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東京の星は燃え尽きない  作者: 星雫々
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シガレット Ⅱ


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「新宿、そして雨の行方」




駅のホームは雨に守られるが、

通りすがる人の傘の水滴がこちらへ

飛ばされてくるのはどうにも出来なかった。




ノイズキャンセリングに長けた新型のAirPodsでも、

さすがのこの雨音はシャットダウンできないようだった。




私の好みでもなんでもない、何度聴いても覚えられない洋楽がザァザァと砂嵐を立てるようにして邪魔される。





ストレートアイロンで朝伸ばしたはずの髪は、湿気で畝りを描き、そして冬だというのに首元に纏わりついていた。こんなことなら、もはや巻き髪で来るべきだったか。




新宿駅のホームはいつも私と似た像が数多通り過ぎていくのに、貴方と似た像には出会えない。


親指でネットニュースをスクロールしていたら、今夜はウルフムーンだという記事が目に止まって開いた。




1月の満月はウルフムーンと呼ぶらしい。





私は月や星にちっとも興味なかったけど、「明日は満月だな、」とだけこぼして煙をふかすのがお決まりだった。




私はわざとらしく窓をあけて、煙草はやめなよ、といつも言った。




でも、彫刻のごとく成形された鼻先から繋がる、センシュアルな唇が吐き出す煙も、嫌いになれなかった。



とはいえ咎める私に拗ねると着火していないタバコをそのまま咥えていた。


私の香水の匂いを感じると怪訝な顔をするくせに、左手で操作するハンドルはいつも正確だった。





SNSで検索しても、もう見つからない。エラーコードを表示し続けたまま。煙のような男だった。



新宿から6分、降りてもまだ雨は降り続いている。


強く鋭い風は傘を攻撃するし、AirPodsは混線してノイズを奏でる。傘を閉じて、歩道橋を駆け上がった。



無意味を欲さねば、雨は未亡人と化す。





(2/2)


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