお客さんが並ぶ中、綺羅びやかな馬車が続々とやって来る。


「今年は更に増えたな」

「貴族だらけ……」


 鳳蝶丸とミルニルが苦笑いしている。


「去年も凄かったけれど、更に上を行くね」

「流石師匠」


 【虹の翼】のお姉さん達も苦笑。

 そして【堅き門】の皆さんは無言でガタガタ震えていた。



「落ち着いて。そろそろ焼きに取りかかってくれ」

「焼き鳥班行くよ」

「たこ焼き班は俺とだ」


 レーヴァ、ハルパは焼き鳥小屋に、氷華、ミスティルはたこ焼き小屋に向かう。


 本日の抱っこ係はミルニル。

 そして屋台総監督は鳳蝶丸です。




 焼き鳥のいい匂いが漂い出したころ、あらかたの王族、高位の貴族は裏の貴族ゾーンに収まっていた。もちろんシュレおじいちゃんの姿もあるよ。

 でも今年は他国の王族、貴族は不参加だそうです。

 そんなしょっちゅう他国に来られないもんね?


 それにしても……。国内の偉い人ばかりらしいけれど、お家を空けちゃって大丈夫なのかなあ?



「お会いする機会を得、光栄の極みにございます」


 現国王とシュレおじいちゃんの一団、その他の人々全員が私の前に跪く。

 前もってシュレおじいちゃんから「形式だから」と打診があり、少しだけお付き合いすることにした。


「あい。皆しゃま、どちでんよう」


 皆様ごきげんよう。

 ちょっと言ってみたかったの。エヘヘ♪


「皆しゃん、立って、ちゅだしゃい」


 皆さん感動した表情で私を見上げ、なかなか立ち上がらない。

 ………うーん。やっぱり恥ずかしい。


「はじゅかちっ」


 思わずミルニルの肩で顔を隠す。


「挨拶はそのくらいで」


 すると鳳蝶丸が助け舟を出してくれた。


「お嬢は特別扱いが苦手だ。とにかく席に着いてくれ」

「御意に」


 形式的な挨拶は終わったので、皆さんに着席してもらった。


「去年手伝った者達はいるか?」

「はい。我が領の者が勝手を知っております」

「ではトイレの案内や飲み物の準備など、適当にすすめていてくれ」

「はい。ありがとう存じます」


 簡易テーブルに飲み物類を沢山出し、あとは従者さんやメイドさん達に任せる。


「まずは開店の準備をしてくる。このまま待っていてくれ」

「承知いたしました」


 アルシャイン辺境伯に言付けして、私達は一般客側に向かった。



「ふあっ!」


 もう既に長蛇の列が出来ているよ!

 そして焼き鳥列の1番前にいたのは、去年に引き続き、あの人!


「おう、嬢ちゃん!」

「ガウユユ、しゃーん!」


 久しぶり!

 手をブンブン振ると、ガグルルさんも手を振ってくれた。


「たこ焼きも食いたかったケド、こっちからやべぇ匂いがしてたから、並んでみたぜ」


 そう。

 入り口手前側の小屋は焼き鳥。

 既にいい匂いが周囲に漂っている。


「まあ、あっちにも仲間が並んでいるんだけどな」


 豪快に笑いながらガグルルウインク。

 ありがとう。いっぱい食べてね!



 焼きたての焼き鳥やたこ焼きは、我が家皆のマジックバッグに沢山入っているので問題ない。一時的であれば、ローザお姉さんとアンゲリカさんのダガー君に保管もできる。

 うん、準備は整ったかな。


「しょよ、しょよ、始めましゅ」

「いつでもいいよ」

「はいっ!」

「問題ありません」


 ミルニル抱っこで最前列に向かう。


 ん、んん!


 ミルニルが拡声器を持ってスタンバイ。

 では開店の挨拶をしよう!


「おはよ、ごじゃいましゅ。おまたしぇ、ちまちた。シャクヤ、フブチ、たいてんでしゅ!」



 ウオオォォ!

 ワアアァァ!



 歓声が上がったところで、アンゲリカさんとニイナさんが列を捌き始める。

 あとは屋台の皆にまかせて、私とミルニルは再び貴族ゾーンに向かった。

本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。

とっても嬉しいです♪

誤字報告もいつもありがとうございます。大変助かっております。

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