204. 念のため言っておくケド じゃがいもとマヨとアルコール信者じゃないよ
ではでは。
作りたてのマヨネーズをいただきましょう。
レタス、スティック状に切ったきゅうり、スティック状に切って茹でた人参とじゃがいも、は時間が無いので再構築。
「試食用の野菜だ」
鳳蝶丸に出してもらい、まずは私達が味見です。
ミルニルがきゅうりにマヨをつけてくれた。
いっただっきまーす!
シャキッ!
「おいちっ」
んん、美味しーい。
プナイネクッカの油はコクがあって凄く美味しい。
シャリシャリシャリシャリ…。
私が夢中になって食べていたら、皆さんにオラヴァみたいって言われたよ。
オラヴァって何だろう?
「おいちい、どうじょ」
「ありがとうございます」
イハナ副ギルド長さんは茹でたじゃがいもにマヨをつけて食べた。
「んん!美味しい!」
「魅惑の味ね」
「ああ、食べ過ぎたらいけない気がする。でも止まらないわ」
「美味い。野菜が美味い。手が止まらん」
あっと言う間に野菜スティックを食べ切る皆さん。
「日持ちはしませんので、食べる分だけ作ってくださいね」
ミスティルの言葉に、皆さんがメモを書く。
「丁寧に作る必要がありますが、工程は簡単です」
「多少力が必要ですね」
「でも作れないことはない」
確かにフォークじゃ作りにくいよね。
「こえ、シュパイシュ、入えゆ、味、たわゆ」
「これにスパイスを入れたりすると味が変わるそうだよ」
「たまど、甘じゅ、やしゃい、入えゆ。無い、玉ねじ、いいよ。タユタユ」
「ああ、アレね!タルタル。美味いよね」
「今、何と?」
タルタルに反応して訳すのを忘れるレーヴァ。
「茹卵と甘酢漬けの野菜を刻んで入れるとタルタルソースになる。甘酢漬けがなければ玉ねぎでも出来るって」
「た、食べてみたいですな」
「マヨ、ない」
だって、野菜スティックでマヨ全部食べちゃったんだもん。
「あちた、ふゆまうね」
「明日振る舞うって」
「楽しみですっ」
皆さんウキウキしながら喜んでいる。
明日も楽しみがあるって嬉しいよね!
「さて、姫が眠くなる前に俺達は帰るよ」
「そ、そうでした。ではまた明日。お待ちしております」
「あい、バイバイ!」
皆さんに手を振って、私達は宿に戻ったのだった。
宿経由でテントに戻ってゆっくり過ごし、寝る前に残った卵白を使ってラングドシャを再構築した。本当は焼きたかったけれど、もう眠くなってきたし明日も忙しいし、もういいや。
頼りになります、再構築・再構成様!
他にもラッキョウを使ったものと玉ねぎを使ったタルタルを、ミニココットごと再構築しておく。
マヨは工夫すれば色々なものに………あれ?じゃがいもをオススメしていたはずでは?
明日は野菜スティックとタルタルを出そうっと。
翌日は貴族以外の販売会です。
開場する前にタルタルを試食してもらう。普通のマヨの方が好みという人もいたけれど、概ね好評だった。
お肉にも合うよ、と唐揚げにタルタルをかけたら、試食した皆さん大騒ぎ。
マヨ派の人も喜んで食べていた。
確認すると、タルタルに使えそうな甘酢漬けの野菜は無いとのこと。
甘酢ではないピクルスに近いものがあるので、今度タルタルを試作してみると言っていた。
あと、昨日渡したレシピは検証が終わり、登録も完了出来たって。
は、早い!
今回の野菜販売の売上を含み、レシピの利益も私達の口座に入れてくれるとのこと。
ミールナイトのフィガロギルマス宛に、今回の件を文書通信で送って欲しいとお願いしておいた。
レシピに関しては希望者に販売するのだそう。
ただ、販売は貴族からと言うことで今日は配れない。
もう面倒なので全部商業ギルドにお任せするよ!
レシピを5百枚ずつ複写して押し付けちゃった。エヘッ。
時間になり、平民の皆さんが続々とやって来る。
貴族以外の人達は比較的抵抗なくじゃがいもを受け入れたし、じゃがいも教室も沢山の人が参加してくれた。
試食・試飲が予想以上に大盛況で、千エンと3千エンの赤ワインを出したら飛ぶように売れたよ。
もちろんじゃがいもも好評で、試食に出した茹でじゃが&タルタルは信者が出たほどだった。
「貴族の皆様は別として、じゃがいもは多くの人に受け入れられましたので、他の野菜と一緒に他国へ発注してみようと思います」
うんうん。
ほんのちょっとではあるけれど、じゃが布教は成功だね!
「野菜不足に関して完全な解決とまではいかんが、今回の販売で多少の余裕にはなるだろう」
「あやく、たいけちゅ、しゅゆ、ねだってゆ」
「お嬢は、早く解決することを願っているそうだ」
「ありがとうございます」
まずは第一歩。
お野菜を食べて壊血病が治まるといいね。
翌日は早めに会場入り。
鳳蝶丸が野菜を出せば職員さん達が並べてくれる。
貴族家の発注文書をもとに、レーヴァが区分けしながら野菜セットを出している。ミスティルとハルパがじゃがいも教室の準備をし、私は今日もミルニル抱っこです。
今日は最終日だからとお客様が押し寄せた。
受付は一般用と貴族用があり、それぞれ人が切れることはなかった。
販売は職員さんが一手に引き受けてくれているのでかなり楽チンです。
私達は今日もじゃがいも教室。沢山の人が来てくれた。
昨日の噂を聞いて来た人もいるらしいよ。
もちろん試食・試飲も大盛況。
野菜が苦手だった人も、マヨと一緒に食べられるようになったって。
じゃがいもも大好物になったと言う。良かった、良かった。
「芽は!」
「抉って取り去る!」
「変色のじゃがいもは!」
「食べない!」
「若すぎるじゃがいもは!」
「食べない!」
「皮は!」
「厚めに剥く!」
職員さんとお客様が唱和していた。
処理方法の紙も配ったし、これで大丈夫かな?
長いような短いような販売会が終わり、皆で片付け始める。
簡易テーブル、ゴミ箱、ホットカーペットは清浄し、ミルニルのマジックバッグとみせかけて無限収納へ全て収納。
商業ギルドには沢山の野菜セットと大量のじゃがいもを販売し、区切りがついた。
「本当にありがとうございました。これほど有意義な販売会は初めてです」
商業ギルドの職員さん達が頭を下げる。
「私共も、困っていたところを助けていただき感謝申し上げます」
役所の職員さん達も頭を下げた。
「こちらは入国許可証です。それからこちらは本土の入国審査官にお渡しください」
「あにあと」
入国許可証6名分と書状1通を受け取った。
この国を巡って観光出来るね!
入国許可証は羊皮紙に入国を許可する旨と、今日の日付、どこの町で発行したのか、対象者の氏名が書かれている。
連合国それぞれに入国する時や大きな街に入る時に、商業ギルドカードと共に許可証を提示するんだって。
「出国の際は、各港町の役所へご返還ください」
「わたいまちた」
ソールヴスティエルネ連合王国に入国するには、3箇所の飛び地領土の港町から船で渡ることになる。
出国の際は、何処かの港町の役所に許可証を返還するんだって。
もしそのまま返還せず、次の入国時に前回の許可証を使おうとしても出来ないようになっているらしい。
2ヶ月以内に連合王国内の国境や町などで照会の記録が無ければ入国許可証は無効となるし、返還していないことがわかればもう入国許可証を発行してもらえなくなる。
例外は怪我や病気で移動が困難になった時のみ。
過去には入国時許可証を持ったまま町や村に住みついた人が罰を受けたのち国外追放、二度と入国許可証が発行されなくなったこともあるらしい。
もしこの国に住みたい場合は住民となる審査を受け、証明書を発行してもらう必要があるんだって。
「我が国民になる場合はぜひ私共にご用命を。すぐに住民証明書を発行いたします」
役所職員さんに満面の笑みで勧誘を受けました。
こちらも満面の笑みでお礼とお断りをしたよ。
永住するつもりは無いので悪しからずご了承くださいませ。




