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繋がるかもしれない携帯電話番号

作者: 櫻月そら
掲載日:2022/01/03

詩『聴けなくなった着うた』と繋がるエッセイです。


詩だけで止めておくほうがキレイなのかな、と思いつつも投稿してみました。


もう、10年くらい前の話。


ある朝、大好きな曲が携帯電話から流れた。

着うたと呼ばれるものだ。


別名「パカパカ」とも呼ばれるガラケーが光りながら、発信者名を表示している。


わざわざ表示されなくても、誰だか分かる。

この曲は、あの人だけの着信音だから。


この曲が携帯から流れると、胸が高鳴った。


こんな時間にどうしたんだろう。

何か話したいことでもあるのかな。


平日の朝方、あの人は出勤しているはず。

もしかしたら、「有給が取れたから会おう」という誘いかもしれない。


不思議に思いながらも、

嬉しさを隠しきれずに、通話ボタンを押した。


もしもし、という声は、あの人のものではない。

もっと年配の男性の声。

それは、あの人の父親のものだった。


父親が告げた内容は、

私の年齢では、あまり聞かないものだった。


うんとまだ先、何十年も先に聞くだろうと思っていた言葉だった。



そこから先は、感情が付いていかないまま、

物事は淡々と進んでいった。


携帯電話も解約したのだと、あの人の母親から聞かされた。


もうメールは届かないし、電話も繋がらないのだろう。


試していないから、分からないけれど。


10年経った今でも、ときどき、

あの人の番号に、電話をかけてみようかと思うときがある。


繋がらないかもしれないし、

あの番号は、もう違う人が使っているかもしれない。


もし知らない人が出たら、

「すみません。間違えました」と言えば良い。



ふと、

「リカちゃん電話」を思いだした。


会話のキャッチボールはできなくとも、

「もしもし」と少し低めの、あの人の声が聞けるのではないだろうか。


そんな自らの考えを、心のなかで嘲笑した。




2011年の東日本大震災が起きた後に、

岩手県に「風の電話」というものがあると有名になった。


電話線の繋がっていない公衆電話から、

もう会えない人、まだ帰ってこない人の電話番号を押して、話しかけるのだ。


「そんなことが、何になる」と思う人もいるかもしれない。


それでも、数え切れない人が、その公衆電話に生きるための勇気をもらっている。


私の携帯が、ガラケーからスマホに変わった今でも、アドレス帳には、あの人の電話番号が残っている。


いっそのこと掛けてしまおうか、と思って、すぐに留まる。


「この番号は、現在使われていません」のアナウンスや、知らない誰かが出た場合、私は耐えられるのだろうか。


それは、あの人がもう居ないという証明になるから。




発明王エジソンは晩年、ジョークではなく、真剣に「霊界通信機」を作ろうとしていたらしい。


結局、その発明が成功することはなく、エジソンも亡くなった。


もし完成していたら、どんな世界になったのだろう。


「死んだ爺さんに電話したら、毎回、小言がうるさい」なんて、


そんな幸せな厄介事も、増えたりしたのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[一言] … ごめんなさい 泣いてしまいました こんな他人は 泣いちゃいけないのに 本当にごめんなさい
[一言] せつねー! ってコメントしようとしたら、エッセイでビックリ。 新着一覧からだとジャンル表示されないのよね。 故人のご冥福をお祈りいたします。 風の電話の話は興味深いです。 そんなものある…
[一言] エッセイだったのですね。 てっきり美しい秀逸な掌編だと思い込んで拝読し、「風の電話」の有り様に共感し、「霊界通信機」があったのなら、と我が事と重ね、夢を見ました。 糸さまのご感想を目にし、…
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