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210. 欲だらけの幼女…エヘヘ♪

 次に鳳蝶丸が私達の紹介をする。


「君らが行商人って、悪いが……やっぱり見えないな」


 ドゥルーエルさんが困った顔で言うと、皆さんがウンウンと頷いた。


「行く先々で言われる」

「でも優秀商ってのは頷ける。君ら優雅だもんな」

「優雅!そう、わかる!上品なんだよ!」

「なあ、そういえばシェブネさんが尊い人達って言ってなかったか?」

「レーヴァさん、姫って………」



 ハッ!………………………………。



 皆さんがハッとして汗を流す。


「言っておくが王族じゃないぞ。それから姫ってのは愛称だ」

「良かったあ」×皆さん


 今朝も漁港の食堂で間違えられたと話すと、そりゃそうだと言われてしまった。



「それにしても従者達だったとはな。お嬢ちゃんが楽しそうにしてたから、てっきり兄妹かと思ったよ」

「もう家族みたいなもんだしな」


 兄妹に見えて嬉しいな。

 ウキウキしながら果実水を飲ませてもらう。

 次に口に入れてもらったお肉もすっごく美味しく感じた。


 嬉しいとご飯も美味しく感じるよ。



「そういえば君達の故郷はどれくらいかかるんだい?」

「ああ。本来は2週間弱なんだが…。まあ、日程通りには着かんな」

「この先は更に雪深くなるので野営出来なくなるんだ。町の宿に泊まらなきゃいけないし、吹雪だと足止めになるしね」

「それを入れると約3週間くらいか、もっとかかる可能性もある」


 ドゥルーエルさん、メツァさん、コトカさんが教えてくれた。



 結構遠いね?



 アブライセの港町はリッデル王国に属している。

 アブライセから伸びる街道は、シェルド王国を通過、再びリッデル王国に入国し、その先のモーネ王国に続いている。


 ドゥルーエルさん達の故郷はモーネ王国のサトゥ伯爵領。

 その辺り一帯は農業の盛んな地域で、ソールヴスティエルネ連合王国全土に農作物を出荷しているらしい。


 ドゥルーエルさん達の出身地、ヘデルマタルハ村は多種類の果樹産地で、主に果実と果実酒などを作っているんだって。



「俺の家ではワインを作っている。ブドウ畑を持っているんだが収穫時期とトラブルが重なりそうでな。出来るだけ多くブドウを収穫するために手伝ってほしいと連絡があった」

「そのトラブルは野菜不足とも関係しているか?」

「ああ。農業が盛んなモーネ王国の、しかも一番の農業地帯でトロトロ草が根付いちまってな。ウチの村にも迫る勢いで被害が広まっているらしい」


 えっ、トロトロ草?

 今度研究してみようと思っていた、あの超絶有用なトロトロ草だよね?

 ………忘れてたけど。



 よしっ全部刈り取ろう。

 ペピペピーノ、出動だよっ!



「トヨトヨ、ほちい」

「ん?ああ、姫が気に入っている植物だね」


 レーヴァにこっそり耳打ちする。


「じゃあ、今回もかくれんぼしながら採取しようか?」

「うん!」


 2人で笑っていると、メツァさんにやっぱり兄妹に見えるよと言われちゃった。

 エヘヘッ。



「ぶどう、しゅうたちゅ、いぱーい?」

「葡萄の収穫は沢山あるのかい?」

「そうだな。うちは割と畑が広いから、結構大変なんだよ」

「ドゥルーエルのトコが一番広いか。俺の家も結構広いんだぜ」


 コトカさんのお家もワインを作っているんだって。


「あと3週間ほどで収穫時期がくる。何とか間に合えばいいが」

「ああ。だが武具の修理もあるしな。本当はアブライセでいつも頼んでいる親父の店に行きたいが戻れねえし…」

「この町の鍛冶屋に頼んだとして、どれくらいで仕上がるかわからないよね」


 ドゥルーエルさん、コトカさん、スルカさんがため息をついた。



 そうか。武器も防具も破損しているもんね。

 修繕に数日かかりそうだし、この先も吹雪いちゃうと足止め食らうもんね?


 うーん。


 このままだと収穫に間に合いそうにない。

 何とか助けてあげられればなあ。


「主さん」

「んう?」

「俺、修繕してもいいよ」


 そうだった!ミルニルは『武器・武具造形』ってスキルを持っているんだった!


「ミユニユ、おねだい、しましゅ」

「わかった。ねえ、良ければ貴方達の武具を修繕するよ」

「え?君が?」

「うん。俺、鍛冶系のスキル持ちなんだ」

「鍛冶系!有難いけど、俺達6人とも修繕が必要だぜ?」

「明日までには出来上がる」

「は、早すぎない?」


 そりゃそう思うよね。


「ミルニルの鍛冶スキルは伝説級だよ」

「そうですね。確かに伝説級だ」


 レーヴァとハルパが後押しする。

 嘘ついてない。確かに伝説級!


「俺が作ると壊れにくくなる。金額は……」


 ちらりと私を見るミルニル。

 それはミルニルが得るべき対価だから、ミルニルが決めてください。


「特別に武器・防具合わせて1人10万エンでいいよ」

「10万…」


 鍛冶屋さんならまだしも、会って間もない人に託すのには勇気が必要だろう。

 ドゥルーエルさん達が戸惑っている。


「じゃあさ、」


 ナイフなど小さな得物を無料で修繕するから、その出来に納得出来たら俺に任せれば?とミルニルが言った。



 食事が終わったので【雪原の青】の男性部屋にお邪魔する。


「疑うようですまんな。ただ大事にしている武器や防具なんでな」

「ううん。武器を大事にしてくれるの、嬉しい」


 いつも一緒だし人型だから忘れちゃうけれど、彼らは伝説の武器。

 武具類を大切にしている人に会うと嬉しいよね。



「これなら…」


 そう言ってイルマさんがナイフを出す。


「長いこと使っているの。切れが悪くなってきたから買い替えかなって思っているんだけど、なかなか決心がつかなくて」


 休憩時の調理に使用しているナイフだそう。

 自分で研磨していたけれど刃が減ってきたし、ところどころが欠けてきたので買い替えを検討している。でも何だか愛着があって、なかなか手放せないんだって。


「見た目が多少変わるかも。いい?あと鞘も貸して」

「はい。お願いします」


 イルマさんがミルニルに鞘ごとナイフを渡した。



 スキルを見られたくないので衝立替わりの結界を張っていいかと確認する。


「元に戻せるならかまわない」


 もちろん!

 ドゥルーエルさん達に了承をもらったので早速作業に入ろう。


 まずは音漏れ防止の結界で部屋を囲む。

 そして真ん中に結界4(平面)で衝立をつくって”向こう側が見えない”にすると、結界が白く変化し向こう側が見えなくなった。


 ミルニルが鞘とナイフを持って衝立の向こうに行く。

 途端にピカーッと光り、鉄を叩くようなカンッカンッという音が聞こえ始めた。


「こ、この部屋で鎚を打ってんのか?」

「火はどこにも無いぜ」



 カンッカンッ、カカカンッ! 



 それほど時間がかからず鎚打つ音が止んだ。


「出来たよ。はい」


 イルマさんが、ミルニルから受け取ったナイフをスラリと鞘から抜く。

 出来上がったナイフは物凄く美しく輝いていた。


「切ってみるといい」

「え……」


 あまりに綺麗なナイフに見とれていたイルマさん。

 鳳蝶丸にお願いして、テーブルにまな板と栗かぼちゃを出してもらった。

 皮の部分がカッタイやつ!


「はい」


 イルマさんがかぼちゃにナイフを入れる。


 ストン


 何の抵抗もなく皮が切れた。


「これは硬いのか?これも切ってみてくれ」


 野菜が硬いか気になったらしいコトカさんが、自分の持っている干し肉や硬いパンを出す。


「う、うん」


 ストン


 やはり抵抗なくナイフがまな板まで下りた。


「あれ?え?すごい…すごい!」


 まるでスライスチーズのように薄く切れていく干し肉。


「買ったばかりのナイフだってこんなに切れないと思う」


 イルマさんが、いや【雪原の青】の皆さん全員呆然としていた。



「どうする?」

「本当に頼んでもいいのか?」

「うん」


 ドゥルーエルさん達が顔を見合わせて頷き合う。


「では、1人10万エンでお願いしたい。明日冒険者ギルドで金をおろしてくる。支払いはその時でいいか?」

「うん」


 皆さんが武器と防具をベッドの上に出すと、ミルニルがマジックバッグに入れていく。


「弓も大丈夫?」


 スルカさんが折れた大弓を出すと、問題ないよとミルニルが預かっていた。




「明日に出来上がるというのはありがたい。思っていたより早く出発できる」


 4人部屋に大人11人と赤ん坊1人。めっちゃ狭い所で雑談をしていた。

 両隣に迷惑がかかるといけないので、音漏れ防止の結界は張ったまま結界4(平面)だけ解除してある。

 【雪原の青】はベッドに腰を掛け、私達は椅子を出して座った。

 ちなみに、レーヴァ抱っこです。


「葡萄の収穫に間に合えばいいね」

「ああ」


 アブライセ出身のスルカさんもユスタヴァさんも収穫時期を気にしている。2人は畑持ちというわけではないけれど、数年に1度ヘデルマタルハ村の収穫を手伝いに行くんだって。



 葡萄の収穫かあ。

 そういえば日本で葡萄刈りをしたこと無いな。

 ちょっとやってみたいなあ。


「お嬢、気になるか?」

「興味あり、という顔ですね」


 鳳蝶丸とミスティルが私の顔を見てクスリと笑った。


「葡萄、てちゅだう?」

「やってみたいんだな?」

「うん」


 いやでも、皆に付き合ってもらうのは申し訳ないかな。


「いつも言っているが、俺達はお嬢のしたいことを嫌だと思ったことはないし、楽しんでいるぞ」

「ええ。気にせず希望通りにしてください」


 うう…。皆優しいね。

 ありがと!


「てちゅだう、ちて、いい?」

「主は葡萄の収穫がしてみたいようです。わたし達も手伝うので人手が増えますが、いかがですか?」

「えっ!そりゃありがたいが、いいのか?」

「私達は問題ありません」

「俺も収穫手伝う」

「姫には俺達の誰か1人がつくから、他の4人分は収穫の戦力になると思うよ」


 ありがたい。

 給金は払うと言われたけれど、それはいりません。

 だって私の好奇心でお願いしているしね。


 お金はいらないけれど、もし可能ならば葡萄を食べさせてもらえないかな?

 ワイン用の葡萄はとても甘いって何かで読んだので食べてみたいかも。


「おたね、いなない。ひとふしゃ、食べゆ。あと、おしゃて、たいたい」

「金はいらないから葡萄を1房食べさせてほしいって。それから酒を購入させて欲しいそうだよ」

「葡萄は渡せるし、酒の販売も問題ない。だが、それじゃ礼にならないんだが……」

「俺達は姫が楽しければそれでいいんだよ」


 するとドゥルーエルさんが本当に欲のない人達だなと苦笑する。


 欲はあるよ。ありまくりだよ!

 だって葡萄食べてみたいし、果実と果実酒の産地らしいので他の果物も食べてみたいもん。


 欲だらけだよ!…エヘヘ♪

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