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231. 手づかみ食べもしちゃう!赤ちゃんだから

 さて。切り分けながら配布開始です。


 解体作業場となりの部屋が配布する場所だとのことなので、そこに簡易テーブル数台とゴミ箱、食器返却箱を設置した。


 肉分配班は鳳蝶丸とハルパ。野菜班はレーヴァとミルニル。スープ配布班はミスティルと私。

 その他【雪原の青】の皆さんやお手伝いをしてくれる冒険者さん達も、支度が終わってそれぞれの位置に着いた。



 準備がほぼ終わったころ、村人達がやって来る。

 村長さん達が時間配分を考えて各地区ごとに集まるよう伝達してくれたので、最初から混乱なくお肉の配布ができた。


 ちなみに、皆さんそれぞれお肉を包む布やバッグを持参しているので、皮製のミトンをはめた配布係がどんどん渡していくだけです。



 野菜も飛ぶように売れた。

 じゃがいもの説明カードも好評で、皆さん色んな料理に挑戦してみるって。

 個数の制限をしていないからか、中には家族総出でやって来て、野菜を沢山買っていく人達もいた。

 念の為、葉野菜は早めに食べてねと伝えてもらったよ。



 無料提供のコーンスープは、昨夜皆で作りました!

 コーンクリームの缶詰(の中身だけ)を再構築して温めた牛乳に投入、塩と胡椒で整えただけなんだけれどね。

 寸胴いっぱいに作ってあとは複写しておく。

 味見としてふるまったら、夜ご飯後にもかかわらず寸胴を空にしちゃうくらい美味しかったよ。


 皆さんにも楽しんでもらえるといいなあ。

 コーンスープって、寒い日に飲むと美味しいよねえ。


 コーンスープは大好評で、ミスティルがレードルで木製スープカップ(桜吹雪印入り)に注いだそばから無くなっていく。

 だんだん大変になって来たので、ミニコンロとコーンスープの寸胴、レードルを出し、誰か手伝ってもらえませんか?って声がけする。

 村長家とドゥルーエルさん宅の奥さんたちが駆けつけて、配布を手伝ってくれた。


 いつも通り木製カップとスプーンは持ち帰りオッケーにする。

 本当にいいの?と驚きつつ、食器返却箱に入れる人は少なく皆さん嬉しそうに持ち帰っていた。




 朝早くから始めた配布作業と販売は、16時過ぎた頃にほぼ終了。

 切り分けたり販売に協力してくれた冒険者さん達には、SS級のお肉を大きめにカットしてお礼とした。



 こんな良い肉、一生食えないぜ。

 家族が喜ぶわ!

 こっちこそこんなに沢山ありがとな!

 手伝って良かったあ。



 皆さんが包んだお肉を大事そうに抱えて帰って行く。


「あにあとお!」


 帰って行く皆さんに手を振ったら、良い笑顔で振り返してくれた。

 お肉の効果って絶大!




 その後、最終的な片付けと解体場を清浄して作業は終了。

 村長さん、ドゥルーエル一家、【雪原の青】の皆は私達のテントがある裏庭に集まって、打ち上げ会をすることになった。

 ペルシッカお母さんが気にしていたけれど、今からご飯を作るのは大変だろうからということで、料理は私達が提供するよ!



 んんん…何にしようかな?洋風がいいよね?

 そうだ!日本の友達とホームパーティーした時に料理したものを再構築しよう。


 四角く大きい耐熱皿で作ったマカロニチキングラタンや肉団子入りミートソースパスタ、ガーリックトースト、サーモンとモッツァレラチーズのカルパッチョ、タラとキノコのホイル焼き、ローストビーフ、ポテトサラダ、葉野菜とトマトのフレッシュサラダ。

 食後のデザートはパンプキンプリン〜カラメルと生クリームを添えて〜だよ!



「相変わらず美味そうだな」

「久しぶりに『サクラフブキ』の美味しいご飯が食べられる!嬉しいな♪」


 コトカさんとスルカさん、他の皆さんも嬉しそうにしている。


「お前達。村に帰るまでこんな豪華なものを毎日馳走になっていたのか?」

「ああっ」

「はいっ」


 ケアルメお父さんの言葉に【雪原の青】の皆が満面の笑みを浮かべる。

 いい笑顔♪



「あー、すまん。子供達が世話になった」

「いや。お嬢も楽しそうだったし、かまわん」

「主が楽しければそれで良いです」

「姫に無理強いする場合は受け付けないけどね」

「主さん、楽しんでた」

「主殿が提供すると言ったものに関しては、遠慮なく食べてもらってかまいません」

「お、おう。そうか」

「あー。では、遠慮なく」


 村長さんが祈り始めると、皆さんもそれに続く。

 私もウル様、ムウ様、桃様、そして数多の神々に心の中で感謝しよう。



 飲み物は、ドゥルーエル家がワインと葡萄ジュースを提供してくれました。

 鳳蝶丸達が用意したのは、ビール、サングリア、シャンパーニュ。


 皆でワイワイと、それぞれ好きなものをグラスに注ぎ、私はストローマグに葡萄ジュースを入れてもらった。



 それでは…。


「おちゅたえ、しゃま、でちたあ!たんぱーい!」


 お疲れ様でした、乾杯!



 カンパーイ!!!



 グイーッと飲んで、誰からか自然と拍手が起こった。



「さて食べるか。好きな物を自分で取り分けてくれ」

「おかわりもあるからね」


 鳳蝶丸とレーヴァの言葉に、皆さんそれぞれ好きな物をお皿に盛りだした。


「いたあち、ましゅ」

「いただきまーす!」


 そして私達と【雪原の青】の皆さんでいただきますをしてから料理を食べ始めた。



「美味いっ!」


 村長さんが目を丸くしてグラタンを頬張る。


「ああ、これこれ」

「本当に美味い」


 【雪原の青】の皆さんもドゥルーエルさん一家も、私が用意した料理をどんどん平らげていく。

 私はグラタンとガーリックトーストを取ってもらった。



 【幼児の気持ち】発動!



「主はこれをつけましょうね」


 【幼児の気持ち】に引っ張られ、食べることに夢中になる。

 ガーリックトーストを鷲掴みにしようとしたら、ミスティルが受け皿付きビブを着けてくれ、ついでに濡れタオルで両手を拭かれた。


 鳳蝶丸がトーストを小さく切ってくれたので、その1つをグワシッと掴む。

 アンムと口に運び、ゆっくりと咀嚼する。


「おいちっ」

「そうか、良かったな」


 鳳蝶丸が、グラタンのマカロニを半分に切って口に入れてくれた。


「んおいちっ」


 皆で食べるご飯はいつでも美味しい。

 またガーリックトーストを掴もうとしたら、お皿を少しだけ遠避けられた。


「ああ~」

「主。お口のグラタンを飲み込んでからですよ」

「よく噛んでな」


 一生懸命咀嚼して飲み込んだら、鳳蝶丸ストローマグの葡萄ジュースを口に運んでくれたのでチューッと吸う。

 手には次のガーリックトーストを鷲掴みです。



 食事の時に【幼児の気持ち】が発動すると、本当の赤ちゃんみたいになってしまう。どうにも制御が効かず、食べたいものを掴んで誰にも取られたくなくなっちゃうのだ。


 以前より一層幼児化している気がするけれど、それだけ今の体に慣れたんだと思うことにして最近はあきらめてる。

 鳳蝶丸達も気にしなくていいと言っているので、甘えることにしたんだ。



「はい、主さん」

「姫、お肉だよ」

「魚もありますよ、主殿」


 ミルニルがパスタとミートボールを、レーヴァがローストビーフを小さく切り、ハルパがホイル焼きのタラをほぐしてくれる。


「あにあとっ」

「良かったですね、主」

「次は何がいい?」


 口いっぱいに肉団子とパスタを入れてもらいご満悦の私。

 気が付くと村長さんが私をじっと見ていた。


「んう?」

「いや、すまない。そうしていると、普通の赤ん坊にしか見えないと思ってな」

「ふちゅう、あたたんよ」



 ふ、普通の赤ちゃんだよ?



「普通の赤児は大人の話を理解せんよ」

「ああ、俺もそう思う。皆に甘えている姿は赤ん坊だけどな」

「沢山子供を育てたけれど、聡明すぎる赤ちゃんっていないと思うわ」


 村長さん、ケアルメお父さん、ペルシッカお母さんにツッコミを入れられました。



「領主から君らに追求してはいけないと言われているのでな」

「何か知っているな?ドゥルーエル」

「貴方の隠し事。お母さんがわからないとでも思った?」


 私達には聞けないからと、ドゥルーエルさんに矛を向ける皆さん。


「あー……」


 ドゥルーエルさんが困った顔をしている。

 うん。いつか言われるかなあって思ってたよ。

 鳳蝶丸達を見て頷くと、皆が私の代わりに説明を始めた。



「俺達のことは秘密じゃないんだが、知ると旦那らの身に危険が及ぶかもしれん」


 鳳蝶丸が肩をすくめる。


「彼らは我らと魔法契約をしていて、私達のことを話せない」

「無理矢理聞かない方がいい」


 ハルパとミルニルが、ドゥルーエルさんに無理矢理聞かないよう注意をする。



 ミスティルは説明を皆に任せ、私に葡萄ジュースを飲ませてくれた。

 通常運転です!



「魔法契約?」

「ああ。俺達【雪原の青】は全員魔法契約をしている」

「えっ?そ、それは貴方達に、その。支障はないの?」

「無い。それどころか、俺達を守る強力な契約だ」

「契約者を守る契約?契約不履行となれば奴隷になるとか、莫大な違約金を払うとかではなく?」

「契約不履行となった場合の制約はあるが、基本は俺達を守るための契約と断言できる」


 ケアルメお父さん達が無言で視線を合わせている。


「僕達は魔法契約をしたことに後悔はありません。むしろして良かったと思っています」

「俺もだ」

「俺も。おかげで色んな経験が出来たし、村に戻ってくるまでの旅はスッゲー楽しかった」


 メツァさん、ユスタヴァさん、コトカさんが契約して良かったと言ってくれた。

 スルカさんもイルマさんも頷いていて、何だか嬉しい。



「だから親父。魔法契約については心配しないでくれ」

「ああ。わかった」


 ケアルメお父さん達が少しホッとした顔を浮かべていた。


「それで、俺達の正体を聞く?言っても良いけどいくつか条件があるよ」


 いつもの条件を話す。

 利用、無理強いはしないこと。過度な期待をしないこと。話を広めないこと。

 特別扱いをしないこと。


 それから魔法契約の内容、ドゥルーエルさん達からは契約したあとに感じたことなどを話す。

 説明が終わると、皆さんあんぐりと口を開けて固まっていた。


「ほ、本当なのか?そんなに好条件の契約なんてあるのか?」

「じゃあ、アタシが正体を言うね?ゆ………」


 スルカさんが2秒固まる。


「制約はこれ。あと無理矢理言わせようとした時の体験だよね」

「今このままでは停止時間が長すぎるのでは?」

「仮契約で体験するか?」


 スルカさん、メツァさんの会話に鳳蝶丸が応える。



 自分が体験したいと言うことで、ケアルメお父さんが仮契約。

 ミエッカ、ヴェイツィお兄さんが無理矢理口を割らせようとする魔法契約体験を行った。



「信じられん」

「まあ、そうだよな」

「魔法契約をしていない俺達が動けなくなるとは…」


 驚いている皆さんに向かって、ミルニルが声をかける。


「どうする?」

「何度も言うが、俺達のことを知るには魔法契約が必要だ」


 鳳蝶丸もそれに続く。



「魔法契約をする。皆は個人の判断で決めてくれ」


 まずはケアルメお父さんが挙手。

 続いて他の人も契約を決め、結局はここにいる全員と交わすことになった。


 レーヴァが契約書を出し皆さんにサインをもらう。

 鳳蝶丸が魔法陣を展開する。


 鳳蝶丸達は手順などもう慣れていて、流れるように魔法契約作業を完了させた。


「これでいいぞ」

「俺達の正体を言うけど、さっきも言った通り姫を特別扱いしないでね」

「ああ」


 村長さん達がゴクリと喉を鳴らす。



「わたち、たみしゃま、ちゅたえゆ、みと」

「お嬢は神に仕える神子。俺達は人の子ではなく、伝説の武器と呼ばれる者だ」



 ………………………は?

 な、な、な、な、

 おおおぉぉぉ御使(みつか)い様………。



 驚いたり泣き出したり、反応は様々。

 でも皆さん同じように跪こうとしたので、それは止めたよ。



「ふちゅう、いい」

「俺達も普通に接している。親父達もそうしてくれ」

「ゆきちゃんは今まで通りがいいの。村長もおじさん達もそうして?」

「わ、わかった」


 【雪原の青】の皆がいるから、今回は割とスムーズです。


「本当に、その、問題ないか?」

「ああ。さっき言った条件さえ満たしていれば問題ない」


 ドゥルーエル一家、そして村長さんがホッとした表情を浮かべる。


「では遠慮なくそうさせてもらう」


 そして、ケアルメお父さんがありがとうと言って軽く頭を下げ、他の人たちも同じ仕草をする。


 うんうん。こちらこそ。

 普通に接してもらうことが一番嬉しいから、どうか気にしないでね?

本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。

とても励みになっております。嬉しいです。


この村に滞在するのもあと少し。

半神と仲間達はもうすぐ動き出します!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最後の武器はいつ取りに行くのか。 そして治療費の払い戻しはいつするのか気になりますね。
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