18. テントつくるよ! 3
前半は時間やお金の話題。
後半はテントつくり。あともうちょっと!
しばしの休憩。
鳳蝶丸とゆっくりクッキーをつまみながらお茶を飲んでいた。
「しょういえば、このしぇかい、時間どうなってゆ?」
この島では大体朝とか大体昼とか大体夜とかそんなザックリとした感じで過ごしている。
島の外に出てもこんな感じで過ごすのかな?と思った。
「時間の概念はある。1分60秒、1日28時間、1週間8日、1か月40日、1年12か月、480日、だな」
地球よりのんびりした感じ?
鳳蝶丸の話では、時計だけドロップするダンジョンがあって、この世界の人達はそれを使っているらしい。
浅い層の単純な作りの時計は一般向けで安く、深層部の金細工や宝石が散りばめられた美しい時計は王族や貴族の持ち物となるらしい。
すごいな、異世界。時計はドロップ品で配布。
ウル様はこの世界に時間の概念を取り入れたかったんだね。
「春夏秋冬もある。場所によって一年中夏や冬なんて国もあるな」
「地球も、しょんなかんじ」
「人類は…そうだな。人族の他にエルフ族や獣人族、ドワーフ族、ハーフリング族、巨人族、海には人魚族などもいる」
わあぁ!エルフとかドワーフとか人魚って超ファンタジー!
指輪がマイプレッシャースな物語みたい。
「人族の生活などに関しては貧富の差が激しい。貴族と平民とかな。大きな町はそれなりに豊かだが、小さな村は窮乏する場所もある」
「地球も、しょうよ。お金、価値、どれくない?」
「金か、そうだな。国や場所によって変動あるものの日本に近くした、と、ウルトラウスオルコトヌスジリアス神から聞いている」
この世界は共通通貨でエンと言うらしい。何だか聞きなれた響きで良いかも。
お金は硬貨で紙幣は無いとのこと。
話を聞くと大凡の価値は日本と同じ。
鉄貨=十エン=十円、銅貨=百エン=百円、銀貨=千エン=千円、大銀貨=1万エン=1万円、金貨=十万エン=十万円、大金貨=百万エン=百万円、白金貨=1千万エン=1千万円、大白金貨=1億エン=1億円くらいの価値みたい。
物価は王都と地方じゃ全然違うし、村などはまだ物々交換もあるけれど、例えば、リンゴ一個百から二百エンくらい。パンは平民が食べるのは一個百エンくらいで、裕福な層が食べるのは五百から千エンくらい。
王族や大貴族になるとまた値段が変わってくるけれど、その王族が食べるパンと私が出したパンを比べると、絶対的に私の方が美味しいんだって。
まあ、こだわりの国、日本のパンだからね。
この世界の時間や種族、お金の事を聞きながら朝の時間をゆっくり過ごす。
最後に珈琲をゆっくり飲んで、さて、今日も頑張りますか。
何度も言うけれど、普通の1歳は珈琲飲んじゃだめだよ。
「まじゅ、リュームチュアー、ちよう」
「りゅーむちゅあ?」
「うんとね、鳳蝶まゆ、お部屋、案内しゅる」
「おっいいな。楽しみにしていたぜ」
浮遊を解除して鳳蝶丸に抱っこしてもらう。そして前室に入った。
フワッと魔力を感じる。私が結界に付与した治癒と清浄。
「ん?魔力を感じたんだが」
「テント入ゆ、びょうき治しゅ、体きえいなゆ」
「何だ。ただのプレミアムヒールとお嬢がいつも使うプレミアムクリーンか」
「ん?」
プレミアム?
普通の治癒と清浄だよ。
いや、プレミアムヒールって…。プレミアムビー…。
まあ、いいや。
「中、入って?」
「了解。…おっ!これは凄いな」
まずは玄関。ここで靴を脱いでもらう。
「不思議な感覚だな」
この辺りは部屋に入る時も靴を脱ぐ習慣が無いから不思議らしい。
特に冒険者や旅人は、何があってもすぐ行動できるよう野外では靴も服も身に着けたままなんだって。
私のテントは結界があるから安心して脱げるし快適だって喜んでくれた。
「派手に空間広げたな。流石俺のお嬢。ゆったりしていてなかなかいいぜ」
寛ぎの間はあらかじめ吊るした日本製ランタンの電気をつけておいた。
「こえ、人をダメにしゅゆ、ソファー」
「いいな。寝る習慣のない俺もダメにされそうだ」
私を抱っこしたままソファーに座って完全に寄りかかりウットリする鳳蝶丸。
「時々この部屋でのんびりするか」
「うん、ちよう!のんびい~」
両手を挙げてニギニギしてしまう。
鳳蝶丸が私の手を取って自分の頬にスリスリした。
ちょっとビックリしたけれど嬉しかった。
さて、次はカウンターキッチン。
「なかなか豪華だな」
「鳳蝶まゆ、冷じょう庫、コンロ、置く。ご馳しょう、ちゅくゆ」
「おうっ楽しみだ!」
まあ、手足短くて力もないので、ほとんど鳳蝶丸が作るようなモンなんですが。
再構築でも作るから許して。
ゲスト部屋はサラッと説明。
次は結構気合入れて作ったお風呂!
O・FU・RO!
「このテントに入った時点でお嬢のプレミアムクリーンで綺麗になるけど、必要か?」
「ひちゅようよ?」
全員ではないけれど日本人はわりとお風呂が好きで、この世界でも温泉の雰囲気を味わいたいから作成したと、たどたどしく説明をする。
「温泉って、山とかに出る熱い湯だよな」
「うん、しょう。鳳蝶まゆ、温しぇん、だいじょぶ?」
「大抵のものは問題ない。温泉も大丈夫だ」
入り口に到着。
「ピンク、女湯、青がおのこ湯」
「これはお嬢の国の文字か?」
「うん」
「へえ、面白い。今度教えてくれ」
「いいよ~」
まずは男湯。
まだ水回りできてないけれど、一通り見て回る。
「風情があるな。木の香りもいい」
檜湯に感動しているようだった。
「この床、面白いな」
「畳よ。普ちゅう、お部屋に、ちゅかう。こえ、特べちゅ」
床が畳だとフカフカで足裏に優しい感触なんだよね。
「しょいで、こっち」
自慢の露天風呂!
「おお!まるで外にいるみたいだな。面白い!」
珍しく大きい声で話しながらキョロキョロする鳳蝶丸。
「お湯入ゆ、おしょと眺めゆ、のんびいしゅゆ」
「いいな、凄くいい。楽しみだ」
ウキウキ顔いただきました~♪
次は女湯。
やはり露天風呂に興味が湧いたみたいだった。
「こえ、岩ぶよ、言う」
「こっちもいいな。凄くいい」
「おんしぇん入ゆ、日本ちゅ、お盆浮かべゆ…」
「日本酒?」
ここで激しく鳳蝶丸が反応。
あ…やっちゃった?
「そういえば、今度酒を飲ませてくれるって言ってたな」
「うんうん。もちろんよぉ」
「いつ?」
「ええと、テント完しぇいの、お祝い」
「良しっ」
本当にお酒好きなのね。
お祝いはもちろん、岩風呂で日本酒を強く希望されてしまったので、お風呂は時々男湯と女湯を入れ替えることにした。
次はいよいよ自分たちの部屋。
「お部屋、むっちゅ、わたちのお部屋、ちゅくった」
「ほう」
6部屋は同じ構造と説明した。
入居した従者達が希望する部屋に改造出来る旨を伝える。
「お嬢の部屋はここか。なら、俺はここだな」
私部屋に近い部屋を指す。
そして早速中へ入った。
「良い部屋だ。窓ってこの島か?」
風呂は私の考えた景色だけれど、従者の部屋だけは今現在の外の景色だと説明する。ちなみに、外からは中が見えないので敵の様子など探る時は気にせずカーテンを開けられることも補足。
「それはありがたい。周辺の気配は常に探索しているが、これなら部屋から目視出来る」
そしてベッドに座った。
「俺たちは眠ることはないが、ここで休むことも出来るし快適だ。ありがとう、お嬢」
「気に入った?」
「もちろん」
にこりと微笑む鳳蝶丸に私も満足した。
「ちゅいか、お直し、あったら言って」
「ああ。それなら、いつでも良いからもう一部屋頼めるか?魔道具作る部屋にしたい。家具とかは今のままで問題ない」
「わかた。電灯、おみじゅ、終わゆ、ちゅくゆ」
「ありがとな」
次は私の部屋。
寝室や和室はサラッと見学、入ってすぐのリビングは従者と私だけの交友の間と説明。
あとバーカウンターには今後、色々な地球のお酒を揃えるつもりと言ったら鳳蝶丸のテンションが上がっていた。
何かあった時ご褒美のお酒とか用意しておこうと心に誓った。
さて、落ち着いたところでテントの仕上げ。
鳳蝶丸が魔道具として大型2ドア冷蔵庫、小型1ドア冷蔵庫、オーブンレンジ、オーブントースター、グリル付き三口コンロ、カセットコンロ、電灯やランタンの仕組みやリモコン、【魔石を繫げる魔法陣】を焼き付けたプレート等諸々を作ってくれた。
【魔石を繫げる魔法陣】とは、メインの魔石に魔力を込めると、魔法陣を焼き付けた魔道具の魔石へ一括で補充できるという優れモノ。
流石、我が従者!ありがとう鳳蝶丸!
あとは水回りや排水、トイレなどを作ったり、魔石に魔法付与したりする予定。
電気、ガス、水に関する物は全て魔石で補うことになるので頑張らねば。
今回はテントを作るため複写した、キングのバレーボールサイズの魔石を複写しまくって使うつもり。
まずは電灯関連。
再構成でキング魔石を、電球(大小)、丸い板(大小)、四角い板(大小)、長方形の板(長短)、小さな半円の釦に作り変える。
電灯用の魔石にLEDライトの白色と暖色をイメージした魔法を付与、重ねて魔力補充時清浄発動の魔法を付与しておく。
小さな半円の釦はリモコンに使うので、一回目押すと白色、ニ回目暖色、三回目消灯とイメージして魔法付与。
鳳蝶丸作のランタンとシーリングライト(丸型、四角型)、リモコンにはすでに魔法陣が焼き付けてあるので、全部に先ほど変形させたキング魔石をセット。
ランタンやシーリングライトがシンプルだったので、再構成でアンティーク調に作り替え、結界3を張る。結界は単に水対策。いや、電気じゃなく魔石だから良いのかもしれないけれど何となく気になったので。
そして無限収納に入れた。
取り付け例として、まずはタープテント。
収納していたランタンを5個、リモコン1個複写。
タープテントの天井内側に5か所フックを作り、鳳蝶丸にランタンを取り付けをお願いした。
「届く?きゃたちゅ、あゆ」
「きゃたちゅ?は、わからねぇが、大丈夫だ。俺は飛行スキルを持っているからな」
「飛行?」
「空中を自由自在に移動できるスキルだ」
するとスーッと浮かび上がりタープテントの天井にランタンを取り付け始めた。
「スピード上げて飛ぶこともできるぜ」
「おおぉ~」
浮遊より使い勝手が良さそう。後で魔法創造に加えようかな。
鳳蝶丸がランタンを取り付けている間、支柱にリモコンホルダーを作る。
そして、リモコンの魔石にタープテントのランタン5つのみ操作するという指示し、点灯消灯確認して終了。
このような感じで、寛ぎの間にはランタン。玄関や脱衣所、内風呂など広い場所には大型の四角いシーリングライト。
カウンターキッチンや部屋などは大型の丸いシーリングライト。
トイレやクローゼット前、洗面所には小型の丸いシーリングライト。
洗い場など鏡の前には長方形のシーリングライト等々。
必要な場所に鳳蝶丸が取り付け、私がリモコンホルダーと操作先を指示していった。
次に内風呂に作った行灯風ランタン内に【魔石を繫げる魔法陣】プレートを置き、その上に魔石の電球(小)をセットする。
念のため結界3を張り、一旦収納。
それを複写し、木枠の部分を黒い鉄製の七宝文様に作り替え、収納。
木枠の行灯風ランタンを男女それぞれの内風呂浴槽横に置いた。
男性は金魚模様、女性は桜模様のランタン。
鉄製の行灯風ランタンは露天風呂に複数、ランダムに置いた。
うん!結構格好良く仕上がったと思う。
その他、私部屋のシャンデリアやペンダントライトなどにも【魔石を繫げる魔法陣】プレートや電球等々をセット。
鳳蝶丸と二人で協力して作り上げ、電灯周りを終わらせた。
キッチンや水回りがまだだけれど、食べることも忘れてウトウトする。
鳳蝶丸が笑いながら抱き上げてくれたところで記憶が途切れた。
おやすみなさい。