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215/284

215. 透明だけど重機だよ

 町をそのまま通り抜け、自由時間などを設けながら旅を続ける。


「あれがモーネ王国の国境関門だ」

「は、早えぇ」


 3週間はかかる旅程を2週間弱でやって来ましたモーネ王国。

 入国許可証と商業ギルドカードを見せ、難なく入国。

 あと1日ほどでドゥルーエルさん達の故郷、ヘデルマタルハ村に到着する予定です。



「吹雪いてきたな」

「次の町で様子見するか?」


 鳳蝶丸とドゥルーエルさんが空を見ながら話をしている。


「てったい、はゆ?」


 結界張る?

 そうすれば先に進めるよ。


「そうだな。旦那達が良ければこのまま先に進みたい。どうだ?」

「いいのか?出来るなら俺達も先に進みたい」


 皆さん1日でも早く村に到着したいとのことなので、結界を張り先に進むことにした。



 私を中心に直径10mの結界1を張って再び歩き出す。


「はあ。まさか吹雪の中先に進めるなんて、びっくりだわ」

「しかも寒くなくて快適だぜ」


 イルマさんとコトカさんがキョロキョロしながら歩いていた。



 私の結界は温度設定が適温になっている。でも道に積もる雪が結界内に入ってくるからか、いつもよりヒンヤリ寒いと感じる。

 吹雪いている外の温度を考えると、結界内はかなり暖かいけれどね。


 まあ、過ごしやすく歩きやすいなら多少ヒンヤリしていてもいいのかな。



 先に進むごとに吹雪が酷くなった。

 ポカポカ石でも対処し切れず積雪が多くなり、何となく道がわかると言う程度。

 しかもホワイトアウトで前後がわからなくなっている。



 でも大丈夫!

 私には地図があるもん。



 初めてこの世界に来た時よりも地図の性能が上がっているので、地形は広範囲確認できる。

 もちろん街道も表示されているよ。


 この地図は私と鳳蝶丸達だけ閲覧可能にしてあるので、皆の足取りに迷いはない。


「どんどん進んでいるが大丈夫か?」

「方向は把握している。問題ない」


 昼か夜かわからないほど真っ白な世界を皆で黙々と歩く。


 私はミスティル抱っこで快適です。

 申し訳ありません。




 トイレや昼休憩をはさみながら先へ進み夕暮れに差し掛かる。

 次の休憩所で泊まろうかと思ったものの、積雪が凄くてテント張りにくそう……。


 何とかならないかな?

 うーん………。


 よしっ。

 少年達の憧れ、重機にしよう!

 と言ってもそのものではなく、魔法創造だけれど。



 [除雪]

 私の移動する方向3m前を除雪する

 『スノープラウ式』と『ロータリー式』に切り替えられる

 止める時は解除



 んではやってみましょう。


「じょしぇちゅ、しゅゆ」

「ん?何だ?お嬢ちゃん」

「除雪ですか?」

「うん」



 街道の道幅に合わせ[除雪]スノープラウ式!



 ゴゴゴゴゴゴ……



 目には見えないけれど、ブルドーザーのようなものに雪が押され、私達の3m前に大きな雪山が出来た。


 これはちょっと……。前見えない……………。

 はい、変更!



 [除雪]

 私の移動する方向3m前をスノープラウで除雪する

 雪がスノープラウ部分に触れると空気に変換。

 止める時は解除



 うーん。

 空気に変換だと環境に良くないかな?と、前から気になっていたんだよね。

 わからないけど。


 ええと、んー。

 あっ!これならいいかも!



 [除雪]

 私の移動する方向3m前をスノープラウで除雪する

 雪がスノープラウ部分に触れると清浄。

 止める時は解除



 これでどうよ。



 皆に立ち止まってもらい、除雪解除。

 そして、もう一度。新[除雪]を発動!



 ゴゴゴゴゴゴ……



 除雪のそばから雪が消えていく。

 しかも雪指定なので、街道のポカポカ石を傷付けることなく進む。



「しぇいとう、でしゅ」


 フンンッ!


 成功です。

 鼻息荒くドヤァする。

 【雪原の青】の皆さんは固まっている。


 あ、あれ?


 なんか寂しくなって、自分でパチパチ拍手をすると、鳳蝶丸達が凄い凄いと拍手をしてくれた。


「さすがお嬢。歩きやすくなったな」

「主さん、ありがとう」

「我が姫は可愛いだけじゃなくて、素晴らしいアイデアを持っているね」

「歩く速度を上げられますね。主殿に感謝します」

「…………………」


 ミスティルは無言スリスリタイムに入りました。



「こ、これは、どうなっているんですか?」

「お嬢が歩きやすくしてくれている」

「えっ。ああ……えええ?!」

「吹雪の中で街道の石を見られるなんてな…」


 メツァさん、コトカさん、ドゥルーエルさんがポカポカ石を凝視している。


「とおい、しゅじゆ。またちゅもゆ」

「俺達が通り過ぎればまた雪が積もるとお嬢が言っている」


 除雪したってこの吹雪だもん。

 またガッツリ積もると思うよ。




 めっちゃ快適に、円形の休憩所に到着しました。

 到着するのは真夜中かな?って思ったけれど、18時過ぎに着いたよ。


 休憩所近辺の雪を全部清浄して消し、直ぐに結界1を張る。

 付与はいつもの通り。ただ、雪が結界の外側に触れると清浄で消去にした。

 空気に変換は当分止めようと思います。



 まずは各自軽装に着替えて集合です。

 この場所でドゥルーエルさん達と最後の野営をするんだけれど、折角なのでプチバーベキューにしようと思います。


 今日はホカペ無し。

 お着替えブースとトイレテントとカモフラテントを出し、結界4(立体)でテントを地中まで囲って転倒防止をしたらお終いです。


「今日はバーベキューにするらしい」

「バーベキュー?って何だ?」

「まあ、任せてくれ」



 焚き木台やバーベキューコンロ数台、簡易テーブル数台、食器類(木製)、ゴミ箱を出す。

 今日はホットカーペットにしていないから、食事用のテーブルはミールナイトの屋台で出した足元が暖かくなるテーブルだよ。


 簡易テーブルの1つは飲み物用。

 鳳蝶丸とレーヴァが張り切ってビールサーバーやワイン、ハイボールを用意している。

 もう1つのテーブルには食べ物を色々用意した。

 タレ漬けのお肉を数種、ソーセージ、野菜、魚介類、野菜スープなどなど。


 最後は焼おにぎりにするよ。


「好きな物をこのバーベキューコンロで焼いて食べてください」


 ハルパがお肉を、ミルニルが海鮮を、ミスティルが野菜を焼き出す。


「飲み物も好きなの飲んでくれ」

「ビ、ビールか?」

「ワインもある!」

「アタシ、野営で酒を飲んだことない」

「でも宿に泊まるより快適な部屋もあるし、いいよな?リーダー!」

「ああ。翌日に残らない程度にしろよ」


 ユスタヴァさん、メツァさん、イルマさん、コトカさんがワクワクしながらドゥルーエルさんに許可をとっていた。


「はあぁ、いい匂い」


 お肉が焼けてきたよ!

 スルカさんが深呼吸くらいの勢いで匂いを嗅いでいる。


 わかる、わかる。

 私もお腹が空いた会社帰り、焼肉屋さんの前で深呼吸したもの。


 んふぅ。

 本当にいい匂い!


「あとは自分で焼いて食べて」

「いいのか?」

「ああ。無くなったら言ってくれ。補充する」

「野菜も食べるんだよ?お嬢さん」

「は、はい」


 レーヴァが微笑むと、イルマさんが頬を赤らめる。

 罪な男だねえ。



 お肉や野菜を沢山食べ(させてもらっ)て、お腹いっぱい手前です。

 私はそろそろ〆にしないとアレが食べられなくなりそうなので、鳳蝶丸にバーベキューコンロまで連れて行ってもらいます。


 そう!〆のアレ!

 豚の角煮入り焼きおにぎりを焼き始めるのだ!


 きつね色になったので、鳳蝶丸に刷毛で醤油を塗ってもらう。



 ジュワァア〜



 素敵な音とともに、焦がし醤油のめっちゃ良い匂いが漂っている。



 はあぁ。

 美味しい匂い!



「そ、それはなんて料理だ?」

「すっごい良い匂いー!」


 鳳蝶丸がおにぎりを裏返し、また刷毛で醤油を塗る。


「ヤ、ヤバイ。俺にももらえるか?」

「わかった。ここにトングと醤油と刷毛を置いておく。自分で焼いてくれ」

「わかった!」


 鳳蝶丸がバーベキューコンロに焼きおにぎりを置いていく。

 そんなに食えないかも?と言うドゥルーエルさん達に、残りは全部自分達が食べるから問題ないと返事をしていた。



 うん。大丈夫。

 鳳蝶丸達、沢山食べるから。



 私はベビーチェアに座らせてもらい、麦茶が入ったストローマグを出す。


「熱いからな」

「あい」


 鳳蝶丸がお箸でおにぎりを小さく割って、フーフーしながら食べさせてくれる。



 モグモグ……


「ん~、おいちい!」

「良かったな。熱くないか?」

「あい、だいじょぶ」


 時折麦茶を飲みながら、焼きおにぎりを1個ペロリと平らげた。


「うわっち!熱っ!ハフハフ、んんまい!」

「お肉入ってる!」

「お肉柔らか〜い」

「この穀物は、肉が巻いてあったやつと同じ?腹持ちも良いし、凄く美味いよな」


 【雪原の青】も気に入ったみたい。皆さんおかわりをしていた。


 私は1個でお腹いっぱいになっちゃった。

 そして眠い…。


「もう寝ような」

「うん……むにゃ」

「お嬢を寝かせてくる」

「わかりました」


 鳳蝶丸に抱き上げられてカモフラテントに入る。


「お嬢。眠る前に転移の門戸を開いておいてくれ」

「あいぃ」


 お腹いっぱい。眠い。心地よい。

 カモフラテント内で転移の門戸を開き、寛ぎの間を通り過ぎたくらいでわからなくなった。



 お休みなさい。

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