252. 楽しいねっ ジュジュー♪
厨房には数口の立派なコンロがあり、その上には大きな換気ダクト(レンジフード)が設置されている。他には換気ダクトだけで、その下にはただの作業台しかない場所をいくつか作った。
そこは用途に合わせて自由に使えるようにしたかったんだ。
作業台には防火の結界4(平面)を張ってあるから安心して火を使えるので、普段使わない焼き鳥用の焼き台やタコ焼き器を出した時に使用するよ。
全ての大きな換気ダクト(レンジフード)は、清浄付き結界4(平面)に煙や匂いが通る仕組みになっていて、どんな料理を作っても周りが煙らず臭いも広がらない仕組みとなっている。
だからたこ焼きの匂いも焼き鳥の煙も気にせずガッツリ練習できるのだ!
調理の練習は鳳蝶丸達におまかせで、私はティティお姉さんとティカ君と遊んで待っているね。
「ティタたん。あしょぼ」
「あいっ!あしょぶう」
練習している皆の近くに小さなテーブルを出す。
それから焼き台を再構成でミニミニサイズにして、炭っぽい赤と黒のブロックと、チョコレートファウンテン用に小さくカットした焼き菓子を出す。
「おねしゃん、とうちて?」
先を丸くした串に焼き菓子を刺すようティティお姉さんにお願いした。
「これで良いかしら?」
「あいっ」
焼き台にお菓子の串を置いて、小さなうちわで扇ぐ。
「わあっ!」
ティカ君は皆がしているのと同じことが出来て嬉しいのか、手を叩いて喜んでいる。
「パチパチィ」
「ジュジュー」
本当に焼くわけではないので、自分の口で音を出す。
「あい。やちとい、タエよ」
焼き鳥のタレはチョコレートソース。
ちゃんと小さな刷毛も再構成して好きなようにつけてもらう。
赤ちゃんなのではみ出したり床に垂らしたりするけれど、あとで清浄するから問題なしだよ!
「ジュー!ジュー!」
「やちとい、やてた!」
「やてたあ」
「美味しそうに焼けたわね、ゆき様、ティカ」
チョコまみれの串をティティお姉さんに1本渡すティカ君。
「にたま」
ティア・ソニアンさんにも渡したいのね?
「ここに置いて、兄様にはあとで渡しましょう?」
「うん」
ミニミニ焼き台の端に串を置いて、自分の分を見つめるティカ君。
「お昼ご飯を食べるから1つだけね」
「あいっ」
「あいっ」
「うふふ、いい子ね」
ティティお姉さんは初めて会った時と印象が違い、おっとり系美人だった。
「さあ、神様に感謝いたしましょう」
「あいっ。たーたま、あんと」
「あいっ、めちあだえっ」
どうぞ召し上がれ。
ティカ君にはバレバレなのでもういいや。もう隠さずお返事しちゃう。
あんむっ、モグモグ…。
「おいちっ」
「あいあいっ」
チョコレートファウンテンの少しチョコが少ない(所々大量)バージョンって感じ。ティティお姉さんも美味しいわと言いながら嬉しそうに食べている。
優秀な換気ダクトのおかげか焼き鳥の匂いは強くない。
微かに焼き鳥のタレの香りを感じつつ、チョコレートソースまみれ焼き菓子を堪能する私達だった。
「では、自分達で焼いたものの試食をします」
ハルパが言うと、鳳蝶丸達が椅子を出した。
作業台の周りでお昼ご飯兼試食会にするみたい。
まずは鑑定ちゃんで確認し、生焼けや炭になっているものを廃棄しておく。
はいっ。準備が整いました。
皆でいただきます!
「いい匂いだったから楽しみだったんだよね」
「あの匂いはヤバイ」
「店頭で焼きながら売るんだろ?大量買いするよな」
皆さん話しながらパクリと焼き鳥を口にする。
「うんま!」
「何だこの美味さっ」
「リーダー、私を誘ってくれてありがとう!」
うんうん。
美味しいよね、焼き鳥。
「これはわたし達が焼いたものです。自分で焼いたものと比べてみてください」
次にミスティルが自分達が焼いたものを出す。
「ふっくら柔らかい」
「外側は香ばしいのね」
「更に美味しい!」
「俺のはちょっと焦げ臭い」
皆さん自分の焼き鳥と交互に食べながら、焼き過ぎかなとかタレのつけ過ぎ?などと話し合っていた。
試食が一段落したところで、事前に用意した(作ったのは鳳蝶丸達)薄味の炊き込みおにぎりと茄子のお味噌汁、ご飯がダメな人用にコッペパンとオニオンスープをテーブルに出す。
「おしる、食べゆ」
「昼食です。午後も練習なので、食べ過ぎないようにしてください」
おにぎりが嫌な人はコッペパンをどうぞと説明する。
焼き鳥を挟んで焼き鳥サンドにしても美味しいよ。
「これはおにぎりか?」
「たちとみ、おににによ」
「炊き込みの握り飯だ。間違いないから食べてみてくれ」
鳳蝶丸がそう言ってパクリと食べる。
アンゲリカさんやニイナさん、ティア・ソニアンさんも躊躇無く口にした。
「うんまあ!」
「この間のも美味かったが、これも美味いな」
「焼き鳥との相性も抜群です」
「オミソシル?は優しい味なのね。とても美味しいわ」
最初パンを手に取ろうとしていた人達もおにぎりを食べ始める。
皆さん美味しい!と大絶賛だった。
「イエーバ、こえ、ちて」
「ん?了解」
自分ではできないのでレーヴァにお願いしよう。
コッペパンに筋を入れ、千切りのシャキシャキレタスとたまごサンド用のマヨたま、串から外した焼き鳥を挟み、4等分に切ってもらった。
ジャジヤーン!
焼き鳥コッペェェェ!
「おいちいっ」
「どれどれ?うん、美味いね、姫」
「主さん、俺も食べていい?」
「うん、いいよ。みなたん、どじょー」
おにぎりと焼き鳥を大量に食べたのに、焼き鳥ドッグまで頬張る我が家。
つられて【堅き門】の皆さんも食べ始め…。結果、お腹パンパン者が続出。
やっぱり?
「ハユパ」
「はい」
「初めての日。ちゅうてい、しゅゆ」
「承知しました」
練習初日だし、休憩を取ってもらおう。
「いったんテントに戻って休憩とします。着替えずそのまま行ってください。自分の服を入れた箱は持っていってください」
「このままでいいのか?」
「厨房にはクリーン付きの結界が張ってあるので入る時も出る時も清浄されます」
「なるほどな」
お腹もいっぱいになって動きづらそうだったので、休憩することにしたと説明する。皆さんは衣装箱を持ってエレベーターホールに移動し、私達と一緒に外へ出た。
「14時に玄関前に集合してくれ」
「ありがたい。それではあとで」
はい、一旦解散。
私達も2ルームテントでのんびりしたよ。
午後も焼き鳥の練習。たこ焼きは後日にしたそうです。
私とティカ君、ティティお姉さんは休憩室で積み木や幼児用のパズルで遊び、飽きてくるとレーヴァ付き添いで外に出て、かけっこ(ヨチヨチ)をしたりして遊んだ。
「幼児の気持ち」爆上がりでめっちゃ楽しかった!
「奥が深いぜ、焼き鳥」
「あのタレ、砂糖入っているよな?」
「他の調味料が何かわからん」
「塩なら俺達でも出せるようになるかも」
「バカッ。あの肉、めっちゃ良いものだから、自分達であの味は無理だよ」
【堅き門】の皆さんには、来年以降、王都で焼き鳥屋さんしても良いよと言ってある。
お肉はねえ…確かに良いもの何だよね。
クルコッコライダーとかクルコッコクイーンとか、実はレッドホットワイバーンも使ってる。大白雪鴨も混ぜてるんだあ。
皆には内緒にしているけれどね!
質の悪い肉を除き、普通のお肉ならば特別良いお肉じゃなくたって大丈夫だと思う。香草とか薬草とかと組み合わせれば、美味しい塩焼き鳥が作れるんじゃないかな?
食べられる香草や薬草なんかはティア・ソニアンやティティ・ソニアンさんが何となく詳しそう(予想)だし、皆で研究してみてね?
「今日はこの辺で解散。明日朝8時、ここに集合だ。その時はもう着替えてしまってくれ」
「わかった。ではまた明日」
夕食に魚介パエリア弁当とオニオンスープを渡して解散。
【堅き門】の皆さんはテントに戻って行った。
「おねしゃん、わたち、テント、やしゅむ?」
お姉さん達は私のテントで休みますか?
「気遣いありがとう。でも私達もテントに戻るよ」
「ええ。また明日お会いしましょう」
ローザお姉さん達もテントに戻るということなので、お弁当とスープを渡して解散。私達もテントに戻ってゆっくりやすむことにした。
「焼き鳥焼いてる間、ずっと酒が飲みたかったんだよな」
夕ご飯を食べ、お風呂から出ると、皆はリビングで酒盛りを始めた。
焼き鳥を焼きながら我慢していたんだろうなあ。
私は暫くソファにいたけれど、そのうち分からなくなりました。
皆酒盛り楽しんでね!
では、おやすみなさい。
翌日は2班に分かれ、焼き鳥の練習とたこ焼きの練習です。
「久しぶりだし、できるかな…」
「練習あるのみ!」
リンダお姉さんとレーネお姉さんが張り切ってたこ焼きの練習を始めた。
私はまた小さなテーブルを出して、ティカ君と遊ぶんだ♪
ミニミニたこ焼き器を再構成。日本にいた時作った丸いドーナツを再構築してたこ焼き器に入れ、先の丸い串で転がしてみる。
「コロコロコロ」
「たとやち、でちた?」
「まだあ。ジュジュー」
一生懸命転がしているティカ君。串でちょっと崩れちゃうのは御愛嬌。
そしてたこ焼き用の木舟経木には、グワシッと掴んで豪快に入れる。
あ、ドーナツは揚げたてじゃ無いので熱くはないよ。
「たこ焼きくださいな」
「あいっ、くじゃしゃいな!」
ティカ君、そこはヘイ、いらっしゃいだよ!
木舟経木に入ったドーナツに、刷毛でチョコレートソースをつける。
「おいくらですか?」
「しゃくまんエン!」
おおうっ!
子供の最大値、100万エン!
「はい、百万エン」
ティティお姉さんが鉄貨を1枚渡すと、満面の笑みでたこ焼きドーナツを渡した。
「たーたま、行こ」
「んう?」
どこに行くの?
手を差し出されたので繋ぐ。
ティカ君は、たこ焼きの練習をしているティア・ソニアンさんのところに行った。
「くだしゃいなあ」
「ん?ティカ?」
「あい、くだしゃいなあ」
鉄貨を差し出す。
あ、たこ焼きドーナツのお金で、本当のたこ焼きを買うつもりなのね!
「兄様の焼いたたこ焼きを2つお願い」
「はい、いらっしゃいませ。熱いので冷ましてからお召し上がりください」
「???あいっ」
わかってないけれど元気よく返事をしたティカ君。
ティア・ソニアンさんはそんな彼に微笑みながら、ソース無しのたこ焼きを2つ小皿にのせた。
「ひょーた、おねだい、ちまちゅ」
「ん?どうした?」
「こえ、ぬゆい、しゃましゅ」
「温いくらいに冷ますんだな。わかった」
本当にアッツアツなので、氷華に魔法で冷ましてもらおう。
「これくらいなら大丈夫だろう」
念の為鑑定ちゃんで確認。
中まで焼けているし、ほんのり温かいくらいまで冷めてあるみたい。
「チッチおねしゃん、どうじょ」
「まあ、ありがとうございます」
1つを半分に割ってティティお姉さんが食べてみる。
「まずはゆき様…」
「ううん。チタたん、どうじょ」
「ありがとうございます」
残りの半分をティカ君の口に入れる。
「おいちっ」
ほっぺを抑えて美味しいのお顔をした。可愛い!
私も食べさせてもらおうっと。
フォークを出してティティお姉さんに渡す。
「はい。ゆき様あーん」
「あーん」
モグモグ。
うん。ソース無しのたこ焼き。
もちろん美味しい。でも元々の味を知っている私には物足りない。
そして、ティティお姉さんが気を利かせてタコを抜いたので、さらに物足りない。
「おいちい」
「良かったです」
でもティア・ソニアンさんとティティお姉さんが不安そうな顔をしているので、美味しいって伝えたよ。
数日かけて焼き鳥、たこ焼き、クレープの練習をした。
アンゲリカさんとニイナさんは、焼き鳥は焼けたけれどたこ焼きとクレープは壊滅的でした。
ダメにしてしまったものは再構築の材料にしたり、真っ黒焦げのものは気分的に清浄されるゴミ箱でごめんなさいしました。
ごめんなさいっ
本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。
とっても嬉しいです♪
誤字報告もいつもありがとうございます。大変助かっております。




