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いざ出航!

冒険の旅へと突き進む事となったイアソン。

一体どうやって海の彼方の国へと向かうのか?

 イアソンが最初に手を付けたのは仲間集め。当然ですね、一人では絶対に不可能です。ドラゴンはいるわ遥か彼方の国だわ考えるだけでウンザリです。


 しかしそこはヘラ様の御加護がある主人公。あれよあれよと言う間に五十人を数える仲間が集まりました。しかも有り得ないようなゴッツイ面々。

 その最たる人物は、あの英雄オブ・ザ英雄ヘラクレス。続いて後のアテナイ王となるテーセウス。サラミス島からは後に偉大な王となるテラモーン&アキレウスの父となるペーレウス兄弟。アポロンの一族で竪琴の名手オルフェウス、医術の父アスクレピオス等々、神々の血を引いていたり、後に神になるようなとんでもない連中が集まったのです。何処かで聞いたような有名人もいますし、特撮ヒーローのお祭り映画状態ですね。というかヘラクレス一人で全部片付きそうな気もします。


 次に彼等を運ぶ船の建造に取り掛かりました。担当したのは当代随一の船大工アルゴス。この建造にはアテナ様が力を貸してくれました。これで何でもありです。

 まずはペリオン山から大木を切り出してきます。これは力自慢がわんさかいるんですから問題などあろう筈がありません。船の舳先にはアテナ様がドードーネーの森から切り出した人語を発する不思議な樫材が取り付けられました。

 完成した船はアルゴスにちなんでアルゴー号と名付けられ、この船に乗る勇士達は「アルゴー乗組員の一行アルゴナウタイ」と呼ばれました。


 アルゴナウタイはイーオルコス市の港バガサイに集結し、厳粛な出港式を行いました。盛大な生贄を捧げて航海の安全を祈り、その夜は大宴会を催してどんちゃん騒ぎを楽しんだのです。

 あくる日、アルゴスが大声で一同を叩き起こし、遂に出航です。隊長はイアソン。実績からも知名度・実力からもヘラクレスが隊長になりそうなものですが、意外にもヘラクレスが「イアソンこそが隊長をやるべきやろ」と言うのでイアソンに決まりました。言い出しっぺがやらないと格好がつきませんしね。意外と気を遣うタイプなのかヘラクレス?


 船はオルフェウスが歌い奏でる竪琴の調べに乗って進水します。英雄達が櫂を漕ぎ、オルフェウスが歌い奏で、白い波を立てて船は進みます。青く輝くエーゲ海を北へと進み、一路目指すのは、黒海へと繋がるヘレスポントス海峡。

 舵を取るのは高名な船乗りティーピュス、見張りは九マイル先の微かな物を見分けるという千里眼のリュンケウス。万全の態勢ですね。

 オルフェウスがアルテミス様(全ての船と岩礁も司るそうです)を称える歌を歌うと、大小さまざまな魚が船の周りに集まり飛び跳ねるという軽い奇跡が起きます。さすがですね。

 しかしその後は嵐が襲い、二日間航海を休む羽目に陥ります。三日目にやっと海が凪ぎ、岩に囲まれたレムノス島に寄港しました。


 この島は驚いたことに男性が一人もおらず、女性だけが住んでいる島なのです。生物学的におかしいですよね? 子孫を残せないのでは絶滅に向かって一直線です。なにかヤバい予感がします。

 そんな事は全くしらないアルゴナウタイ一行は、島の女王ヒュプシピュレー率いる全島民(全員女性)の歓迎を受けるのです。一行はこれを大いに喜んで受け、「男達は全員揃って所用で他国にお出かけ中や」とヘタクソな嘘を真に受けるのでした。単純ですね。

 実際はと言うと、島の女性たちがあの「愛と美の女神アフロディーテ様」への生贄を捧げなかった(サボった)ために、女神様は怒り心頭。彼女らの夫の愛を妻たちからトラキアの女奴隷達に移してしまったのです。この女奴達は島の男達がトラキアとの戦争に勝ち連れ帰ってきたのですが、アフロディーテ様の怒りによって男達は「妻は悪臭がする」と言い出し、この奴隷たちを愛するようになってしまったのだとも言われています。そりゃ怒りますよね……。とにかく彼女らは反省するどころか、これまた怒り心頭。その夜のうちに島中の男という男を深酒で眠らせて一人残らずSATSUGAIしてしまったのです。

 ああ、なんという事でしょう。自分達が女神様を怒らせただけだというのに。この島の男達はえらいとばっちりですね。とりあえず女性を怒らせたら(神様の仕業と言えども)えらい目に遭うようです。男性諸氏は気を付けましょう。

 そうとも知らずアルゴナウタイの皆さんは女性たちの歓待を受け続け、あっという間に一年近くが過ぎ去っていました。なにやってんでしょうね……。

 そんな中で遂に立ち上がったのがあのヘラクレス。ある日,女性達を遠ざけ仲間に向かって演説をした(或いは一軒ずつ棍棒でドアをぶっ叩いて回ったとも)のです。大した事を言えそうにはありませんが、それだけにかえってストレートに刺さる内容だったのかもしれませんね。というか、ヘラクレスの事ですから平穏な生活に飽きただけなのかも知れません。

 とにかく一行はすぐに旅立ちの準備に取り掛かりました。島の女性達はこれを知ると蜂蜜を集め、想い人に贈り最後のもてなしをしました。

 何故に蜂蜜? とお思いでしょう。当時は蜂蜜は精力剤とも考えられていて、新婚の夫婦は最初の一カ月だか三か月だかは蜂蜜酒を飲みまくり、子作りに励んだのだそうです。これがハネムーンの語源だそうで。で、蜂蜜を集めてもてなしという事は……そういう事ですね。

 皆が最後の別れを惜しむ中、女王ヒュプシピュレーはイアソンの腕を取り、眼に涙を浮かべながら言うのです。

「ほな、神々がお遣わしはった仲間と共にお発ちなはれ。ウチはいつまででもお待ち申し上げておりますさかいに。せやから……どないに遠い国でも忘れんといて」

「分かったで! ワシが無事に帰国したら絶対に迎えに来るさかいな! ワシの妃にしたるで!」

 と迂闊な約束をしてしまうイアソンでした。やれやれ。


前途多難な旅はまだまだ続きます。

よろしければお付き合いください。

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