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214. ホッホッホゥッ!よい子はいねぇがあ(間違ってる)

 野菜セットを全部運ぶのは大変なので、ソリの荷台に直接載せることになった。

 荷を積むのは鳳蝶丸が行ってくれるということなので、野菜セットを沢山複写してマジックバッグに入れておく。


 それから何度も上着を着込むのは面倒くさいと言うことで、結界同士を繋げることにした。



 結界4(立体)で四角柱の廊下をつくる。

 私達とマンシッカさん達の結界はそれぞれ関係者以外立ち入り禁止にして、廊下結界は自由に人が行き来できるようにしておく。

 この時間に誰かが街道を通ると思えないけれど、念の為にね。


「鳳蝶まゆ。わたち、一緒」

「一緒に行くか?」

「うん」


 何か足りないものがあるといけないので、鳳蝶丸抱っこで私も商隊の結界に行くことにした。



「商隊長。焚き火はどうしますか?」


 マンシッカさんチームは皆さん寛ぎ始めていた。

 でも、焚き火で湯を沸かしてよいのかがわからないらしい。


 私の結界は外の空気を通しているし、二酸化炭素は酸素に変換にしてあるので焚き火をしても問題ない。

 でもカーペットが敷いてあるから気になったのかも。


「こちらで火を使っても大丈夫でしょうか?」

「ああ。カーペット外の平らな部分は結界内だ。そこで焚き火をしても問題ない」

「鳳蝶まゆ。バーベチュー、トンヨ、だしゅ」

「わかった。お嬢がコンロを貸してくれるそうだ」


 鳳蝶丸のマジックバッグからバーベキューコンロを何台か出す。


「ここで火に薪をくべてくれ。焼き網の上にケトルを乗せれば湯も沸くだろう。肉や野菜を焼いてもかまわん」

「清浄、しゅゆ。ちゅたって」

「清浄はこちらでするので、気にせず使用して良いということだ」

「おお!何から何まですみません。感謝いたします」

「あい、いいよ」



 それから指定されたソリに野菜セットを載せ、自分達のエリアに戻る。


 あとは皆で夜ご飯を食べて、それぞれテントで就寝。

 私達はカモフラテントから転移の門戸でミールナイトのテントに戻り、それぞれ寛ぎの間で休むことにした。私が眠ってしまっても皆が起きているので、カモフラテントの外から声がかかれば対応してくれるとのこと。


 よろしくお願いします。

 おやすみなさい。






 朝起きて外に出る。

 まだ空が暗く夜が明けきっていない時間だった。

 皆さんすでに起きていて、出発準備をしている。


「おはよう」

「おはよう、ごじゃい、ましゅ」


 ドゥルーエルさん達も準備万端だったので、鳳蝶丸とミルニルがお着替えテントやテーブル、ホットカーペットを回収。

 レーヴァとハルパがマンシッカさんチームに貸している物を回収し、片付けをしてから朝食を食べた。


 食事を済ませ仕度をしていると、マンシッカさんがこちらにやって来る。


「おはようございます」

「おはよ、ごじゃい、ましゅ」

「あの、もし皆さんがよろしければ、次の町まで当商隊のソリに乗りませんか?」

「えっ!だいじょぶ?」

「はい。ポロンが減ったのでスピードは出ませんが、徒歩よりは早く進むかと」



 わあ、ソリ!

 乗ってみたい!



 ちょっとワクワクして鳳蝶丸達を見たら、笑顔で頷いてくれた。



 マンシッカさんの商会は、ドゥルーエルさん達の故郷の先にあるらしく、今は帰りながら残りの商品を売り歩いている。

 荷物が大分減っているので人が増えても問題ないということで、次の町まで乗せてくれることになった。



 やったあ!



「よよちく、おねだい、しましゅ」

「こちらこそ」



 護衛の冒険者が2名ずつ各ソリに分かれて乗る。

 先頭と後尾のソリ、商会関係者のソリだけは冒険者が4名ずつ配置されていた。


「俺達も分かれて乗るか」

「あい」


 私が先頭のソリを希望すると、マンシッカさんから心配だから自分達と真ん中のソリに乗ろうと勧められた。

 でも【幼児の気持ち】が前に乗りたいと言っている!


「わたち、かじょく、ちゅおい」


 鳳蝶丸達は強いから大丈夫と真ん中のソリに乗るのは辞退した。



「俺達は雪大ヘラジカ2頭を一撃で討伐できるくらいの腕を持っている」

「へ?」

「わたし達は行商人ですが、ダンジョン許可証を持つ程度には強いのでご心配なく」


 鳳蝶丸とミスティルがダンジョン許可証を見せると、皆さんびっくりしている。


「雪大ヘラジカを一撃で倒したのはほんと…」


 ドゥルーエルさんがハッとして口を噤む。

 あや?魔法契約が発動した?


「俺達が先に話したことだから問題ない」

「そ、そうか」



 あ、魔法契約が発動したのではなく、思いとどまったのね。

 鳳蝶丸が先に伝えたことだから、その場合は話をしても問題はない。


 たぶん、雪大ヘラジカを一撃で倒した人がいる。だけなら発動しないんじゃないかな。

 それは鳳蝶丸達だ。と言いそうになると発動するんだと思うよ。



「ん、んん。彼らが一撃で雪大ヘラジカを倒したのは本当だ。一番前と殿(しんがり)でも問題ないだろう」

「そ、そうなんですね」

「責任は自分らで持つ。魔獣からの襲撃があれば(・・・)俺達で片付けるから問題ない」

あれば(・・・)、ね」


 鳳蝶丸とレーヴァが含んだ言い方をする。

 普通の魔獣なら私達を襲撃することはない。気が立っていて周りが見えていないとか、アンデッドとかがいるから絶対ではないけれど。


「はあ、それならばかまいませんよ」


 ちょっと苦笑気味のマンシッカさんから許可がでました。

 ワガママ言ってごめんなさい。


 幼児の私がウキウキしているよ!


 と言うことで、ミルニル抱っこの私、ミスティル、鳳蝶丸が先頭のソリ。レーヴァとハルパ、ドゥルーエルさんが後尾のソリ。メツァさん達はそれぞれ分かれて乗せてもらうことになった。



 ソリと言っても、座る場所はマンシッカさん他商会関係者のソリしか無い。

 他のソリは荷物が載っているし、荷物を固定する柵に掴まっての立ち乗りとなる。


 私はミルニルと御者台の後ろに立たせてもらえることになった。


「では出発いたします!」


 休憩所の結界を解いてからソリに乗る。



 ピュウゥ〜ィ!



 御者さんの指笛でポロンが走り出す。

 ソリは徐々にスピードを上げてゆき、あっと言う間にかなりの速さになった。

 ポロンが減ってスピードが遅くなったって言っていたけれど、思っていたより速くて楽しい!


 楽しったのっ………ふああぁっ!

 顔にビシバシ雪が当たるう!



 極寒対策のフェイスマスクを装着しているけれど、肌が出ている部分に雪が当たって目が開けづらい。

 御者さんや冒険者さん達の様子を見てみると、ソリの前方にいる人は鍔の大きい帽子を被っていて、後方にいる人は鍔無しの帽子を被っている。


「目、あてやえない」

「うん。目、開けられないね」


 雪がビシバシ当たって冷た痛い。

 取り敢えず私達家族にだけ結界3を張った。



 ドドドッドドドッ……

 シャーッ



 ポロンが走る音と、ソリの音が響く。

 その速さに楽しくなって、ウキウキする。クリスマスのサンタさんみたい!

 ホッホッホゥッ!よい子はいねぇがあ~。


 そうだ、ソリで滑る歌を歌おう!


 今はミルニル抱っこ中なので踊れないけれど、両手をパタパタしながら歌いだす。

 私が歌うとポロン達の足が更に軽快になり、速度をあげた。



 ポロンさん達が疲れちゃう!

 でもお歌楽しい♪



 歌いながらポロンさん達が皆元気になあれ!と思いを込めると、空気がシャラララ☆と光りだす。

 ついでにポロンさんもキラララ☆と光り出した。



 ふ・ふ・ふ・ふんふんふふふん♪ふんふふふふふん♪ふ~ん♪

 ドドドッ♪ドドドッ♪



 ポロンと私の歌が揃って、更に速く走り出すのだった。




 次の休憩所で少し早いお昼休憩。

 ケープィ商隊御一行様にもお昼ご飯をご馳走した。

 ハンバーガーセット(肉or魚)、ミネストローネスープ、温かい紅茶です。


 皆さん超絶ビックリしながら沢山食べていたよ。


「いやあ、生まれて初めてあんな美味いモン食べたぜ。君ら毎日あんな美味い飯食べてンのか?」

「おうよ。毎食幸せな気分になってるぜ!でも、旅が終わればいつもの毎日が………」


 コトカさんが困り眉毛になる。


「今しか味わえないんだから、今を楽しむしかないよ」

「俺もそう思ってる」

「お嬢ちゃんと皆さんに日々感謝だな」


 メツァさんとユスタヴァさん、ドゥルーエルさんの言葉にウンウンと頷く【雪原の青】の皆さん。



 美味しいご飯を食べるって幸せだよね。

 喜んでもらえて嬉しい!




 そしてまたソリに乗り先へと進む。

 ポロン(小型トナカイ)、ソリ、大荷物。

 すっかりサンタさんになった気分の私はクリスマスソングを次々と歌うのだった。



 シャン、シャン、シャーン♪

 シャン、シャン、シャーン♪

 しゅじゅ、だあ、なゆうー♪



 ポロンさん達元気になあれ。とまた願うと、シャララ☆キララ☆と光りだし、またまたスピードが上がる。


 私が歌うたびミルニルがリズミカルに体を揺らしてくれるので、すっごく楽しい!

 手をたたきながら沢山歌っちゃった。



 鳳蝶丸達と【雪原の青】以外の皆さんが、キラキラ光るポロンを見ながら驚愕の表情になっていたことに全く気付かない私だった。


 イヒッ☆




「まさかこんなに早く到着するとは思いませんでした」


 魔獣の襲撃がなく、ポロン達もめちゃくちゃ元気なまま次の町に到着しました


「魔獣にも遭遇しなかったな」

「雪鹿あたりに襲撃されるかもと思っていたぜ」


 商隊護衛の皆さんが口々に話している。

 だから、鳳蝶丸に一応伝えてもらいましょう。


「俺達がいなくなれば魔獣の襲撃はあり得る。気を引き締めてくれ」

「え?」

「俺達は魔獣を寄せ付けない」


 ピピパライ兄弟の馬車でもそんなこと言ったかも。

 本当のことだから、気を付けてね?



「おやしゃい、よよちく、おねだい、しましゅ」


 小さな村での野菜の販売を、よろしくお願いします。


「は、はい。ありがとうございます。皆様に喜んでいただけると確信しております。それで、あの、話は戻りますが、魔獣を寄せ付けないとはどういうことでしょうか?ポロンが光ったことと関係が?」

「うーん……ゆち、わたななあい」


 幼児の『わからなあい』発動!

 適当にはぐらかすのはこれが一番っ。



「じゃ、俺達は行く」

「おでんちで。バイバイ。ソイ、あにあと!」


 もう捌けちゃいましょう。そうしましょう。

 お元気で、バイバイ。ソリに乗せてくれてありがとうございました!


「あのう!きになるんですけどぉ!」

「わたななあい!バイバーイ!」


「どうか説明をぉ!」

「バイバーーーイ!」



 サッサと歩く私達。

 慌ててついてくる【雪原の青】の皆さん。


「君ら、いつもこんな感じの旅をしているのか?」

「うん」

「罪な人らだ」

「ミシュテニアシュ、いい、おんにゃ」

「ミステリアス、いい女。だって」


 ミルニル訳にドッと笑う皆さん。


「確かに。お嬢ちゃんはミステリアスの塊だ」

「この世で一番神秘的だよ」



 そうでしょ、そうでしょ?

 不思議で不可思議で神秘的でしょ?

 ンムフゥ…!


 鼻息荒くドヤァする。


「それに加えて世界一可愛い我が姫だよ」


 レーヴァ達が笑顔を浮かべる。


「そう。主さん可愛い」


 ミルニルがフードの上から頭をなでなでしてくれる。



 エヘヘへへ。

 嬉しいなっ。

本作をお読みくださり、評価、ブックマーク、いいね、感想をくださってありがとうございます。

とても励みになっております。

そして誤字報告、大変助かっております。

ありがとうございました!

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