火遊びの代償
私は咲子さんに物凄い裏切り方をされた気がする。
でも思い出せない。
多分物凄過ぎる為、私が深層心理の中に押し込めたんだと思う。
覚えていてはいけないから。
何度も嘘をつかれたけど、それは何とも思わなかった。
それ以上の裏切り…。
何なんだろう?
ドーパミンだだ漏れの脳みそで考える。
わかんねぇや!
大体折角忘れた事を思い出す必要もないし。
思い出すのも怖いしね。
会社の既婚者男性社員は彼女を野放し状態だけど、唯一独身の工場主任は違う。
体育会系のこの主任、以前は彼女と食事に行ったり、遊びに行ったりした時に、彼女の言動、考え方等にダメ出しをしてた。
それが面白くないらしく、最近ではそんな話しも聞かなくなった。
彼女、工場主任の事だけは、私に気があるとは言わない。
もしかしたら良い仲なのか?
それとも全く手応えがないからなのか?
ドーパミン全開で考える。
彼女が工場主任を誘って遊んでいたのは、まだ仲良しだった頃から社長の息子への駆け引き。
少し仲が悪くなってからは当て付け。
それを知りつつも工場主任は遊びに付き合っていた。
最近はちと敬遠している。
この前、ベテラン事務員さんがお休みだった。
箱に貼るシールがギリギリの枚数しかなく、それを作ってくれるのが事務員さん二人。
でもその日は咲子さん一人。
その時の工場主任の言葉がツボにハマった。
「今日は失敗は許されないよ!」
私は頑張ってても、時々手順や日にちが曖昧になり失敗する。その度工場主任に助けを乞いているのだが、工場主任は彼女に頼むのはイヤらしい。
彼女は機嫌が悪いとあからさまにイヤな面をし、イヤミを言う。
私もたまに作業場に来た彼女に仕事を急かされるのはイヤ!
食品を扱う作業場なのに、ライオンのたてがみのような髪の毛で平気で入って来るデリカシーの無さがイヤ!
ベテランの事務員さんでさえ仕事を急かすような事はしない。
彼女はまるで重役気取り。
社長の息子をバカにし、偉そうな態度でふん反り返る彼女に対して、事務所に出入りする社員達は、何かおかしいと思わないのかなぁ?
今、書きながらライオンのたてがみを付けた象さんを想像し、笑いを堪え肩が震えた。
明らかに従業員の態度を逸脱している。
作業場でも社長の息子の事を馬鹿坊ちゃんと呼んでバカにしてる。
二人に何かあったと勘繰っているおばさん達もいると思う。
そろそろ誰が彼女に忠告すべき時期なのかも知れない。
私はしないよ。
私が言っても彼女は聞かない。
前に一度言った事がある。「おばさん達にあんまり社長の息子の悪口言うと、変に思われるよ。」って。
その時彼女は、それを望んでいるようでもあり、おばさん達をバカにする発言もした。
「あんなおばさま達に判る訳ない。」と。
この時私は、あんたの心は私よりおばさんだね。と、顔で喋った。
いつまであのままにしておくつもりなんだろう?
火遊びは程々にしないとね。
それにしても、あの会社は会社じゃない。
もう少し、経営者と従業員の区別があっても良いはず。
せめて、お菓子だけでもみんなと同じ時間にだけ食べてもらいたい。
のべつ幕無しに食べていてはただのうんち製造機にしか過ぎない。
人間は我慢が出来るから神様と同じ形で地球に住まわせてもらってる。
私生活まで全て我慢しろとは言わない。
みんな仕事をしに来ている。おまけに作業場の人間関係は厳しい。
それを我慢して働いてる。
おばさん達が働かなければ利益は無くなる。
事務員さんも必要。
持ちつ持たれつなんだから、休憩時間以外のお菓子くらい我慢して欲しいし。
おばちゃん達が可哀想。
だから私は何を聞いてもおばちゃん達には言えない。
故に溜まるのさ!




