表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巡れ!半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ! ~天罰を添えて~  作者: あいのの.


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/290

203. 己に問い、答えを出し、納得し、いざ挑むは試飲なり

「そろそろお客様を入れても良いですか?」

「問題ない」


 予め行商用マジックバッグに野菜を沢山入れておいたので、鳳蝶丸がカーペットの外側に野菜の箱を置いていく。

 簡易テーブルにも沢山の野菜を置いた。



 まずは貴族の人だけらしい。

 倉庫に使用人らしき人々が続々とやって来る。


 こんなに急な販売会なのに、貴族がすぐに動いたのには驚いた。

 それだけ野菜不足が深刻だったんだろうと思う。


 貴族の対応は商業ギルドの職員さん達やイハナ副ギルド長にお任せ。

 私達はただただ商品を出しますよ。



 職員さん達は予め作っておいた野菜セットの箱を使用人さん達に見せている。


「全て新鮮ですね。葉野菜まであって驚きました」

「恐れ入ります」

「定期的に手に入りますか?」

「残念ながら、掲示した日程のみの販売です」

「そうですか………。芋を除いた50セットを屋敷に運んでいただきたいのですが、可能ですか?」

「はい。後ほど手配いたします」


 じゃがいも食べないの?

 貴族以外の使用人さんも?


「じゃだいみょ、食べにゃい?おいちいよ」


 使用人さんが私を見てちょっとだけムッとした表情をつくる。


「芋は貧民が食べるもの。それにあれには毒がある。毒はあるけれど食べ物がなくて食べる者の食材。それが芋だ」


 アハーロ王国辺りでは数種のお芋があったし、ミールナイトの屋台で出したフライドポテトを皆喜んで食べていたのにね。


 お国柄もあるのかなあ。

 野菜不足の現状で、そんなこと言っていられない気もするけれど。

 一度食べてみたら良いのに。


 私が視線を送ると、我が家の皆はニコッと笑って頷いた。


「芋は人の子の体に良くない成分は確かにあるが、それを取り除けば体に良い食べ物となるぞ」

「芽の部分、緑や紫に変色した芋、若すぎる芋は食べちゃだめだけど、そうじゃなければ美味だしね」

「壊血病……出血死病予防になり、肌にも良いらしいです」


 簡易テーブルに、死の森でも使った食べてはいけないジャガイモセットを出す。

 そして鳳蝶丸、レーヴァ、ミスティルが私の代わりに説明してくれた。


 壊血病のことを以前から皆に話しているし、昨日も再度説明したのだ。

 完璧!



「フンッ」


 複数の使用人達は、私達を睨んでから無視をし始めた。


 無理に食べろとは言ってないのに。

 睨まなくてもいいじゃん。



 でも出血死病の話が出てからは、役所の職員さんやイハナ副ギルド長、他の使用人さん達が食いついて来た。


「先程出血死病の予防とおっしゃいましたよね?確かにここ最近出血死病患者が増えているのです。野菜不足と何か関係がありますか?」

「ああ」


 食べ物には様々な成分が含まれているが、出血死病の予防となる成分は野菜や果物に多く含まれている。野菜を食べればすぐに効くというわけではなく、長期間少しずつ食べている場合に効果がある。


 肉や魚にもそれぞれ体に良い成分が含まれているので何か1つだけ食べ続けるのではなく、バランスの良い食事をオススメする。


 じゃがいもを薦める理由は出血死亡予防になる成分を含み、かつ長期保存が可能だから。

 食べてはいけないじゃがいもや、芽を取る方法、皮の剥き方等をもう一度しっかり説明する。


「食べてみゆ。おいちい」


 そして試食を促した。



 まずはシンプルにじゃがバター。

 蒸したじゃがいもを4等分し、塩をふりかけ大きなバターをのせたもの。

 もちろん、無限収納に入っていたからアツアツの蒸したてだよ!


「これはバターですか?」

「あい」

「良い香りですねえ」


 役所職員さんと商業ギルド職員さん達は躊躇なく口にする


「んん!」

「美味しい!」

「ホクホクしています!」


 困った表情を浮かべていた使用人さん達も恐る恐る口にした。


「本当に美味しい!」

「これがじゃがいも?……」



 次は塩肉じゃが。

 もう皆さん躊躇なく口にして、美味しい美味しいと連呼している。


 ポトフ、ポテトのガーリックバター炒め、ポテトサラダ、スライスポテトのピザ、ホワイトシチュー、ブラウンシチュー、ポテトのグラタン。


 ポテトずくめの料理はいかがですか?

 とても美味しいですよ?(どやあ)


 私がフンスフンスと鼻息を荒くしていると、ミスティルの無言スリスリが発動したよ。



「この辺りだと酒はどんなのを飲むんだ?」


 鳳蝶丸はやっぱりお酒が気になるみたい。


 商業ギルド職員さんの話だと、この地方の主流は赤ワイン。特にホットワインが人気らしい。

 ホットワインと言っても、スパイスは入っていなくて温めているだけみたいだけれど。

 友達が蜂蜜とジンジャー、柑橘類でホットワインの作っていたな。リンゴやオレンジジャム、シナモンを入れたのも作っていたかも。

 ワインと言えばサングリアも飲んでいたよね。


 全部友達の話で、私はお酒が飲めなかったからどんな味なのかわからない。

 この世界で大人の体になれば飲めるかな?

 その時は友達が作ってくれたカクテルや日本酒を飲んでみたいなあ。



 いやいや、今はソールヴスティエルネの野菜不足について考えなくちゃ。

 ホットワインなら、合うのはジャーマンポテト?


 ジャーマンポテトを再構築、3千エンの赤ワインを行商用マジックバッグに入れ、鳳蝶丸に耳打ちして出してもらう。


「これは赤ワインとジャーマンポテトだ」


 じゃがいもの話を聞いている人達がゴクリと喉を鳴らした。


「温めてはいないが、それでも良ければ試飲してくれ」


 皆さんがソワソワし始める。


「ワ、ワイン」

「ひ、昼間から、ねえ?」

「いや、でも試飲ですし」

「そう、これはあくまでも試飲です!ええ」


 あくまでも試飲!と強調し、ワクワクした表情を浮かべるお客様と役所の職員さん、商業ギルド職員さん、イハナ副ギルド長。


 ミスティルがワイングラスを出すと、皆さんはそれにも興味を示した。


「このグラスも美しいですねえ」

「歪み無く均等な厚み。大変美しいグラスです」

「これは………サクラですか?」


 エッチング加工を指で確かめるイハナ副ギルド長。


「俺達は屋号『桜吹雪』。桜が吹雪のように舞っている様子を表した名だ」

「だから俺達のシンボルは桜なんだよ」

「とにかく食べたら?料理冷める」

「そ、そうでした」


 鳳蝶丸とレーヴァが桜模様の説明をし、ミルニルが試食を促す。

 ハルパがワイングラスに赤ワインを注ぎ、ミスティルがカトラリーを出した。


「このワインは甘さが強めですが、上等なワインですな」

「ジャーマンポテイトの塩味と相性が良い」



 皆さんが味わっている間にどんどん攻めるよ!


「ほたのちゅに、だいとうひょ、フヤイド、ポテト」

「これは他国で大好評だったフライドポテトだ」

「揚げたてを食べてみて?」


 そこで鳳蝶丸とレーヴァが強力プッシュ。


「エールに合うよ」

「エール……」

「エール………」


 皆さんがエールにも反応する。

 鳳蝶丸がビールサーバーを出して、ビアグラスに注いだ。


「エールに似ているがビールという酒だ。フライドポテトと一緒に試飲(・・)してくれ」

「ええ、試飲じゃ仕方ないですよね」

「試飲ですもんね!」


 躊躇なくフライドポテトをつまんで食べ、ビアグラスを傾ける皆さん。


「んー!」

「美味いっ!」

「美味しいですね、」


 冷えたエールも喉越しが良くて美味しい。

 エールとフライドポテイトがとても合う!


 皆さん大絶賛だった。



 私達のじゃがいも教室を聞いてくれた人達は、皆さん芋入りの野菜セットを買ってくれた。

 念の為、じゃがいもの下処理方法と絵(本当は写真)入り注意点を書いた紙を渡しておく。

 試食で出した料理のレシピを知りたいと言う人がいたので、最終日までに用意して商業ギルドの職員さんに渡しておきますと伝えた。



 その日の夕方、赤ワインやビール、ホットカーペットの問い合わせが商業ギルドに殺到する。

 ついでに私達をおかかえの商人にしたいという問い合わせもあったと言う。

 赤ワインは対応するけれど、他は却下だよ。


 ごめんネ。




 販売会が終わったあと、イハナ副ギルド長さんにレシピを配るが良いかと一応聞いてみる。

 やはりレシピ登録をしたほうが良いという答えだった。


 まあ登録したとして、日本で言うところのレシピ本みたいな扱い程度。やがて口伝えで広がるだろうし、そうなれば購入者は少ないだろう。

 レシピで儲けようとは思っていないからそれは良いんだ。

 でもその方が管理しやすいならと言うことで、昨夜鳳蝶丸が作成したレシピの紙を渡す。

 絵付き(写真)だからわかりやすいと思うよ。


「素晴らしい!絵付きでわかりやすい。字が読めない者でも理解できるでしょう」

「この絵は本物のようですな」

「そしてこの紙。羊皮紙ではありませんよね?薄くて均等で素晴らしい!」

「この紙を売ってはくださいませんか?」


 白くて綺麗な上質普通紙だから欲しいと思うのはわかる。

 でもこの町に定期的に来れるわけじゃないからお断りしておこう。


「売ゆ、むじゅた、ちい」

「悪いが色々と商談をする時間はない。明日の支度もしたいし、お嬢が眠くなる前に食事もしたい」

「私達は、先に進みたいところを野菜不足で困っているだろうからと留まっているに過ぎません」

「他の物、売らない」

「姫の許しもあるし、ワインなら提供するけどね」

「とにかく早急にレシピを登録してください。実際に作成して検証が必要ならば、その後にレシピを配るのでも良いです。それが難しいのであれば登録無しで配ります」


 鳳蝶丸とハルパ、ミルニル、レーヴァ、ミスティルが話を進めてくれる。

 私はレシピに関して登録しなくても良いしね。



 私達がレシピ登録を渋り始めると、イハナ副ギルド長さんが慌てて職員さんに指示を出す。


「野菜は必要な分を商業ギルドで購入してください。肉類や乳製品は冷蔵倉庫管理者に声がけして受け取るように。卵は今朝採れのものを。早急に検証してください」

「承知しました!」


 レシピは塩肉じゃが、ジャーマンポテト、ポテトのガーリックバター炒め、じゃがいものチーズ焼き、ポテトサラダ。

 昨夜作りながら鳳蝶丸に撮影してもらったんだ。



「たまど、清浄、しゅゆ?」

「卵は清浄しますか?と主殿が言っています」

「我々の扱っている卵は生でも食べられる新鮮なもので、清浄の必要はありません」

「この辺りではフェディヴェールと言う鳥の卵を食べるんですよ」


 卵を見せてもらい鑑定したら、寄生虫や雑菌なども無く安全な卵ということがわかった。

 Sサイズくらいの大きさで、殻は碧色。黄身は綺麗なオレンジ色。

 不思議な色合い。


 卵を割っちゃったので、ミスティルにお願いしてアレを作ってもらおう。


 卵黄を2個、植物油、酢、塩。

 この辺りに植物性の油はありますか?と聞いたら、プナイネクッカという花の種を絞ったオイルがあるとのこと。

 全てすぐ用意出来るということだったので提供してもらう。

 現地の物で作ったほうが良いもんね。


 油以外をボウルに入れてよく混ぜる。

 モッタリしてきたら、油を少量入れて混ぜ、少量入れて混ぜを繰り返す。


 乳化したら完成!


 鑑定ちゃんも美味って言ってる!



 フォークで混ぜたからムラができるかなって心配したけれど、ミスティルが良い仕事をしてくれました。

 涼しい顔して力強くマゼマゼするミスティル様、格好いい!



 ちなみに余った卵白はいただいて、ラングドシャにします。

 明日持ってくるね!

いつも読んでいただき、またブックマーク、評価、いいね、感想もありがとうございます。

そして誤字報告もありがとうございます。とても助かりました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ