120. 今更だけど気付いて良かった!
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そのまま皆で【虹の翼】邸へ行き、打ち上げのバーベキュー。
皆、大いに食べ、大いに飲み、最後にクレープを食べてお互いを労った。
賞金は数日後に届くそうなので、受け取りをローザお姉さんにお願いした。
お金は私達以外で分けて欲しいとお願いした。
最初は断られたけれど、いつ戻ってくるかわからないからそうして欲しいと無理矢理押し付ける。
賞状はアスナロリットさんに預かってもらった。
あとは【虹の翼】のおねえさん達以外に、革の鞄、がま口かコインケース好きな方をプレゼントする。
お給金は賞金で十分と辞退された。
「またいつか屋台を出す予定ある?」
「うーん。わたなない。やいたい、思たや」
「また屋台を出したいと思ったらいつか、と言う事ですよ」
「とっても楽しかったから、また手伝いたい。その時はまた声をかけて欲しいな」
「うちも。こんな経験初めてだし楽しかったわ」
「そうだな」
「ああ」
ミクミクお姉さんやミイさん、皆さんに楽しかったと言ってもらえて嬉しいな。
またいつか、その時が来たら声をかけるねと約束して、お祭り屋台版『桜吹雪』解散です。
お疲れ様でした!
私達はテントに戻り、リビングで寛ぎ始める。
「あちた、ようギユド、行って、アシュナヨしゃん、おみしぇ」
「明日は両ギルドに行って、その後店に行くんだな」
「うん」
「了解」
「承知しました」
鳳蝶丸がソファーで胡座をかきながらニッと笑う。
「終わったら次はどこに行く?」
それはもう、アレでしょ!
「デイモアナ、ちゅっぱい棒!」
「ちゅっぱいぼー?」
「俺達は、気まぐれ旅をしている」
「突っ張り棒と言う棒を投げて、指した方角に向かうのです」
「へえ。面白そうだね」
前回鳳蝶丸だったから、今回はミスティルに投げてもらおう。
どこを指すかな?楽しみ♪
翌日はまず商業ギルドに行った。
フィガロギルマスにお祭りが楽しかったとお礼を言って、拡声器を返却してもらう。フィガロギルマスからは、抽選会が大盛況だったとお礼を言われた。
1年以内、若しくは仲間が増えたらまた来るのでギルド証の発行と、査定の精算はその時にしてもらうようお願いする。
「また、来ゆね」
「ええ、大歓迎です!お待ちしております」
フィガロギルマスまたね。
私達は暫しの別れを告げた。
次は冒険者ギルドへ。
ビョークギルマスに取り次ぎをお願いすると部屋に通される。
「祭り中は色々と大変だったな」
「うん、大変だた。ギユマシュ、おちゅかえ、しゃま」
王子様とか、王子様とか……。
「でも、おまちゅい、楽したった」
「それは良かった。大きな行事が終わって一旦落ち着くな。今後は何やら色々と動きがありそうだが、これも神の思し召しだろうよ」
「?いよいよ?」
「ああ、色々だ。そこはこちらの事情なのでゆき殿は気にしないでくれ」
ビョークギルマスがニッと笑った。
「ところで冒険者ギルドカードについてだが、階級を付けず別の方法でダンジョンに入れるようにと考えているらしい」
「ほう?そりゃ助かるな」
「いつ頃来れば良いんだい?」
「反対にいつ頃帰って来られる?」
次の旅を満喫してからかな。うーん………。
「すうたげちゅ?」
「数ヶ月後とのことだ」
「しょの時、ふゆきじゅ、なおしゅ」
「その時に古傷を治すそうですよ」
「心から感謝する。その時までには何かしら用意出来ていると思う」
「あにあと」
では数ヶ月後に、と約束してビョークギルマスとお別れした。
次に、抽選会で結界を張った教会へ行く。
少し高齢のシスターが子供達に手を引かれなから建物から出て来た。病気を患っていたおばあちゃん先生かな?
その近くには優しそうなおじいさん。小さな子供を2人抱っこしている。もしかして怪我をしていたのはあのおじいさん?
2人とも無事病気と怪我が治って良かったね?
すると、建物からあの時の冒険者達が出てきて私達と目が合う。
「あ!君達は!」
「先生、ポーションをくれたのはあの人達です!」
全員が孤児院の門のところまで走って来てくれた。
「まあまあ、皆さまが。お陰様でこのように病気が完治いたしました。感謝してもしきれません。ありがとうございました」
「わしも怪我が完治して助かったよ。ありがとう」
「あの子達、治した、願い、神しゃま、届いた」
「病気と怪我の完治を願って金賞を引いたあの子達のおかげ、だそうだ」
「神へ願いが届いたってさ」
「本当に、その通りですね。あの子達にももちろん感謝しております。………ここで立ち話もなんですから、どうぞお入りください」
「いや、俺達はこれから行くところがある」
「おしゃしょい、あにあと。しゅぐ、お暇しゅゆ」
お誘いを丁重にお断りして、結界をどうするか聞こうと思って来たと告げた。
冒険者の1人が結界はとてもありがたい。でも結界を張り続けるのは魔力も膨大に使うし困難なのでは?と聞かれた。
私は半神スキルで結界を張るので、1回分神力を使えば維持に力は必要無い。
魔力を使った結界と違って、感覚的には一時的に神域を作るというのが近いのではないかと、これは私の推測だけれど……。
もちろんそのことは言わず、もしこのまま張ることに問題が無いとしたら貴方達の希望は?と確認してみる。すると、実は今朝も不審な男がうろついていたし、出来ればこのまま結界を張り続けてもらえると助かると言われたので了承した。
その代わり、私達が無料で結界を張ったからと言って、他所の商人さん達に無茶な頼みをしないと約束して欲しいとお願いした。
シスターは他所様に無茶な頼み事など決してしないし、ウルトラウス様がくださった奇跡なのだと子供達に言い聞かせると約束してくれた。
「では、結界をこのままにしておきます」
「ありがとうございます」
「子供たちが安全に暮らせます」
シスターとおじいさんがホッとした表情で笑みを浮かべる。
付き添っていた冒険者達は深々と頭を下げていた。
「俺達は行く。もし結界を解除したくなったならば冒険者ギルドのビョークギルド長か商業ギルドのフィガロギルド長に伝言しておいてくれ。いつこの町に来るかわからないが、その時に解除する」
「わかりました。あの、このままずっとお願いすることは可能ですか?」
「伝言がなければ解除することもありません」
「わかりました」
とりあえず結界をこのまま希望と言うことだったので何もせず次の目的地に向かう。シスターと孤児院関係者の皆さんはいつまでも頭を下げていた。
何はともあれ病気と怪我が治って良かったね。いつまでもどうかお元気で!
次に子供用ハイチェアを販売するためアスナロリットさんのお店に行った。
私のハイチェアは座面が低反発のクッションだけれど、フェリアに低反発ウレタンはまだ早いかなと思い、アスナロリットさん販売用は綿と羽毛入りの座面に変更した。
「お待ちしておりました」
「こんにちは。屋台、あにあと」
「こちらこそありがとうございました。大変勉強になりました」
アスナロリットさんが丁寧に頭を下げた。
そしてこの間食事をした離れに案内され、テーブルに着く。
屋台の時の感想など聞いていると、従業員さんが紅茶と果物を出してくれた。
「今日は約束のハイチェアを卸しにきた。何脚くらい必要だ?」
「その前にひとつお聞きしたいのですが、良いでしょうか?」
「ああ。何だ?」
アスナロリットさんが神妙な面持ちで私達に視線を向けた。
「私は今までお子様用の高椅子を見たことがありません。もしかして、ゆきさんが用意したものではありませんか?」
「………そうなるな」
「じっくりとは拝見しておりませんがとても特殊な構造だと思います。商業ギルドに登録は?」
「していない」
「やはり」
その後、アスナロリットさんから商業ギルドに登録するよう強く勧められた。
でも、他の国で開発されているかもしれないし…と言うと、もしすでに登録されていれば商業ギルドに教えてもらえるし、私達が販売できるか出来ないかの判断も出来ると教えてもらった。
そうか!
販売してから実は商業ギルドに登録されていて、私が売れないものだったらマズイよね?それを確かめるためにも商業ギルドに行く必要があるんだと今更気が付いた。
「また来るね」と告げて、お店を出る私達。
本日2回目の商業ギルドへ向かった。




