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229. じわじわ増えている脅威を裏で排除する伝説達

 今度こそ、と言うことで、鳳蝶丸達は狩りに出かけて行った。


 私はハルパとお留守番です。

 お茶の続きをしようかな、と思っていたら、ミエッカさんの奥さんが裏口から顔を出した。


 作業場がもうすぐ休憩時間になるので一緒にお茶でもどうですか?と言われ、少しだけお邪魔することにする。

 案内されたのは大きな倉庫のような場所で、ワインを作る作業場なのだと説明された。



「おじゃま、ちましゅ」

「来てもらってすまんな。まあ座ってくれ」


 ケアルメお父さんに勧められ、休憩場所のテーブルに着かせてもらう。

 ペルシッカお母さんとミエッカさんの奥さんがお茶を出してくれた。


「とにゃいだ、寝ゆ、ごめなしゃい。葡萄、あにあと、ごじゃい、まちた」


 この間寝てしまってごめんなさい。葡萄をありがとうございました。


「いやいや。眠るのは赤ん坊の仕事だ。こちらこそ、カレーパンをありがとうな。手伝ってくれた皆もとても喜んでくれたよ。仕事もはかどったしお嬢ちゃんには感謝しかない。ありがとう」


 お礼を言われ、エヘヘ♪と照れちゃう私。

 ケアルメお父さんが頭をなでなでしてくれた。



「それから今朝は大丈夫だったか?」

「村長さん達が来てびっくりしたわ」


 驚かせてごめんなさい、ペルシッカお母さん。


「何かあったのか?何か無理強いをされていないか?」

「あいっ」


 ケアルメお父さん達がとても心配してくれた。


「詳細は言えませんが、野菜関係で少し…。無理強いはされておりません。商談みたいなものなのでご安心を」


 私の代わりにハルパが対応してくれた。

 内容はちょっと違うけれど……私達の正体の話と『特別身分証明書』の話、とは言えないので仕方がない。


 それだけでわざわざ領主様がいらしたのか?と言う疑問があるみたいだけれど、皆さんが言葉を飲み込み、それ以上私に聞かないでくれた。




「しゅこち、見てい?」


 ついでと言ってはナンだけれど、ワインの作業場を少しだけ見学させてもらっても良い?

 好奇心に勝てず、キョロキョロ辺りを見回してしまう。


「危険な道具があるから気をつけてな。皆で案内してやってくれ」

「主殿。私はここで待っていて良いですか?」

「うん」


 ケアルメお父さんに許可を貰い、ペルシッカお母さんとミエッカさんの奥さんに作業場を案内してもらうことになった。




「今朝の事が気になりますか?」

「………すまん。こんな辺鄙な村に領主様だけではなく、近隣の領主様がいらっしゃるとは只事ではないのでな」

「そう、ですね。まさか直接来てしまうとは思いませんでした。今後ちょっとした騒ぎになってしまいそうなので、その辺りは主殿に相談してみます」

「騒ぎ…?」

「今日来た領主達が我らを糾弾しにきたわけではありません。その辺りはご安心を。方針が決まりましたらまた話をいたします」

「わかった」


 ハルパとケアルメお父さん達の話を聞いたのはその日の夕方のこと。

 今は作業場見学中です!




 ペルシッカお母さんに抱っこされ、作業場を見て廻る。


 木製の大きくて深めの桶に選果、除梗作業が終わった葡萄が入っていて、それを棒などで破砕する。

 果皮や種を入れたまま発酵させる。


 桶に木製で厚い板と重石を乗せ、大きな道具にセットしハンドルを手動で回すと重石が沈み圧搾する。

 ハンドルが動かなくなったら桶の下方にある杭を抜き、濾しながら樽に入れる。


 この樽でワインを熟成させたり、その他手間暇かけてワインがつくられる。


 そう解説してもらった。

 実際はまだ棒で破砕するところまでで、これから発酵に数週間かかるとのこと。


 そうだよね。

 まだ葡萄を採って間もないもんね。



「フミフミ、思た」


 それにしても……。

 娘さんたちが、キャッキャしながら葡萄を踏んで潰すのかと思ってたよ。



 あとになってドゥルーエルさんに聞いたら、何代か前は踏んで潰していたんだって。

 今は破砕する棒が作られたので踏みつぶすことはないらしい。 

 うんうん。あの棒、木製で柄の長いマッシャーみたいな形だったもんね。



「あにあと、ごじゃい、まちた」

「いや。まだそれほど作業が進んでなくてすまんな」


 あまり長居しては迷惑になるので、すぐに私達のテントに戻る。

 ハルパから、皆が戻ったら話があると言われた。


「うん、わたた」


 話ってなんだろう?

 でもちょっと眠くなったので、皆が帰ってくるまでお昼寝することに。


 ふあ~。おやすみなさい。




 その日の夕方。

 皆が帰って来てから、ケアルメお父さんとの会話を教えてもらった。


 うーん。確かに…。

 伯爵が来るのは、まあ、自分の領地なので[有り]として、小さな村に侯爵まで来るのは珍しいかもしれない。

 しかも、その理由が滞在している商人に会うためとなると、何か探りを入れる者や、村人に何か知っているだろうと危害を加えるかもしれないね。


「むや、てったい、張ゆ?」


 村に結界を張ろうか?


 でも、ケアルメお父さんや周りの人にどう説明しよう。

 ミールナイトの小さな教会やポンポさん宅の範囲とは違い、村全体に結界を張るのは規模が違うよね?

 サハルラマルの結界はちょっぴり規模が大きかったけれど、マブルクさんに説明……。



 あれ?私、結構やらかしてる?



 どの人にも結界を張ることを説明したつもりだったけれど、人の子には出来ないタイプをバンバン張っちゃっている気がする。…もう今更か。


 我が家の皆も、私がしたいならやっちゃえ!的な感覚なので、麻痺していたよ。



 うーん…、ま、いっか。



 ウル様や他の神様にも止められていないので問題ないよね?

 本当にマズければ鳳蝶丸達が止めてくれるよね?


 人類、種族全てを助けることは出来ないけれど、自分の手の届く範囲で、自分が手助けしたいと思ったことがらに関しては、これからも手助けするよ。

 たまたま私が気付いた人は、助かって幸運(ラッキー)!くらいに思ってもらえれば幸いです。


 

 とと、話が逸れちゃった。

 私は皆に、今回は誰にも話さずそっと結界を張りたいと思うけれどどうかな?と聞いてみる。


 ヘデルマタルハ村周辺の環境は全く変えない。

 私達に関する情報を得るため村人に危害を加えようとする、またはこの村に対して悪意ある者は全て結界内に入れない。


 これでどう?


 結界の外で村人に何らかの危険があったら他の方法も考えるけれど、今の所は村の結界だけでいいかなって思う。



「いいんじゃないか?」

「伯爵と侯爵、ついでに王族もわたし達の正体を知ることですし、問題ありません」

「次回会った時、侯爵あたりにこうしたって言っておけば良いんじゃないかな?」

「そうだね」

「ドゥルーエル氏にも伝えておけば問題ないでしょう」

「じゃあ、ないちょ、てったい、張ゆね!」



 じゃあ、内緒の結界張るね!



 転移の門戸を村上空に繋げ直し、そこからヘデルマタルハ村全体を見渡そう!

 私とミルニルは床に寝そべって、顔だけ外に出そうってことになった。

 ズボッと顔を出そうとしたら、鳳蝶丸に自分に結界を張るように言われちゃったよ。


 上空だから、スカイダイビングみたいに風圧で顔がビロビロ~ってなっちゃうところだったね?

 いや、それも面白そ………。


「主殿?ダメですよ」


 ハルパにダメ出しされたので、皆に結界3を張った。



「主さん、行くよ」

「あいあい」

「せーのっ」


 ズボッ!


 体は寛ぎの間のファーカーペットの上、顔は飛行(ひぎょう)じゃないのに上空から下を眺めていて凄く面白かった。キャッキャ笑っちゃって、ゴロンと転がりそうになったら体が動かない。

 ミルニルが私のオーバーオールの背中をムンズと掴んでいたからだった。


「落ちちゃうよ」

「姫に何かあれば、俺達が助けるから問題ないけどね」


 うっかり落ちても飛行(ひぎょう)すれば問題ない。

 でも私が怖い思いをするといけないからと気にかけてくれた。


「あにあと」

「大丈夫。安心して、主さん」



 じゃあ、日が沈んで暗くなる前に作業するね。

 村を囲っている防護壁より広い範囲に結界1を張る。

 条件は先程考えた通り。だから村人は結界を張られていることに気付くことはない。


「よち、でちた!」

「お疲れさまでした、主。では、夕ご飯を食べて、お風呂に入ったら寝んねしましょうね?」

「あい。みんにゃ、あにあと!」


 転移の門戸をドゥルーエル宅の庭に繋ぎ直し、今日はもうゆっくりします。

 お疲れさまでした!






 数日間、のんびりした時間を過ごしております。


 皆は交代で森や山に行き、狩りをしていた。

 C級以上で且つ増えすぎた魔獣を、絶滅しない程度に間引きする。

 この村と周辺は以前よりは安全だろうとの報告を受けました。


 ダンジョンでは魔獣を狩り尽くしてもまた生成されるけれど、普通の森はあまり多く狩りすぎちゃうと生態系が崩れるからね。

 そこのところは見極めて狩ったそうです。



「主殿が喜びそうな、良い肉が手に入りました」

「おにくっ!」


 わあ、どんなお肉だろう?なに料理が合うかな?

 作るのは鳳蝶丸達だけれど、調理の仕方を伝えると皆が美味しく作ってくれるんだ。


「おにく、なあに?」


 雪鹿みたいな赤身肉?


「色々あるよ。上位種の大白雪鹿(おおしろゆきしか)と、大白雪兎(おおしろゆきうさぎ)大白雪鴨(おおしろゆきがも)あたりが美味しいと思う」

大白雪熊(おおしろゆきぐま)とか、大白雪豹(おおしろゆきひょう)も討伐したよ。豹はあまり美味しくないかも」


 レーヴァとミルニルが言っているのは全部上位種だよね?

 この辺りはそんなに沢山いるの?


「そうですね。ソールヴスティエルネ連合王国周辺は土地や地下に眠る鉱石、雪に含まれる魔素が多いので、上位種が生まれやすい環境となります」


 ハルパが眼鏡をクイッと上げる。

 フェリア通信にこの地域の情報が書いてあり、間引き推奨地域になっているのだと教えてくれた。



 雪で閉ざされているので討伐しにくく、疎かになると魔獣が増える。

 魔獣同士が互いに喰らいあっているうちは良いけれど、上位種が増えすぎると食料が足りなくなり、人里を襲う可能性もあるとのこと。


 長い長い年月をかけ、強者である上位種が増えちゃった結果が今なんだって。



 さらに上位種以外の魔獣達は、上位種にいただきますされるからか少しずつ生まれる数を増やし、より子孫を残す方向に進化しているらしい。


「普通の魔獣も数減らしに狩ってきた」


 鳳蝶丸が、あとで俺達全員の共有フォルダを確認してくれと言った。


 村の皆さんにもお肉や素材を分けて良いかな?って聞いたら問題ないとのことなので、後日皆に分けたりギルドに売ったりしようと思います。


 あ、鑑定ちゃんが美味しいって言ったオリジナル肉はしっかり取っておくよ!



「素材を配ったり売ったりするのは全く問題ない」

「主殿にお願いしたいのは、間引き推奨地域を見つけたら今後も狩りの時間をいただきたいと言うことです」

「あいっだいじょぶ!」


 もちろんオッケーです!

 伝説の武器達にもお役目があるのなら、それを優先してもらってかまわない。

 間引き推奨地域は積極的に寄ろうね。

本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださりありがとうございます。

とても励みになっております。嬉しいです。

そして誤字脱字報告をいつもありがとうございます。とても助かっております!

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