233. ヴィンテージワインになっちゃう予感がしつつ、出発です!
翌日、のんびりしているとドゥルーエルさんから声をかけられた。
案内されて行ったのはこの間のワイン工場休憩場所。
そこにはメツァさん、コトカさん、イルマさんのご家族とスルカさん、ユスタヴァさん。そしてドゥルーエルさん一家が待っていた。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよ、ごじゃい、ましゅ」
「こちらにどうぞ」
沢山ある荷物のところに案内される。
「えー。改めまして、俺達の子や友をお救いくださってありがとうございました」
「ありがとうございました」
皆さんが頭を下げた。
「もう、あにあと、ちて、もやた。いいよ」
もうすでにお礼を言ってもらったし気にしないでください。
「少ないが、これらは俺達から君らに用意した礼の品だ。どうか受け取ってほしい」
「えっ!」
沢山ある品物は全部私達へのプレゼントらしい。
「アタシとユスタヴァは今手持ちが無くて何も渡せない。ごめんね」
「すまん」
そんな気にしなくていいのに。お礼が欲しくて首を突っ込んだわけじゃないもん。
「にゃにも、いなないよ?」
「父として、母として、親族や友としての礼だ。どうか受け取ってほしい」
鳳蝶丸達を見たら、皆コクンと頷いた。
うん。ここはありがたく受け取っておこうかな。
「うえちい、あにあと!」
「ありがとう。嬉しい、とのことだよ」
今日はレーヴァ通訳です。
「受け取ってくれて良かった。では説明するよ」
イルマさん宅からはインディベリーの果実と果実水、そしてインディベリー酒。
メツァさん宅からはシュリシュリと言うさくらんぼに似た果物とその果実水、そしてシュリシュリ酒。
コトカさん宅からは葡萄酒。
陶器ボトルに入っているから見えないけれど、ピノワールノと言う珍しい品種を使ったルビー色のワインなんだって。
酸味が強めで、葡萄と言うよりベリーの果実酒っぽいお味らしい。
そして、ピノワールノは果実水に向いていないので、私にはパールュナと言う梨っぽい果物と果実水をくれた。
ドゥルーエル家からは葡萄の果実数種と甘い品種の果実水、赤ワインを大量にもらった。
「今年仕込んだのは飲めるまでに数年かかる。またこの村に来てくれればプレゼントするよ」
「たのちみっ」
私達が収穫したワインをウチの家族達に楽しんでもらいたいもん。
次回はきちんと買取りをするからね?
「そうだ。嬢ちゃんが収穫を手伝ってくれたワインだから、ヴィティ・ワインと名付けるなんてどうだ?」
「ビチ?」
「純白の雪、と言うような意味なんだ」
「いいな」
「大賛成です」
「純白の雪。まるで姫のようだね?」
「主さんの名前にちなんだワイン、いいね」
「私も賛成です」
おおう!
ドゥルーエルさんの提案に、鳳蝶丸達が嬉しそうにしている。
「ではウチもそうしようか。葡萄を収穫してもらった記念になる。ヴィティ・ピノワールノ。いいな」
「我が家も収穫記念にヴィティ・インディベリー酒にしよう」
「うちはヴィティ・シュリシュリ酒にするよ」
皆さんが記念に名前をつけてくれるらしい。
鳳蝶丸達が大喜びだし、ちょっぴり恥ずかしいけれど私も嬉しいな♪
それなら今年仕込んだお酒が美味しく出来上がるよう、心の中でお祈りしておこう。
美味しく、美味しくなりますように!
「なっ!」
「空気がキラキラしてる!」
「何が起こっている!」
私の正体を知らない人達が驚いている。
「神様が祝福をくだすったんじゃないかと思う。……たぶん、きっと」
「こりゃあ、今年は凄い酒に仕上がりそうだ。ハハハ………」
ドゥルーエルさんとケアルメお父さんは超笑顔を浮かべている。
額にちょっぴり汗を浮かべているけどなんでかな?
「たちゅしゃん、あにあと、ごじゃい、まちた。えんよ、しぇじゅ、いたあちましゅ」
「沢山のプレゼントをありがとう。遠慮せずいただきます、とのことだよ」
お土産ありがとう!
自分達で楽しむ分にするね。
「それじゃ、こちらの番。この間話したシャンプーなどの注文は決まったかい?」
一瞬にして浮足立つ女性達。そして男性達もソワソワしている。
「お礼が遅くなってごめんなさい。実は昨夜、家族全員テントに入らせてもらったの。ありがとう」
「俺達の家族も迎えに行って入らせてもらったよ」
皆で話し合った結果、それぞれ多めに注文することになったとのこと。
村長さんは、家族に知られると収拾がつかなくなりそうなので遠慮しておくそうです。
鳳蝶丸達が、注文書に書いてある通りの品数を出して皆さんに渡す。
とても多かったので、何割引きかしたよ。
お買い上げありがとうございました!
そのまま裏庭へ行き、無限収納にテントやテーブルなどを全て入れ、結界をすべて解く。
解いた途端に降る雪が少しずつ積雪し始めた。
「なだい、あいだ、あにあと、ごじゃい、まちた」
「こちらこそありがとうございました」
「何だか寂しくなるわ。また遊びに来てね?」
「あい、あにあと!またちゅゆね」
また来るね!
次はヴィティワインが飲めるころかなあ。
楽しみ!
村の表門まで皆さんが見送りに来てくれた。
途中、誰かが村長さん一家にも声をかけたらしく、沢山の人達が集まってくれたよ。
「またね」
「ああ、またな。この村に寄った時はまた、ウチの裏庭を使ってくれ」
「うん!あにあとっ」
またね、バイバイ。
次は飛行か転移の門戸で遊びに来るね。
多分、びっくりするくらい気軽にフラリと現れると思うけれど、驚かないでね?
「バイバーイ!」
「また来いよ!」
「ベリー食べに来てね!」
「あにあとーーー」
またねー!
途中から気配完全遮断で飛行を開始。凄い勢いで上空を飛ぶ。
結界3しているけれど、雪が顔にあたって飛びにくいので今は雲の上を移動中です。
今日は鳳蝶丸前向き抱っこ(抱っこ紐)。
地図を表示して、どの辺りを飛んでいるのか確認しながら移動する。
「あれがモーネ王国の王都だ」
雲の下に出て、速度を落とす。
眼下にはとても大きな町があり、真ん中の広い敷地にお城が建っていた。
「おっちいねえ」
「ああ」
上空をゆっくりと過ぎ、再び雲の上に出てすすむ。
『特別身分証明書』が発行されたら、ルミケアルメ領か王都に来ることになるのでしっかりマークをつけたよ。
下に降りるのが面倒なので、飛行のまま転移の門戸を開き、2ルームテントで休憩をしたり、お昼ご飯を食べる。
そしてまた、同じ場所から飛行して北方向へ進んだ。
「日が傾いてきました」
先頭を行く鳳蝶丸と私に、ミスティルが声をかけてくる。
「そうだな。行こうと思えば行けるが、今日はこの辺までにしよう」
「あい、わたた」
上空に転移の門戸を開いて2ルームテントに戻り、今日はここまで。
ご飯を食べてのんびりしながらフォルダのチェックです。
【虹の翼】のお姉さんたちから近況と、雪の国にいるの?体に気をつけてね?と言うメッセージが入っていた。
いつかお姉さん達とあちこち行きたいなあ。
今度この辺りを案内しようかな?国境門付近じゃなきゃ何とかなるよね?
本当はやったらアカン事を画策する幼女。
だって、お姉さん達との旅も楽しそうなんだもん。
イヒッ♪
それから、ルミケアルメさんから連絡キターーー!
なになに?
モーネ王国国王は御使い様のご降臨を大いに喜ばれ、『特別身分証明書』の発行に同意した、これから手続きに入るので数日中には出来上がるだろう。
発行は6名分でよろしいか?と書かれてあった。
うーん……7名分貰っておこうか?
念の為鳳蝶丸達に相談してみよう。
もし最後の伝説の武器が一緒に旅しなかったら返却でもいいかな?
皆は、何度も手続きするのが面倒なので7名分もらった方が良い。
もし仲間にならなくても私が無限収納で預かっておけば良いとアドバイスをもらったので、早速ルミケアルメさんにお返事だ!(代筆ミスティル)
この間顔を見せなかったけれど、実はもう1人仲間がいます。
神子である主と伝説の武器6名分、併せて7枚の『特別身分証明書』をお願いします。
というお手紙をルミケアルメさんの共有フォルダに入れると、直ぐにお返事が来る。
7枚、承知いたした。
また連絡いたす。
よしっ。順調、順調。
明日からまた頑張るぞ!
翌日も飛行で上空を進む。
お昼に差し掛かったあたりでソールヴスティエルネ連合王国の最北端、オップダゲルセ王国に到着した。
空から確認すると、オップダゲルセ王国端の付近は険しい山々がそびえ立ち、その向こうには深い森と海が見える。
周辺で一番高い山の上部は厚い雲に隠れ何も見えない。
そして地図に?マークが表示されていた。
「あたやちい、なたま!」
「ああ。新しい仲間はあの山の何処かにいる」
ここも上から入れないの?と聞いたら、岩漿山と同じように直接神域には入れないとのこと。
予定としては、神域ギリギリまで行ってそこから行動することになるって。
「まじゅ、ようしゅ、みゆ」
「了解」
まずは飛行で周りを確認し、様子を見ることにした。
雪を被る険しい山々の中で、ひときわ高い山が1座。
一部が切り立った崖になっていて滝が流れ落ちている。かなり高所から落ちるためか、途中で水が霧散し滝壺は無い。
霧散した水分の一部は雪や氷となり、滝壺部分が氷瀑のようになっていた。
氷瀑の裏側や下から水が流れ出て、それが南東方向に流れる川へと続いている。
「山に降る雪が地下水となり、やがて滝や川となって地表に流れ出ているんです」
「美しい洞窟もあるんだよ。姫に見せてあげたいな」
ハルパとレーヴァが教えてくれた滝や洞窟、ぜひじっくり見てみたいな。
新しい仲間に会えたら、そのあと見に行こね!
本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。
誤字報告も感謝しております。
執筆意欲が湧いてきます。とても嬉しいです♪
これからもよろしくお願いします!
 




