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208/284

208. さかな、鹿、ヘラジカ~♪ 全てが魔獣よ~♪

「いやったい、ましぇ、しゅゆ」

「そうだな」


 そろそろ「いらっしゃいませ」するよ!

 鳳蝶丸がじゃがいもを含む野菜セットを1つ、テーブルに出す。

 1セット2千エンでと言ったらめちゃめちゃ吃驚された。


「こんなに入っているのに、安くしてもらっていいの?」

「問題ない。困っている時は助け合いたいと言うのがお嬢の考えだ」

「お嬢ちゃん………」


 皆さんウルウルしている。

 本当は無料で配りたいけれど、色々な人に叱られちゃうからね。



 どこか野菜の販売会場はないか聞いたら、このお店の前を使っても良いと言われたので、簡易テーブルを出して臨時開店するよ。


 足の早い男性が近所に声をかけて周り、お店の前はたちまち人でいっぱいになった。


「在庫は沢山あるから慌てないでください」


 ハルパが人を捌いていると、コート着ててもわかるくらいムッキムキなおじさまがやってくる。


「俺はこの辺りの代表だ。野菜販売感謝する。オイ、お前ら!きちんと並べ!若ェのはババ達の荷物持ちをしてやれ!」

「アタシはこの人の相方だよ。野菜販売ありがとう。助かるわ!ちょっと、そこに屯してンの!暇なら妊婦の家に届けてやんな!」


 迫力のある御夫婦が仕切り出すとたちまち統制がとれ、皆さんキビキビと動き出す。鳳蝶丸がじゃがいもの処理方法カード(昨夜パウチ加工しました)を沢山出すと、奥さん達が寄ってきて皆に配ってくれた。


「これどうなってんの?」

「濡れても大丈夫なように特別加工したものだ」

「凄いねえ。今日来れない子にもあげていいかい?」

「ああ。皆に配ってくれ」

「ありがとう、助かるよ」



 お姉さんにお店の前が混み合ってごめんねと言ったら、ついでに寄ってく客がいるからこっちも儲かってるよ!と言われる。

 お持ち帰り用の魚を焼きながら、ちゃっかり売り出してるお姉さん。


 わあ、美味しそう!私も後で買おうっと。



 ひと通り終わって皆さん帰って行った。

 お店のお姉さんにも納品して即売会は終了です。


「安く売ってくれてありがとね!これ、持ってって」


 焼きたてのお魚を綺麗な葉に包んで、沢山渡された。


「おたね、はやう」

「お金払うって。いくら?」

「いいの。土産に持ってって」

「いいにょ?あにあと!」


 ミルニルに焼き魚を仕舞ってもらう。

 旅の間、アツアツで食べられるよ。楽しみね。



「ああ、間に合った!」


 そこに代表さんと奥さんがやってくる。


「もし良かったら、これ、持っていってよ」

「マジックバッグ持ちだろう?木箱ごと持ってってくれ」


 奥さんが木箱の蓋をパカッと開けると、立派なお魚が3匹入っていた。

 全部海魔獣なんだって。歯が鋭いっ。


「煮ても焼いても美味いぞ。俺が選んだやつだから絶対にウメエやつよ」

「いいの?」

「おう!野菜を安く売ってくれた礼だ。持ってってくれ」

「あにあと!」


 焼き魚の他に大きなお魚をいただきました。

 ミルニルの行商用マジックバッグに入れてもらい、焼き魚も含め、あとで無限収納に移動させるつもり。



 さて、ひと段落もしたことだし次に向かおうかな。

 そろそろ行くね。お店のお姉さんもお魚をくれた御夫婦もありがとう!


「バイバーイ!」

「また来てね!」

「次来た時は漁港や市場にも寄ってくれ!」

「アタシたちに声掛けしてくれれば案内するからねえ!」

「あにあと!」


 お姉さんと御夫婦に見送られ、お店をあとにする。

 これも旅の楽しい出会いって感じだよね。きっとまた来るね!




 念のためこの町の商業ギルドにも寄り、野菜セットを大量に卸す。

 飛び領地の商業ギルドから連絡が来ていたらしく、皆さんとても喜んでくれた。

 どこかの町に寄った時は野菜セットを卸そう。皆さん困っているみたいだしね。

 じゃがいも処理方法カード配り、レシピの用紙と野菜セット販売は商業ギルドに丸投げだよ。


 売上は口座に入れておいてください。

 よろしくお願いしますっ。




 何だかんだとお昼になっちゃったので、通り沿いのお店でご飯を食べることにした。


 この町に屋台はなく、店舗に持ち帰り用の窓口がある。

 雪が降っているし寒いし…。露天での販売は難しいもんね。


「あえ、何?」

「雪鹿肉のスープだって。体が温まりそうだね、主さん」


 雪鹿肉?

 ジビエ料理かな?


「雪鹿は魔獣です。見た目は綺麗ですが、結構凶暴なんですよ」


 ミスティルが言うには、B級の魔獣で肉食。人も襲うんだって。

 強いから討伐が難しく、高級肉として貴族に買われてしまうので町中には滅多に出回らないらしい。


 じゃあ、せっかくなので食べてみようよ!


 と、思ったけれど。

 まだ開店前だったよ。残念。

 仕方がなく先に進もうとしたら、店内から女性の声が聞こえた。


「まあまあ、寒いでしょう?さあ入って」


 そう言って、優しそうなおばさまがお店の扉を開けてくれた。


「開店前では?」

「いいの、いいの。もうすぐ開店するし、小さな赤ちゃんを外で待たせるなんて出来ないわ。遠慮しないで入って」


 ハルパが遠慮しようとしたけれど、おばさまが陽気に笑って中に入れてくれた。


「スープはもうできているのよ。食事する?」

「はい。お願いします」



 暫くしてお肉がゴロッと入ったスープと、ライ麦パンみたいなパンが出てくる。

 スープには玉ねぎが少し浮かんでいるだけだった。


「野菜不足でごめんなさいね。本当は沢山お野菜が入っているのよ」

「ううん。おいちい、だいじょぶ」


 美味しいから大丈夫!

 雪鹿のお肉は赤身で、噛みしめるとジュワッと旨味を感じるお肉だった。

 スープに生姜や唐辛子が入っているので臭みもなく、飲んだ後に体がポカポカする。


「雪鹿の肉は手に入りにくと聞いたけど、いつもメニューにあるのかい?」

「いいえ。たまたま手に入れたのよ。私の娘が冒険者で狩ってきたの。良いトコの大半は売っちゃったけれど、少し分けてもらったわ」

「じゃあ、偶然食べることができて、俺達幸運だったんだね?」


 レーヴァがバチコン!


「まっ!おばちゃんにウィンクしたって何もでないわよっ」


 ちょっと嬉しそうなおばさま。

 おまけにお肉を少しだけ追加してくれた。


「あにあと」

「いいのよ。いっぱい食べてね」


 雪鹿のお肉は高いらしいので、お礼に野菜を3セットプレゼントする。


「新鮮なお野菜じゃない!」

「肉の礼だよ。商業ギルドに卸してきたから、追加なら問い合わせしてみるといい」

「素晴らしい情報をありがとう!近所の人にも声をかけてみるわ」


 食べ終わったので店を出る。

 おばさまがまた来てね!と手を振ってくれた。

 この町に寄ることがあったら顔を出すね!




 北門から外に出ると真っ白な雪原。積雪が少ない場所が街道かな?あのポカポカ石を使っているんだね。

 私達はポカポカ石を踏みしめながら、街道を北に向けて歩き出した。



 次の小さな町は案外近かったのでそのまま通り過ぎる。


「あえ?」


 街道を進んでいると、突然地図が開いた。


「誰かが戦っているな」

「近くまで行きますか?」

「うん」


 地図には大きな赤点2つと白点6つ。どうやら交戦しているようだった。

 町からそんなに離れていないのに……大丈夫かな?



 私が赤点をタップすると、魔獣の名前が表示される。


「雪大ヘラジカだな」

「雪ヘラジカの上位種です」


 A級の魔獣で、1頭を10人くらいの冒険者パーティーで討伐するような相手らしい。


「わあ!いしょいで、おねだい!」


 6人で2頭!討伐難しいよ!



 低空飛行(ひぎょう)で駆けつけると、魔獣と人が見えてきた。

 雪大ヘラジカはぞうさん3頭分くらいありそうな大きさで、その割に機敏な動きをしている。

 冒険者は4人が血だらけで倒れており、1人はようやく立っている状態で剣をかまえ、1人は尻もちをついたところだった。


 雪大ヘラジカがまさに2人の男性に突進するところで、ミルニルとミスティルが男性の間に駆けて行く。



 ドオオーォン!!!



 雪煙の中から、片手でヘラジカの鼻面を鷲掴みにするミルニルとミスティルが現れた。



「ねえ。助け、いる?」

「助けはいりますか?」


 呆然としている男性達に声を掛ける。

 2人は声も出さずコクコクと頷く。


「助けいるって」

「ヤッちゃってください」


 ミルニルとミスティルの言葉を聞くか聞かないうちに駆け出す鳳蝶丸とハルパ。



 スゥイン………



 鳳蝶丸が逆袈裟斬りのように短剣を振り上げ、ハルパが袈裟斬りのように大鎌を振り下ろす。



 ドンッ!



 断末魔を上げるヒマもなく雪大ヘラジカの首が落ち、



 ズドオォン!



 続いて胴がグラリと揺れ、雪煙をあげながらゆっくりと地に倒れた。



「姫。自身に結界をかけてくれるかい?」

「あい」


 私が自分に結界3をかけると、前抱っこの紐を外して私を下ろす。



 ズブブブブ……



「あやっ」


 鼻下くらいまでの深さまで雪に埋もれてしまった。

 多分雪から頭と目だけが出ている状態かな?

 それが面白かったのでクルク……ルのつもりでヨチヨチ回りながら雪を広げる。


「よちっ」


 しゃがんで雪に潜り、背伸びして外を眺める屈伸運動を開始なのだ!


「見えなあい、見えゆう。見えなあい、見えゆう」


 手を払いながらこちらに近付いてくるミスティルと一瞬目が合ったので、サッとしゃがんで隠れ、たつもり!


「主はどこにいるのでしょう?主はどこですか?」


 え?気付かなかった?少し笑っている気がするけれど…気のせい?

 もしかしてかくれんぼ成功?


 よし、驚かしちゃおう!


「わあっ!」


 両手を広げながら背伸びをしようとしてバランスを崩す。


「あうっ」


 尻もちをついたら雪が落ちてきて埋もれちゃった。



「主、大丈夫ですか?」


 笑顔のミスティルに抱き上げられる。


「うん、だいじょぶ。おもちよ、たった」

「楽しめて良かったですね」


 フフフ、とミスティルが笑う。

 私も楽しくなって、2人でニコニコしちゃうのだった。



 抱き上げられて周りを見ると、レーヴァが怪我をした人達にハイポーションを飲ませている。


「主さん」

「んう?」

「1人、重傷」


 ミルニルの報告で、危険な状態の冒険者がいることを知る。



 ぴゃっ!

 遊んでいる場合じゃなかった。すぐに治癒しなきゃ!

いつも読んでいただき、またブックマーク、評価、いいね、感想もありがとうございます。

書くための力となっております!

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