最高で最悪な持病
「統合失調症ですね。以前は精神分裂病と言われていた重度の精神病です。」
「はあ。」と軽く納得。抗う気力すらない。
会社から自宅に帰ると、家族全員が岩田さんのお面を付けてた。
正確に言えば岩田さんの顔に見えた。
ぽちまでもが岩田さん顔。
ご飯を作ってれば伊東さんに10年早いと叱られる。
10年ご飯作らなくて良いのかよ?と今なら突っ込める幻聴。
夜中に恐怖感で目覚め、裸足で飛び出す。
痛みが欲しくて手首を切ってみる。
血が出るのを見て生きてる事を確かめる。
身体中の感覚が無くなる。
痛みに鈍くなる。
周りの人間全てが、私に死を促す。
いつか誰かに殺られると思って病院へ行った。
そうかぁ…
昔で言うキ○ガイかぁ…
その時の原因はパワハラ。
保健所に精神病の届けを出して、医療費の負担額が1割になる手続きをした。
惨めだった。
情けなかった。
お釈迦様を嫌いになった。
それから何故か猛勉強した。
哲学、宗教、自己啓発。
その時私は私を認識し、凪さんを私の入れ物と認識した。
哲学も宗教も、物凄く理解出来た。
もしかしたら誤診かも?精神病じゃないかも!
たまたま立ち寄った本屋さんで、統合失調症の本を見てみた。
奇行の欄に、哲学や宗教に没頭する。って書いてあった。
まんまだ。
そのまんま私だった。
ちっ!
と言い捨てて本屋を出た。
土砂降りだった。
私の心も土砂降りだった。
お釈迦様ごめんね。
今は大好きだよ。
宗教は密教が面白かった。
私を救ってくれたのは、道元禅師とラッドウィンプスの歌と、大好きな年下の彼だった。
幻覚や幻聴は今も消えてない。
でも現実と区別がつくようになった。
調子が良い時は、とっても綺麗な幻覚。
鳥達が囀る草原の中で作業をしてる。
それが調子を崩すとタルタロスに堕ちる。
みんな化け物。
身体中から膿を滴らせる化け物になる。
真っ暗な中での作業。
光が見たいと願うと機械が火を噴く。
だから調子の悪い時は、なるべく会社に行かないようにしてる。
この病気は、上手く付き合えれば楽しめる。
身体の反応や、脳の反応が最高に面白い。
たった一つ、基礎代謝が満足に出来ない事だけが悔しい。
こればっかりは頑張ってもどうする事も出来ないから。